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密売じゃありません!ミツバイギフトで最高に美味しい果物作ります!
■201 コク深いアロニアベリー
それからチャンスがあれば、私はいろいろな食べ物にお祈りをしてみた。水、パン、野菜、きのこ、魚、肉。それでわかったのは、やっぱり私のギフトは、果実を甘くすることだけに作用するみたいだということ。
そして、秋。これを最終確認として、私はある果物が実るのを待ち望んでいた。
「あっ、今日こそ良さそう! アロニア!」
他の果物はあんまり育たないけれど、このアロニアベリーだけはこの地域でたくさん採れる。熟して取り頃の青みがかった黒い実。ぷっくりとして果肉がつまった実は、他のベリーと違ってまるで固い。たわわに実っているけれど、私のほかに誰もここにいない。小鳥や獣の気配もない。なぜって? このアロニア、ものっすごく渋くて、とてもじゃないけど、このままでは食べられないから。
「この渋くてまずいアロニアが、私のお祈りでおいしくなったら、私の力は本物だよね……。よしっ」
そっと手を組んで、目の前のアロニアの木に祈る。
「どうか……、甘くおいしくなーれ……。口いっぱいほおばっても食べられるくらい、甘くおいしく、おいしく……!」
閉じていた目を開けてみると、アロニアの木も実もなにも変わっていない。一粒取って、えいやと口の中にほうり込んだ。
「ん……、んっ、ん! ……んまぁい!!」
やっぱりだ! 今、口の中で全く新しい未知の果物になっている! 興奮して続けざまにアロニアの実を食べる手が止まらない!
生で一粒食べれば、渋みで一日中味覚が変になるアロニアが! 煮ても干しても凍らせても渋みが抜けずに、高価な砂糖を山のように使わないとジャムにできなかったアロニアが! 空腹の熊でさえ最後の最後、本当に食べる物がないときじゃないと食べないアロニアが!
「うん、うん! 嘘みたい! 渋みが全部なくなって、ものすごく甘い! 渋みの代わりなのか、果物じゃないみたいにすごい深いコクのある味になってる! まるでナッツみたいなコクとまろやかさ。それにひとつぶでも、干しブドウを口いっぱいに入れて食べてるみたいに味が濃い~!」
思わず全力で食レポしちゃった! でも本当にアロニアってすごい! これを干したら、冗談じゃなくものすごく売れそう。確かアロニアってアントシアニンが豊富で抗酸化作用があって体に良くて、目にもいいんだよね! 前世知識も合わせて売りに出せば、貴重な収入になること間違いなしでしょ!
籠いっぱいにアロニアを摘み取って家に帰った。一目見て半信半疑だった家族は、一口食べて私と同じような感想を興奮しながら言いまくった。
「これがアロニア!? なにがあったんだ、突然変異か?」
「まあ、信じられないわ。アロニアってこんなにおいしかったの?」
お父さんとお母さんが目を白黒。
「……むぐむぐ、ごくん! ねぇねぇっ、あたしもっと摘みにいきたぁ~いっ! ぱくっ、もぐっ!」
「これならジャムにしてもジュースにしても、ううん、このままパイに入れて焼いてもいいわね!」
「なあ、うちの家族だけで独占しちゃまずいよ。村のみんなにも知らせようよ。干せばこの冬の保存食になる」
トーマスにしては珍しく、はばかりなく口と指を真っ黒に染めてむしゃむしゃ。エリーズはあれこれ料理の算段。
「だっ、だぁっ!」
「あらあら、ハーネル、もひとつ食べるの?」
「ううっ!」
お母さんからつぶしたアロニアを口に運んでもらったハーネルは、お母さんの指をしゃぶりつくす勢い。ジュリアはリスみたいにほっぺに詰め込んでもぐもぐ。なにそれ、もう、ちびっこたちみんなかわいい。
「ふえ~っ! しぇっかくうちだけぎゃ見つけちゃのにぃ? もぐもぐ、ごくんっ。いわなくても、いいんじゃない……?」
「いや、トーマスのいう通りだ。恵みはみんなで分かち合ったほうがいい」
「それはそうと、グレイス、あなたどうして……」
みんなの目線が集まったところで、私は自信を持って頷いた。
「あのね、わかったの! これが、私のギフトみたい!」
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