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凍らぬ氷の都編
旧氷国城の目覚め
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──三度の目覚めを経て、ようやく体が本調子を取り戻したと直感した。
意識が落ちる前とは違い、今度はきちんとした寝室で目覚めることに成功したようだ。
天井が見慣れないのはソフィアがどこか屋根のある場所に運んでくれたからだろう。驚くことはない。
それはそうと、彼女のことを思い浮かべていたせいだろうか。上からソフィアの声が聞こえてきた。
「やっと起きたわ。調子はどう?」
椅子の腰掛てタオルを絞っているソフィアを見て、看病はコイツがしてくれたのだろうと察した。
……不安なので体に違和感がないか確認してみるが、特に問題はなさそうだ。
コイツは魔法を使った治療は得意だが、それ以外の家事や料理における技量は惨憺たる有様なのだ。
ニンジンを下茹でしてくれと頼んだ際に出てきたものが炭だったあの日から、マキと結託して彼女を厨房には入れていない。
「ねえ、今失礼なこと考えたでしょ」
「そんなことはない」
考えが読まれたのかと少し焦ったがなんとか誤魔化せた。
というか、話したいことでもあるのだろうか。どうでもいいことに深入りしたくない雰囲気を感じる。であれば話してみろと催促すると、ソフィアはいくつかの書類は渡してきた。
「一つは貴族院からよ。鉱山村の件について進捗が書かれているわ。それは後で目を通しておいてちょうだい」
残念ながら不正予算問題については記述されていないだろうとパラパラ目を通していると、こっちが重要よと二つ目の束を強調された。
「こっちはアンタの体について書いてあるわ」
言いながら、ソフィアは束になった書類を一枚めくる。
どうやら魔法を使って健康診断でもしたようだ。
「疲労と怪我によって慢性的に生命力が足りてなかったわ。アンタは大怪我してから間もないうちにまた怪我して帰ってくるから治療魔法だけじゃ間に合わないの」
そう言いながらソフィアは興奮気味に机を叩いて訴えかけてきた。
あー、これは本気で怒る一歩前だ。
そこそこ長い付き合いになるのでわかる。コイツは短気なように見えて意外と思慮深いので大抵の場合はほとぼりが冷めるかしっかり反省すれば許されるのだ。しかし、それでも許されない時のソフィアが見せる一見怒っていなさそうな場合だ。こういう時に選択を誤るともう許してもらえないのだ。ちなみに、ソフィアにある禁止ワードを定められているのだが、それを口にすると本気で攻撃してくるので経験済みだ。
なので、言い訳や余計なちゃちゃをぐっと抑えてソフィアの話に集中する。
「確かに疲労感はあったな。この頃は担う業務も増えてきて、健康上問題ないだろうと楽観視していた節があったことも否定できない」
そもそも自分は大丈夫だろうという考えですらいた。……というか今もそうなのだが、余計な言葉は飲み込むことにしよう。
今怒らせたら四度寝コース直行なのだが、自分がどれほどのプレッシャーを放っているのか自覚してないらしいソフィアは参ったといったように額に手を当てて呻りだした。
「アンタって本当に。……ねえ、アンタの故郷ってみんなこんな感じなの?」
なんか前にも同じようなことを言われた気がするのだが、ソフィアに呆れたり呆れられたりすることなど一度や二度ではないので思い出すのはやめておこう。めんどくさいし。
「学生は朝七時から部活動の朝練をはじめて九時から五時過ぎまで授業。その後二時間くらい部活やって下校してるな。まあ、俺は誰かと足並み揃えて無駄な経験をすることに興味はないから帰って国家資格の勉強をしていたが」
冷静に考えてみれば休憩一時間で十一時間も活動しっぱなしというのは中々ハードだろう。……授業中に居眠りなどしていない者に限るが。
俺の言葉を聞いたソフィアがドン引きするが、学生レベルのスケジュールで日和ってもらっては困る。
「社会人なんかは毎朝九時に出社して六時終わりらしいが、普通は数十分早く出社して準備するし己の無能が故に仕事が終わらないならサービス残業は当然だ。プロと呼ばれるような人でこの程度の誇りすらないやつは日本にいないんじゃないか?」
もちろん、ほどほどの給料でワークライフバランスとやらを重視している者も少なからずいるが、無断の欠席遅刻早退はありえない。
