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凍らぬ氷の都編
丘の地下は月光を遮る風が吹き抜ける
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──妖魔教団幹部による襲撃から数日後。
旧氷国領の王城はちょっとした試験会場の様相を呈していた。
『……さんですね。本人確認が終わりましたので、置くから三番目の応接室へお進みください』
扉越しに気合の入った近衛騎士団団員の声が聞こえてくる。
三番目の部屋は隣の部屋で、この部屋でも既に案内に従い入室した者がいて。
「──自分はマルクっす! 元冒険者の親父に憧れて、近所の友達と二人でナイトをやってたんすけど騎士団に引き抜かれちゃって。ソロで活動するわけにもいかないからどうしようか悩んでたらスターグリーク様を見つけたっす!」
目の前の男は、部屋の大きさに比べて幾分気合の入ったハキハキとした声で自己紹介した。
俺と同い年か一つ上くらいの若い人だが、鍛え上げられた肉体はとても頼もしい印象を与える。
こんな雰囲気なので面接のような緊張感があるが、これには訳があるのだ。
数日前。冒険者へ要請を出さずに防衛した翌朝のことだが、俺たちスターグリーク家への貴族たちの評価がすっかり変わっていた。
ソフィアはともかくとして、俺やマキは薄汚れた平民上がりとしか思われていなかったのだろうが、ここにきて高評価を受ける次第となったのだ。
さて、そんな高評価だらけなうえ、ソフィアはこの地方でトップともいえる大貴族の一人娘。そんな当家がお抱えの騎士団すらいないなどありえない。今すぐ人を探してその力強さを誇示すべきだと、そういう流れになったのだ。
最初はソフィアを含め全員否定的だったが、トップである彼女が言いくるめられてしまって今に至る。
どうやら、この街の人は身分を問わず王都への憧れや親しみが強いらしい。
そんな夢の王都暮らしを貴族のお抱え騎士という立場で味わえるなら是非ついていく。そんな意見が俺たちがここにきてから連日挙がっているのだという。
ソフィアが掲げる目標である『スターグリーク家の再建』のためにはいずれやらなければならないことだ。反面、財政的に安心できない今、新しい組織を抱えるかは悩ましい。
だが、今日既に四人目になる応募者を見て、一概に断るべきだと言い切れないと思い始めてきていたところだ。
「マルクさんか。本日は応募いただいたこと誠に感謝する。さて、さっそく本題に入るのだが──」
予め決めていた質問をしようとして、近くの部屋から甲高い悲鳴が聞こえてきた。
「ソフィア様の声っす!」
マルクさんは言うが早いか、面接官である俺を置いて部屋から飛び出していった。
面接よりソフィアの身の安全、か。
俺はそう呟くと、リストの四行目に印をつけて部屋を出た。俺としてもソフィアに何かあっては困るのでな。
──数時間後。
ソフィアがいる部屋にネズミが出現する事件が起きて以降、特に問題が発生することなく午後の部が始まっていた。
昼食を抜いてエントリーシートに目を通していた俺は、気づけば一時を回っていることに気づいた。そろそろ応募者が来る頃だと思っていると、ちょうどよく扉が叩かれた。
「どうぞ」
俺が一言そう言うと、扉がガチャリと開いた。
その開いた扉から姿を現した人物に、俺は驚き言葉を失った。
「し、失礼す……失礼、します」
慣れない言葉遣いに嚙みまくる目の前の中性的な容姿の人物は、俺の顔をしっかりと捉えながら。
「……急を要するんだ。助けてくれないかい?」
体のところどころに獣っぽい体毛が見え隠れするコイツは、先日も俺を拉致りかけた自称魔物のスターだった。
信号装置でソフィアに緊急事態を伝えると、あっという間に部屋の外が静かになっていく。
手筈通り、列になって待機中だったのであろう応募者が返されたのだろう。
貴族が直接行う面接ということで、危険人物へのマニュアルも整えてあったのだ。
正直なところ俺たちも冒険者だしよほどの相手でなければ暴徒一人取り押さえるくらいはできるだろう。そのうえ、応募者も皆腕自慢なはずだし頼れば問題ないとも考えた。だが、俺はこの国においてそこそこ偉い立場になってしまっていたようで、提案は却下されてしまった。
さて、この子の処遇について考えていると、隣室にいたはずのソフィアとマキ、ジョージさんが駆けつけてくれた。
「ケンジロー殿! 無事でございますかな⁉」
「よくぞここまで足を踏み入れましたね、くせ者! しかしアタシたちに目をつけられたのが運の尽きなのです!」
「正直に罪を認めれば罰は軽くできるわ。神妙に……って、アンタまさか⁉」
仲間が一様に魔物のスターを警戒する中、ソフィアのみまるで知り合いを目にした様子だ。
「おいソフィア。お前コイツと知り合いなのか?」
様子がおかしいソフィアに振ると、魔物のスターはバッと振り向いたと思えば次の瞬間には抱き着いていた。
突然すぎる展開に目を白黒させるソフィアだが、かわいそうなことに魔物のスターは涙目で頬ずりするだけで離れる気配はなさそうだ。
驚かされたがこちらに危害を加える気はないようで安心した。
と、しばらく目をパチクリさせていたソフィアだったが、数秒で我に返ると魔物のスターを宥めるように頭を撫でながら俺の疑問に答えてくれた。
「熱鉱山の村でのことがあったとき、私がいなかったじゃない。あの時、魔力切れで道端に倒れていた私をこの子が助けてくれたのよ」
そうだったのか。
俺なんて殺されそうになったのだが、そんな奴が仲間の女の子と百合百合しているという事実にめまいがする。
結果として少し人には言いずらいことになってしまったのも含めてあまり思い出したくない。
そういえば、この子が俺を襲った理由をまだ聞いていなかった気がする。
「そうならば熱鉱山にいた時に声をかけてっくれればよかったのです。ソフィアを助けてくれたという以上、アタシたちがあなたを邪険に扱うわけがないじゃないですか」
マキもこう言ってるし、下手なこと言わずに優しくしてやるとしよう。
俺が悪いわけではないが、思い出すと不快になるイベントに、そっと心の中の臭いものにふたをした。
希望の光を感じ取ったように顔を上げる魔物のスターは、ニコニコ笑うだけのジョージさんを経由して、今度は俺に視線を向けた。すると、ソフィアとマキもつられてこちらを見てくる。
やめろよ、まるで俺がひどいことをしたみたいじゃないか。
ある意味否定できないところでもあるので、当然こう答えるしかない。
「この状況で追い返すわけにもいかないからな。用件を話してみろ」
