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第1章 私はただ平穏に暮らしたいだけなのに!
1 おはよう
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私は目を覚ました。
外はまだ薄暗く、夜明け前だ。でも、この時間が私のいつもの起床時間。目覚まし時計なんてものはこの世界には無いから、太陽の位置と体内時計で大体の時間を把握するしかない。
私はまず、体をさっと水で濡らしたタオルで清め、ウエストをあまり絞っていない黒色の地味なワンピース風の洋服に着替えた。腰まである黒色のストレートな髪は一つの三つ編みに結び背に垂らす。かなり使い込まれて少しくたびれてはいるが清潔な白い前掛けタイプのエプロンを着ける。
私の部屋は屋根裏部屋で、天井は斜めになっている。部屋にはベッド、サイドテーブル、書き物机と椅子しか家具はない。あとは洋服や小物などの細々したものを入れている少し大き目な木箱がベッドの下にあるくらいだ。
身支度をして、私は部屋を出て、一階にあるキッチンへ向かった。昨日の夜から水に浸けていた灰色麦を火にかけ、どろどろのお粥状態にして完成。灰色麦は地球のカラス麦に似た植物で、これを水や牛乳で柔らかく煮込むとポリッジのようなものができる。この世界ではこれはカースと呼ばれている。これが毎朝の食事だ。
薬缶にお湯を沸かし、自家製のお茶の葉を入れて、一煮立ちさせて、火から下ろす。
これらを食堂へ運ぶ。取り皿の木製の深みのあるお皿と木のスプーンと木のカップも運ぶ。そうこうしているうちに、子ども達が起きてきた。
「シスタールリエラ、おはようございます」
「シスター、おはよー」
「ルリエラ~、お腹空いた。朝ごはん早く食べたい!」
3歳~11歳の十数人の子ども達が元気に声をかけてきた。私は笑顔で子ども達に挨拶しながら、せっせと朝食の準備をする。年長の子ども達は朝食の準備を手伝って、私と一緒に取り皿やカップに料理やお茶を入れてくれる。
孤児院長のシスターマリナが来るまでに、朝食の準備を終えて、子ども達全員を席に座らせておかなければならない。
「マークはどうしたの?まだ寝ているの?全員揃わないと朝食は食べられませんよ。同室の子は早くマークを連れて来て!」
「マークを何度も起こしたけど、『起きたくない!』と言ってベッドに布団をかぶって隠れているよ」
「ここでは食事はみんな揃って全員で食べるのが決まりです。理由も無く欠けるのは許されません。私が連れて来るから、残りの準備をお願いね」
私は走りたい気持ちを抑え、最大限の早足で子ども達の部屋がある2階に上がり、マークがいる部屋の扉を一応ノックして開けた。
「マーク、朝よ。起きなさい」
マークは壁に3台ずつ並べてあるベッドの右側の1番奥のベッドにいた。聞いていたとおり、ベッドの上に丸まり上から布団をかぶって隠れている。
私が声をかけると、ビクリっと布団が少し動いたが、返答は無い。
私はマークのベッドの隣まで行き、再度声をかけた。
「マーク、どうしたの?朝ごはんは孤児院のみんなが揃わないと食べれないのよ。早く布団から出て来なさい!」
少し叱りつけるように言ったが、それでもマークは布団から出て来ず、逆に体をさらに丸めてしまった。
私はこの時点で、マークがなぜ起きたくないのかを察した。
「マーク、体調でも悪いの?大丈夫?顔を見せてちょうだい。」
私は今度は優しく声をかけ、布団の上からマークの背中に触れた。
マークは私の手が触れると、ビクリと体を震わせた。しかし、無理に引っ張り出すことはしなかったので、安心したのか、マークはやっと布団から顔を覗かせた。
マークは5歳の男の子で、赤茶色の少しクセのある髪は寝癖が付いていて、その幼い顔はぐしゃぐしゃの酷い泣顔だった。
「ル、ルリエラ~。あのね、僕…」
マークは泣きながら私を見上げて、必死に言葉を紡ぎだそうとしている。しかし、勇気が出なくて途中でまたグスグスと泣き始めてしまった。
「マーク、体調は悪くなさそうね。良かった。もしかして、お布団から出られないのは、おねしょしちゃったからかな?」
私の言葉を聞いたマークはまた布団に潜ってしまった。でも、その行動が私の言葉が図星だったことの証明だ。