……というのは、親父に幼いころから耳にタコができるほど叩き込まれた仕事観だが、世の中の弛んだ連中を見ているとこのような教育を受けてきてよかったと思っている。エリートは俺一人でいいので他者に価値観を押し付けるようなことはしないが。
「おい、ドン引きすんな。この国だってつい数十年前までは休みなしに労働者働かせていただろうがよ。貴族様は数代経てばやらかした所業など知らんぷりってか?」
「アンタにドン引きはしたけど当家は清廉潔白な貴族よ! アンタの故郷と一緒にしないでちょうだい!」
ドン引きしてんじゃねえか。
何か言い返したいが、後半部分がぐうの音も出ない。
こっちでは労働者が一斉にストライキを起こした過去があり、現在では労働者に非常に甘い環境になっているからだ。それが当たり前だと教わってきた者からすれば日本の労働環境は些かブラックに見えるかもしれない。否定はしない。価値観の相違だ。
無駄話が過ぎたなと我に返ると、ほぼ同時にソフィアが話を戻した。
「……さて。アンタがぶっ倒れた原因はさっき教えた通りだけど、アンタの無茶は従えてる私にも非があるの。だから、今後アンタのスケジュールは私が決めるわ。これは決定事項よ」
言いながら手を握ってくるソフィア。近いし怖いんだが。
「俺に基本的人権はないのか? 意思決定の自由はないのか?」
さすがに年中昼夜問わず行動を決められるのは嫌なんだが、なぜか室内が猛烈に冷え込み始めた。
遅れて手から痛みを感じはじめ、握っているソフィアへ視線を向けると氷点下の笑顔を俺に向けていた。
「ごめんなさい、よく聞こえなかったわ。もう一度言ってくれるかしら」
「お、お嬢様の仰せのままに」
ちくしょう。俺に選択肢なんてなかった。
室温がもとに戻るなか、俺の心にまた一つ消えない傷がついた気がした。
「まあ私も鬼じゃないから、アンタが嫌がることはしないわ。アンタと違って」
やかましいわ!
俺はソフィアの額にチョップを入れると、そのまま支度をして街へと出た。
「──なにしについてきたんだよ」
城下町で一番賑わうとされている商店街。
冷やかしに行こうかと思い城を出てきたのだが、ソフィアに尾行されていることに気づいた。
「あら、ステルスの魔法まで使って結構いけると思ってたのに」
悪びれた様子もないソフィアは戯言を口にしながら隣に駆け寄ってくる。
なるほど、ステルスの魔法か。どうりで気づかなかったわけだ。
「普段は私の魔力が多すぎて意味をなさない魔法だから使わないんだけど、たまには使わないと体が忘れちゃうもの」
だからと言って俺を尾行するために使わなくてもいいじゃないか。
ソフィアなりに考えはあるだろうが、さきほどコイツ自身から休暇を言い渡された以上プライベートを覗き見るというのは如何なものだろうか。
嫌悪感を隠さずに顔に出すが、こちらの気などどうでもいいのか俺の前に立って衣装を見せびらかしてきた。
「ねえねえ、ケンジロー。どう? お母さんが昔来てたドレスなんだけど、似合ってるかしら」
話が飛躍しすぎだろ。
頭痛を感じながら、それでも機嫌を損ねられても面倒なので真剣に見てやる。
ソフィアが着るように仕立て直したのか、雪のようにきれいな白銀のロングドレスはコイツの体にピッタリとフィットしている。
そのせいで、コイツの肉付きの貧相さも露見してしまっているが。
決して幼児体系ではないのだが、そのせいでただただ肉がない感じなのがソフィアという少女であり、引き締めるようなドレスを着たらどうなるかと言えば。
「お前の魅力でもある儚さと可憐さをよく引き出すドレスじゃないか。個人的な感想を求められているのなら、俺は似合ってると思う」
最大限の誉め言葉を並べたつもりなのだが、考えが顔に出ていたのだろうか。
目敏く見抜いたソフィアが息がかかりそうなほど詰め寄り責め立ててきた。
「無駄だから! どんなに美辞麗句を並べても無駄だから! ねえ今私の胸見て言ったでしょ⁉ どうせ貧相な胸だとか思ったんでしょ⁉」
うわーめんどくせー。
でも口にしたら怒るんだろうな。
「言いがかりはよせ。そんなどうでもいいことより、ついてくるくらいだから俺に用事でもあったんだろう。時間は有限だ。行くぞ」
文句を言うソフィアを引きはがし、賑わう商店街へと踏み込んだ。
道案内を買って出たソフィアに連れられて街を歩いて数時間。
日も高く昇って腹も空いてきたことなので昼食をとれる場所を案内してもらった。
「なんだかんだ言って冒険者ギルドが手っ取り早いわ。ついでだし、午後は手ごろな討伐依頼を請けてケンジローの肩慣らしに行きましょう。アンタってば三日も寝てたんだから」
あーまあ確かにギルドなら手ごろな価格でガッツリ出てくるもんな。……うん?