コイツを見捨てるか否かは話を聞いてからでも遅くはない。
そうして言葉を促すと、魔物のスターは俺の仲間たちにも見守られながらゆっくりと口を開いた。
「実は、妖魔教団に狙われているんだ」
なんだと⁉
一言目から聞き捨てならないその言葉を聞いたソフィアとマキがは、俯き気味に話す魔物の子にバッと抱き着いた。
可哀そうな目に遭ったであろうこの子を慰めるように。
一瞬離れてほしそうにした魔物の子だが、悪意がないのが伝わったのかすぐされるがままとなった。
「それは本当か? もしそうだとしたら、妖魔教団とことあるごとに交戦している俺たちとしても見捨てにくいが」
自分で言っていて、いったいどうしてこうなってしまったのかと頭を抱えそうになる。
せせらぎがきれいな森林地帯で楽だと思った依頼を受けたら『旗槍』と接敵したのが事の発端か。あそこでソフィアの魔力が枯渇したからこうして旅の先々でドンパチしているわけで。
だがまあ、そのおかげでソフィアの故郷と王都が再び連絡がとれるようになったわけだし、今回の旅自体が悪いことだとは言わない。言わないが、それで納得してしまうと納まりがつかない何かが俺の中にあるわけで。
おっといけない。重要そうな話くらい余計なことを考えずに聞き入れよう。
「助けてくれるのか⁉ 実は、僕の本体はもう捕らえられてしまたんだ。今こうして君たちと話しているのは、隙を見て僕が放った幻影なのさ」
「なんですって⁉ ねえアンタ、今どこで捕らわれてるの? 今すぐ助けに行くわ!」
魔物の子が捕らわれたと聞いて血相を変えて支度を始めるソフィアを置いて、俺は気になっていたことを一言。
「エビデンスは?」
瞬間、ソフィアと同様魔物の子を愛でていたマキが素早く駆け寄って俺の首を絞めてきた。とても苦しい。
「最低です! この男、本当に本っ当に最低なのです!」
「だって仕方ないだろう⁉ もしコイツに悪意があって、ノコノコとついていったら数千もの魔物に囲まれました、とかシャレにならねえからな!」
妖魔教団と関わりがあるかまではわからないが、コイツだってれっきとした魔物なのだ。何を考えているかわからない以上、疑い過ぎるくらいがちょうどいい。
この場にいる女性陣には理解されなくても俺の考えは間違っていないはずだ。
ソフィアを助けた恩こそあれど、それは決して命を落としてでもコイツを守る理由にはならない。
他のお願いならば叶えてやれるのにな、などと考えていると、魔物の子は観念したように懐から何かの魔法道具を取り出した。
「ソフィアと……マキであってるかな? 僕のために怒らなくてもいいよ。この男の言うことは最低だけど間違っちゃいないからさ」
一見すると水晶玉のような物だ。よほどの自信があるのか、魔物の子は荒ぶる女性陣を手で静止した。
ソフィアとマキが静かになったので心落ち着かせてどう追い返そうかなどと考え始めたら、今度は特大の爆弾を投下された。
「回数制限があるけどなんでも見通せる魔法の水晶さ。今だけじゃなくて過去も見通せるんだ。例えば、昨日の夕飯を終えたくらいの頃、自分の寝室でソフィアへの陰口をつづった日記を残したそこの男の様子とかも見れるのさ」
「おい、でたらめを言うんじゃない! ……お、おいソフィア! お前までコイツのよくわからない占いもどきを信じるのか⁉ 俺は仲間だぞ⁉ なぁ‼」
──理不尽に怒られた後、俺たちは残りの面接も中止にして街の外へ出てきていた。
魔物の子が先導してくれているお陰か、一時間くらい歩いた現時点でまだ一度も野良魔物と接敵していない。それどころか索敵スキルや望遠スキルを駆使しても片手で数えられる程度、索敵範囲のギリギリを魔物が掠めたくらいだ。
厳しい寒さを生きる魔物が蔓延るこの地域では珍しいことだということは、こっちに来て以来毎日のように討伐依頼をこなした俺にはわかる。
幻影であったとしてもコイツが持つ膨大な量の魔力は、中堅クラスの魔物ですら追いやるのに十分らしい。
そんなこんなで楽しながら歩いていると、遠くの丘にちょっとした小屋のようなものが見えてきた。
試しに望遠スキルで覗き込んでみると、見張り番をしている様子の魔物が二体いるようだ。
「見張りは二体。両方とも戦士タイプっぽいが」
丘の方を指して仲間に言う。
「へぇ~、君って案外やるヤツなんだね。ここからそんな詳細に見えるなんてすごいじゃないか」
スキルを使ったのだから当たり前なのだが、まあ褒めているうちは受け入れておこう。
別にコイツのことが嫌いだから皮肉を言われたと感じたわけでは断じてない。……断じて。
「ケンジローはアーチャーですからね。望遠スキルで遠くまで見えるのですよ」
俺の代わりに答えたマキに魔物の子はなるほどと頷く。
そんな様子を見てソフィアがポツリと。
「どちらかというとスナイパーよね。戦場の外から一方的に攻撃したがるんだから。もう慣れたけど、最初はコイツの考えにはドン引きしたわ」
まるで懐かしむように空を見上げて失礼なことを言うソフィア。むかつく。
「ソフィアのような美人令嬢に褒められてモチベーションが上がってきた。よし、今度如何に射手として仕上がったかを、お前の寝込みを狙撃することで証明してやろう。具体的には定期的に窓のそばに閃光弾を撃ち込んでやる」
うふふふふ、などと気色悪い笑い声を上げ続けるソフィアだったが、俺の言葉でビクリと固まった。
「あ、あら……び、美人令嬢だなんて、女性の扱いが上手になったわね。私も鼻が高いわ。そんな紳士なケンジローは、まさか私の快眠を妨害するなんて、しないわよね?」
攻撃魔法の射程距離外から一方的にやられたらさすがのソフィアも為す術がないのだろう。ソフィアの支援魔法には状態異常攻撃を防ぐものもあるが、あくまで眩しくなるだけの環境変化なので、目は潰れなくても寝不足による不調は発生するのだ。
だからだろう。この先のことを想像してか、冷や汗をダラダラと流すソフィアは震えた声で煽ててきた。
そんなソフィアの言葉を聞いて、俺はそっぽを向いた。
「ねえ⁉ ねえってば⁉ まさか本気なの⁉ 寝不足は肌も荒れるしやめてほしいわ! ねえちょっとひどいこと言ったのは謝るからやめてちょうだい!」
素直にごめんなさいと言えばいいものを、言い訳がましく言ってくるソフィアを俺は無視した。
「敵の目の前です。茶番はその辺にしてください」
抱き着いてくるソフィアを引きはがそうとしていると、おそらく最年少であろうマキに怒られてしまった。
居た堪れなくなった俺とソフィアは無言で歩き出した。
目標は丘の中にあると思われる妖魔教団の拠点だ。
──数分後。