私は怒ることなく、またマークの背に手を載せて優しい口調で話しかけた。
「マーク、大丈夫よ。誰も怒らないし、虐めたりなんかしないから出て来なさい。早くみんなと朝ごはんを食べましょう。」
「…本当?本当に誰も怒らない?イジメたりしない?」
「本当よ。おねしょなんて、子どもの時は誰でもするものよ。私はここにいる子ども達みんなのおねしょの後始末をしたことがあるのよ。もし、マークのことを虐める子がいたら私に言いなさい。その子のおねしょの歴史を暴露してあげるから!」
不安そうにしているマークに笑顔で明るく声をかけた。
叱っておねしょをしなくなるならいくらでも叱るけど、それは逆効果でしかない。マークはこの孤児院に来て、まだ1週間しか経っていない。不安と心細さで不安定な状態だ。
マークはやっと落ち着いたのか、泣くのをやめて布団から出て来た。やっぱり、寝巻と敷布団は濡れていた。
私はマークを着替えさせて、急いで食堂へ行った。食堂は静まり返っていて、子ども達はマーク以外は席に着いていて、そこには既に孤児院長が席に着いていた。私は孤児院長に遅くなったことを謝り、マークを席に座らせた。 私も急いで孤児院長の隣の私の席へ着席した。
孤児院長は「全員揃いましたね。では、朝食にしましょう。みんな、召し上がれ。」と簡単な言葉で食事の開始を告げて、みんなが待ちかねたとばかりに一斉にスプーンを掴んで食べ始めた。しかし、器を持って一気に掻きこんで食べるような子はいない。みんな、一生懸命スプーンを動かして一口ずつ口に運んでいる。
この世界では特に食べる前のお祈りとかは無いが、この孤児院では孤児院長の言葉で食事を始める決まりだ。他にも色々な決まりがある。食事中は私語禁止もその一つだ。これは食事のマナーを身に付けるため、食事に集中させるための決まり。
年上と年下の子が交互に座り、食事のマナーを年上の子が年下の子に教える。もちろん、教えるときは話しても良い。けれど、それとは関係無い話をしたら、私か孤児院長が注意する。
普通の家庭よりも厳しいこのような決まりのおかげで、孤児院の子どもは比較的マナーを身に付けている。
子ども達は特に問題を起こす事無く、食事を終えた。私もあまり味のしないカースを食べ、お茶を飲み終えた。
さあ、これから食事の後片付けだ。
外はまだ薄暗く、夜明け前だ。でも、この時間が私のいつもの起床時間。目覚まし時計なんてものはこの世界には無いから、太陽の位置と体内時計で大体の時間を把握するしかない。
私はまず、体をさっと水で濡らしたタオルで清め、ウエストをあまり絞っていない黒色の地味なワンピース風の洋服に着替えた。腰まである黒色のストレートな髪は一つの三つ編みに結び背に垂らす。かなり使い込まれて少しくたびれてはいるが清潔な白い前掛けタイプのエプロンを着ける。
私の部屋は屋根裏部屋で、天井は斜めになっている。部屋にはベッド、サイドテーブル、書き物机と椅子しか家具はない。あとは洋服や小物などの細々したものを入れている少し大き目な木箱がベッドの下にあるくらいだ。
身支度をして、私は部屋を出て、一階にあるキッチンへ向かった。昨日の夜から水に浸けていた灰色麦を火にかけ、どろどろのお粥状態にして完成。灰色麦は地球のカラス麦に似た植物で、これを水や牛乳で柔らかく煮込むとポリッジのようなものができる。この世界ではこれはカースと呼ばれている。これが毎朝の食事だ。
薬缶にお湯を沸かし、自家製のお茶の葉を入れて、一煮立ちさせて、火から下ろす。
これらを食堂へ運ぶ。取り皿の木製の深みのあるお皿と木のスプーンと木のカップも運ぶ。そうこうしているうちに、子ども達が起きてきた。
「シスタールリエラ、おはようございます」
「シスター、おはよー」
「ルリエラ~、お腹空いた。朝ごはん早く食べたい!」
3歳~11歳の十数人の子ども達が元気に声をかけてきた。私は笑顔で子ども達に挨拶しながら、せっせと朝食の準備をする。年長の子ども達は朝食の準備を手伝って、私と一緒に取り皿やカップに料理やお茶を入れてくれる。
孤児院長のシスターマリナが来るまでに、朝食の準備を終えて、子ども達全員を席に座らせておかなければならない。
「マークはどうしたの?まだ寝ているの?全員揃わないと朝食は食べられませんよ。同室の子は早くマークを連れて来て!」