「おいこらお前今なんつった。さすがにこんな寒い中雪に埋もれて肉体労働はごめんだが?」
百八十度反転してきた道を引き返そうとすると、ソフィアが慌てて引き留めてきた。
「ねえ本当にお願い! 今日請ける依頼だけでいいの!」
「やかましい。だいたい、マキは城に残っていれば俺の装備だって置いてきているんだ。即決で判断していい事柄ではないだろう」
百歩譲って依頼を請けるのなら装備を整えマキを連れてきてからだ。最低限これだけは妥協しない。
ソフィアらしからぬ短絡的な言動だが、コイツはたまに天然を発揮する。しばらく手綱を握っておけば大した問題は起きないだろう。
「わかった。仮にもこの街のお嬢様なんだから往来で泣くな。俺の評判が下がる」
「アンタって本当に最低! 仮にも落ち込んでる女の子にかける言葉⁉」
「本当に落ち込んでいるならノータイムで反論できないだろうしお前は大丈夫だ。よし飯を食うぞ」
情緒不安定なソフィアを引きずってギルド内の食堂エリアへと足を踏み入れた。
──昼食を済ませた俺たちは、一回城へ戻りマキと合流してから依頼現場へやってきていた。
「装備はどうにかなるとは言ったが、まさか魔法で作るとは思わなかった」
雪原のような不安定な足場で戦い慣れない俺のために、色々と特殊効果がついた装備を作ってくれたのだ。
「氷、水、風には特に高い耐性もあるし、来てるだけで攻撃力と防御力が上がるの。精製魔法は品質が完全ランダムだから用意するのに時間がかかるのが難点だけどね」
装備を作った張本人は、それはもうやり切った達成感と凄まじい疲労感を漂わせていた。なお、現時点では討伐依頼の目撃現場に辿り着いたばかりである。
上振れれば市場の物より上質な装備をタダで手に入るとはいえ、ソフィアをもってして苦戦するのだから誰も使わないわけだ。
「二時間近くかかりましたからね。それに、お城の中庭が粗大ごみでいっぱいになってしまっていたのです」
マキの言葉に改めて武器と防具を見る。
国内有数の魔法の使い手であるソフィアが、長時間作っては投げ作っては投げを繰り返してやっと揃えたのが俺が今着けている装備なのだ。
「私にかかれば二時間で済むけど、普通はもっと時間かかるわ。それに、今ので大半の魔力を使っちゃったから帰りがけにまた氷の都で回復していかないといけないわ」
この女今なんて言った。
氷の都に続く街道しか隣接地方への道がないのでどうせ立ち寄るのだが、だとしても魔力に対する成果が装備一式ではショボすぎるだろ。
「消耗したとは言っても魔力は半分近く残してあるし、強敵と当たらなきゃ大丈夫よ。それに、この辺の魔物は強いから、武器はまだしも防具は強いに越したことはないわ。ケンジローは回避系のスキルなんて持ってないでしょ?」
ちくしょう、反論しづらい。
この辺は寒さが厳しく、魔物も生存競争を勝ち抜いた精鋭しかいないらしい。
軒並み固いし火力も高く、範囲攻撃を持っている魔物も少なくないのだとか。
「そういうことなら納得するしかない。武器に関してもいつもの魔法銃は壊れてしまっていると言うし仕方ないか」
心の底から納得しているわけではないがひとまずそう言っておく。言いながら手元の武器を見て。
「しかし、俺は槍なんて使ったことはない。戦力として期待できないと思うぞ」
槍術など学んだこともなければ補助系スキルも習得していない。今回は荷物番になるだろうなと考えていると、ソフィアが口角を上げて指を振り自慢げに口を開いた。
「それは儀礼槍よ。当然ビームくらい出せるわ」
「当然出せてたまるか」
ふざけた武器だ。重いしいっそ投げ捨ててやろうと大きく振ると、矛先から十数メートル先まで届きそうな短射程レーザーが放たれた。
数秒間持続したレーザーは地味に太く、その分反動も大きかった。
「しょっぱいレーザーだな」
「ケンジローの筋力だと反動で照射中は槍振れなさそうなのです」
実際に武器効果を使った俺とそばで見ていたマキが思い思いに感想を溢す。
もともと儀礼用の道具だったものだというし、戦闘面ではオモチャの部類か。
「ケンジローの魔力と筋力が貧弱だからよ!」
俺たちの反応が思っていたものと違ったようで、杖を振り回して威嚇してきた。
「おいこら誰の筋力が貧弱だ。少なくともソフィアくらいなら捻じ伏せられるからな」
体格差もありお互いに物理系ステータスがあまり高くないので、魔力はともかく筋力はコイツに言われたくないものだ。
……隣にいるマキに軽く袖を引かれて振り向いてみると、ドン引きしたような顔で何か言いたそうにしているが置いておこう。
「アンタ最低ね。……まあいいわ。そんなことよりあれを見なさい」
雪原の先を指差すソフィアに釣られて視線を向けると、遠くの街道あたりに原始的な櫓のようなものが建っているのが見えた。