隠密スキル持ちのマキに見張り番を暗殺させた俺たちは拠点内部へと足を踏み入れていた。
どうやら地下に階層が伸びているタイプのようで、魔物のスターによる案内で早くも三フロア目に達したところだ。
しかし、まだ先は長いのだという。
先日、一万にも達する規模の襲撃を仕掛けたこともあってか、兵舎を兼ねているらしい地上に近いフロアは下級から中級クラスの魔物が廊下を行き来している。マキがいなければ万が一にも忍び込むなどできなかっただろうし、仲間にしていて本当に良かったと思う。
「盗賊職やってるアタシが言うのもなんですけど、こんな攻略の仕方して、冒険者としての誇りとかないのですか?」
隠密スキルの効果を受けるために全員から肩に手を置かれているマキが変なことを言い出した。
「そんなもんで飯が食えるなら、今頃この世のあらゆるダンジョンは瓦礫だらけになっているだろうな」
マキが無言で手の甲を抓ってくるので痛いのだが手を離せないのでこのまま放っておくしかない。
俺だけ隠密スキルの対象から外されそうなのでこれ以上は言わないが、俺は前々から勝てば官軍なのだと言い続けているんだ。そろそろ長い付き合いなんだからわかってほしいものである。
「バカなことを言っていないで真面目にやってくれ。僕にとっては一大事なんだぞ」
幻影でありながら隠密スキルの対象になる魔物のスターが不満そうに呟いた。
ソフィアを助けてくれた恩があることを思い出して俺たちは静まる。魔法のエキスパートである賢者と召喚された賢者、実はいい子の盗賊娘が揃っていながら魔物に注意されるというのは中々精神的にくるものがあった。
そんな俺たちにこれ以上言及する気はないのか魔物の子は再び足を動かす。
──魔物の子についていくこと更に数十分。
階を降りるごとに中級以下の魔物は少なくなり、上位の魔物や索敵能力が高い魔物が多くなってきたとき。
先導する魔物のスターに触れながら歩いていたマキが立ち止まった。
「これ以上は隠密スキルが看破される可能性があるのです。いつでも戦闘に入れるように構えていてください」
二つくらい前のフロアから薄々感じていたが、下の階に移動するのにかかる時間が明らかに長くなっている。
一つは単純にフロアが広くなったから。もう一つは。
「隠密スキルを看破してくるのは生命力を探知できるアンデッド系の魔物が多いから何とかなるけど、清浄魔法でどうにもならない相手なら出会いがしらでに音を立てずにっていうのは難しいわ」
額に手を当てて考え込むソフィアの言う通り、この辺りまで潜ると小細工が通用しにくくなってくるのだ。
幸い、ここまででバレた回数は二回で、いずれも先手を打って無力化したので大騒ぎに放っていない。
しかし、これから先も同じとはいかないだろう。
最初から無謀だったと言えばそれまでだが、だからといって諦めるわけにはいかない。
そうして全員で頭を捻っていると、突如フロア全体に警報音が鳴り響いた!
『敵襲! 敵襲! 見張り番が倒れているのが見つかった! 侵入者が既に内部深くに入り込んでいる可能性がある! 総員、速やかにフロア内を捜索し、侵入者を捕らえよ! この際、侵入者の生死は問わないものとする! 見つけ次第、始末せよ!』
そんな物騒な警報を聞いた俺たちは全速力でこの場から逃げだした──!
──あの後、辺りが静かになるまで一心不乱に逃げ続けた。
幸いにも廊下ですれ違う魔物にバレずに済んだのだが、また一つ問題が発生した。それは。
「……はぐれたな」
「……はぐれたね」
すっかり静かになった廊下の隅にそんな声が二人分。
警報によって一斉に厳戒態勢が敷かれたフロアを必死に逃げていたら仲間とはぐれてしまったのだ。
「ソフィアとマキは一緒にいるだろうか。隠密スキルを持ってて足も速いマキなら心配いらないが、魔法特化のソフィアじゃ閉所で接敵したら大変だ」
一緒にいくれればいいのだが、と願う俺たちもバレたら一巻の終わりだ。人のことを心配している場合じゃないのはわかっているものの心配でならない。
ここ最近は俺もだいぶヤツらに絆されたと自覚しているが、そろそろ悪意のある者に付け入る隙になっていそうなので今後は少し非情になった方がいいかもしれないな。
さて、そんなことより敵の気配がないうちに移動しようと思う。
ハンドサインで魔物の子に動くことを伝えると、俺はそのまま辺りを見渡す。
逃げているうちにどこかの部屋にでも入り込んだのか、やけに近代的な部屋に巨大なガラス管のようなものが並んでいた。
まるでサイエンスフィクションに出てくる人工生物の培養器みたいな雰囲気すら感じるのだが、部屋の対角にあるポットには溶液と一緒に人型の何かが安置されており。
って、あれは⁉
「なあ、あれってまさか」
魔物の子に問いかけると「如何にも」と言った様子で頷いた。
大声でドヤ顔をしないのは、コイツも今声を出すことがどれほどのリスクかわかっているからだろう。
再び、培養ポット(仮称)に目を向けると、中の人物は確かに魔物の子に見えた。
「あそこから出してほしいんだな? 無茶さえすれば解放すること自体は可能だろうが、どうする?」
ちなみに、言うまでもないがあれほど硬そうな培養ポットを破壊するとなると、それはもう俺がとれる手段の中でも指折りの過激な方法を使うことになる。
生身のまま剣で切られても平気そうだったコイツのことだから死ぬことはないだろうが、まず間違いなく音でバレる。妖魔教団の連中がよほどの間抜けでない限りは。
そんなニュアンスは伝わったのか、魔物の子は首を横に振る。
代わりに、その辺の棚から一束の資料を持ってきてくれた。これを読めということだろうか。
「僕は妖魔教団が積極的に研究している兵器らしい。僕も詳しいことは知らないし、その資料は古代文字で書かれているからほとんどの人は読めないんだ。読めたらヒントになるんじゃないかと思って持って来たんだけど、ダメそうかい?」
ここまできて力になれないことを申し訳なく思っているらしい魔物の子は、精神的にすっかりと小さくなってしまった。
ダメで元々。そんなニュアンスで受け取った資料の表紙を見て、俺は驚きのあまり言葉を失った。
なぜなら、その資料は日本語で書かれていたからだ。
『人造神計画日誌その一
我々、日出国第三研究機構は今は亡き太陽神に相当する生命体を創造できることを突き止めた。ここでは研究日誌を記す。
○月×日 お偉いさんから新たな神を連れてこいと無茶振りされた。あのハゲ頭大丈夫なのか?
○月×日 承服しかねると伝えたが、悉く突っぱねられた。なんでも、隣国を乗っ取った妖魔教団とアライアンスを結ぶのに必要らしい。くそったれ!
