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ヒーロー

お絵描きと折り紙

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『わたしには目がないので、細かい作業しているところが分かりませんでした。用意して欲しいものがあります。折り紙または正方形の紙を二枚、筆記用具を用意して下さい』

 折り紙って、中学生の日常にはあんまり登場しない。こないだ触ったけど。
 結局陽太の家には存在しないらしくて、コピー用紙を正方形に切って用意した。ちょっと大きいかも。

『お手数ですが、プロフェッサのスマホで手元が見えるように撮影して下さい』
「いいよー」
『滝夜さんはご自分のスマホを見て下さいね』
「は~い」

 さらっと流したけど、プロフェッサって呼ばせてんのか。助手に。

『筆記具なんでもいいので、用意した紙に今から映し出したものを描いて下さい』

 そう言って切り替わった画面には……猫?

「猫?」
『そうです。このまま描いてもいいし、好きな猫を描いてもいいですよ』

 好きな猫って言ってもさあ。
 猫……描いたことない。
 耳があれば猫かな……いや、これじゃあ団子にしか見えない……

「あ~、描けない!」
『はい、ありがとうございます。では次、書きたかった猫を文章で書いてみて下さい』
「文章??」
『はい。猫って言われて何が書きたかったですか?』
「この猫を真似て描こうと思ったけど……」
『それを文章で』
「ええ~っ!」

 ええと、だから。
 みほんの猫をまねして書こうとしたけど、まったく似ませんでし……

 見本の猫と自分が描いた団子とその下の汚い字を繰り返し見ながらなんて、もー!

「あー‼︎ 何の罰ゲームだ‼︎」
『はい、もういいですよ』

 はあはあ……
 何でこんなに疲れるんだ。
 陽太も小猫もニヤニヤ笑ってるし!

『では、もう一枚の紙で、これを折って下さい』

 画面には、アートな形の何かが映ってる。

「これ何?」
『薔薇です』
「バラ?」

 そう言われてみれば確かに。
 でもなんか複雑そうだぞ……?

 画面は切り替わって、最初の展開図になる。うんうん、ここまではいいんだ、たいていの場合。半分に折って半分に折って、開いて……これ、何かで折ったことある。何だっけ?

 ……袋を開いて潰します? あ、ああ、さっきやったやつね。まだ分かるぞ。
 折りすじに合わせて開きます?
 押しつぶすように折ります?
 途中の画像もあるのに同じにならないぞ? 何これ、裏?
 ええと……こう? えっ、あっ、分かった! こうね、あ、分かる分かる。

「あー、できたー!」
『お疲れ様です』
「難しいよ、これ!」
『ちょっと珍しいですよね』
「めっちゃ時間かかっちゃったよ」

 陽太はいびつにゆがんだバラの折り紙を、ひょいっと持っていって、あっという間に紙に戻し、あっという間に綺麗に折り直した。

「うひょー、綺麗!」
「うん、これ面白いね」

 陽太器用だな。羨ましい!
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