あれはなんだろうという疑問が湧いてきたが、それに答えるようにソフィアが説明を続ける。
「あれは『北盗組』の櫓よ。『北盗組』は旧氷国領に拠点を持つアウトロー集団で、強盗から人質売買、それから殺人なんかもやってる組織なの」
なんだその暴力団みたいな組織は。
偉い立場にも関わって霧の都周辺の情勢にもだいぶ明るくなってきたが、せいぜい盗賊団くらいしか見てこなかったので驚かされたというのが本音だ。
「ここ数年は特に勢力が拡大してて、地方内でも人が行き来できる場所はほとんど封鎖されてしまっているらしいの」
そう言いながら、ソフィアは懐から地方地図を取り出した。
地方地図南側に氷の都と旧王城。そこから北の街へ続く街道は何重にもわたって封鎖を意味するバツ印が付けられている。
「お父さんが組織に攻撃を仕掛けて手に入れた情報よ」
「さすがは旧氷国領の領主なのです。やり手なのですね」
自分の功績かのようにドヤ顔を浮かべるソフィアと、それに乗っかるマキを見て思わずため息をつく。
「いいから続けてくれ。このままだと雪原を歩いただけで日が暮れる」
話の続きを促してやると「なによもう」と言いながらも説明を再開してくれた。
「情報は他にもあって、この辺が凍り付いたくらいの時期から妖魔教団と協力関係を結んでいるらしいわ」
危険極まりない組織だな、と考えている隣でマキは何か合点がいったのか手を打った。
「なるほど。それであの櫓を叩くわけですね。いくら極悪組織でも末端の構成員なんてアタシたちにかかれば朝飯前なのです」
「夕飯前だから今日はいったん帰還だけどな」
準備や移動に時間をかけすぎて西の空が茜色に変わりかけているのを指差す。
街からはそう遠くないが、夜間は魔物が活発になるのでそれまでには安全な城下町へ戻りたいところだ。
揚げ足をとられたマキが飛びかかってくるのを軽くいなしつつ、それでもソフィアが頷いているのもあり何がしたいのかは伝わった。
「言わんとせん事は理解した」
「アンタ本当に理解した? マキと一緒に答えてみなさいよ」
怪訝そうな声でそう言われた。腹立つなコイツ。
「別にマキと一緒でなくともいいだろ。……前線で街道を封鎖してる構成員に兵糧が届かないように補給路を攻撃するんだろ?」
地図を見た感じ領内をいくつかの大きな河川が通っているので船を狙うのもいいだろう。
そう思っていたのだが、仲間を見ると予想していた反応と違った。
「「え?」」
「は?」
全員が疑問符を浮かべて沈黙するなか、言いにくそうにしながらもマキが言葉を発した。
「アタシは普通に今見えてる櫓を狙うものだと思っていたのです。遠方に支援部隊が控えている様子もありませんし」
……え?
「私もそのつもりだったんけど。……アンタ、本当に真正面から戦おうとしないわよね。肝が小さいんじゃないの?」
「やかましいわ。ほとんどが戦闘員だけで構成されてるのが分かっている櫓を狙うより、非戦闘員が混ざってる可能性がある補給部隊を狙う方がリスクが少ないだろ。それに、生け捕りにすれば拷問にかけて内部情勢を吐かせられるかもしれないしな」
そして、一度補給を潰せば相手は補給部隊の戦闘員を増員するしかなくなる。こうなれば疑似的な戦力低下に陥れることができるという寸法だ。
こうしたメリットがあるので提案したのだが、仲間からゴミを見る目を向けられた。
「……ねえケンジロー。毎度毎度、アンタには騎士道精神ってものはないの?」
「そんなもんで飯が食えるか。食えねえなら堆肥用のクソ以下だ」
「最低ですねこの人本当に最低ですね」
「うるせえな。戦争なんて勝った方が正義なんだよ」
投げかけられた言葉に返していると、ソフィアとマキが背を向けて何やらコソコソと話し始めた。
そんなにおかしなことを言っただろうか。
合理性の追求というのは得てして反感を買うものだが、戦闘に慣れてるコイツらなら理解できるはずだ。
いつまでも話し終えないので索敵スキルを応用して聞き耳を立ててみると、失礼なことを言われていた。
『ねえマキ。アンタ休みの日だけでいいからケンジローに道徳を教えてあげてくれない?』
『なんでアタシなのですか。いくらソフィアの頼み事でも嫌ですよ。世の中には絶対にできないことというのがあるのです』
……ほう。
「面白そうな話をしているじゃないか」
後ろから声をかけてやると、二人して驚いて目の前で転んだ。
大げさすぎやしないか。
「べ、別になんでもないわ!」
「そ、そうなのです。この後ソフィアとスイーツバイキングにでも行こうかなって話していたのですよ!」
冷や汗をかきながら早口で言い訳してきたが、ちゃんと聞こえていたんだよな。
「そしたら俺も連れて行ってくれないか? スイーツバイキングとやらでは道徳が学べるのだろう?」
圧をかけてやると、ソフィアたちは逃げ出した!