○月×日 太陽神の遺体がないと不可能だとそれっぽいレポートをでっち上げた。もう何百年も前に亡くなった女神の遺体など持ってこれるもんならもってこい。ひゃっほい! 一時はどうなることかと思ったが、俺が死ぬまでに神の遺体とやらが見つからなければ一生予算齧って食っちゃ寝できるぜ!
○月×日 あかん、ホンマに持ってくるなんて思わんやん普通。女神の墓からひと房の髪束を送り付けられた。
○月×日 終わった。元々でっち上げたレポートなんだから、女神の死体の一部があったところで何もできるわけねえじゃん。パチこくにしてももっと後先考えろよ、バカがよ。……後先考えずヤケクソでレポート出したの俺やん。
○月×日 いよいよ明日は定例会だ。その段階で進捗ゼロは首が繋がっている保証はないだろう。自棄になったので今夜は夜通し飲みまくることにする。
○月×日 定例会に遅刻した俺のもとにお偉いさんが怒鳴り込んできたが、研究室の扉を開けたまま口をあんぐりと開けて固まっていた。二日酔いで吐きそうなまま同じ方を見ると、女神の髪の毛を齧ったらしいネズミが神々しい光を纏って二足歩行を始めた。これこそ神の奇跡だろう。
○月×日 特に原理が分からないままとんとん拍子で話が進んでしまった。それほどまでにお隣さんに神を譲渡するのが大事なのだろうか。
○月×日 俺の知らないところで責任者にされてた。あとは優秀な研究員が人間を神に変えてくれるらしい。……俺いらなくね?
○月×日 なんか知らんけど成功したらしい。後から聞いた話だが、国のためだと説明すると進んでその身を差し出してくれた、年端のいかない少女がいたらしい。今俺の目の前で培養ポットに収められている少女が被験者だろう。資料によると、既にこの子は人として死んでいて自我も記憶もないそうだ。なんだか俺のヤケクソのせいで少女の未来が途絶えたと思うと罪悪感を覚える。
○月×日 この人造神は『月夜見』と名付けられた。ニホン神話というおとぎ話に出てくる太陽神の血縁者というのが由来だとお偉方が言っていた。せめてこの『月夜見』が、神として幸福に過ごせることを祈る。
○月×日 人造神あらため『月夜見』は正式に妖魔教団にわたった。これで俺のプロジェクトは終わった。』
……。
…………。
……はい?
兼ねてより日出国はオーバーテクノロジーを有する国だと思っていたが、よりにもよって神を作り出していたとは。
『月夜見』が現在何をしているのか、どうなっているのかは一切記されていなかった。しかし、この場にある時点で、魔物の子と何かしらの接点があるに違いない。そのことを伝えてみると。
「僕は君たちが金のなる木を倒した際に放出された魔力で魔物のスターになったからね。それまでは低位の魔物と遜色ない存在だったけど、今では魔力量だけなら魔物の頂点に君臨していると言って過言ではない。だから、種族レベルで変わってしまった僕はそれまでの記憶がないんだ。覚えているのはせいぜい自分の年齢くらいかな。あるいは、低位過ぎて記憶が残るほどの知力がなかったのかもしれないけどね」
あはは、と切なく笑う魔物の子を見て、さすがにこの前のことも含めて申し訳なく感じてきた。
結局レポートには何もヒントはなかったが、それはそうとしてなんとかしてコイツを救えないかと考えていると、急に焦りだした魔物の子が耳打ちしてきた。
「マズい、この足音は『旗槍』だ! やっぱ僕のことはいい。君はソフィアたちを連れて逃げるんだ。絶対に振り向いちゃダメだからな!」
ヒソヒソと、でもしっかり焦った様子で伝えてきた。
確かに足音は聞こえるが、まだバレていないと思う。
バレて接近戦になるとジ・エンドなのだが、アイツは搦手に弱いタイプなのでこのままやり過ごそうと思う。
しかもおいしいことに、隣にいる誰かと話し合っているみたいなのだ。盗み聞ぎしてやるぜぇ?
侵入者がいるとも思わず呑気に話を続ける幹部に耳を傾けるとその内容が聞き取れた。
『あの魔物モドキを捕まえて上はなにをするつもりなんだろうね』
『それは言えない。某も口止めされているからな。……ただ、貴殿とは入団以来の同期だ。これは独り言だが、隣国より賜った偽神は今どうなっているのだろうな』
そんな騎士道を重んじる『旗槍』らしからぬ言い方を鼻で笑うのはおそらく『操魔』だろう。
マズいことになった。もし見つかれば前衛の『旗槍』と後衛の『操魔』を同時に捌くのは無理だ。
しかも、間抜けな『旗槍』だけならいざ知らず、『操魔』はこういう搦手に対しても妙に目敏い。隠密がバレるのも時間の問題か。
もう少しで決定的な何かを聞けそうだと思ったが、これは引き上げるしかなさそうだ。
『まあ、腑抜けたように見えて魔力量は本物さ。『月夜見』がボクたちの手に下った今、計画は次のフェーズに移行する。まったく、休みなんてないじゃないか』
『教団への失言は看過できぬぞ』
『キミはお堅いね。冗談さ』
そう言って、足音は少しずつ遠ざかっていった。
思い出したように息を吐くと、隣で縮こまる魔物の子は青ざめた表情で震えていた。
「おい、どうした」
幻影だと言っていたが、もしかしたら無理やり維持し続けて限界が来たのだろうか。
心配になって手を伸ばしたが、そっと払われた。
「君の心配していることは大丈夫さ。ただ、少しだけ昔の記憶を取り戻しただけさ。僕が魔物になる前の、神としての自我が芽生えたばかりの頃をね」
心優しい少女は神へと変えられた。
そんな『月夜見』の身に何があったのか。徐々に落ち着いてきた魔物の子改め『月夜見』は、やがてポツリと溢すように語りだした。
──数分後。
「ここまででわからないことはないかい?」
そう聞いてきた『月夜見』に、俺はこれまでの話を思い出す。
一つは神になる前の記憶はないこと。そして、神としての権能で妖魔教団を支援したら、その力を装置に転用されて魔物にされたこと。今のこの子は魔物になったことで神の権能を封印され、魔力は残っていても魔法を一つも使えないらしい。なお、『月夜見』を魔物にして何がしたかったのかまではこの子も知らないようだ。
「いや、大丈夫だ」
「そうか。じゃあ、いったん僕を装置から出してほしいな。安心しておくれ、転移魔法のスクロールをくすねていたから」
そういうわけならやってやろう。
銃の安全装置を解除して立ち上がったその瞬間、鼻先のすぐそばの空間を風の矢が走った。
「見逃してあげるわけないじゃないか」
そんな声が、部屋の入口から聞こえてきた──!
