獣人騎士団長の愛は、重くて甘い

こむぎダック

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千年王国

純愛とストーカー?

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「案外、セルゲイの言う通りかもしれんぞ?」

「閣下まで、何を言って居るんですか?!」

 声を上げたシエルは、泣き続けているリアンを気にして、チラチラと視線を送っている。

「私も、アレクの言う事に一票」

「レン様まで?!」

「シエル、そんなに眼を三角にしたら、綺麗なお顔が台無しよ?」

「レン様!今は巫山戯ている場合ではないでしょう?!」

「巫山戯てなんか居ないわよ?シエルは美人さんよ?」

「そうだぞ。シエルは美人だ」

「セルゲイ!!皆で僕を揶揄ってるんですか?!」

「そんな事ないわよねぇ」

 うんうんと頷くセルゲイは、番補正が掛かっているかも知れないけれどね?

 マークさんのような美しさではないけれど、ぱっちりした大きな目と、長い睫毛。意思の強そうな、きりりとした眉に小麦色の肌。

 シエルは南国情緒たっぷりの、魅惑的な美人さんだもの、本当の事を言って居るだけなのに・・・。

 まぁ、今の状況では、不謹慎な言い方だったのは認めます。

 ごめんなさい。

「シエルの言いたい事は分かるけど、多分セルゲイとアレクの言って居る事は、当たっていると思うの」

「だとしても!」

「そうよね。リアンには嫌な話よね。けど、其処はあまり重要ではないのよ?」

「何故ですか?他国の王子が、殿下に横恋慕しているんですよ?」

「だって。ねぇ?」

「そうだな」

 見上げたアレクさんも頷いています。
 訳の分からないシエルは、イライラしているようです。

 流石南国生まれは、感情が豊かだわね。

「あのね。たまに居るのよ。自分が好きになったら、相手の気持ちなんてお構いなしに、相手の人も自分の事を好きなはず!って思い込んじゃう人が」

「レンが招来したばかりの頃。俺はちょうど誰かの尻拭いで、ミーネで討伐中でな?レンは一人で留守番だった。レンも体調が今一な時だったし、愛し子であることも公表する前でな。その時ウィリアムの推薦で、レンの侍従を任せた奴がいたのだが。そいつはウィリアムに懸想していたのだ」

「そんな話は初耳です」

「だろうな。あの時は、メリオネス家のアルケリスが絡んだ大捕物で、詳細が伏せられていることが多かった」

「そうだったんですか」

「それでね。私はこっちに来たばかりで、何も分からないし、兎に角こちらの食事が苦手で、全然食べられなくなってしまったの」

「レン様・・・」

 そんな、申し訳なさそうな、顔をしなくてもいいのに。

「だがな。レンが食事を摂れなくなったのは、その時の侍従の所為だったのだ」

「侍従のせいですか?」

 話しに付いて来られないのか、シエルは首を傾げているし、リアンも涙が引っ込んだようですね。

「神殿からも、レンを遠ざけて置かなければならなかったし、レンはこの宮に移るまで、貴賓室に閉じこもっている事の方が多かった。俺が留守にしている間、ウィリアムは足繁くレンのもとに通って、話し相手になってくれていたのだが、件の侍従がレンとウィリアムの仲を誤解してな」

「ウィル兄とレン様の仲を?そんなのあり得ない」

「だろ?しかしあの時は、俺が何処かの子供を攫って来ただの、なんだのと皇宮の中は下種な噂が流されていた。その噂も有って件の侍従は、レンを男娼だと思い込み、レンに嫌がらせをしていたのだ」

「だっ男娼?!愛し子のレン様を?!」

「そうみたい。私はあの時は嫌がらせされてるなんて、全然気が付かなくて。ヴィースのお料理は、物凄く味が濃ゆいのだ思ってた。だから後になって、アレクに教えてもらった時はビックリしたの」

「あの時の侍従は・・・ラドクリフの息子でしたね?」

「そうだ。レンに対する嫌がらせは、セルジュとローガンの告発で対処することが出来たのだが。ラドクリフはウィリアムへの想いを募らせ、レンを排除しようとしていた。あいつには、アルケリス絡みで余罪も有ってな。取り調べを行ったが、その最中話す事は、ウィリアムの事ばかり。ラドクリフの頭の中では、ウィリアムは奴の事を愛していて、何時か王配になれると、本気で信じていたのだ」

「それ、メチャクチャ怖くないですか?」

「怖いわよね?でも本人はいたって真剣だし、悪い事をしている積りなんて、これっぽっちもないの。こういう人を向こうではストーカーって言うのだけど、自己愛が異常に強い人が為り易いらしいですよ?」