……さて、帰るか。
日が傾いてきたが、幸い街まで魔物とのエンカウントはなかった。
意識が落ちる前とは違い、今度はきちんとした寝室で目覚めることに成功したようだ。
天井が見慣れないのはソフィアがどこか屋根のある場所に運んでくれたからだろう。驚くことはない。
それはそうと、彼女のことを思い浮かべていたせいだろうか。上からソフィアの声が聞こえてきた。
「やっと起きたわ。調子はどう?」
椅子の腰掛てタオルを絞っているソフィアを見て、看病はコイツがしてくれたのだろうと察した。
……不安なので体に違和感がないか確認してみるが、特に問題はなさそうだ。
コイツは魔法を使った治療は得意だが、それ以外の家事や料理における技量は惨憺たる有様なのだ。
ニンジンを下茹でしてくれと頼んだ際に出てきたものが炭だったあの日から、マキと結託して彼女を厨房には入れていない。
「ねえ、今失礼なこと考えたでしょ」
「そんなことはない」
考えが読まれたのかと少し焦ったがなんとか誤魔化せた。
というか、話したいことでもあるのだろうか。どうでもいいことに深入りしたくない雰囲気を感じる。であれば話してみろと催促すると、ソフィアはいくつかの書類は渡してきた。
「一つは貴族院からよ。鉱山村の件について進捗が書かれているわ。それは後で目を通しておいてちょうだい」
残念ながら不正予算問題については記述されていないだろうとパラパラ目を通していると、こっちが重要よと二つ目の束を強調された。
「こっちはアンタの体について書いてあるわ」
言いながら、ソフィアは束になった書類を一枚めくる。
どうやら魔法を使って健康診断でもしたようだ。
「疲労と怪我によって慢性的に生命力が足りてなかったわ。アンタは大怪我してから間もないうちにまた怪我して帰ってくるから治療魔法だけじゃ間に合わないの」
そう言いながらソフィアは興奮気味に机を叩いて訴えかけてきた。
あー、これは本気で怒る一歩前だ。
そこそこ長い付き合いになるのでわかる。コイツは短気なように見えて意外と思慮深いので大抵の場合はほとぼりが冷めるかしっかり反省すれば許されるのだ。しかし、それでも許されない時のソフィアが見せる一見怒っていなさそうな場合だ。こういう時に選択を誤るともう許してもらえないのだ。ちなみに、ソフィアにある禁止ワードを定められているのだが、それを口にすると本気で攻撃してくるので経験済みだ。
なので、言い訳や余計なちゃちゃをぐっと抑えてソフィアの話に集中する。
「確かに疲労感はあったな。この頃は担う業務も増えてきて、健康上問題ないだろうと楽観視していた節があったことも否定できない」
そもそも自分は大丈夫だろうという考えですらいた。……というか今もそうなのだが、余計な言葉は飲み込むことにしよう。
今怒らせたら四度寝コース直行なのだが、自分がどれほどのプレッシャーを放っているのか自覚してないらしいソフィアは参ったといったように額に手を当てて呻りだした。
「アンタって本当に。……ねえ、アンタの故郷ってみんなこんな感じなの?」
なんか前にも同じようなことを言われた気がするのだが、ソフィアに呆れたり呆れられたりすることなど一度や二度ではないので思い出すのはやめておこう。めんどくさいし。
「学生は朝七時から部活動の朝練をはじめて九時から五時過ぎまで授業。その後二時間くらい部活やって下校してるな。まあ、俺は誰かと足並み揃えて無駄な経験をすることに興味はないから帰って国家資格の勉強をしていたが」
冷静に考えてみれば休憩一時間で十一時間も活動しっぱなしというのは中々ハードだろう。……授業中に居眠りなどしていない者に限るが。
俺の言葉を聞いたソフィアがドン引きするが、学生レベルのスケジュールで日和ってもらっては困る。
「社会人なんかは毎朝九時に出社して六時終わりらしいが、普通は数十分早く出社して準備するし己の無能が故に仕事が終わらないならサービス残業は当然だ。プロと呼ばれるような人でこの程度の誇りすらないやつは日本にいないんじゃないか?」
もちろん、ほどほどの給料でワークライフバランスとやらを重視している者も少なからずいるが、無断の欠席遅刻早退はありえない。
……というのは、親父に幼いころから耳にタコができるほど叩き込まれた仕事観だが、世の中の弛んだ連中を見ているとこのような教育を受けてきてよかったと思っている。エリートは俺一人でいいので他者に価値観を押し付けるようなことはしないが。
「おい、ドン引きすんな。この国だってつい数十年前までは休みなしに労働者働かせていただろうがよ。貴族様は数代経てばやらかした所業など知らんぷりってか?」
「アンタにドン引きはしたけど当家は清廉潔白な貴族よ! アンタの故郷と一緒にしないでちょうだい!」
ドン引きしてんじゃねえか。
何か言い返したいが、後半部分がぐうの音も出ない。
こっちでは労働者が一斉にストライキを起こした過去があり、現在では労働者に非常に甘い環境になっているからだ。それが当たり前だと教わってきた者からすれば日本の労働環境は些かブラックに見えるかもしれない。否定はしない。価値観の相違だ。
無駄話が過ぎたなと我に返ると、ほぼ同時にソフィアが話を戻した。
「……さて。アンタがぶっ倒れた原因はさっき教えた通りだけど、アンタの無茶は従えてる私にも非があるの。だから、今後アンタのスケジュールは私が決めるわ。これは決定事項よ」
言いながら手を握ってくるソフィア。近いし怖いんだが。
「俺に基本的人権はないのか? 意思決定の自由はないのか?」
さすがに年中昼夜問わず行動を決められるのは嫌なんだが、なぜか室内が猛烈に冷え込み始めた。
遅れて手から痛みを感じはじめ、握っているソフィアへ視線を向けると氷点下の笑顔を俺に向けていた。
「ごめんなさい、よく聞こえなかったわ。もう一度言ってくれるかしら」
「お、お嬢様の仰せのままに」
ちくしょう。俺に選択肢なんてなかった。
室温がもとに戻るなか、俺の心にまた一つ消えない傷がついた気がした。
「まあ私も鬼じゃないから、アンタが嫌がることはしないわ。アンタと違って」
やかましいわ!
