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なつ

ボスッ!

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 洗面まで完備した部屋でしゃこしゃこし、パジャマ代わりのジャージを着て、ベッドに入る。
 目覚ましの時間を合わせて、スマホを枕元に置いて、目をつぶった。
 いつもより早いから、すぐには眠れないかも────

 ボスッ!

「フォッ!」

「寝れないよね? もうちょっと話そ」

 ────陽太!
 いきなりベッドに飛び乗るんじゃない。

「びっくりした……おどかすなよ」
「おどかすならもっとちゃんとやるし」

 コワいことサラッと言った!

「ジェンガ付き合ってくれてありがと。あれ、やることになっててさ」
「定番ってやつ? いいよ、うちだってトランプとかやる時あるし」

 親とかと遊ぶのって、友達とは違うもんな。

「うん。あとさ、試合、小猫ちゃんと見に行っていい?」
「いいけど? 面白いもんじゃないと思うよ?」
「なんで? 僕大勢で稽古したことなかったから普通に見たいし、応援するよ?」
「そう? ありがとう、頑張るよ」

 知った顔が増えるのは、なんだか嬉しい。やってる時はたぶん忘れてるけど、終わって顔見たら、たぶんホッとするから。

「なんや話し声聞こえるから」

 とドアを開けてハジメがやってきた。
 ベッドの端っこに座る。
 陽太はおれが寝てる右側にわんこのおすわり状態だから、おれ挟まれてる。密度がすごい。

「寝なくていいの?」
「クレアにお伺いたてたら蹴り飛ばされたし来たわ」
「寝ろって?」
「行けって」
「そういうことは、ウグイスなんだー」

 性格コワくても。

「どうやって設定したの?」
「設定?」
「ウグイスの性格」
「あー、設定いうか、お願いした。優しくせんといてって」

 驚愕。
 優しくして欲しくない人なんているんだ。

「俺、甘やかされるとダメんなるんよ。ずっと甘えてまう。厳しゅうされんと、絶対サボってダラダラして、やりたいことでけへん思て」
「あー、分かる」
「コーチとか監督だね」

 おれも甘やかされてる、って思ったことあるから分かる。
 でも、おれには師範も部活の顧問もいるからな。

「僕のウグイスは助手なんだ~」

 自慢げに陽太が言った。

「へえー」
「だから助手って呼んでる」
「何手伝うてもろてんの」

 あ、内緒エリアに触れる質問だ。

「研究。色んな論文とか情報のアクセス早いから」
「ガチやん! 何の研究してん」
「生体アンドロイド」

 あ、言っちゃった!
 ハジメはいいのかな?

「誰にも言わないで、絶対秘密にして。約束して」
「お、おう」

 いつもの陽太に似合わないマジな上目遣い。

「大丈夫情報源守るのは記者魂に刻み込まれてる」
「うん。ハジメだから言ったんだよ」
「秘密は守る」

 はっくちん

 くしゃみまで可愛いかよ。いや身体冷やしちゃいかん。

「さむい? ふとん着る?」
「うんありがと」

 ねまきというにふさわしい甚平姿、気持ち良さそうだけど、ガーゼみたいな薄い生地。白地にマンボウ柄なのはともかく。

「エアコン上げる?」
「だいじょうぶ」

 口元までふとんかぶった陽太、その横に膝掛け状態のおれ。ハジメが言った。

「なんや俺も入れてくれ」
「えっ、うそっ」

 強引にふとんに入ってくる。

「入る? ちょ、わ」
「もう詰めれないよー」

 おれも横になって、なんとかしようとする。横向きになればいい?

「わー」
「もうちょっと」

 ぐいぐい

「入るじゃーん」

 ハジメがやったぜ☆ みたいに言った途端、「わああ」どたっと陽太落ちた。めっちゃ笑った。
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