「マークを何度も起こしたけど、『起きたくない!』と言ってベッドに布団をかぶって隠れているよ」
「ここでは食事はみんな揃って全員で食べるのが決まりです。理由も無く欠けるのは許されません。私が連れて来るから、残りの準備をお願いね」
私は走りたい気持ちを抑え、最大限の早足で子ども達の部屋がある2階に上がり、マークがいる部屋の扉を一応ノックして開けた。
「マーク、朝よ。起きなさい」
マークは壁に3台ずつ並べてあるベッドの右側の1番奥のベッドにいた。聞いていたとおり、ベッドの上に丸まり上から布団をかぶって隠れている。
私が声をかけると、ビクリっと布団が少し動いたが、返答は無い。
私はマークのベッドの隣まで行き、再度声をかけた。
「マーク、どうしたの?朝ごはんは孤児院のみんなが揃わないと食べれないのよ。早く布団から出て来なさい!」
少し叱りつけるように言ったが、それでもマークは布団から出て来ず、逆に体をさらに丸めてしまった。
私はこの時点で、マークがなぜ起きたくないのかを察した。
「マーク、体調でも悪いの?大丈夫?顔を見せてちょうだい。」
私は今度は優しく声をかけ、布団の上からマークの背中に触れた。
マークは私の手が触れると、ビクリと体を震わせた。しかし、無理に引っ張り出すことはしなかったので、安心したのか、マークはやっと布団から顔を覗かせた。
マークは5歳の男の子で、赤茶色の少しクセのある髪は寝癖が付いていて、その幼い顔はぐしゃぐしゃの酷い泣顔だった。
「ル、ルリエラ~。あのね、僕…」
マークは泣きながら私を見上げて、必死に言葉を紡ぎだそうとしている。しかし、勇気が出なくて途中でまたグスグスと泣き始めてしまった。
「マーク、体調は悪くなさそうね。良かった。もしかして、お布団から出られないのは、おねしょしちゃったからかな?」
私の言葉を聞いたマークはまた布団に潜ってしまった。でも、その行動が私の言葉が図星だったことの証明だ。
私は怒ることなく、またマークの背に手を載せて優しい口調で話しかけた。
「マーク、大丈夫よ。誰も怒らないし、虐めたりなんかしないから出て来なさい。早くみんなと朝ごはんを食べましょう。」
「…本当?本当に誰も怒らない?イジメたりしない?」
「本当よ。おねしょなんて、子どもの時は誰でもするものよ。私はここにいる子ども達みんなのおねしょの後始末をしたことがあるのよ。もし、マークのことを虐める子がいたら私に言いなさい。その子のおねしょの歴史を暴露してあげるから!」
不安そうにしているマークに笑顔で明るく声をかけた。
叱っておねしょをしなくなるならいくらでも叱るけど、それは逆効果でしかない。マークはこの孤児院に来て、まだ1週間しか経っていない。不安と心細さで不安定な状態だ。
マークはやっと落ち着いたのか、泣くのをやめて布団から出て来た。やっぱり、寝巻と敷布団は濡れていた。
私はマークを着替えさせて、急いで食堂へ行った。食堂は静まり返っていて、子ども達はマーク以外は席に着いていて、そこには既に孤児院長が席に着いていた。私は孤児院長に遅くなったことを謝り、マークを席に座らせた。 私も急いで孤児院長の隣の私の席へ着席した。
孤児院長は「全員揃いましたね。では、朝食にしましょう。みんな、召し上がれ。」と簡単な言葉で食事の開始を告げて、みんなが待ちかねたとばかりに一斉にスプーンを掴んで食べ始めた。しかし、器を持って一気に掻きこんで食べるような子はいない。みんな、一生懸命スプーンを動かして一口ずつ口に運んでいる。
この世界では特に食べる前のお祈りとかは無いが、この孤児院では孤児院長の言葉で食事を始める決まりだ。他にも色々な決まりがある。食事中は私語禁止もその一つだ。これは食事のマナーを身に付けるため、食事に集中させるための決まり。
年上と年下の子が交互に座り、食事のマナーを年上の子が年下の子に教える。もちろん、教えるときは話しても良い。けれど、それとは関係無い話をしたら、私か孤児院長が注意する。
普通の家庭よりも厳しいこのような決まりのおかげで、孤児院の子どもは比較的マナーを身に付けている。
子ども達は特に問題を起こす事無く、食事を終えた。私もあまり味のしないカースを食べ、お茶を飲み終えた。
さあ、これから食事の後片付けだ。
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