俺はソフィアの額にチョップを入れると、そのまま支度をして街へと出た。
「──なにしについてきたんだよ」
城下町で一番賑わうとされている商店街。
冷やかしに行こうかと思い城を出てきたのだが、ソフィアに尾行されていることに気づいた。
「あら、ステルスの魔法まで使って結構いけると思ってたのに」
悪びれた様子もないソフィアは戯言を口にしながら隣に駆け寄ってくる。
なるほど、ステルスの魔法か。どうりで気づかなかったわけだ。
「普段は私の魔力が多すぎて意味をなさない魔法だから使わないんだけど、たまには使わないと体が忘れちゃうもの」
だからと言って俺を尾行するために使わなくてもいいじゃないか。
ソフィアなりに考えはあるだろうが、さきほどコイツ自身から休暇を言い渡された以上プライベートを覗き見るというのは如何なものだろうか。
嫌悪感を隠さずに顔に出すが、こちらの気などどうでもいいのか俺の前に立って衣装を見せびらかしてきた。
「ねえねえ、ケンジロー。どう? お母さんが昔来てたドレスなんだけど、似合ってるかしら」
話が飛躍しすぎだろ。
頭痛を感じながら、それでも機嫌を損ねられても面倒なので真剣に見てやる。
ソフィアが着るように仕立て直したのか、雪のようにきれいな白銀のロングドレスはコイツの体にピッタリとフィットしている。
そのせいで、コイツの肉付きの貧相さも露見してしまっているが。
決して幼児体系ではないのだが、そのせいでただただ肉がない感じなのがソフィアという少女であり、引き締めるようなドレスを着たらどうなるかと言えば。
「お前の魅力でもある儚さと可憐さをよく引き出すドレスじゃないか。個人的な感想を求められているのなら、俺は似合ってると思う」
最大限の誉め言葉を並べたつもりなのだが、考えが顔に出ていたのだろうか。
目敏く見抜いたソフィアが息がかかりそうなほど詰め寄り責め立ててきた。
「無駄だから! どんなに美辞麗句を並べても無駄だから! ねえ今私の胸見て言ったでしょ⁉ どうせ貧相な胸だとか思ったんでしょ⁉」
うわーめんどくせー。
でも口にしたら怒るんだろうな。
「言いがかりはよせ。そんなどうでもいいことより、ついてくるくらいだから俺に用事でもあったんだろう。時間は有限だ。行くぞ」
文句を言うソフィアを引きはがし、賑わう商店街へと踏み込んだ。
道案内を買って出たソフィアに連れられて街を歩いて数時間。
日も高く昇って腹も空いてきたことなので昼食をとれる場所を案内してもらった。
「なんだかんだ言って冒険者ギルドが手っ取り早いわ。ついでだし、午後は手ごろな討伐依頼を請けてケンジローの肩慣らしに行きましょう。アンタってば三日も寝てたんだから」
あーまあ確かにギルドなら手ごろな価格でガッツリ出てくるもんな。……うん?
