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もう早く帰ってシャワー浴びて、ついでに酒も浴びて寝てしまいたい。

お酒を注ぐときはラベルを上に

お酌をしてもらえるときは、コップに入ってる酒を飲み干して注いでもらう

飲めなくても、吐いて飲んで飲んで飲んで


自暴自棄ではなくて、これは大学時代に学んだ数少ないこと。そしたら上司は「桜田さん飲めるタチだね!」なんて喜ぶ。
別におじさんたちが喜ぶことなんてどうでもいいけど…目の前にいる元推しくんを意識したく無くて「はい!お酒大好きです!!」なんて馬鹿騒ぎして、捨てたはずの恋心と怒りとなんて表現したらいいのかわからないグチャグチャな気持ちと一緒に酒を飲み込む。

天城アイルくんは私のこと覚えてる?でも覚えててほしくない。私のこと少しは考えててくれた?どうせ、接触の時に「次もきてね」なんて、眉を下げて少し困ったように笑えば従うちょろい女って思ってたんでしょ。

うそ、どうせ私の事なんて認知してるフリして認知してなかったでしょ。
わかるよ、だって今だって私のこと分からないじゃん。
お酌をしても、趣味は舞台鑑賞でしたとか匂わしてみても、「俺、あんまり舞台とか見ないから分からないけど興味あるな」とか私の言葉に何にも分からないフリして合わせてくれる。

私の記憶と共にいっそ死んでくれ。お前を殺して私も死ぬ。なんて、まだ私は元推しに人生狂わされそうな気持ちになる。

いつのまにか、捨てれないほど元推しくんへの気持ちが私の中にこんなに根付いていたなんて、無理。
私は悲劇のヒロインなんかじゃないし、そもそも主役に立てない。人生の主役に幸せを祈って祈って祈るしかできないモブ。

ねぇ、私の事少しは覚えててくれてる?覚えてて欲しいような、欲しくないような。


飲み過ぎて呆れる程に愚直になった思考と、浅ましいサガ。
この男と寝たら私の気持ちは治る?わからない。



ただ、トイレに立った私を「大丈夫?飲み過ぎてない?」なんて心配してくれてるその姿に泣きそうになるほど胸がキュッとなんて。

「なんか桜田さんとは初めて会った気がしなくて、その…心配だから今日は家まで送らせてよ」

なんて、なんて困ったように笑う姿




手には上司から渡されたタクシーチケット、知ってる。「送り狼になるなよ」なんて他の先輩に茶化されてるけど、絶対私に手を出さないだろう。
だって私の事、どうも思ってないでしょ。
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2020.05.29 ユーザー名の登録がありません

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