誰にも知られてない『聖女』ですが、推しの為に魔物討伐がんばります

ゆりめこ

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2話「もしかしてゲームと同じ?」

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 思い出した……。

 思い出したけど、今わたしの目の前には話を聞いてくれそうな人どころか、わたしを餌認定してそうな獣しかいない。

(加護とか祝福とか言ってたクセに、どうなってんのよ女神さま!)

 獣たちの中でいちばん小柄な1頭が、わたしに向かってうなり声を上げ跳びかかってきた。

(喰われる!)

 痛みを覚悟し、咄嗟に頭を抱えてうずくまる。しかし恐れていた痛みは無く、それどころか獣の重みも臭いも感じない。

「……助かった……の?」 

 ゆっくりと腕の隙間から覗くと、手を伸ばせば届きそうなくらい近くに、獣のむき出しの歯が見えた。

「ひいいい! 全然助かってない!」

 驚いて腰を抜かし、そのまま後ずさるが、獣はそれ以上近づいてこなかった。いや、そうではなくて……。

「もしかして……、近づけない?」

 獣は前に進もうと前足を上げるが、見えない何かに阻まれるように、ざりざりと足元の地面を蹴っていた。

 目を凝らしてよく見ると、獣の鼻先辺りに、薄い虹色の幕の様なものが光っている。

「良かった……。いきなり獣の餌にならずにすんだみたい」

 とはいえ、いつまでもこんな獣たちの近くにいたくはない。できるだけ早く獣たちから離れて、どこか安全な所に移動しないと。

(さっき、あのぺかぺか女神さま、この世界の事をアルブレアって言ってたよね)

 もし女神の言うアルブレアがわたしの知ってるゲーム世界のアルブレアなら、威力の差はあれど魔法は誰でも使えるはず。ましてやわたしのことを『聖女』と呼んでいたなら、魔力は保証されたようなものだ。

 ダメで元々。どうせ近くに誰も居ないのだし、多少大声で叫んだって、聞かれてないなら恥ずかしくない。恥ずかしくなんてない……!

「火の精霊達よ、我が声に応え力を貸したまえ! ファイヤーアロー!」

 ゲームのキャラクターよろしく、右手を獣たちの方に向けて、『アルブレアの神獣』内で使われている『乙女ゲームのくせに厨二くさい』呪文を唱える。

 轟音を立ててわたしの横を、巨大な火の矢が何本か獣たち目がけて飛んで行く。矢、というより大砲なんじゃないかな? これ。火系の一番弱い全体攻撃魔法のはずなんだけど。

 ドン、ドン、と矢とは思えないような着弾音と共に、獣たちが一瞬で焼かれ、消し炭すら灰にする。

(火力が……強すぎる)

 わたしの魔力がどの程度かは分からないが、『聖女』と呼ばれるにふさわしい魔法レベルだ。聖女が破壊力ありすぎるのはどうかと思うけど。

 ぶわりと上がった熱風の向こう、獣たちがいた辺りにキラリと赤く光るものが見えた。

「……ジェムだ」

 ゲーム内でミニゲームをクリアした時に貰える『ジェム』というドロップアイテムにそっくりだ。

 『アルブレアの神獣」ではジェムを街の神殿に持ち帰ると、自分のスキルを上げる事ができる。スキルも種類がいくつかあって、上げるスキルによって職業を決められるし、変えることもできる。ゲーム内での必須ドロップアイテムだ。

「てことは。今の獣って魔物だったんだ」

 一本角に狼の様な見た目、ゲーム内ではかわいいデザインになっていたので気付かなかったが、角で獲物を突き刺して殺す『串刺しウルフ』で間違いないだろう。

(結構強い魔物だったよね。いきなりチュートリアルで出てくるレベルじゃない。いや、それよりも――)


「『聖女』って、ゲームに居ないんだけど……」


 わたしの大好きなゲーム『アルブレアの神獣』は、街に住む普通の少女がマップ内のミニゲームをクリアして、色んな職業を経て攻略対象の男性達と出会って恋する恋愛シュミレーションゲーム。

 そして選べる職業にも、その他のキャラクターにも『聖女』なんて存在しなかった。


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