#密売じゃありません!ミツバイギフトで最高に美味しい果物作ったら、領主令息が夫になった件について

国府知里

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密売じゃありません!ミツバイギフトで最高に美味しい果物作ります!

■101 転生ガチャもハズレ

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 今朝も相変わらずの満員電車。いつもの圧迫と臭いの海にジリジリ。踏まれた足がジンジン。サラリーマンの固い鞄が脇腹に刺さってズキズキ。けど、心の奥がジワジワ。一番大きいダメージを負っている。
 
 日々値上がりしていく物価。給料が上がらないのに増えていく仕事。学生ローンの返済は今月もギリギリ。父は自分の稼いだお金は全部使い切って死んだ。このご時世、借金を残さなかっただけでもマシ。

 高齢出産で私を産んだ母は認知症。手堅い兄のひとりは結婚して地方に移住。要領のいいもうひとりの兄はなにをしているのかわからないけど羽振りのいい独身貴族。

 子育てと違って終わりの見えない介護に、希望はない。家の仕事は女の仕事? 時代錯誤もいいところ。なのに、高見の見物を決め込んだふたりに私の声は届かない。

 会うたび疲れている私に彼は愛想を尽かし、友達に同じ愚痴ばかり言うのも忍びない。食欲もないし、眠れない。心療内科でもらった薬は、用量じゃもう効いてくれない。最近なにを見ても笑えない。もう、無理かも…と、口に出せないだけ。本当は、ずっと、ずっと、思っている。

 この前、スーパーですれ違った同級生の奈緒子。

「めぐみ、大丈夫なの? なんか、すごくやつれ……疲れているみたいだよ?」

 二歳になる女の子を抱いた背の高い旦那さんと、六歳の男の子の手を引いたその姿。まぶしすぎる。そのときなにを話したか全然覚えていない。傷つけるようなことをいってなければいいけど。怖くて今さら確かめられない。

 なんで私は奈緒子みたいになれないんだろう。全部が全部、社会や時代や親ガチャのせいだなんていうつもりはない。就職氷河期とか再計画世代とか社会的貧困とかいうけど、幸せにちゃんと人間らしい暮らしをしている人もいる。

 努力が足らなかった? 運がなかったの? いつ選択を間違えた? なにがいけなかったの?
 疲れた……。
 生きるのって……、なんでこんなに辛いんだろう……?
 疲れすぎて……これ以上、どうやって自分を励ませばいいか、わからない。

 そう思った次の瞬間、視界が真っ暗になった。
 気づけば、見知らぬ天井を見ていた。

 「え? なにこれ? まさか、……噂の転生?」とひとり笑いをした次の瞬間。新しい名前で呼ばれていた。

「グレイス、あらあら起きちゃった?」

 私を見下ろす貧しい身なりをした金髪の若い母親が笑う。それが“疲れた私”が“新しい私”として生まれ変わった瞬間だった。貧困の村の農民として、家族と暮らす第二の人生。

 あれぇ……? こういうのって、ご都合展開やチートが当たり前のはずじゃあ……?

 そっと頬を撫でてくれる母親の手。優しくて温かい。だけど、あかぎれて、ザラ、ザラ……。

 はは……、そうなのね……。
 転生ガチャも、ハズレなのね……。

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