【完】左手だけの婚約者~Hanamun Life~一緒にワープした婚約者は、左手だけなのに最強です!?

国府知里

文字の大きさ
16 / 59

12、当てつけ --4--

しおりを挟む
「コンゴ、ミナミガ、フノチカラヲツヨクシタトキニ、シメンニドノヨウニ、モジガウツルノカ、ワカリマセンガ……。タダ、ホンライノモノノヤクワリトシテハ、カワラナイモノトオモイマス。イチオウ、アトデ、チチニキイテミマスネ……」
「えっ……、お、怒られないよね……?」
「ソレハワカリマセン」

 ひえっ……。
 で……、でもまあいいや。
 せっかく自分専用の辞書ができかけてきたのに、途中でやめるのはもったいない。
 実は、別のページには、この国の領地と大名の名前、それから主要な都市名や産業なんかのまとめ書きも既に作ってしまったのだ。
 ユーファオーの森で修行するより、せっせと辞書をつくったり、情報をまとめたりする方がわたしに向いている。
 だって、会社で医療機器や介護用品の説明書を検索しやすいようにアーカイブにまとめたり、お客様対応用の用語集をつくったりしてたんだもん。

「ミナミ、トリアエズ、スイボウヘ、イキマセンカ? アマリノオドロキデ、ノドガ、カワイテシマイマシタ……」
「う、うん、なんか、ごめんね」

 そ、そんなに衝撃だったんだ。
 ハナムンの慣習に合わないことはしないように気を付けていたつもりだったけれど、へましちゃったなあ。
 これからはもっと、いろいろクランに聞いて相談しよう。

 炊房というのは、炊事場のこと。
 炊房へ立ち寄るのは、まだ二度目。
 なんとなく想像していた通りに竈が並んでいて、薪で火をおこす方式の台所。
 釜炊きのごはんって、本当においしいから驚いちゃう。
 ま……、やってみろといわれても、わたしにはできないけれど……。
 当番の檀家から既婚者のおばさんが、たいていふたりか三人来ることになっているらしい。
 お寺ということもあって、あんまり若い女性は奉仕に来てはならないそうだ。
 やっぱり、修行の場なんだね。

「そういえば、女性が流者の修行をしたい場合はどうするの?」
「タイテイハ、ミヂカナジョセイノ、リューシャニ、デシイリヲシマス。ジュツヲキワメタイバアイハ、アマデラヘ、ハイルトイウコトモアリマス」
「へぇ、尼寺もあるんだ。ハナムン語ではなんていうの?」
「サリラン、デス」
「ああ、男性の行寺がトランで、女性の行寺がサリラン。あれ……えっと、そうしたら、トが男性で、サリが女性って意味になるのかな?」
「ミナミハ、ホントウニ、アタマガイイノデスネ」
 
 そんなに褒められると、登れない木も登れる気がしてきちゃう。
 謙遜しながら、しかし印帳には、今わかったことをしっかり書き足しておく。
 今はたいした役に立てなくても、こういう小さなことの積み重ねが、旬さんの役に立ったり、クランやこの国の誰かのためになるかもしれないもんね。
 携帯の筆入れを矢立というらしいのだけど、わたしはそれのごく簡素なものをもらって、師筆とともに使用している。
 使っている筆が師筆だということは、まだクランのほかには誰も知らない。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

私の守護霊さん

Masa&G
キャラ文芸
大学生活を送る彩音には、誰にも言えない秘密がある。 彼女のそばには、他人には姿の見えない“守護霊さん”がずっと寄り添っていた。 これは——二人で過ごした最後の一年を描く、かけがえのない物語。

処理中です...