獣人騎士団長の愛は、重くて甘い

こむぎダック

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ティエラ ドラゴネス王国記

天然記念物?

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 side・レン


「数千年・・・結構永くない?」

『我らにとってはほんの一瞬だの。移ろいゆく刹那に結ばれた人との縁は、夢幻ゆめまぼろしと同義。悠久の果てに、思い出だけが降り積もっていく』

「ダディ・・・」

 ダディ達ドラゴンは、表情筋が変わる事は無いけれど、その分煌めく瞳は雄弁で、今のダディはとても憂鬱そうです。

『忌々しい事に、ヴィースのドラゴンで天寿を全うした者は少ない』

「え? なんで? ドラゴンってすごく長生きして、最後は苔むして森に帰るイメージだったのに」

『地球ならな。しかしヴィースのドラゴンは、あまりメンタルが強くない』

 クレイオス様は鋼のメンタルだけど。

 まさに剛の者って感じよね?

『人と関わらず、己の縄張りだけで生きて居れば、獣と変わらん。しかし人と関われば、多くの別れと思い出に押しつぶされ、命の終わりを、願うようになる者も居る。どちらも最後には自我を保てなくなり、暴れ回る阿呆も出てくる。おとぎ話に出てくる悪竜がそれだの』

 色々想像すると、切ない話しではあるわね。

「どうせ長生きするなら、楽しい思い出が沢山あった方がいいって事?」

『どうであろうか、なんとも言えんの』

 生きていると、楽しい事ばかりじゃない。
 嫌なことや辛い事も沢山ある。

 でも時が経てば癒える傷もある・・・なんて言えるのは、100年にも満たない短い命の、人間だから言えることなのかも。

 沢山別れを経験して、思い出だけが降り積もる・・・。

 やっぱり切なくて、なんか涙が出そう。

 感傷的すぎるのかな。

 ・・・。

 えっと。

 それはそれとして・・・。

「アーロンさんがカルを思って、子供をって言うのは理解できるのよ? 孫を見たいって言う、お祖父ちゃん、お祖母ちゃんの気持ちも分かるし。アウラ様の忖度も、アーロンさんとカルが最後の龍だから、って言うのも理解できるの」

『ふん?』 

「カルは大切な友達で仲間よ? 本当にカルが困っていて、助けを望むなら、私にできる事はなんでもしてあげたいと思う」

「ちょっと待て、レンはカルと子供を作っても良いと思っているのか?」

 あらら?

 すごいショックを受けた顔になっちゃってる。

「肉体的な接触も無いのだし、果実に魔力を込めるだけなら、医療行為と変わらない気がするのよね。それで友達を助けてあげられるなら、私はいいかなって思うの」

「そんな・・・」

「あっ! でも、ヴィースだとそれも不貞行為になるなら話は別よ? それにアレクがどうしても駄目って言うなら、他の方法を考えてもらうから」

『魔力の付与を不貞行為とは言わんの。そして他の方法は無い。アレクサンドルの気持ち一つだの』

「・・・それでも君の子供に違いはない」

「それは・・・」

 そうか・・・そうなるのか。

 私の考えが安直過ぎたのかも。

 アレクさんが怒るのも、無理はないのかも知れない。 

 私の子供として認識されるなら、子供達の兄弟になる訳だし、あの子達の意見も聞かなくちゃ駄目よね?

 それにヴィースには精子バンクとか代理母出産みたいな考えはないし。

 倫理観で言ったら、神様が後押ししている訳だからセーフ?

 う~ん。

 なんか特別待遇な気がするけど、アウラ様的には、天然記念物の保護。

 みたいな感覚なのかしら?

 それもなんか、カルに失礼な気がして来ちゃった。

 本当は、カルの番が見つかればいいのだけどね。

 でもカルが一人は寂しい、子供が欲しいって言うなら助けてあ・・・げたい?

 あれ?

「ダディ。カルの気持ちはどうなの?」

『うぬ?』

「うぬ? じゃなくて。カルは私達に何も言って来ないのよ? 子供を作る事を、カルは本当に望んでいるのよね?」

『それは番を探しに行ったわけだから、当然子供も』

 目が泳ぎまくってるけど?