旧氷国領の王城はちょっとした試験会場の様相を呈していた。
『……さんですね。本人確認が終わりましたので、置くから三番目の応接室へお進みください』
扉越しに気合の入った近衛騎士団団員の声が聞こえてくる。
三番目の部屋は隣の部屋で、この部屋でも既に案内に従い入室した者がいて。
「──自分はマルクっす! 元冒険者の親父に憧れて、近所の友達と二人でナイトをやってたんすけど騎士団に引き抜かれちゃって。ソロで活動するわけにもいかないからどうしようか悩んでたらスターグリーク様を見つけたっす!」
目の前の男は、部屋の大きさに比べて幾分気合の入ったハキハキとした声で自己紹介した。
俺と同い年か一つ上くらいの若い人だが、鍛え上げられた肉体はとても頼もしい印象を与える。
こんな雰囲気なので面接のような緊張感があるが、これには訳があるのだ。
数日前。冒険者へ要請を出さずに防衛した翌朝のことだが、俺たちスターグリーク家への貴族たちの評価がすっかり変わっていた。
ソフィアはともかくとして、俺やマキは薄汚れた平民上がりとしか思われていなかったのだろうが、ここにきて高評価を受ける次第となったのだ。
さて、そんな高評価だらけなうえ、ソフィアはこの地方でトップともいえる大貴族の一人娘。そんな当家がお抱えの騎士団すらいないなどありえない。今すぐ人を探してその力強さを誇示すべきだと、そういう流れになったのだ。
最初はソフィアを含め全員否定的だったが、トップである彼女が言いくるめられてしまって今に至る。
どうやら、この街の人は身分を問わず王都への憧れや親しみが強いらしい。
そんな夢の王都暮らしを貴族のお抱え騎士という立場で味わえるなら是非ついていく。そんな意見が俺たちがここにきてから連日挙がっているのだという。
ソフィアが掲げる目標である『スターグリーク家の再建』のためにはいずれやらなければならないことだ。反面、財政的に安心できない今、新しい組織を抱えるかは悩ましい。
だが、今日既に四人目になる応募者を見て、一概に断るべきだと言い切れないと思い始めてきていたところだ。
「マルクさんか。本日は応募いただいたこと誠に感謝する。さて、さっそく本題に入るのだが──」
予め決めていた質問をしようとして、近くの部屋から甲高い悲鳴が聞こえてきた。
「ソフィア様の声っす!」
マルクさんは言うが早いか、面接官である俺を置いて部屋から飛び出していった。
面接よりソフィアの身の安全、か。
俺はそう呟くと、リストの四行目に印をつけて部屋を出た。俺としてもソフィアに何かあっては困るのでな。
──数時間後。
ソフィアがいる部屋にネズミが出現する事件が起きて以降、特に問題が発生することなく午後の部が始まっていた。
昼食を抜いてエントリーシートに目を通していた俺は、気づけば一時を回っていることに気づいた。そろそろ応募者が来る頃だと思っていると、ちょうどよく扉が叩かれた。
「どうぞ」
俺が一言そう言うと、扉がガチャリと開いた。
その開いた扉から姿を現した人物に、俺は驚き言葉を失った。
「し、失礼す……失礼、します」
慣れない言葉遣いに嚙みまくる目の前の中性的な容姿の人物は、俺の顔をしっかりと捉えながら。
「……急を要するんだ。助けてくれないかい?」
体のところどころに獣っぽい体毛が見え隠れするコイツは、先日も俺を拉致りかけた自称魔物のスターだった。
信号装置でソフィアに緊急事態を伝えると、あっという間に部屋の外が静かになっていく。
手筈通り、列になって待機中だったのであろう応募者が返されたのだろう。
貴族が直接行う面接ということで、危険人物へのマニュアルも整えてあったのだ。
正直なところ俺たちも冒険者だしよほどの相手でなければ暴徒一人取り押さえるくらいはできるだろう。そのうえ、応募者も皆腕自慢なはずだし頼れば問題ないとも考えた。だが、俺はこの国においてそこそこ偉い立場になってしまっていたようで、提案は却下されてしまった。
さて、この子の処遇について考えていると、隣室にいたはずのソフィアとマキ、ジョージさんが駆けつけてくれた。
「ケンジロー殿! 無事でございますかな⁉」
「よくぞここまで足を踏み入れましたね、くせ者! しかしアタシたちに目をつけられたのが運の尽きなのです!」
「正直に罪を認めれば罰は軽くできるわ。神妙に……って、アンタまさか⁉」
仲間が一様に魔物のスターを警戒する中、ソフィアのみまるで知り合いを目にした様子だ。
「おいソフィア。お前コイツと知り合いなのか?」
様子がおかしいソフィアに振ると、魔物のスターはバッと振り向いたと思えば次の瞬間には抱き着いていた。
突然すぎる展開に目を白黒させるソフィアだが、かわいそうなことに魔物のスターは涙目で頬ずりするだけで離れる気配はなさそうだ。
驚かされたがこちらに危害を加える気はないようで安心した。
と、しばらく目をパチクリさせていたソフィアだったが、数秒で我に返ると魔物のスターを宥めるように頭を撫でながら俺の疑問に答えてくれた。
「熱鉱山の村でのことがあったとき、私がいなかったじゃない。あの時、魔力切れで道端に倒れていた私をこの子が助けてくれたのよ」
そうだったのか。
俺なんて殺されそうになったのだが、そんな奴が仲間の女の子と百合百合しているという事実にめまいがする。
結果として少し人には言いずらいことになってしまったのも含めてあまり思い出したくない。
そういえば、この子が俺を襲った理由をまだ聞いていなかった気がする。
「そうならば熱鉱山にいた時に声をかけてっくれればよかったのです。ソフィアを助けてくれたという以上、アタシたちがあなたを邪険に扱うわけがないじゃないですか」
マキもこう言ってるし、下手なこと言わずに優しくしてやるとしよう。
俺が悪いわけではないが、思い出すと不快になるイベントに、そっと心の中の臭いものにふたをした。
希望の光を感じ取ったように顔を上げる魔物のスターは、ニコニコ笑うだけのジョージさんを経由して、今度は俺に視線を向けた。すると、ソフィアとマキもつられてこちらを見てくる。
やめろよ、まるで俺がひどいことをしたみたいじゃないか。
ある意味否定できないところでもあるので、当然こう答えるしかない。
「この状況で追い返すわけにもいかないからな。用件を話してみろ」
コイツを見捨てるか否かは話を聞いてからでも遅くはない。
そうして言葉を促すと、魔物のスターは俺の仲間たちにも見守られながらゆっくりと口を開いた。
「実は、妖魔教団に狙われているんだ」
