#密売じゃありません!ミツバイギフトで最高に美味しい果物作ったら、領主令息が夫になった件について

国府知里

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密売じゃありません!ミツバイギフトで最高に美味しい果物作ります!

■303 無茶振りがひどい!


 ちょっと待って、なんで~っ!
 この世界の礼儀を知らない私に、貴族の相手ができるわけない。
 そんなこと、子どもでも、ばかでもわかるでしょう!?
 不興を買って切り殺されでもしたらどうするのっ!?
 
 お父さん、お母さんっ!
 無茶振りがひどいよ――っ、なんとかいって~っ!

 お父さんとお母さんに必死に救命の視線を送ると、おずおずとふたりがやってきた。
 よかった……。

「グレイス、しっかりご案内するんだよ」

 えっ!?

「あなたなら大丈夫よ」

 ちょっ、なにいってるの!?

 そういいながら、ぐいぐいと私の背中を押す両親。
 ひい~っ、やめて、うそでしょ、なんで!?
 あきらめて、死んで来いってこと!?

 地面にずるずるとミミズのような足跡をつけながら、生贄のようにブランドン・セラニーの前に押し出された。

 あ……、もうだめだ。
 誰も私を守ってくれないんだ……。

 そのとき、空気が割れたように笑い声が響いた。

「あっはっはっ! 案ずるな。教養なきそなたらにまで不敬を言い渡すような狭量ではない。いつも通りの振る舞いでよい。とはいえ、案内が子どもひとりとは心もとないな」

 そ、そーでしょ、そーですよ!
 誰か別の大人に替わってもらいましょうよ!

「いえ、この村の果樹のことなら、グレイスをおいて他に右に出る者はいません」

 そんちょう~~っ!!

 そのとき、お父さんとお母さんのうしろから声がする。

「お、俺が、つ、つきそいます」

 トーマス!!
 おにぃちゃぁん、今世はお兄ちゃんだけが頼りですう~っ!!

「ほう?」
「グレイスの兄です……。ト、トーマスといいます」

 信頼と安堵の目線で振り向いたとき、トーマスを見て愕然とした。

 う……、トーマスの顔色、めちゃくちゃ悪い……。しかも、肩震えてる。

 トーマスだって、怖いに決まってる。
 ついてきてくれたら心強いけど、でも最悪の場合、私だけでなくトーマスまでも……。
 む、無理無理、だめだめ!
 生産と販売と両方を担っているトーマスにまでなにかあったら、うちはやっていけないよ……!

「だっ、だ、大丈夫……! わ、私、ひとりでも案内できる……よ……」
「でも……っ」
「そうよ、トーマス。グレイスならちゃんとやれるわ」
「ああ、これはグレイスの役目だ」

 あうう……。
 色を失ったトーマスのうしろでは、いつの間にかエリーゼとジュリアとカーネルが心配そうにこっちを見ていた。
 お父さんとお母さんの硬い表情。
 そうか……、お父さんたちはいつかこんな日が来るんじゃないかって、きっと予想していたんだ。

 見渡すと、村人たちもどこかそんなふうに見えた。
 わかってなかったのは、私だけ……?

「ふむ……? グレイスとやらは、子どもながらに信頼を得ているのか? まあよかろう。とにかく一通り見せてくれ。そなたらはその間祭りを楽しむといい」

 ……こ、こうなったら、前世の記憶をフル活用して、なんとか生き延びるしかない。
 この村では使い道のなかった知識チートの総動員だ……っ!

「それで、グレイス、まずはどこへ行く?」
「ひゃいっ!」

 しょっぱなから声が……。
 ふ、ふう~。胸に手を置いて深呼吸、深呼吸。
 
「で、では、まずはレモンから……。どうぞ、こちらです」
「うむ」

 ひえ~、ブランドン・セラニーのあとから騎士たちがガチャガチャぞろぞろついてくる。こ、こわ……。

「ここがレモン畑です。レモンの苗は、ベゼルさんが町から買ってきました」
「実はなっていないようだな」
「収穫はもう終わりましたので、果実は共同倉庫に保管してあります」
「わかった。それで、アグリ村のレモンは甘いと聞いたが、本当か?」
「はい。そちらもあとで倉庫にて、ご試食いただけます」

 そう答えると、ブランドン・セラニーが妙な顔つきでこちらを見下ろしてきた。
 え、なに……、もう地雷?
 なに、なに? 怖い。

「そなた……、どこでそのような口の利き方を覚えたのだ?」
「へ?」

 あ……っ!
 しまった、まずかった!?

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