「まさか・・・カルと話してないの?」

『あ~~。うむ』

 信じられない・・・。

 こんな大事な話を、本人抜きで決めようとするなんて。

 親心って言っても、ちょっとどうかと思うわよ?

 それともドラゴンとか、龍にとってはこれが当たり前なのかしら?

 ちょっと理解できない。

「クレイオス・・・あんた達は、本人の考え抜きで、こんな不快な話を進めようとしてたのか」

 うわぁ~。

 アレクさんご立腹~。

 歯ぎしりの音がここまで聞こえてくる。

 大丈夫?

 奥歯折れない?

「ダディ。いくら何でもこれは酷いわ。困っている友達を助けるのは、やぶさかではないけれど、本人の意思を無視するなんてあり得ない」

『ううむ』

「それにアウラ様も、私達には人の世に介入できないとか言ってたのに、カルには自分たちの考えを、押し付けるのはどうかとおもうわ?」

『押し付けている訳では無くてだな』

「そう? 多分なんだけど、私達とダディとは常識が違うみたい」

『それはカルを助ける気はない、という事かの?』

 まったく!

 このドラゴンは!?

 なんで、そうなるのかなぁ? 

 ワザとなの?

 これ以上話してたら、アレクさんの機嫌がますます悪くなっちゃう。

「この話しはここまでにしましょう。続きはまた今度ね」

『話は終わっておらん』

「いいえ。今日はここまでです。ダディが謁見を邪魔をしたから、私達はこの後、ローギスの人達とお食事しなくちゃいけないの」

『ローギス? あんな小者など放っておけばよかろう』

 それを決めるのは、ダディじゃないでしょ!

「と・に・か・く、この話しをカル抜きでする気は有りません。後日カルとアーロンさんも交えて、改めてお話ししましょう。それまでに、カルにもちゃんと話しをしてちょうだい」

『う・・・うむ』

「それと、みんなビックリするから、今日みたいに、いきなり出てくるのは止めてね」

『分かった。その~』

 何かしら、ダディの上目遣いなんて珍しい。

 これは何か企んでる?

『カルに話すにあたってだな。レンは乗り気であった、と言っても良いかの?』

「乗り気も何も、カルの意思確認が先でしょ? 余計なこと言わないで」

 何年も会えなくて、やっと会いに来てくれたと思ったらこれだもの。

 会えないと寂しくて仕方が無いのに。

 会えばあったで疲れちゃう。

 ほんとドラゴンって面倒くさい。

 それを考えると、うちのノワールとクオンは、ドラゴンなのに、とっても良い子よね。


 その日の夜。
 アレクさんには、性的な関係がなく、魔力の付与だけで、私の子供だと認識されるとは思ってないかった。私が無神経だった 。アレクさんを傷つけてしまってごめんなさい。と謝って何とか機嫌を直してもらえました。


 ただ、孤独な友達を助けたい気持ちがある事は理解してほしい。

 とも、お願いしたのです。

 だって、誰だって一人は寂しいもの。


 そして後日、クレイオス様は約束通り、カルとアーロンさんを伴つて、私達を訪ねてきました。

 お願いした通り、その日は空間を開いて、突然現れたりはしなかったのだけれど。

 でも、その時私達は魔法関連の、新しい組織作りの会議中だったのです。

 それなのに・・・。

 空間移動ではなくても、衛士さんを押し退け、会議中の部屋に断りもなく入って来られたら、びっくりするし迷惑なのは同じです。

 そういえば以前ロイド様が、「クレイオス様は、前触れもなくいらっしゃるから、いつも驚いてしまう」と仰っていたのを思い出しました。

 クレイオス様がマイペースなのは、今も昔も変わらないようです。

 それはそれとして、クレイオス様に連れて来られたカルはとっても不機嫌そうで、隣に立つアーロンさんはもっと不機嫌そうです。

 三人の話し合いで、いったい何が有ったのでしょうか?



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