なんだと⁉
一言目から聞き捨てならないその言葉を聞いたソフィアとマキがは、俯き気味に話す魔物の子にバッと抱き着いた。
可哀そうな目に遭ったであろうこの子を慰めるように。
一瞬離れてほしそうにした魔物の子だが、悪意がないのが伝わったのかすぐされるがままとなった。
「それは本当か? もしそうだとしたら、妖魔教団とことあるごとに交戦している俺たちとしても見捨てにくいが」
自分で言っていて、いったいどうしてこうなってしまったのかと頭を抱えそうになる。
せせらぎがきれいな森林地帯で楽だと思った依頼を受けたら『旗槍』と接敵したのが事の発端か。あそこでソフィアの魔力が枯渇したからこうして旅の先々でドンパチしているわけで。
だがまあ、そのおかげでソフィアの故郷と王都が再び連絡がとれるようになったわけだし、今回の旅自体が悪いことだとは言わない。言わないが、それで納得してしまうと納まりがつかない何かが俺の中にあるわけで。
おっといけない。重要そうな話くらい余計なことを考えずに聞き入れよう。
「助けてくれるのか⁉ 実は、僕の本体はもう捕らえられてしまたんだ。今こうして君たちと話しているのは、隙を見て僕が放った幻影なのさ」
「なんですって⁉ ねえアンタ、今どこで捕らわれてるの? 今すぐ助けに行くわ!」
魔物の子が捕らわれたと聞いて血相を変えて支度を始めるソフィアを置いて、俺は気になっていたことを一言。
「エビデンスは?」
瞬間、ソフィアと同様魔物の子を愛でていたマキが素早く駆け寄って俺の首を絞めてきた。とても苦しい。
「最低です! この男、本当に本っ当に最低なのです!」
「だって仕方ないだろう⁉ もしコイツに悪意があって、ノコノコとついていったら数千もの魔物に囲まれました、とかシャレにならねえからな!」
妖魔教団と関わりがあるかまではわからないが、コイツだってれっきとした魔物なのだ。何を考えているかわからない以上、疑い過ぎるくらいがちょうどいい。
この場にいる女性陣には理解されなくても俺の考えは間違っていないはずだ。
ソフィアを助けた恩こそあれど、それは決して命を落としてでもコイツを守る理由にはならない。
他のお願いならば叶えてやれるのにな、などと考えていると、魔物の子は観念したように懐から何かの魔法道具を取り出した。
「ソフィアと……マキであってるかな? 僕のために怒らなくてもいいよ。この男の言うことは最低だけど間違っちゃいないからさ」
一見すると水晶玉のような物だ。よほどの自信があるのか、魔物の子は荒ぶる女性陣を手で静止した。
ソフィアとマキが静かになったので心落ち着かせてどう追い返そうかなどと考え始めたら、今度は特大の爆弾を投下された。
「回数制限があるけどなんでも見通せる魔法の水晶さ。今だけじゃなくて過去も見通せるんだ。例えば、昨日の夕飯を終えたくらいの頃、自分の寝室でソフィアへの陰口をつづった日記を残したそこの男の様子とかも見れるのさ」
「おい、でたらめを言うんじゃない! ……お、おいソフィア! お前までコイツのよくわからない占いもどきを信じるのか⁉ 俺は仲間だぞ⁉ なぁ‼」
──理不尽に怒られた後、俺たちは残りの面接も中止にして街の外へ出てきていた。
魔物の子が先導してくれているお陰か、一時間くらい歩いた現時点でまだ一度も野良魔物と接敵していない。それどころか索敵スキルや望遠スキルを駆使しても片手で数えられる程度、索敵範囲のギリギリを魔物が掠めたくらいだ。
厳しい寒さを生きる魔物が蔓延るこの地域では珍しいことだということは、こっちに来て以来毎日のように討伐依頼をこなした俺にはわかる。
幻影であったとしてもコイツが持つ膨大な量の魔力は、中堅クラスの魔物ですら追いやるのに十分らしい。
そんなこんなで楽しながら歩いていると、遠くの丘にちょっとした小屋のようなものが見えてきた。
試しに望遠スキルで覗き込んでみると、見張り番をしている様子の魔物が二体いるようだ。
「見張りは二体。両方とも戦士タイプっぽいが」
丘の方を指して仲間に言う。
「へぇ~、君って案外やるヤツなんだね。ここからそんな詳細に見えるなんてすごいじゃないか」
スキルを使ったのだから当たり前なのだが、まあ褒めているうちは受け入れておこう。
別にコイツのことが嫌いだから皮肉を言われたと感じたわけでは断じてない。……断じて。
「ケンジローはアーチャーですからね。望遠スキルで遠くまで見えるのですよ」
俺の代わりに答えたマキに魔物の子はなるほどと頷く。
そんな様子を見てソフィアがポツリと。
「どちらかというとスナイパーよね。戦場の外から一方的に攻撃したがるんだから。もう慣れたけど、最初はコイツの考えにはドン引きしたわ」
まるで懐かしむように空を見上げて失礼なことを言うソフィア。むかつく。
「ソフィアのような美人令嬢に褒められてモチベーションが上がってきた。よし、今度如何に射手として仕上がったかを、お前の寝込みを狙撃することで証明してやろう。具体的には定期的に窓のそばに閃光弾を撃ち込んでやる」
うふふふふ、などと気色悪い笑い声を上げ続けるソフィアだったが、俺の言葉でビクリと固まった。
「あ、あら……び、美人令嬢だなんて、女性の扱いが上手になったわね。私も鼻が高いわ。そんな紳士なケンジローは、まさか私の快眠を妨害するなんて、しないわよね?」
攻撃魔法の射程距離外から一方的にやられたらさすがのソフィアも為す術がないのだろう。ソフィアの支援魔法には状態異常攻撃を防ぐものもあるが、あくまで眩しくなるだけの環境変化なので、目は潰れなくても寝不足による不調は発生するのだ。
だからだろう。この先のことを想像してか、冷や汗をダラダラと流すソフィアは震えた声で煽ててきた。
そんなソフィアの言葉を聞いて、俺はそっぽを向いた。
「ねえ⁉ ねえってば⁉ まさか本気なの⁉ 寝不足は肌も荒れるしやめてほしいわ! ねえちょっとひどいこと言ったのは謝るからやめてちょうだい!」
素直にごめんなさいと言えばいいものを、言い訳がましく言ってくるソフィアを俺は無視した。
「敵の目の前です。茶番はその辺にしてください」
抱き着いてくるソフィアを引きはがそうとしていると、おそらく最年少であろうマキに怒られてしまった。
居た堪れなくなった俺とソフィアは無言で歩き出した。
目標は丘の中にあると思われる妖魔教団の拠点だ。
──数分後。
隠密スキル持ちのマキに見張り番を暗殺させた俺たちは拠点内部へと足を踏み入れていた。
