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第一章
悠久の一時と別れ
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「ほらよ。受けとれ」
「…………これは何ですかな?」
試験が終わって無事に合格できた私たち五人。その中で私とケーレス、ナナの三人がガメスに呼ばれて別の部屋へと移動させられた。
そこで今、渡されたのが見たことのない黄金色のカードだった。
「言っただろ? 二千グルトに増やしたら目をかけてやるって、これはゴールドライセンスだ。俺が才能ありと認めた奴にしか渡さねぇもんだ」
そう私達三人は千グルトを元手に二千グルトまで増やす事に成功した。
そのなかにはダンクから奪い取った分もあるが、そこは気にしない事にしておく。
「このゴールドライセンスは普通のライセンスと何が違うんだい?」
白髪の少女の問いかけに金髪の大男は笑ってから。
「色しか違わねーよ。でもほら金色の方がカッコいいと思わないか」
それに何とも渋い顔を浮かべるケーレス。なんだか車の免許のようだと思いながら、私達は受けとる。
だが、その中で一人ナナだけが受け取ろうとはしなかった。
「ん? お前は受け取らねぇのか?」
「え、えっと……その、私なんかが受けとるのはどうかなぁ、なんて。あはは」
頭を掻きながらぎこちなく笑うナナ。そんな彼女の背中を軽く叩いて。
「君は君なりの役割を果たしている。何も気負う事はあるまいよ」
「でも……私は助けて貰った立場ですし」
それで負い目を感じているのか、愚直な者だ。そんなの気にせず受けとれば良いものを。
だが、そう考えない。考えられないのが彼女の良さなのかも知れんな。
「ならば、これはガメスに預かって貰おう。そして自分が一人前の商人になれたと思ったのなら、その時にここへ受けとると良い。それまでは仮免許を持っていれば良い」
「ええっ!? 俺かよ。まあ、預かるぐらいはいいけどな。それでいいか?」
「は、はい。そうして頂けると助かります……!」
青髪の女性はそう言って嬉しそうにハニカムとそのまま一礼をした。
◇
「サラブレッドの整備は整ったか」
早朝、私は確認作業中のケーレスに向かって呟いた。
白髪の少女は青と赤紫のオッドアイの瞳で白馬と貨車を見比べて。
「ちゃんと接続は完了しているようだね。うん……大丈夫だと思うよ」
「ふむ、そうか。ならばすぐにでも出発しよう」
「あ……それなんだけどさ。その……」
珍しく奥歯に物が挟まった言い方をするケーレス。それに私は不思議そうな顔を浮かべる。
ライセンスを受け取った以上、この町に長居する必要はない。
だから出ていけるならすぐにでも馬車を使って町を出ようと思っていたのだが。
ケーレスは何かやり残した事でもあるのだろうか、そう思った時だった。
「この町を出るなら、ちゃんと伝えて欲しかったわ。それとも私達の関係はその程度の物だったのかしら」
迷いの無い透き通った声。その聞き覚えのある声に振り返ると、そこにはフミカとレイジの姿があった。
「その……何だかバレてて」
気まずそうに呟くケーレス。みんなに話すのも面倒なので伝えていなかったのだが、どうしたことか私達の行動はバレていたらしい。
馬車ーーといっても荷台を繋げただけだが、それを作っている所を見られたのだろう。
「最後に二人に会えて嬉しいよ。私は行商人として旅に出ようと思っていてね」
「ええ分かっているわ。只、お別れぐらいさせなさいよね」
短い間のパーティーメンバー。それだけの関係なのに名残惜しそうな表情を二人は浮かべる。
「また、来いよ。その時は俺も強くなってるからさ」
「ふっ、良かろう。その時は全力で相手になろうじゃないか」
レイジは拳をつき出す、それに私は似合わんなと思いつつ同じく拳を突き出した。
「貴方とはまだ少しの時間だったけど……次も一緒にパーティーを組みましょう」
「ああ、そうだな」
炎髪の少女と握手を交わして私は白馬に乗る。白馬の上には既にケーレスが座っており馬が動く度にひょこひょこと身体が跳ねていた。
私はケーレスに抱きつくような形で覆い被さって手綱を引くと。
バシン、と音と共に馬がゆっくりと進み始めた。
