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有城 沙生

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「分かった。死んで異世界に行く」
「はあぁ?…」

日常の、些細な言い争いから出た一言。

……些細?
些細なんだろうか?

旦那が……
婚姻関係を結んでいる相手が、
私でない女と、ラブホに入っていく姿を見た、ということは。

「流行りでしょ?」
「おまえ、頭大丈夫か?」
「天国とか地獄とか、死んだら行くの実は異世界なんじゃないかって」
「…………」
「あたしね、あなたのこと好きなのよ。だから、あたしを好きじゃないあなたは要らないかなって」
「……っ!」
「ここじゃない、どこかに行きたいかなって」

 旦那の顔をじっと見る。

 我ながら、なに言ってんだろ?だけど、
 旦那の顔は、食っちゃいけないもの――――あなたの大嫌いなカキを口にした時みたいな顔してる。

「…ごめ…」
「何に対して?」

 また、黙る。
 んー…それはそれで困ったな。
 言い訳を聞きたい訳じゃない。

「楽しかった?あたし以外を抱くの」
「……!」
「気持ち良かった?あたし以外を抱くの」
「…………」

 不思議だな。
 あんなに大好きだった人の辛そうな顔見てるのに、ちっとも元気付けようって気が起きない。
 何でそんなに、辛そうなんだろう。

 ……取りあえず、
「どうしたの?なんか、辛いことあった?」
 て、定型文で聞いてみる。
 棒読みになっちゃった。
 ちっとも心が籠ってないね。
 
 目も、鼻も真っ赤。
 怒ってるのかな?

「――――君は……俺が好きだったの?」

 途切れ途切れに、ようやっと吐き出された言葉。
 この人、あたしの言った事、ちゃんと聞いてたのかな?
 それ、言ったよね?

 頭がじんじんする。
 目頭がぎゅってして、
 喉が詰まって、
 お腹がもやもやして、
 両手がびりびりして、
 足が………氷付いたみたいだ。

 足元に、魔方陣が出てこないかな。
 聖女でも、奴隷でもいいや。

 分かってるのは、ここにいたくないってことだけ。

 旦那の顔色が変わる。

 足元に、魔方陣の代わりに雫が落ちていた。
 
 
 
 


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