敗残王と亡国姫、冒険者として再起す  ~王女も聖女も皇女も魔女も、巫女も受付嬢も獣人もエルフも、いい女はぜーんぶ俺のもの!~

春風トンブクトゥ

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第五十八話 ピザにエールの組み合わせについて

「すごーい。ここのピザ、チーズたっぷりでこんなに伸びる」

「食いてえ、食いてえ、俺ちゃんも食いてえぜ」

「こら、人が聞いてるところでは静かにしてないとだめって言ったでしょ」

 食堂は混んでおり、あちこちから笑い声や怒鳴り声が聞こえてきた。

「うるさい所でごめんね。でもこういう場所の方が慎重な話をするのにかえっていいかと思って」

 広いつば付き帽子にローブという古典的な格好をしたリゼは、手に持ったワインを上品に口に運んだ。

「大丈夫だ。俺の連れたちも十分うるさいからな」

「ふふふ。そっちも色々あったみたいだね。ミーティアちゃんは見た所魔法が使えるようになったみたいだし、その喋るブローチは……え、なにそれ? マジックアイテム? それにしてはマナの動きがおかしいし、初めて見る魔力の色……」

「気にするな、話すと長くなる。今のところ害はないしな。それよりお前がこの国にいるということは、見つかったのか。仇の大魔族とやらは」

 女魔法使いは首を横に振った。

「詳しい情報はなにも。ただ、この国に魔族の痕跡があったって情報を見つけたから探してる所」

「魔族か……いい兆候ではないな」

 魔族の中でも特に強く、人類種への害が大きいものを大魔族と呼ぶ。魔族も大魔族も普段は暗黒大陸に引きこもって権力闘争に明け暮れているらしいが、たまにこちらの大陸に姿を表したときは、大概がおびただしい血が流れることになる。

「俺達は、王族の人間が行方不明になった件で来た。何か情報入ってるか?」

「一粒種の王女様が消えちゃったって話でしょ。そこそこの地位以上の人ならみんな知ってるわ。どこにいるか分からないけど、探すならこの街じゃなくて……」

「王都、か」

「王女様探しねえ。何でそんなことするのかは……」

 リゼが俺とミーティアの顔を見た。

「ま、聞くまでもないわね」

「あの~」

 ミーティアが自分の苦手なオリーブをカジリガラスに食べさせながら口を挟んだ。

「以前は断られちゃったんですけど、失礼を承知で改めて、一緒に王都に行ってもらえませんか。わたし達、モンスター相手ならなんとか出来るかもしれないんですけど、今回みたいに人探しや対人の仕事となると……」

 ミーティアは人と人とのやり取り、つまるところ政治について深く学ぶ前に国を追われた身だ。単に眼の前の魔物を倒せばいいクエストと違って今回の話は少し心細いのだろう。

「ふ~ん……そっちの元王様は?」

「俺か? モンスターだろうと人間だろうと俺が女を手に入れるために敵対するものは全て斬り伏せてきた。この、ブレイブハートでな。それ以外は知らん。部下が何とかしていた。適材適所というやつだ」

「はあ……三百年前のエレンディア軍人の苦労が忍ばれるわ」

 リゼはワインをもう一口飲んだ。

「分かった。一緒に行く。喪失花が暗黒大陸産だっていうなら魔族が絡んでいるかもしれないし。メアリーみたいな子を増やすわけにはいかないわ」

 ミーティアの顔がぱあっと明るくなった。

「ありがとうございます!」

「臨時パーティー再結成ね。リーダーさんからなにか一言ないの?」

「ふん、リゼは俺の女だ。こうなることは分かっていたさ」

「はいはい」

「それじゃ改めまして、かんぱーい!」

 ミーティアの音頭で俺達は木製のジョッキを打ち鳴らした。



「ですから~、ジャン様はもうちょっと節操というものを持ってですね~。みだりに女の人に色目を使ったり手を出したりは王族として周囲に示しがつかないとそう思うんですよぉ」

「ふん、俺は王だぞ。俺が規範で俺が法だ。好きなように振る舞うさ」

「またそういうことばかり言って~」

 酔っ払って半分潰れているミーティアを背負いながら宿屋の階段を登っている。
 こいつ酔うと口調が戻るんだな。

 うるさいカジリガラスの悪魔は、というとこちらも途中からミーティアのエールをちょろまかしていたらしくいびきをかいて寝ている。
 水桶の前に連れて行くと、酔いつぶれた相棒はかろうじて歯磨きをした。

 改めて部屋を見渡すとベッドが二つ置かれている。

「ツインか。まあいい」

 ミーティアを片方のベッドに放り出すと、俺も歯磨きをして自分のベッドに仰向けに寝転んだ。足を組んで天井を見つめる。

 喪失花ルフラン……か。
 もし今の俺が吸ったらどんな記憶を思い出すのだろうか。そしてそれを失うと分かったらどんな気持ちになるのだろうか。

「ふん、くだらん」

 寝ようと目を閉じると風が吹いたのを感じた。ドアの方からだ。

 そっとベッド脇に立てかけてあるブレイブハートに手を伸ばす……が、その手を戻した。

「鍵はかけてあったと思ったが?」

 ドアから入ってきた影に話しかける。
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