20 / 26
そんなのやだ
しおりを挟む
「そうですか……少しずつ……」
『龍種の方々は、よく受け入れてくださったと思います。いくら未来視の法術で私たちが来ることを知っていたとはいえ、方々と違ってウチの子たちは未知の存在に対して、極端に臆病になることが多いですから』
未知との存在との接触で、過去いくつもの悲劇が起こった。
しかし個人間でのいざこざはあったものの、龍種たちの度量もあり、この星で大規模な騒乱は起こらず両種の関係は平穏だ。
『あの子たちは地面を、自然を求めていました。私がいくらがんばって船の中に地球を再現しても、結局は偽物。例え地球と違う環境であっても、本物の自然の方が生き物にとっては嬉しいことなのでしょう』
サョリから聞いた話に過ぎないが、トルアからすれば擬似的にであれ星の環境を再現するだなんて、どんな高名な法術使いであっても不可能だ。
それだけでも賞賛に値することだと。
『なにをもって知性とするのか、を議論するつもりはありませんが、自分や子孫が永続的に存続しうる術《すべ》が智恵、それ以外の目的に使えるのが知性だと私たちは考えます。
種族が危機に瀕したとき、それを乗り越えるために命は体を作り替えて進化し、新しい環境に適応します。
この星に来るまで地球人たちは、身に降りかかる危機を技術を使って乗り越え、私たちのような船を作って星の海に旅立ち、この星に流れ着き、技術を使って新しい環境に耐えられる体へと進化させました。
嬉しかったんですよ? 本音を言えば。
でもそれは子離れと同義でした。
親の補助を必要としなくなれば、子は自らの足で新天地を目指します。そこで出会った方々と交わり、血ではなく想いを、魂を引き継がせる道をあの子たちは選んだのです。
先祖が遺した文化や文明の保持を、私たちに任せて。
私たちは、あの子たちがいつ帰ってきてもいいように、家の手入れだけは欠かさないようにしながら待つことにしました。
それが、親である私たちの役目だと思いますから』
長くなりました、と頭を下げ、ベスはぬるくなった茶をひと口。
「サトルさまの父君は、どんな方でしたか?」
『サトルに父親はいません。保存されていた精子からフウコが選んで自分で受精して、お腹を痛めて産んだ子です』
え、と表情が固まる。
『この船に残ったのは、ひとり残される私を哀れに思った子たちです。ですがとても繁殖には数が足りず、せめて、と精子や卵子を残していきました。フウコが使ったのはその中のひとつです。
フウコの母も同じようにしてあの子を産み、サトルが一歳になった頃に病で他界しました』
ひどくあっさりと言われ、トルアは戸惑う。
「あなたは、どれほど……」
命を見送ったのですか、と浮かんだ疑問はすぐに愚問だと気づき、呑み込む。
『だいじょうぶですよ。出て行った子たちは結局誰ひとり帰ってきませんでしたが、むしろ私は嬉しいんです。私たち《ベス》の誰ひとりとして教えられなかった愛を、フウコは体現してくれた。それだけで、十分なんです』
笑ったように、感じた。
「愛、なのですか? いまのサョリさまは」
『愛の定義なんて知性のそれ以上に不可能です。けれど私が、人工物である私がそう感じたのですよ?』
ふふ、と笑うベスに、トルアはもうかける言葉を失ってしまった。
『さ、他に訊きたいことが無ければ、お店を閉めます。話しすぎて疲れてしまいました』
ゆっくりと立ち上がってお盆に自分とトルアの湯飲みと急須をのせる。
「あ、申し訳ない。すっかり長居してしまいました」
いえ、と微笑んで、一度カウンターにお盆を置いて、しずしずと入り口へ向かう。
『では、またのお越しをお待ちしております』
ぺこりとお辞儀してトルアを見送った。
* * *
『では、これより作戦会議を始めます』
ベスがつくった朝ご飯も食べたい、とサョリが甘えたので、今回もサングィスたちは食堂に集まった。
用意されたフレンチトーストやベーコンエッグなどに舌鼓を打ちつつ、いまの自分がユヱネスの食事も美味しく食べられたことに感激しつつ、サョリは食後のコーヒーを飲む。
『聞いていますか、サョリさま』
「あ、は、はい。だいじょうぶ、です」
昨日のこともあるのか、ふたりの距離はぎくしゃくしている。
『ともあれ、サトルとタリアさんを攫った方々の場所は判明しています。サングィスさま、よろしいですか』
「うむ。連中は我が城の地下に設備を置いている。……というよりも、設備の上に城を建てた、というほうが正しいのだがな」
スズカがサングィスを睨む。
「手を組んでいることは昨日聞いたが、まさか直下とはな」
「仕方あるまい。我らに王侯の仕組みを教えたのはユヱネスなのだから」
え、とスズカはベスを見やる。
