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12、当てつけ --4--
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「コンゴ、ミナミガ、フノチカラヲツヨクシタトキニ、シメンニドノヨウニ、モジガウツルノカ、ワカリマセンガ……。タダ、ホンライノモノノヤクワリトシテハ、カワラナイモノトオモイマス。イチオウ、アトデ、チチニキイテミマスネ……」
「えっ……、お、怒られないよね……?」
「ソレハワカリマセン」
ひえっ……。
で……、でもまあいいや。
せっかく自分専用の辞書ができかけてきたのに、途中でやめるのはもったいない。
実は、別のページには、この国の領地と大名の名前、それから主要な都市名や産業なんかのまとめ書きも既に作ってしまったのだ。
ユーファオーの森で修行するより、せっせと辞書をつくったり、情報をまとめたりする方がわたしに向いている。
だって、会社で医療機器や介護用品の説明書を検索しやすいようにアーカイブにまとめたり、お客様対応用の用語集をつくったりしてたんだもん。
「ミナミ、トリアエズ、スイボウヘ、イキマセンカ? アマリノオドロキデ、ノドガ、カワイテシマイマシタ……」
「う、うん、なんか、ごめんね」
そ、そんなに衝撃だったんだ。
ハナムンの慣習に合わないことはしないように気を付けていたつもりだったけれど、へましちゃったなあ。
これからはもっと、いろいろクランに聞いて相談しよう。
炊房というのは、炊事場のこと。
炊房へ立ち寄るのは、まだ二度目。
なんとなく想像していた通りに竈が並んでいて、薪で火をおこす方式の台所。
釜炊きのごはんって、本当においしいから驚いちゃう。
ま……、やってみろといわれても、わたしにはできないけれど……。
当番の檀家から既婚者のおばさんが、たいていふたりか三人来ることになっているらしい。
お寺ということもあって、あんまり若い女性は奉仕に来てはならないそうだ。
やっぱり、修行の場なんだね。
「そういえば、女性が流者の修行をしたい場合はどうするの?」
「タイテイハ、ミヂカナジョセイノ、リューシャニ、デシイリヲシマス。ジュツヲキワメタイバアイハ、アマデラヘ、ハイルトイウコトモアリマス」
「へぇ、尼寺もあるんだ。ハナムン語ではなんていうの?」
「サリラン、デス」
「ああ、男性の行寺がトランで、女性の行寺がサリラン。あれ……えっと、そうしたら、トが男性で、サリが女性って意味になるのかな?」
「ミナミハ、ホントウニ、アタマガイイノデスネ」
そんなに褒められると、登れない木も登れる気がしてきちゃう。
謙遜しながら、しかし印帳には、今わかったことをしっかり書き足しておく。
今はたいした役に立てなくても、こういう小さなことの積み重ねが、旬さんの役に立ったり、クランやこの国の誰かのためになるかもしれないもんね。
携帯の筆入れを矢立というらしいのだけど、わたしはそれのごく簡素なものをもらって、師筆とともに使用している。
使っている筆が師筆だということは、まだクランのほかには誰も知らない。
「えっ……、お、怒られないよね……?」
「ソレハワカリマセン」
ひえっ……。
で……、でもまあいいや。
せっかく自分専用の辞書ができかけてきたのに、途中でやめるのはもったいない。
実は、別のページには、この国の領地と大名の名前、それから主要な都市名や産業なんかのまとめ書きも既に作ってしまったのだ。
ユーファオーの森で修行するより、せっせと辞書をつくったり、情報をまとめたりする方がわたしに向いている。
だって、会社で医療機器や介護用品の説明書を検索しやすいようにアーカイブにまとめたり、お客様対応用の用語集をつくったりしてたんだもん。
「ミナミ、トリアエズ、スイボウヘ、イキマセンカ? アマリノオドロキデ、ノドガ、カワイテシマイマシタ……」
「う、うん、なんか、ごめんね」
そ、そんなに衝撃だったんだ。
ハナムンの慣習に合わないことはしないように気を付けていたつもりだったけれど、へましちゃったなあ。
これからはもっと、いろいろクランに聞いて相談しよう。
炊房というのは、炊事場のこと。
炊房へ立ち寄るのは、まだ二度目。
なんとなく想像していた通りに竈が並んでいて、薪で火をおこす方式の台所。
釜炊きのごはんって、本当においしいから驚いちゃう。
ま……、やってみろといわれても、わたしにはできないけれど……。
当番の檀家から既婚者のおばさんが、たいていふたりか三人来ることになっているらしい。
お寺ということもあって、あんまり若い女性は奉仕に来てはならないそうだ。
やっぱり、修行の場なんだね。
「そういえば、女性が流者の修行をしたい場合はどうするの?」
「タイテイハ、ミヂカナジョセイノ、リューシャニ、デシイリヲシマス。ジュツヲキワメタイバアイハ、アマデラヘ、ハイルトイウコトモアリマス」
「へぇ、尼寺もあるんだ。ハナムン語ではなんていうの?」
「サリラン、デス」
「ああ、男性の行寺がトランで、女性の行寺がサリラン。あれ……えっと、そうしたら、トが男性で、サリが女性って意味になるのかな?」
「ミナミハ、ホントウニ、アタマガイイノデスネ」
そんなに褒められると、登れない木も登れる気がしてきちゃう。
謙遜しながら、しかし印帳には、今わかったことをしっかり書き足しておく。
今はたいした役に立てなくても、こういう小さなことの積み重ねが、旬さんの役に立ったり、クランやこの国の誰かのためになるかもしれないもんね。
携帯の筆入れを矢立というらしいのだけど、わたしはそれのごく簡素なものをもらって、師筆とともに使用している。
使っている筆が師筆だということは、まだクランのほかには誰も知らない。
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