どうやら地下に階層が伸びているタイプのようで、魔物のスターによる案内で早くも三フロア目に達したところだ。
しかし、まだ先は長いのだという。
先日、一万にも達する規模の襲撃を仕掛けたこともあってか、兵舎を兼ねているらしい地上に近いフロアは下級から中級クラスの魔物が廊下を行き来している。マキがいなければ万が一にも忍び込むなどできなかっただろうし、仲間にしていて本当に良かったと思う。
「盗賊職やってるアタシが言うのもなんですけど、こんな攻略の仕方して、冒険者としての誇りとかないのですか?」
隠密スキルの効果を受けるために全員から肩に手を置かれているマキが変なことを言い出した。
「そんなもんで飯が食えるなら、今頃この世のあらゆるダンジョンは瓦礫だらけになっているだろうな」
マキが無言で手の甲を抓ってくるので痛いのだが手を離せないのでこのまま放っておくしかない。
俺だけ隠密スキルの対象から外されそうなのでこれ以上は言わないが、俺は前々から勝てば官軍なのだと言い続けているんだ。そろそろ長い付き合いなんだからわかってほしいものである。
「バカなことを言っていないで真面目にやってくれ。僕にとっては一大事なんだぞ」
幻影でありながら隠密スキルの対象になる魔物のスターが不満そうに呟いた。
ソフィアを助けてくれた恩があることを思い出して俺たちは静まる。魔法のエキスパートである賢者と召喚された賢者、実はいい子の盗賊娘が揃っていながら魔物に注意されるというのは中々精神的にくるものがあった。
そんな俺たちにこれ以上言及する気はないのか魔物の子は再び足を動かす。
──魔物の子についていくこと更に数十分。
階を降りるごとに中級以下の魔物は少なくなり、上位の魔物や索敵能力が高い魔物が多くなってきたとき。
先導する魔物のスターに触れながら歩いていたマキが立ち止まった。
「これ以上は隠密スキルが看破される可能性があるのです。いつでも戦闘に入れるように構えていてください」
二つくらい前のフロアから薄々感じていたが、下の階に移動するのにかかる時間が明らかに長くなっている。
一つは単純にフロアが広くなったから。もう一つは。
「隠密スキルを看破してくるのは生命力を探知できるアンデッド系の魔物が多いから何とかなるけど、清浄魔法でどうにもならない相手なら出会いがしらでに音を立てずにっていうのは難しいわ」
額に手を当てて考え込むソフィアの言う通り、この辺りまで潜ると小細工が通用しにくくなってくるのだ。
幸い、ここまででバレた回数は二回で、いずれも先手を打って無力化したので大騒ぎに放っていない。
しかし、これから先も同じとはいかないだろう。
最初から無謀だったと言えばそれまでだが、だからといって諦めるわけにはいかない。
そうして全員で頭を捻っていると、突如フロア全体に警報音が鳴り響いた!
『敵襲! 敵襲! 見張り番が倒れているのが見つかった! 侵入者が既に内部深くに入り込んでいる可能性がある! 総員、速やかにフロア内を捜索し、侵入者を捕らえよ! この際、侵入者の生死は問わないものとする! 見つけ次第、始末せよ!』
そんな物騒な警報を聞いた俺たちは全速力でこの場から逃げだした──!
──あの後、辺りが静かになるまで一心不乱に逃げ続けた。
幸いにも廊下ですれ違う魔物にバレずに済んだのだが、また一つ問題が発生した。それは。
「……はぐれたな」
「……はぐれたね」
すっかり静かになった廊下の隅にそんな声が二人分。
警報によって一斉に厳戒態勢が敷かれたフロアを必死に逃げていたら仲間とはぐれてしまったのだ。
「ソフィアとマキは一緒にいるだろうか。隠密スキルを持ってて足も速いマキなら心配いらないが、魔法特化のソフィアじゃ閉所で接敵したら大変だ」
一緒にいくれればいいのだが、と願う俺たちもバレたら一巻の終わりだ。人のことを心配している場合じゃないのはわかっているものの心配でならない。
ここ最近は俺もだいぶヤツらに絆されたと自覚しているが、そろそろ悪意のある者に付け入る隙になっていそうなので今後は少し非情になった方がいいかもしれないな。
さて、そんなことより敵の気配がないうちに移動しようと思う。
ハンドサインで魔物の子に動くことを伝えると、俺はそのまま辺りを見渡す。
逃げているうちにどこかの部屋にでも入り込んだのか、やけに近代的な部屋に巨大なガラス管のようなものが並んでいた。
まるでサイエンスフィクションに出てくる人工生物の培養器みたいな雰囲気すら感じるのだが、部屋の対角にあるポットには溶液と一緒に人型の何かが安置されており。
って、あれは⁉
「なあ、あれってまさか」
魔物の子に問いかけると「如何にも」と言った様子で頷いた。
大声でドヤ顔をしないのは、コイツも今声を出すことがどれほどのリスクかわかっているからだろう。
再び、培養ポット(仮称)に目を向けると、中の人物は確かに魔物の子に見えた。
「あそこから出してほしいんだな? 無茶さえすれば解放すること自体は可能だろうが、どうする?」
ちなみに、言うまでもないがあれほど硬そうな培養ポットを破壊するとなると、それはもう俺がとれる手段の中でも指折りの過激な方法を使うことになる。
生身のまま剣で切られても平気そうだったコイツのことだから死ぬことはないだろうが、まず間違いなく音でバレる。妖魔教団の連中がよほどの間抜けでない限りは。
そんなニュアンスは伝わったのか、魔物の子は首を横に振る。
代わりに、その辺の棚から一束の資料を持ってきてくれた。これを読めということだろうか。
「僕は妖魔教団が積極的に研究している兵器らしい。僕も詳しいことは知らないし、その資料は古代文字で書かれているからほとんどの人は読めないんだ。読めたらヒントになるんじゃないかと思って持って来たんだけど、ダメそうかい?」
ここまできて力になれないことを申し訳なく思っているらしい魔物の子は、精神的にすっかりと小さくなってしまった。
ダメで元々。そんなニュアンスで受け取った資料の表紙を見て、俺は驚きのあまり言葉を失った。
なぜなら、その資料は日本語で書かれていたからだ。
『人造神計画日誌その一
我々、日出国第三研究機構は今は亡き太陽神に相当する生命体を創造できることを突き止めた。ここでは研究日誌を記す。
○月×日 お偉いさんから新たな神を連れてこいと無茶振りされた。あのハゲ頭大丈夫なのか?
○月×日 承服しかねると伝えたが、悉く突っぱねられた。なんでも、隣国を乗っ取った妖魔教団とアライアンスを結ぶのに必要らしい。くそったれ!