「自己愛?」

「純愛とストーカーは、紙一重なのですよ」

「そうそう。うちの管轄でも似たようなことが有ったよ。被害者はお貴族様じゃなくて、街のパン屋の跡取り息子だったけどな。跡取り息子に一目惚れた雄が、相手の迷惑も考えずに付き纏った挙句。息子の恋人をブスッ!!とやっちまったんだよ」

「こっ怖い!怖すぎる!」

「だろ?さっきの録画を見た限り、アセンって奴は、かなり我儘な性格じゃん。王子様って立場もあって、今までなんでも思い通りになって来たんじゃねぇか?だから、自分が惚れたんだから、殿下も自分に惚れてるに違いない!って思い込んでんのかも知れねぇよ?」

 育ちの良いリアンやシエルには、刺激の強い話しだったみたい。

 2人とも顔色が悪くなっちゃったわ。

「そんな怖い相手なのに、何故重要じゃないのですか?」

「横恋慕は横恋慕。重要なのはアーノルドさんだから」

「僕・・・私ですか?」

 どうしてすっ頓狂な声を出しているの?
 問題があるとしたら、どう考えても貴方なのよ?

「その通り。アーノルドがアセンを相手にせず。毅然とした態度で拒絶すればいいだけだ」

「それは勿論です!」

「でもなあ、ほんとかなぁ。じゃあなんで、今まで好き放題やらせてたんだよ。殿下は側室を迎える気なんじゃねぇの?」

「そんな事はない!」

 セルゲイの言葉を否定すると、今度はマークさんの番です。

「本当に身に覚えはないのですか?アセンが誤解を招くような誘惑をしたとか?」

「してない!してないよ!!」

「そんじゃあ、あれか?お若い殿下は、誘惑されて我慢がしきれなくなって、ついつい、摘まみ食いしちゃったとか?」

 ロロシュさん。
 幾らなんでも言い過ぎよ。

「ぼっ僕は!まだ清いままだっ!!」

「・・・あら、まあ」

 そんなに真っ赤になっちゃって。
 こんな大勢のお兄様方の前で、チェリー宣言しちゃったもの。
 恥ずかしいわよね?

「お前達、揶揄い過ぎだ。アーノルドは兎も角、リアンが可哀そうだろう」

「兄上!僕の事はどうでも良いのですか?!」

「そうだな。割とどうでもいい」

「は?」

「公人としては、俺はお前を守る義務もあるし、大事な弟を守ってやりたいとも思っている。だが同じ雄としては、恋愛絡みで婚約者を泣かせるような、腑抜けの面倒は見たくない」

「ちょっと。アレク」

 その言い方はどうなの?

「なにを弱気になって居るのか知らんが、最初からアーノルドが毅然とした態度を取って居れば、こんな騒ぎにはならなかったし、リアンも傷付かずに済んだんだ。帝位云々の前に、自分の伴侶も守れなければ、一人前の雄とは言えんだろう?」

「そうだけど・・・」

 そんな言い方したら、自信なくしちゃうよ?

「そうですね。全部僕の責任です。僕は婚約者も守れないダメな雄なんだ。やっぱり僕は、兄上達の様に強くはなれない」

 ほら~~!
 言わんこっちゃない。
 戴冠式まであと少しだって言うのに、自信を無くしちゃったじゃない。

 またまた、気まずい雰囲気になりかけた時、アレクさん達騎士のメンバーが、そろって窓の方を向きました。

「ルナコルタが来たようだな」

 さっすが~~!
 騎士さんって、本当に気配に敏感よね。
 こう言うのって、地味にかっこいいと思います。

「ローガンさん。リアンの侍従さん達は、リアンの衣装も持って来てくれている?」

「はい。一通り持ち込まれております。そろそろ部屋の片付けも終わった頃かと思います」

「そう。侍従の皆さんにはお帰り頂いてから。パーティーの衣装を、ここに運んでくれる?」

「畏まりました」

「あと、私とアレクのお揃いの衣装を、出来るだけ沢山持って来て?」

「仰せのままに」

 恭しく頭を下げたローガンさんが部屋を出て行くと、皆が私の方を不思議そうに見てきました。

「アセンの鼻を明かす、良い手を思いついたの。でもルナコルタさんの意見も聞かないとね?」

 気分は魔法少女。
 きらりん、シャランと問題解決!

 と言いたいとこだけど。
 いい歳して、魔法少女は無いですよね?

 魔法とドレスって言ったら、年齢的にも、シンデレラの魔法使い。
 かな?
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