『はい。それまで、仕組みとしては曖昧なものだった龍種の方々の統治を整理し、軍や官僚などの組織を提案したのはユヱネスだと記録に残っています』
「ならば、我らシルウェスにもそれをやったのか?」
はい、と返してベスは言う。
『我々の目的はあくまでもサトルとタリアさんの身柄の保護にあります。かの組織を潰すのは、サングィスさまの要望もあり、今回はやりません。いいですね』
一同が頷く。
『では、今回はサングィスさまの視察、というていで施設に入り、スズカさんの隠密能力をもってふたりが閉じ込められている部屋へ行ってもらい、私が作ったデバイスでカギを開け、トルアとスズカさんの護衛で戻ってくるという方向でいきます。質問がある方は挙手をお願いします』
まず手を上げたのはトルア。
「あの、ディナミス陛下の救助はいつやればいいのです?」
あ、とベスが小さく漏らしたのをサングィスは聞き漏らさなかった。
『正直、あそこまで肉体と精神を変質された方の治療を、私がどこまで出来るのか分かりません。しかも、ああいう風に使役されている以上、ディナミスさまは方々と近い場所にいるはずです。
こう言っては冷たく感じるでしょうが、余裕があれば保護をするという形でしか私は提案できません』
鳥族も王制だが、祖先が肉食竜であったためか、王位は強い者が継ぐという考えが根強い。ユヱネスに拉致され、心身共に変貌してしまった彼女の帰還を、果たしてどれほどのアウィスが望んでいるというのか。
「だが、姿は戻せなくともせめて意思ぐらいは解放してやるべきだろう。我もディナミス陛下のことは気にかけておこう」
お願いします、とベスが頷くと、おずおずとサョリが手を上げる。
「ベスは、行かないの……ですか?」
最後の最後で昨日の約束が語尾を変化させてくれた。そうしなければきっとベスは返事をしなかっただろう。
『私はここで皆様をバックアップします。私の存在をあの女が知った以上、対策は施されているはずです。向こうにいる私の分身たちが束になってくれば、ハッキングやクラッキングの憂き目に遭う可能性もあります』
冷徹に言われ、サョリは視線を下げてしまう。
「……わかり、ました。よろしくお願いします」
『フウコ、私はなにもあなたと絶交したつもりはありません。体面上、こういう態度をとっているだけです』
うん、と答えるサョリだが、表情は晴れない。
もう、と嘆息して、
『では、現時刻をもって行動を始めます。格納庫に車を用意しましたから、皆様乗り込んでください』
ベスの言葉でサングィス、トルア、スズカの三人は立ち上がり、口々に割烹着姿のベスに礼を言って食堂をあとにする。
『なにをなさっているのです、サョリさま』
「……ごめん、なさい」
『私はサョリさまに謝罪されるような覚えはないつもりですが』
「…………なんでそんな風に言うの」
『あなたが、あなたの信念にそって事を為そうとしているのに、邪魔をしてはいけないと思うからです』
「……そんなのやだ」
我慢の限界だった。
『しゃんとしなさい! 昨日は私の提案を承諾したくせに、いまさら甘えない!』
「だって、ベスにさよならされるのって、思った以上に痛かったから」
ふう、と息を吐いて。
一転して冷静な口調でベスは言う。
『そういう思いを、いままで一度もサトルがしなかった、と少しは考えなかったのですか?』
急にサトルの名前を出され、サョリは混乱する。
「なんでいまサトルを持ち出すの」
『あなたが連れ去られてから、そしてあの子がお城から帰って来てからどれだけ落ち込んでいたか、見せてあげたいくらいです』
「だからなんで、」
『あの子がこの五年、どれだけのあなたへの思いを積み重ねて押し殺して修練を重ねてきたか、機械の私には半分も理解出来ません。そしてあなたを、自分の思いだけを吐露し、弱音を吐くような軟弱者に育てた覚えもありません』
サョリとしてはもう振り切った思い。
フウコとしてはまだ未練がある思い。
自分は八才のサトルを置き去りにし、懸命に追いすがってきた十三才のサトルを捨ててサングィスに寄り添った。
紛れもない事実だ。
覆せない現実だ。
そしていま、育ての母から捨てられようとしている。
それだけのことをした。
サヴロスに成ると決めた時に抱いた覚悟なんて、本人たちがいないから出来たことだと、今更ながらに突きつけられてサョリはいまにも泣き出しそうに瞳に涙を溜めた。
『私はいいんです。子が巣立つのは喜ばしいことですから。でも、一度くらいサトルを抱きしめてやってもいいと、私は思います』
「……でも、だって、あたしはもう、」
ああもう、とサョリの両肩を掴んで、ベスはもう一度大声で言った。
『誰も二度とここの敷居をまたぐななんて言ってないでしょうが! 言われてないことまでやらかして、私におしり叩かれてたフウコはどこへ行ったのです!』