○月×日 太陽神の遺体がないと不可能だとそれっぽいレポートをでっち上げた。もう何百年も前に亡くなった女神の遺体など持ってこれるもんならもってこい。ひゃっほい! 一時はどうなることかと思ったが、俺が死ぬまでに神の遺体とやらが見つからなければ一生予算齧って食っちゃ寝できるぜ!
○月×日 あかん、ホンマに持ってくるなんて思わんやん普通。女神の墓からひと房の髪束を送り付けられた。
○月×日 終わった。元々でっち上げたレポートなんだから、女神の死体の一部があったところで何もできるわけねえじゃん。パチこくにしてももっと後先考えろよ、バカがよ。……後先考えずヤケクソでレポート出したの俺やん。
○月×日 いよいよ明日は定例会だ。その段階で進捗ゼロは首が繋がっている保証はないだろう。自棄になったので今夜は夜通し飲みまくることにする。
○月×日 定例会に遅刻した俺のもとにお偉いさんが怒鳴り込んできたが、研究室の扉を開けたまま口をあんぐりと開けて固まっていた。二日酔いで吐きそうなまま同じ方を見ると、女神の髪の毛を齧ったらしいネズミが神々しい光を纏って二足歩行を始めた。これこそ神の奇跡だろう。
○月×日 特に原理が分からないままとんとん拍子で話が進んでしまった。それほどまでにお隣さんに神を譲渡するのが大事なのだろうか。
○月×日 俺の知らないところで責任者にされてた。あとは優秀な研究員が人間を神に変えてくれるらしい。……俺いらなくね?
○月×日 なんか知らんけど成功したらしい。後から聞いた話だが、国のためだと説明すると進んでその身を差し出してくれた、年端のいかない少女がいたらしい。今俺の目の前で培養ポットに収められている少女が被験者だろう。資料によると、既にこの子は人として死んでいて自我も記憶もないそうだ。なんだか俺のヤケクソのせいで少女の未来が途絶えたと思うと罪悪感を覚える。
○月×日 この人造神は『月夜見』と名付けられた。ニホン神話というおとぎ話に出てくる太陽神の血縁者というのが由来だとお偉方が言っていた。せめてこの『月夜見』が、神として幸福に過ごせることを祈る。
○月×日 人造神あらため『月夜見』は正式に妖魔教団にわたった。これで俺のプロジェクトは終わった。』
……。
…………。
……はい?
兼ねてより日出国はオーバーテクノロジーを有する国だと思っていたが、よりにもよって神を作り出していたとは。
『月夜見』が現在何をしているのか、どうなっているのかは一切記されていなかった。しかし、この場にある時点で、魔物の子と何かしらの接点があるに違いない。そのことを伝えてみると。
「僕は君たちが金のなる木を倒した際に放出された魔力で魔物のスターになったからね。それまでは低位の魔物と遜色ない存在だったけど、今では魔力量だけなら魔物の頂点に君臨していると言って過言ではない。だから、種族レベルで変わってしまった僕はそれまでの記憶がないんだ。覚えているのはせいぜい自分の年齢くらいかな。あるいは、低位過ぎて記憶が残るほどの知力がなかったのかもしれないけどね」
あはは、と切なく笑う魔物の子を見て、さすがにこの前のことも含めて申し訳なく感じてきた。
結局レポートには何もヒントはなかったが、それはそうとしてなんとかしてコイツを救えないかと考えていると、急に焦りだした魔物の子が耳打ちしてきた。
「マズい、この足音は『旗槍』だ! やっぱ僕のことはいい。君はソフィアたちを連れて逃げるんだ。絶対に振り向いちゃダメだからな!」
ヒソヒソと、でもしっかり焦った様子で伝えてきた。
確かに足音は聞こえるが、まだバレていないと思う。
バレて接近戦になるとジ・エンドなのだが、アイツは搦手に弱いタイプなのでこのままやり過ごそうと思う。
しかもおいしいことに、隣にいる誰かと話し合っているみたいなのだ。盗み聞ぎしてやるぜぇ?
侵入者がいるとも思わず呑気に話を続ける幹部に耳を傾けるとその内容が聞き取れた。
『あの魔物モドキを捕まえて上はなにをするつもりなんだろうね』
『それは言えない。某も口止めされているからな。……ただ、貴殿とは入団以来の同期だ。これは独り言だが、隣国より賜った偽神は今どうなっているのだろうな』
そんな騎士道を重んじる『旗槍』らしからぬ言い方を鼻で笑うのはおそらく『操魔』だろう。
マズいことになった。もし見つかれば前衛の『旗槍』と後衛の『操魔』を同時に捌くのは無理だ。
しかも、間抜けな『旗槍』だけならいざ知らず、『操魔』はこういう搦手に対しても妙に目敏い。隠密がバレるのも時間の問題か。
もう少しで決定的な何かを聞けそうだと思ったが、これは引き上げるしかなさそうだ。
『まあ、腑抜けたように見えて魔力量は本物さ。『月夜見』がボクたちの手に下った今、計画は次のフェーズに移行する。まったく、休みなんてないじゃないか』
『教団への失言は看過できぬぞ』
『キミはお堅いね。冗談さ』
そう言って、足音は少しずつ遠ざかっていった。
思い出したように息を吐くと、隣で縮こまる魔物の子は青ざめた表情で震えていた。
「おい、どうした」
幻影だと言っていたが、もしかしたら無理やり維持し続けて限界が来たのだろうか。
心配になって手を伸ばしたが、そっと払われた。
「君の心配していることは大丈夫さ。ただ、少しだけ昔の記憶を取り戻しただけさ。僕が魔物になる前の、神としての自我が芽生えたばかりの頃をね」
心優しい少女は神へと変えられた。
そんな『月夜見』の身に何があったのか。徐々に落ち着いてきた魔物の子改め『月夜見』は、やがてポツリと溢すように語りだした。
──数分後。
「ここまででわからないことはないかい?」
そう聞いてきた『月夜見』に、俺はこれまでの話を思い出す。
一つは神になる前の記憶はないこと。そして、神としての権能で妖魔教団を支援したら、その力を装置に転用されて魔物にされたこと。今のこの子は魔物になったことで神の権能を封印され、魔力は残っていても魔法を一つも使えないらしい。なお、『月夜見』を魔物にして何がしたかったのかまではこの子も知らないようだ。
「いや、大丈夫だ」
「そうか。じゃあ、いったん僕を装置から出してほしいな。安心しておくれ、転移魔法のスクロールをくすねていたから」
そういうわけならやってやろう。
銃の安全装置を解除して立ち上がったその瞬間、鼻先のすぐそばの空間を風の矢が走った。
「見逃してあげるわけないじゃないか」
そんな声が、部屋の入口から聞こえてきた──!
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そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
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