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第1章 私はただ平穏に暮らしたいだけなのに!
3 昼食準備
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洗濯物を濯いで、絞ったら、木に張ったロープに洗濯物を干す。
やっと一仕事終えたけど、この次は畑仕事が待っている。
孤児院では、裏庭で野菜やハーブや果樹を育てている。この裏庭の収穫は孤児院の大切な食糧になっている。
私と子ども達は雑草を抜いたり、水やりをして、今日が食べ頃の野菜を収穫した。
今日の収穫は、形はダイコンに似ているけど赤くてちょっと酸味があるレガラス、見た目はニンジンにそっくりだけどゴボウのような味と食感のカンドータ、形は白菜に似ているけどほうれん草のような色と味のスポンナ、外見は里芋そっくりだけど、中の色は黄色で味はカボチャに似ているけどあまり甘くないサトロ、サヤはそら豆に似ているが、中身はグリンピースに似ていて赤茶色のエアル豆、この5種類だ。
「ねえ、シスタールリエラ。今日の昼食はこれで何を作るの?」
私に尋ねてきたマリーは、何かを期待している目で私を見ている。
私はそのマリーの目に気付かないふりをして答えた。
「今日は普通の食事を作ります。私の創作料理はまた今度にしましょう。まずは他所の家庭でもよく作る料理を作れるようにならなくてはいけませんよ。私の創作料理が誰にでも受け入れられるものだとは限らないのだから、孤児院の外ではあまり私の料理を真似しないようにね」
「は~い。でも、シスタールリエラの料理は美味しいよ!食べたらみんな絶対美味しいって言うよ!」
「そうだよ!普通の料理なんて、美味しくないよ。野菜を形が無くなるまでグタグタのドロドロに煮込むだけだもん」
「ルリエラの料理は、一つ一つの野菜が甘くて美味しいよ!」
「私も!ルリエラの料理の方が好き!」
「私も!」「私も!」
その場に居た子ども全員がマリーの言葉に賛同している。
この世界では、野菜は下茹でをするのが普通だが、その時間が普通ではない。葉物で30分、根菜類では1時間はグツグツとお湯で煮込む。そして、茹で汁は捨てて、ドロドロ一歩手前の葉物や崩れる寸前の根菜類をさらに調理する。
地球でも、昔のヨーロッパでは、野菜をグタグタになるまで煮たり、お肉も何度も茹でたり蒸したり焼いたりしてパサパサにして食べていたらしい、と本で読んだことがある。
この世界の調理法を初めて知った時は、どこも似たり寄ったりなんだな~、と思ってしまった。
でも、私は料理は「シンプル イズ ベスト」だと思う。というわけで、私が孤児院のシスターになって、料理を任されるようになってからは、自分なりに色々と工夫をしてみた。
最初は見慣れない不可思議な料理が出てきて、孤児院のみんなは驚いて、恐る恐る食べていた。けれど、味は今までの料理よりも格段に向上していたから、今ではみんなが私の創作料理を待ち望むようになってしまった。
でも、私の創作料理は味が良くても、他の家庭ではまだ見慣れない怪しい料理でしかない。もし、そんなものを子ども達が養子先や職場で出して、問題が起きたら困る。だから、私の創作料理は月1回だけと孤児院長に決められてしまった。
もちろん、孤児院長も私の創作料理の味は認めてくれている。しかし、孤児院の子ども達のことを考えての処置だ。
私の創作料理に子ども達が慣れて、それが当たり前になってしまったら、ここを出て行く子ども達が外で困ることになるかもしれない。
私はそんな当たり前のことも思い付かずに、ただ自分が作りたいと思った料理を作ってしまった。
今も女の子達が普通の料理は美味しくないと不満を言っている。
「 文句を言っては駄目よ。ご飯を食べられるだけ恵まれているのよ。味にまでこだわるなんて、贅沢過ぎです」
私は自戒の念を込めながら、女の子達を諭した。
この世界では、料理は味よりも、食材をどれだけ使って、どれだけ時間をかけて調理をしたかが重要視されている。はっきり言って、100種類の食材を使い、丸一日かけて調理をした不味い料理のほうが、ただ焼いただけの美味しいお肉よりも贅沢で素晴らしい料理と認識される。
だから、子ども達が孤児院の外で私の創作料理を真似したら、手を抜いているとか、貧乏な料理だとか、嫌がらせなどと勘違いされるかもしれない。
