蔵と有坂

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お題/水中 一年目 八月

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 底まで潜ってきらめく水面を見上げる。耳は塞がれ、静寂。射し込む光が揺れる断面を透かして、天国を連想した。

 君が黒い髪を広げて現れる。僕へと腕を伸ばし、細い指は肩に届いた。

──触れるだけの一瞬。

 君は勝利の笑みを浮かべて飛び去った。

 水中に鼓動が鳴り響く。
 天国は今ここ。
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