「おいこらお前今なんつった。さすがにこんな寒い中雪に埋もれて肉体労働はごめんだが?」
百八十度反転してきた道を引き返そうとすると、ソフィアが慌てて引き留めてきた。
「ねえ本当にお願い! 今日請ける依頼だけでいいの!」
「やかましい。だいたい、マキは城に残っていれば俺の装備だって置いてきているんだ。即決で判断していい事柄ではないだろう」
百歩譲って依頼を請けるのなら装備を整えマキを連れてきてからだ。最低限これだけは妥協しない。
ソフィアらしからぬ短絡的な言動だが、コイツはたまに天然を発揮する。しばらく手綱を握っておけば大した問題は起きないだろう。
「わかった。仮にもこの街のお嬢様なんだから往来で泣くな。俺の評判が下がる」
「アンタって本当に最低! 仮にも落ち込んでる女の子にかける言葉⁉」
「本当に落ち込んでいるならノータイムで反論できないだろうしお前は大丈夫だ。よし飯を食うぞ」
情緒不安定なソフィアを引きずってギルド内の食堂エリアへと足を踏み入れた。
──昼食を済ませた俺たちは、一回城へ戻りマキと合流してから依頼現場へやってきていた。
「装備はどうにかなるとは言ったが、まさか魔法で作るとは思わなかった」
雪原のような不安定な足場で戦い慣れない俺のために、色々と特殊効果がついた装備を作ってくれたのだ。
「氷、水、風には特に高い耐性もあるし、来てるだけで攻撃力と防御力が上がるの。精製魔法は品質が完全ランダムだから用意するのに時間がかかるのが難点だけどね」
装備を作った張本人は、それはもうやり切った達成感と凄まじい疲労感を漂わせていた。なお、現時点では討伐依頼の目撃現場に辿り着いたばかりである。
上振れれば市場の物より上質な装備をタダで手に入るとはいえ、ソフィアをもってして苦戦するのだから誰も使わないわけだ。
「二時間近くかかりましたからね。それに、お城の中庭が粗大ごみでいっぱいになってしまっていたのです」
マキの言葉に改めて武器と防具を見る。
国内有数の魔法の使い手であるソフィアが、長時間作っては投げ作っては投げを繰り返してやっと揃えたのが俺が今着けている装備なのだ。
「私にかかれば二時間で済むけど、普通はもっと時間かかるわ。それに、今ので大半の魔力を使っちゃったから帰りがけにまた氷の都で回復していかないといけないわ」
この女今なんて言った。
氷の都に続く街道しか隣接地方への道がないのでどうせ立ち寄るのだが、だとしても魔力に対する成果が装備一式ではショボすぎるだろ。
「消耗したとは言っても魔力は半分近く残してあるし、強敵と当たらなきゃ大丈夫よ。それに、この辺の魔物は強いから、武器はまだしも防具は強いに越したことはないわ。ケンジローは回避系のスキルなんて持ってないでしょ?」
ちくしょう、反論しづらい。
この辺は寒さが厳しく、魔物も生存競争を勝ち抜いた精鋭しかいないらしい。
軒並み固いし火力も高く、範囲攻撃を持っている魔物も少なくないのだとか。
「そういうことなら納得するしかない。武器に関してもいつもの魔法銃は壊れてしまっていると言うし仕方ないか」
心の底から納得しているわけではないがひとまずそう言っておく。言いながら手元の武器を見て。
「しかし、俺は槍なんて使ったことはない。戦力として期待できないと思うぞ」
槍術など学んだこともなければ補助系スキルも習得していない。今回は荷物番になるだろうなと考えていると、ソフィアが口角を上げて指を振り自慢げに口を開いた。
「それは儀礼槍よ。当然ビームくらい出せるわ」
「当然出せてたまるか」
ふざけた武器だ。重いしいっそ投げ捨ててやろうと大きく振ると、矛先から十数メートル先まで届きそうな短射程レーザーが放たれた。
数秒間持続したレーザーは地味に太く、その分反動も大きかった。
「しょっぱいレーザーだな」
「ケンジローの筋力だと反動で照射中は槍振れなさそうなのです」
実際に武器効果を使った俺とそばで見ていたマキが思い思いに感想を溢す。
もともと儀礼用の道具だったものだというし、戦闘面ではオモチャの部類か。
「ケンジローの魔力と筋力が貧弱だからよ!」
俺たちの反応が思っていたものと違ったようで、杖を振り回して威嚇してきた。
「おいこら誰の筋力が貧弱だ。少なくともソフィアくらいなら捻じ伏せられるからな」
体格差もありお互いに物理系ステータスがあまり高くないので、魔力はともかく筋力はコイツに言われたくないものだ。
……隣にいるマキに軽く袖を引かれて振り向いてみると、ドン引きしたような顔で何か言いたそうにしているが置いておこう。
「アンタ最低ね。……まあいいわ。そんなことよりあれを見なさい」
雪原の先を指差すソフィアに釣られて視線を向けると、遠くの街道あたりに原始的な櫓のようなものが建っているのが見えた。
あれはなんだろうという疑問が湧いてきたが、それに答えるようにソフィアが説明を続ける。