普通のスープを作る場合、畑で採れたあらゆる種類の野菜をまず水から下茹でをする。クタクタのボロボロになるくらいまで茹でて、その茹で汁は捨てて、下茹でした野菜を全て鍋にぶち込み、水を入れてまた長い時間煮込む。全ての野菜がドロドロになり、少々の塩で味付けして完成。
このスープの味は、とても複雑だ。色んな種類の野菜を入れているけど、下茹でして、殆ど味というか旨味が抜けているから、味自体はあまりしない。でも、様々な種類の野菜がごった煮状態で、調和がとれてなく、とてもバランスが悪い。なんとか食べられるのは、下茹でしてあるから、アクやエグミや苦味が無く、一つ一つの野菜の味があまりしないおかげかもしれない。
地球でナスとカボチャとピーマンとホウレン草とゴボウを鍋に全部ぶち込んで、野菜がひたひたに浸かるくらい水を入れてドロドロになるまで煮込み、ほんの少しの塩で味付けをした様なものの旨味だけを取り除いて、何倍にも味を薄めたものに似ているかもしれない。
私は下茹では最小限に抑え、スープに使う野菜は味の調和を考えて選んでいる。
私が自由に調理するなら、ゴボウに似ているカンドータを食べやすい大きさに切って熱湯で3分程下茹でをする。鍋に水を入れて、一口大に切ったレガラスと自家製のブーケガルニを入れて煮込み、沸騰したら下茹でしたカンドータを鍋に入れて、レガラスが柔らかくなるまで煮込む。最後に塩で味を調えて完成。
ジャガイモに似ているサトロは、鍋に皮を剥かずに入れて、コップ一杯の水だけを入れて蓋をする。最初は湯気が出てくるまで強火で火にかけ、その後は弱火で30分くらい置いて完成。
白菜に似ているスポンナは、お湯にさっと潜らせて、水気を絞る。食べやすい大きさに切って、砕いた木の実と植物油で和えて完成。
しかし、今日は普通の料理を作るので、全ての野菜を30分から1時間下茹でをして、スープを作った。
エアル豆だけは下茹でしただけで、スープには入れずに皿に盛って食卓へ出す。
豆は滅多にお肉を食べられない私達にとっては貴重なタンパク源だから、スープには入れずに、下茹でした状態でお皿一杯食べるようにしている。
これはどこの家庭も同じことをしている。知識は無くても、経験的に、豆のタンパク質を摂取する必要性を知っているみたい。
昼食の用意をしていると、外に出ていた子ども達も戻ってきた。
さあ、みんなで昼食だ。
やっと一仕事終えたけど、この次は畑仕事が待っている。
孤児院では、裏庭で野菜やハーブや果樹を育てている。この裏庭の収穫は孤児院の大切な食糧になっている。
私と子ども達は雑草を抜いたり、水やりをして、今日が食べ頃の野菜を収穫した。
今日の収穫は、形はダイコンに似ているけど赤くてちょっと酸味があるレガラス、見た目はニンジンにそっくりだけどゴボウのような味と食感のカンドータ、形は白菜に似ているけどほうれん草のような色と味のスポンナ、外見は里芋そっくりだけど、中の色は黄色で味はカボチャに似ているけどあまり甘くないサトロ、サヤはそら豆に似ているが、中身はグリンピースに似ていて赤茶色のエアル豆、この5種類だ。
「ねえ、シスタールリエラ。今日の昼食はこれで何を作るの?」
私に尋ねてきたマリーは、何かを期待している目で私を見ている。
私はそのマリーの目に気付かないふりをして答えた。
「今日は普通の食事を作ります。私の創作料理はまた今度にしましょう。まずは他所の家庭でもよく作る料理を作れるようにならなくてはいけませんよ。私の創作料理が誰にでも受け入れられるものだとは限らないのだから、孤児院の外ではあまり私の料理を真似しないようにね」
「は~い。でも、シスタールリエラの料理は美味しいよ!食べたらみんな絶対美味しいって言うよ!」
「そうだよ!普通の料理なんて、美味しくないよ。野菜を形が無くなるまでグタグタのドロドロに煮込むだけだもん」
「ルリエラの料理は、一つ一つの野菜が甘くて美味しいよ!」
「私も!ルリエラの料理の方が好き!」
「私も!」「私も!」
その場に居た子ども全員がマリーの言葉に賛同している。
この世界では、野菜は下茹でをするのが普通だが、その時間が普通ではない。葉物で30分、根菜類では1時間はグツグツとお湯で煮込む。そして、茹で汁は捨てて、ドロドロ一歩手前の葉物や崩れる寸前の根菜類をさらに調理する。
地球でも、昔のヨーロッパでは、野菜をグタグタになるまで煮たり、お肉も何度も茹でたり蒸したり焼いたりしてパサパサにして食べていたらしい、と本で読んだことがある。