ゆっくりと顔をあげ、迷子のように瞳を滲ませて。
「いいの? また、ここに来ても」
『サトルがいいと言えば、です。丸投げするみたいですが、私のあなたに対する思いはすでに告げました。だからそれ以上言えません』
ずるいよ、と苦笑するその表情は、サトルとそっくりで。
こんな時、人間なら思いっきり泣いたりするのだろうな、とベスはぼんやり思った。
『龍種の方々は、よく受け入れてくださったと思います。いくら未来視の法術で私たちが来ることを知っていたとはいえ、方々と違ってウチの子たちは未知の存在に対して、極端に臆病になることが多いですから』
未知との存在との接触で、過去いくつもの悲劇が起こった。
しかし個人間でのいざこざはあったものの、龍種たちの度量もあり、この星で大規模な騒乱は起こらず両種の関係は平穏だ。
『あの子たちは地面を、自然を求めていました。私がいくらがんばって船の中に地球を再現しても、結局は偽物。例え地球と違う環境であっても、本物の自然の方が生き物にとっては嬉しいことなのでしょう』
サョリから聞いた話に過ぎないが、トルアからすれば擬似的にであれ星の環境を再現するだなんて、どんな高名な法術使いであっても不可能だ。
それだけでも賞賛に値することだと。
『なにをもって知性とするのか、を議論するつもりはありませんが、自分や子孫が永続的に存続しうる術《すべ》が智恵、それ以外の目的に使えるのが知性だと私たちは考えます。
種族が危機に瀕したとき、それを乗り越えるために命は体を作り替えて進化し、新しい環境に適応します。
この星に来るまで地球人たちは、身に降りかかる危機を技術を使って乗り越え、私たちのような船を作って星の海に旅立ち、この星に流れ着き、技術を使って新しい環境に耐えられる体へと進化させました。
嬉しかったんですよ? 本音を言えば。
でもそれは子離れと同義でした。
親の補助を必要としなくなれば、子は自らの足で新天地を目指します。そこで出会った方々と交わり、血ではなく想いを、魂を引き継がせる道をあの子たちは選んだのです。
先祖が遺した文化や文明の保持を、私たちに任せて。
私たちは、あの子たちがいつ帰ってきてもいいように、家の手入れだけは欠かさないようにしながら待つことにしました。
それが、親である私たちの役目だと思いますから』
長くなりました、と頭を下げ、ベスはぬるくなった茶をひと口。
「サトルさまの父君は、どんな方でしたか?」
『サトルに父親はいません。保存されていた精子からフウコが選んで自分で受精して、お腹を痛めて産んだ子です』
え、と表情が固まる。
『この船に残ったのは、ひとり残される私を哀れに思った子たちです。ですがとても繁殖には数が足りず、せめて、と精子や卵子を残していきました。フウコが使ったのはその中のひとつです。
フウコの母も同じようにしてあの子を産み、サトルが一歳になった頃に病で他界しました』
ひどくあっさりと言われ、トルアは戸惑う。
「あなたは、どれほど……」
命を見送ったのですか、と浮かんだ疑問はすぐに愚問だと気づき、呑み込む。
『だいじょうぶですよ。出て行った子たちは結局誰ひとり帰ってきませんでしたが、むしろ私は嬉しいんです。私たち《ベス》の誰ひとりとして教えられなかった愛を、フウコは体現してくれた。それだけで、十分なんです』
笑ったように、感じた。
「愛、なのですか? いまのサョリさまは」
『愛の定義なんて知性のそれ以上に不可能です。けれど私が、人工物である私がそう感じたのですよ?』
ふふ、と笑うベスに、トルアはもうかける言葉を失ってしまった。
『さ、他に訊きたいことが無ければ、お店を閉めます。話しすぎて疲れてしまいました』
ゆっくりと立ち上がってお盆に自分とトルアの湯飲みと急須をのせる。
「あ、申し訳ない。すっかり長居してしまいました」
いえ、と微笑んで、一度カウンターにお盆を置いて、しずしずと入り口へ向かう。
『では、またのお越しをお待ちしております』
ぺこりとお辞儀してトルアを見送った。
* * *
『では、これより作戦会議を始めます』
ベスがつくった朝ご飯も食べたい、とサョリが甘えたので、今回もサングィスたちは食堂に集まった。
用意されたフレンチトーストやベーコンエッグなどに舌鼓を打ちつつ、いまの自分がユヱネスの食事も美味しく食べられたことに感激しつつ、サョリは食後のコーヒーを飲む。
『聞いていますか、サョリさま』
「あ、は、はい。だいじょうぶ、です」
昨日のこともあるのか、ふたりの距離はぎくしゃくしている。
『ともあれ、サトルとタリアさんを攫った方々の場所は判明しています。サングィスさま、よろしいですか』
