帝王の執着愛からは逃れられない ~桃の花 匂いたちたる 千と一夜~

国府知里

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 どうして……? 僕は今日処刑されるはずだったのに……? その疑問で頭がいっぱいなのに、体のほうはサイード様の荒々しい愛撫に歓喜している。
 サイード様が自分の竿を手で掴み、僕の竿と一緒に擦り始めた。

「うあぁん、あっ、あっ……!」
「はあっ、はあっ、ふっ」

 サイード様の白い肌が瞬く間に桜色に染まっていく。怒ったような顔が首筋まで染まり、氷の眼差しが僕を責めるように貫く。ああ……、サイード様……。なんて、なんて素敵なんだ……。抵抗も忘れて、僕はそのまなざしに吸い込まれてしまう。

「はあっ、はあっ、あ、ふあっ」
「ふう、ふ、んっ、ううっ……」

 互いに高まるのを感じる。サイード様がぐっと体を寄せてきて、発射が近いのがわかった。僕は無礼を承知でサイード様の手に僕の手を重ねた。一緒に行きたい。

「んあっ……っ!!」
「ぬうっ……っ!!」

 二本の竿からほぼ同時に白いものが放たれた。僕の顎の下まで激しく飛んできた。お互いの匂いがいっぱいに鼻をつく。頭がクラッとした。
 サイード様が僕にのしかかったまま、ぐいっと僕の脚を上げてきた。

「持ってろ」
「え……?」

 サイード様が僕の膝を折り、ぎゅっと腕に抱えるさせるように押し付けてきた。つづけざまにぐいっと奥から熱いものが突き上がる。

「ひぃやぁんっ、あはぁっ、あっ!」
「ふんっ、ふっ、うんんっ!」

 い、今出したばかりなのに、もう……? まるで衰え知らずの猛りが、ぐぬぐぬと僕の通路を激しく突く。

「ああ……っ!」

 だめだ、気持ち良すぎる……っ! サイード様の力み声と熱い汗、匂いと温度。どうして処刑するはずの僕をサイード様が抱いているの……? わからない。でも、そんなこと考えられないほど、体が熱い。
 自分の脚を抱えさせられて、その上にのしかかるサイード様の重さと熱さを感じながら喘いだ。

「あっ、ああっ、はあ、はああ」
「ふっ、んっ、ふ、ふっ」

 僕の中をサイード様が熱く強く行っては戻り、一番奥でぐいぐいと揺れ動く。もはやできあがった水音と、とめどない熱いため息。甘い圧着と摩擦の快楽。ああ、感じる。サイード様を、強く感じる……!
 サイード様が奪う様にして、僕の唇をむさぼった。

「ちゅっ、くちゅっ、ちゅ」
「んっは、ちゅっ、んっ」

 激しいキスに息もとぎれとぎれ。すぐ間近に麗しいサイード様の顔があるだけで、僕は動けなくなってしまう。だって、この長いまつげに囲まれた切れ長の氷の刃のような目。野生の獣でも目だけで射すくめさせてしまうみたいな迫力。とても、さ、逆らえない……。

 ぬっちゅ、ぬちゅと、僕の奥を突くサイード様。ああ……、熱い……熱くて、最高にきもちいい……。
 爆ぜるのが近い。
 あっと思った瞬間、がぶりと口を塞がれた。僕の中にサイード様の愛の液がたっぶりと放たれる。

「ん、ふ……んっ……!」
「ふぬ……っ!」

 あ……ああ……、サイード様……。ど、どうして……。
 どうしてサイード様は、僕のことを……。
 自然と目に涙が浮かぶ。これが、きっと最後の務めなんだ。僕が生きた最後の営み……。この快楽、熱い血潮、生きているという今この瞬間。
 サイード様……。最後の最後に僕を生かしてくださって、本当にありがとうございます……。これで僕は心置きなく……。
 涙でかすんでいくサイード様を見ながら、僕はまどろみの中に沈んでいった……。
 
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