この世界の調理法を初めて知った時は、どこも似たり寄ったりなんだな~、と思ってしまった。
でも、私は料理は「シンプル イズ ベスト」だと思う。というわけで、私が孤児院のシスターになって、料理を任されるようになってからは、自分なりに色々と工夫をしてみた。
最初は見慣れない不可思議な料理が出てきて、孤児院のみんなは驚いて、恐る恐る食べていた。けれど、味は今までの料理よりも格段に向上していたから、今ではみんなが私の創作料理を待ち望むようになってしまった。
でも、私の創作料理は味が良くても、他の家庭ではまだ見慣れない怪しい料理でしかない。もし、そんなものを子ども達が養子先や職場で出して、問題が起きたら困る。だから、私の創作料理は月1回だけと孤児院長に決められてしまった。
もちろん、孤児院長も私の創作料理の味は認めてくれている。しかし、孤児院の子ども達のことを考えての処置だ。
私の創作料理に子ども達が慣れて、それが当たり前になってしまったら、ここを出て行く子ども達が外で困ることになるかもしれない。
私はそんな当たり前のことも思い付かずに、ただ自分が作りたいと思った料理を作ってしまった。
今も女の子達が普通の料理は美味しくないと不満を言っている。
「 文句を言っては駄目よ。ご飯を食べられるだけ恵まれているのよ。味にまでこだわるなんて、贅沢過ぎです」
私は自戒の念を込めながら、女の子達を諭した。
この世界では、料理は味よりも、食材をどれだけ使って、どれだけ時間をかけて調理をしたかが重要視されている。はっきり言って、100種類の食材を使い、丸一日かけて調理をした不味い料理のほうが、ただ焼いただけの美味しいお肉よりも贅沢で素晴らしい料理と認識される。
だから、子ども達が孤児院の外で私の創作料理を真似したら、手を抜いているとか、貧乏な料理だとか、嫌がらせなどと勘違いされるかもしれない。
普通のスープを作る場合、畑で採れたあらゆる種類の野菜をまず水から下茹でをする。クタクタのボロボロになるくらいまで茹でて、その茹で汁は捨てて、下茹でした野菜を全て鍋にぶち込み、水を入れてまた長い時間煮込む。全ての野菜がドロドロになり、少々の塩で味付けして完成。
このスープの味は、とても複雑だ。色んな種類の野菜を入れているけど、下茹でして、殆ど味というか旨味が抜けているから、味自体はあまりしない。でも、様々な種類の野菜がごった煮状態で、調和がとれてなく、とてもバランスが悪い。なんとか食べられるのは、下茹でしてあるから、アクやエグミや苦味が無く、一つ一つの野菜の味があまりしないおかげかもしれない。
地球でナスとカボチャとピーマンとホウレン草とゴボウを鍋に全部ぶち込んで、野菜がひたひたに浸かるくらい水を入れてドロドロになるまで煮込み、ほんの少しの塩で味付けをした様なものの旨味だけを取り除いて、何倍にも味を薄めたものに似ているかもしれない。
私は下茹では最小限に抑え、スープに使う野菜は味の調和を考えて選んでいる。
私が自由に調理するなら、ゴボウに似ているカンドータを食べやすい大きさに切って熱湯で3分程下茹でをする。鍋に水を入れて、一口大に切ったレガラスと自家製のブーケガルニを入れて煮込み、沸騰したら下茹でしたカンドータを鍋に入れて、レガラスが柔らかくなるまで煮込む。最後に塩で味を調えて完成。
ジャガイモに似ているサトロは、鍋に皮を剥かずに入れて、コップ一杯の水だけを入れて蓋をする。最初は湯気が出てくるまで強火で火にかけ、その後は弱火で30分くらい置いて完成。
白菜に似ているスポンナは、お湯にさっと潜らせて、水気を絞る。食べやすい大きさに切って、砕いた木の実と植物油で和えて完成。
しかし、今日は普通の料理を作るので、全ての野菜を30分から1時間下茹でをして、スープを作った。
エアル豆だけは下茹でしただけで、スープには入れずに皿に盛って食卓へ出す。
豆は滅多にお肉を食べられない私達にとっては貴重なタンパク源だから、スープには入れずに、下茹でした状態でお皿一杯食べるようにしている。
これはどこの家庭も同じことをしている。知識は無くても、経験的に、豆のタンパク質を摂取する必要性を知っているみたい。
昼食の用意をしていると、外に出ていた子ども達も戻ってきた。
さあ、みんなで昼食だ。
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