「うむ。連中は我が城の地下に設備を置いている。……というよりも、設備の上に城を建てた、というほうが正しいのだがな」
スズカがサングィスを睨む。
「手を組んでいることは昨日聞いたが、まさか直下とはな」
「仕方あるまい。我らに王侯の仕組みを教えたのはユヱネスなのだから」
え、とスズカはベスを見やる。
『はい。それまで、仕組みとしては曖昧なものだった龍種の方々の統治を整理し、軍や官僚などの組織を提案したのはユヱネスだと記録に残っています』
「ならば、我らシルウェスにもそれをやったのか?」
はい、と返してベスは言う。
『我々の目的はあくまでもサトルとタリアさんの身柄の保護にあります。かの組織を潰すのは、サングィスさまの要望もあり、今回はやりません。いいですね』
一同が頷く。
『では、今回はサングィスさまの視察、というていで施設に入り、スズカさんの隠密能力をもってふたりが閉じ込められている部屋へ行ってもらい、私が作ったデバイスでカギを開け、トルアとスズカさんの護衛で戻ってくるという方向でいきます。質問がある方は挙手をお願いします』
まず手を上げたのはトルア。
「あの、ディナミス陛下の救助はいつやればいいのです?」
あ、とベスが小さく漏らしたのをサングィスは聞き漏らさなかった。
『正直、あそこまで肉体と精神を変質された方の治療を、私がどこまで出来るのか分かりません。しかも、ああいう風に使役されている以上、ディナミスさまは方々と近い場所にいるはずです。
こう言っては冷たく感じるでしょうが、余裕があれば保護をするという形でしか私は提案できません』
鳥族も王制だが、祖先が肉食竜であったためか、王位は強い者が継ぐという考えが根強い。ユヱネスに拉致され、心身共に変貌してしまった彼女の帰還を、果たしてどれほどのアウィスが望んでいるというのか。
「だが、姿は戻せなくともせめて意思ぐらいは解放してやるべきだろう。我もディナミス陛下のことは気にかけておこう」
お願いします、とベスが頷くと、おずおずとサョリが手を上げる。
「ベスは、行かないの……ですか?」
最後の最後で昨日の約束が語尾を変化させてくれた。そうしなければきっとベスは返事をしなかっただろう。
『私はここで皆様をバックアップします。私の存在をあの女が知った以上、対策は施されているはずです。向こうにいる私の分身たちが束になってくれば、ハッキングやクラッキングの憂き目に遭う可能性もあります』
冷徹に言われ、サョリは視線を下げてしまう。
「……わかり、ました。よろしくお願いします」
『フウコ、私はなにもあなたと絶交したつもりはありません。体面上、こういう態度をとっているだけです』
うん、と答えるサョリだが、表情は晴れない。
もう、と嘆息して、
『では、現時刻をもって行動を始めます。格納庫に車を用意しましたから、皆様乗り込んでください』
ベスの言葉でサングィス、トルア、スズカの三人は立ち上がり、口々に割烹着姿のベスに礼を言って食堂をあとにする。
『なにをなさっているのです、サョリさま』
「……ごめん、なさい」
『私はサョリさまに謝罪されるような覚えはないつもりですが』
「…………なんでそんな風に言うの」
『あなたが、あなたの信念にそって事を為そうとしているのに、邪魔をしてはいけないと思うからです』
「……そんなのやだ」
我慢の限界だった。
『しゃんとしなさい! 昨日は私の提案を承諾したくせに、いまさら甘えない!』
「だって、ベスにさよならされるのって、思った以上に痛かったから」
ふう、と息を吐いて。
一転して冷静な口調でベスは言う。
『そういう思いを、いままで一度もサトルがしなかった、と少しは考えなかったのですか?』
急にサトルの名前を出され、サョリは混乱する。
「なんでいまサトルを持ち出すの」
『あなたが連れ去られてから、そしてあの子がお城から帰って来てからどれだけ落ち込んでいたか、見せてあげたいくらいです』
「だからなんで、」
『あの子がこの五年、どれだけのあなたへの思いを積み重ねて押し殺して修練を重ねてきたか、機械の私には半分も理解出来ません。そしてあなたを、自分の思いだけを吐露し、弱音を吐くような軟弱者に育てた覚えもありません』
サョリとしてはもう振り切った思い。
フウコとしてはまだ未練がある思い。
自分は八才のサトルを置き去りにし、懸命に追いすがってきた十三才のサトルを捨ててサングィスに寄り添った。
紛れもない事実だ。
覆せない現実だ。
そしていま、育ての母から捨てられようとしている。
それだけのことをした。
サヴロスに成ると決めた時に抱いた覚悟なんて、本人たちがいないから出来たことだと、今更ながらに突きつけられてサョリはいまにも泣き出しそうに瞳に涙を溜めた。