「…………これは何ですかな?」
試験が終わって無事に合格できた私たち五人。その中で私とケーレス、ナナの三人がガメスに呼ばれて別の部屋へと移動させられた。
そこで今、渡されたのが見たことのない黄金色のカードだった。
「言っただろ? 二千グルトに増やしたら目をかけてやるって、これはゴールドライセンスだ。俺が才能ありと認めた奴にしか渡さねぇもんだ」
そう私達三人は千グルトを元手に二千グルトまで増やす事に成功した。
そのなかにはダンクから奪い取った分もあるが、そこは気にしない事にしておく。
「このゴールドライセンスは普通のライセンスと何が違うんだい?」
白髪の少女の問いかけに金髪の大男は笑ってから。
「色しか違わねーよ。でもほら金色の方がカッコいいと思わないか」
それに何とも渋い顔を浮かべるケーレス。なんだか車の免許のようだと思いながら、私達は受けとる。
だが、その中で一人ナナだけが受け取ろうとはしなかった。
「ん? お前は受け取らねぇのか?」
「え、えっと……その、私なんかが受けとるのはどうかなぁ、なんて。あはは」
頭を掻きながらぎこちなく笑うナナ。そんな彼女の背中を軽く叩いて。
「君は君なりの役割を果たしている。何も気負う事はあるまいよ」
「でも……私は助けて貰った立場ですし」
それで負い目を感じているのか、愚直な者だ。そんなの気にせず受けとれば良いものを。
だが、そう考えない。考えられないのが彼女の良さなのかも知れんな。
「ならば、これはガメスに預かって貰おう。そして自分が一人前の商人になれたと思ったのなら、その時にここへ受けとると良い。それまでは仮免許を持っていれば良い」
「ええっ!? 俺かよ。まあ、預かるぐらいはいいけどな。それでいいか?」
「は、はい。そうして頂けると助かります……!」
青髪の女性はそう言って嬉しそうにハニカムとそのまま一礼をした。
◇
「サラブレッドの整備は整ったか」
早朝、私は確認作業中のケーレスに向かって呟いた。
白髪の少女は青と赤紫のオッドアイの瞳で白馬と貨車を見比べて。
「ちゃんと接続は完了しているようだね。うん……大丈夫だと思うよ」
「ふむ、そうか。ならばすぐにでも出発しよう」
「あ……それなんだけどさ。その……」
珍しく奥歯に物が挟まった言い方をするケーレス。それに私は不思議そうな顔を浮かべる。
ライセンスを受け取った以上、この町に長居する必要はない。
だから出ていけるならすぐにでも馬車を使って町を出ようと思っていたのだが。
ケーレスは何かやり残した事でもあるのだろうか、そう思った時だった。
「この町を出るなら、ちゃんと伝えて欲しかったわ。それとも私達の関係はその程度の物だったのかしら」
迷いの無い透き通った声。その聞き覚えのある声に振り返ると、そこにはフミカとレイジの姿があった。
「その……何だかバレてて」
気まずそうに呟くケーレス。みんなに話すのも面倒なので伝えていなかったのだが、どうしたことか私達の行動はバレていたらしい。
馬車ーーといっても荷台を繋げただけだが、それを作っている所を見られたのだろう。
「最後に二人に会えて嬉しいよ。私は行商人として旅に出ようと思っていてね」
「ええ分かっているわ。只、お別れぐらいさせなさいよね」
短い間のパーティーメンバー。それだけの関係なのに名残惜しそうな表情を二人は浮かべる。
「また、来いよ。その時は俺も強くなってるからさ」
「ふっ、良かろう。その時は全力で相手になろうじゃないか」
レイジは拳をつき出す、それに私は似合わんなと思いつつ同じく拳を突き出した。
「貴方とはまだ少しの時間だったけど……次も一緒にパーティーを組みましょう」
「ああ、そうだな」
炎髪の少女と握手を交わして私は白馬に乗る。白馬の上には既にケーレスが座っており馬が動く度にひょこひょこと身体が跳ねていた。
私はケーレスに抱きつくような形で覆い被さって手綱を引くと。
バシン、と音と共に馬がゆっくりと進み始めた。
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こだわらないならばなろうに続きがあるからそちらを見よう!(しばらく更新停止中
もう、執筆は為さらないんですか?
好きなんですが最近更新がなくて寂しいです