「あれは『北盗組』の櫓よ。『北盗組』は旧氷国領に拠点を持つアウトロー集団で、強盗から人質売買、それから殺人なんかもやってる組織なの」
なんだその暴力団みたいな組織は。
偉い立場にも関わって霧の都周辺の情勢にもだいぶ明るくなってきたが、せいぜい盗賊団くらいしか見てこなかったので驚かされたというのが本音だ。
「ここ数年は特に勢力が拡大してて、地方内でも人が行き来できる場所はほとんど封鎖されてしまっているらしいの」
そう言いながら、ソフィアは懐から地方地図を取り出した。
地方地図南側に氷の都と旧王城。そこから北の街へ続く街道は何重にもわたって封鎖を意味するバツ印が付けられている。
「お父さんが組織に攻撃を仕掛けて手に入れた情報よ」
「さすがは旧氷国領の領主なのです。やり手なのですね」
自分の功績かのようにドヤ顔を浮かべるソフィアと、それに乗っかるマキを見て思わずため息をつく。
「いいから続けてくれ。このままだと雪原を歩いただけで日が暮れる」
話の続きを促してやると「なによもう」と言いながらも説明を再開してくれた。
「情報は他にもあって、この辺が凍り付いたくらいの時期から妖魔教団と協力関係を結んでいるらしいわ」
危険極まりない組織だな、と考えている隣でマキは何か合点がいったのか手を打った。
「なるほど。それであの櫓を叩くわけですね。いくら極悪組織でも末端の構成員なんてアタシたちにかかれば朝飯前なのです」
「夕飯前だから今日はいったん帰還だけどな」
準備や移動に時間をかけすぎて西の空が茜色に変わりかけているのを指差す。
街からはそう遠くないが、夜間は魔物が活発になるのでそれまでには安全な城下町へ戻りたいところだ。
揚げ足をとられたマキが飛びかかってくるのを軽くいなしつつ、それでもソフィアが頷いているのもあり何がしたいのかは伝わった。
「言わんとせん事は理解した」
「アンタ本当に理解した? マキと一緒に答えてみなさいよ」
怪訝そうな声でそう言われた。腹立つなコイツ。
「別にマキと一緒でなくともいいだろ。……前線で街道を封鎖してる構成員に兵糧が届かないように補給路を攻撃するんだろ?」
地図を見た感じ領内をいくつかの大きな河川が通っているので船を狙うのもいいだろう。
そう思っていたのだが、仲間を見ると予想していた反応と違った。
「「え?」」
「は?」
全員が疑問符を浮かべて沈黙するなか、言いにくそうにしながらもマキが言葉を発した。
「アタシは普通に今見えてる櫓を狙うものだと思っていたのです。遠方に支援部隊が控えている様子もありませんし」
……え?
「私もそのつもりだったんけど。……アンタ、本当に真正面から戦おうとしないわよね。肝が小さいんじゃないの?」
「やかましいわ。ほとんどが戦闘員だけで構成されてるのが分かっている櫓を狙うより、非戦闘員が混ざってる可能性がある補給部隊を狙う方がリスクが少ないだろ。それに、生け捕りにすれば拷問にかけて内部情勢を吐かせられるかもしれないしな」
そして、一度補給を潰せば相手は補給部隊の戦闘員を増員するしかなくなる。こうなれば疑似的な戦力低下に陥れることができるという寸法だ。
こうしたメリットがあるので提案したのだが、仲間からゴミを見る目を向けられた。
「……ねえケンジロー。毎度毎度、アンタには騎士道精神ってものはないの?」
「そんなもんで飯が食えるか。食えねえなら堆肥用のクソ以下だ」
「最低ですねこの人本当に最低ですね」
「うるせえな。戦争なんて勝った方が正義なんだよ」
投げかけられた言葉に返していると、ソフィアとマキが背を向けて何やらコソコソと話し始めた。
そんなにおかしなことを言っただろうか。
合理性の追求というのは得てして反感を買うものだが、戦闘に慣れてるコイツらなら理解できるはずだ。
いつまでも話し終えないので索敵スキルを応用して聞き耳を立ててみると、失礼なことを言われていた。
『ねえマキ。アンタ休みの日だけでいいからケンジローに道徳を教えてあげてくれない?』
『なんでアタシなのですか。いくらソフィアの頼み事でも嫌ですよ。世の中には絶対にできないことというのがあるのです』
……ほう。
「面白そうな話をしているじゃないか」
後ろから声をかけてやると、二人して驚いて目の前で転んだ。
大げさすぎやしないか。
「べ、別になんでもないわ!」
「そ、そうなのです。この後ソフィアとスイーツバイキングにでも行こうかなって話していたのですよ!」
冷や汗をかきながら早口で言い訳してきたが、ちゃんと聞こえていたんだよな。
「そしたら俺も連れて行ってくれないか? スイーツバイキングとやらでは道徳が学べるのだろう?」
圧をかけてやると、ソフィアたちは逃げ出した!
……さて、帰るか。
日が傾いてきたが、幸い街まで魔物とのエンカウントはなかった。
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