『私はいいんです。子が巣立つのは喜ばしいことですから。でも、一度くらいサトルを抱きしめてやってもいいと、私は思います』
「……でも、だって、あたしはもう、」
ああもう、とサョリの両肩を掴んで、ベスはもう一度大声で言った。
『誰も二度とここの敷居をまたぐななんて言ってないでしょうが! 言われてないことまでやらかして、私におしり叩かれてたフウコはどこへ行ったのです!』
ゆっくりと顔をあげ、迷子のように瞳を滲ませて。
「いいの? また、ここに来ても」
『サトルがいいと言えば、です。丸投げするみたいですが、私のあなたに対する思いはすでに告げました。だからそれ以上言えません』
ずるいよ、と苦笑するその表情は、サトルとそっくりで。
こんな時、人間なら思いっきり泣いたりするのだろうな、とベスはぼんやり思った。
0
あなたにおすすめの小説
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
喪女なのに狼さんたちに溺愛されています
和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です!
聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。
ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。
森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ?
ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。
まだ見ぬ未来へ駆け抜けて!
小林汐希
ライト文芸
2年5組の生徒:松本花菜(17歳 高校2年生)
2年5組の担任:長谷川啓太(23歳 教師歴1年目)
幼い頃から、様々な悩みを抱えながら過ごしてきた花菜。
それは幼い頃に父との離別を経験した家庭環境だったり、小学校の最後に作ってしまった体の古傷であったり。
学校外の時間を一人で過ごすことになった彼女の唯一、かつ絶対的な味方でいてくれたのが、近所に住む啓太お兄ちゃんだった。
しかし年の離れた二人の関係では仕方ないとはいえ、啓太の大学進学や環境変化とともに、その時間は終わりを迎えてしまう。
ふさぎ込む花菜を前に、啓太は最後に「必ず迎えに来る」という言葉を残して街を離れた。
言葉を受け取った花菜は、自分を泣かせないための慰めだったという諦めも入りつつ、一方で微かな希望として心の中で温め続けていた。
数年の時を経て二人が再び顔を合わせたものの、もはや運命の意地悪とでもいうべき「担任教師と生徒」という関係。
最初は様子伺いだったけれど、往時の気持ちが変わっていないことを再確認してからは、「一人じゃない」と嬉しいこと・辛いことも乗り越えていく二人には少しずつ背中を押してくれる味方も増えていく。
再会した当初は「おとなしい終末的運命キャラ」になっていた花菜も次第に自信を取り戻し、新米教師の啓太も花菜のサポートを裏で受けつつ堂々と教壇に立ち続けた。
そんな互いを支えあった二人の前に開けた世界は……。
たった一つだけの約束を胸に、嬉しいときは一緒に喜び、悲しいときは支えあって走り抜けた二人の物語です。
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」
透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。
そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。
最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。
仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕!
---
チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記
ノン・タロー
ファンタジー
ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。
これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。
設定
この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。
その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる