「君は健康だから我慢できるだろう」と言われ続けたので離縁しました。――義妹の嘘が社交界で暴かれます

暖夢 由

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面白い話

言葉のとおり、マリアは一週間、侯爵邸に身を寄せて休むことになった。最初の二日は、ほとんど眠って過ごした。
目を覚ましてはまた眠り、食事をとってはまた眠る。自分でも驚くほど身体が重かった。何もしたくない。何も考えたくない。――そんな無気力にさいなまれていた。

三日目の朝、窓の外を見ながらマリアは小さく呟いた。

「……こんなに疲れていたのね」

その時、後ろから落ち着いた声がした。

「ええ」

振り向くと、カイル侯爵が扉の近くに立っていた。いつもの穏やかな表情だ。

「人は緊張が解けると一気に疲れが出ます」

マリアは少し照れたように笑う。

「侯爵様にまで心配をかけてしまいました」

侯爵は首を振った。

「気にする必要はありません」

そして椅子に腰掛け、口元が緩めながら言った。

「むしろその間に、面白い話がいくつか入ってきました」

マリアは首を傾げる。

「面白い話?」

侯爵は淡々と言った。

「ベルディア男爵の話です」

マリアは小さく息を吐いた。

「……そうですか」

侯爵は続ける。

「どうやら彼は、か弱い義妹を連れて社交界に出ているようです」

マリアの眉が少し動く。

「シャリルンを?」

「ええ」

侯爵は頷いた。

「そして説明しているそうです。“妻が帰省しているので、心優しい義妹が屋敷を手伝ってくれている”」

マリアは思わず小さく笑った。

「なるほど」

侯爵はさらに続ける。

「加えて、あなたの話もしているようですね」

声は穏やかなままだった。マリアは黙って続きを待つ。侯爵は言った。

「マリアはシャリルンを裏でいじめていた。自分はそれを止められなかった。シャリルンは優しいから黙って耐えていた」

マリアは少しだけ目を閉じ‥…そして、すぐに開く。

「……そうですか」

侯爵はマリアの様子を観察していた。

「怒りませんか」

マリアは首を横に振る。

「いいえ」

そして、静かに言う。

「むしろ、らしいな…という思いです」

窓の外を見ると、そこには侯爵邸の広い庭がひろがっている。侯爵の口元がわずかに動いた。

「そうでしょうね」

マリアは椅子に座り直す。

「社交界はどう反応しているのですか?」

少しだけ不思議そうに言う。侯爵は肩をすくめた。

「彼らの思惑通りにはいっていません」

マリアが目を向けると、侯爵は淡々と続けた。

「その噂を鵜呑みにする者は、あまりいないようです」

マリアは驚いた顔をした。

「……そうなのですか?」

侯爵は頷く。

「理由はいくつかあります」



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