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第二部
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「私が、明日葉大学の院で今の夫に出逢って、子を出産したことは知っているのよね?」
「ええ。知っているわ。人伝てにきいたのよ。このトシになっても人並みの幸せを掴むこともできずに燻っている惨めな私を見たら、もう、十分でしょう? タケルともとっくの昔に別れたのよ。そこまで、タケルや私に執着しているあなたなら、タケルが『紀伊ミュージックサロン』のご令嬢で人気ピアニストの紀伊せいらと結婚したことは知ってるんでしょう? 私は、タケルを五年間も養った挙句、ポイ捨てされた可哀想な女なの! 他人にバカにされることはあっても羨ましがられることは、今の私にはないのっ!」
「でも、アンタ、国際営業課の岡崎さんと婚約したらしいじゃない? 何、幸薄女ぶってるのよ?」
「そうよ。だけどね、この先どうなるかなんてわからないでしょう? なんせ、私は十年近くも付き合って同棲していたタケルに捨てられた女なんだから。式を挙げて入籍するまでは、とてもじゃないけど安心できないのよ。無事、彼の妻になれたとして、若い時に出産したあなたと違って、35歳の私は高齢出産でリスクも高いのよ。あなたには、こんな私の気持ちなんてわからないでしょうね?」
「へえ……意外……成瀬さんて出産願望あるんだ。職場の子持ちの社員さんたちが、成瀬さんは独身だから、子育てしながら働いている私たちの苦労を知らないし見下してるって陰口叩いているから、てっきり、アンタは子どもなんて要らないって思ってるんだと思ったわ」
血色の悪い洋子の唇から、長年溜め込んできた毒が吐き出されているみたいだった。洋子はそのまま話を続けた。
「うちの家庭、崩壊してるの」
「えっ?」
唯香は、わざとらしくならない程度に驚いてみせた。
「ええ。知っているわ。人伝てにきいたのよ。このトシになっても人並みの幸せを掴むこともできずに燻っている惨めな私を見たら、もう、十分でしょう? タケルともとっくの昔に別れたのよ。そこまで、タケルや私に執着しているあなたなら、タケルが『紀伊ミュージックサロン』のご令嬢で人気ピアニストの紀伊せいらと結婚したことは知ってるんでしょう? 私は、タケルを五年間も養った挙句、ポイ捨てされた可哀想な女なの! 他人にバカにされることはあっても羨ましがられることは、今の私にはないのっ!」
「でも、アンタ、国際営業課の岡崎さんと婚約したらしいじゃない? 何、幸薄女ぶってるのよ?」
「そうよ。だけどね、この先どうなるかなんてわからないでしょう? なんせ、私は十年近くも付き合って同棲していたタケルに捨てられた女なんだから。式を挙げて入籍するまでは、とてもじゃないけど安心できないのよ。無事、彼の妻になれたとして、若い時に出産したあなたと違って、35歳の私は高齢出産でリスクも高いのよ。あなたには、こんな私の気持ちなんてわからないでしょうね?」
「へえ……意外……成瀬さんて出産願望あるんだ。職場の子持ちの社員さんたちが、成瀬さんは独身だから、子育てしながら働いている私たちの苦労を知らないし見下してるって陰口叩いているから、てっきり、アンタは子どもなんて要らないって思ってるんだと思ったわ」
血色の悪い洋子の唇から、長年溜め込んできた毒が吐き出されているみたいだった。洋子はそのまま話を続けた。
「うちの家庭、崩壊してるの」
「えっ?」
唯香は、わざとらしくならない程度に驚いてみせた。
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