43 / 80
水と花の都の疾風姫編
大地の胎動
しおりを挟む
──地震発生から数分後。
瓦礫を退かしながらなんとか本館があったと思わしき場所へと戻ってこれた。
本館は一部の壁が面影を残していることを除き原型がなくなっている。右館左館は本館ほど崩れていないが、もう修繕は不可能だろう。
街中の至るところから土煙が上がっている様子をみるに、今回のが罠等による爆発ではなく地域全体を襲った地震災害であるという直感が正しかったと証明された。そんなこと、なんの救いにもなりはしないが。
当然、日本にいた頃にも地震を経験したが、体感の震度は五強といったところだろうか。
もっとも、こちらと日本の耐震基準など比べ物にならないほどの差があるので、ご覧の通り揺れの強さに対して被害は大きい。
しばらくしているうちに街内放送が響き渡ってきた。
『大地震発生! 大地震発生! 倒れやすい家屋や外壁などには近づかず、お近くの避難所へ焦らず冷静に向かってください!』
アナウンスの声からは隠しきれない焦燥感と絶望が伝わってくる。
無理もないだろう。霧の国で周辺諸国の歴史を調査した際、地震の頻度が少なくて驚いたくらいなのだ。今アナウンスで必死に避難を呼びかけている人も経験したことないはずだ。
何かしらの形で手を貸してやるべきだと考えていると、瓦礫の一部が浮き上がりそこから魔法でバリアを張ったソフィアが出てきた。
こちらに気づいたソフィアが瓦礫の上を駆けてくる。
「よかった! ケンジローは怪我とかしてない⁉」
「左肩を少し擦ったがそれ以外は無事だ。ソフィアこそ怪我はなかったか?」
「私は揺れ始めた瞬間から魔法で守ったから平気よ。それより、支援魔法とか何もかかってないアンタが生き埋めにならなくてよかったわ」
はぐれたあとも一人で寂しい……怖い思いをしたであろうソフィアだが、そんな様子を悟らせないよう気丈に振る舞っているのがわかる。本当は怖かっただろうが、それでも俺の安否を優先してくれるような、他者への慈しみや配慮がコイツの魅力だと再認識させられた。
「安心してくれていい。俺のことはいいから、先にマキと『月夜見』と合流するんだ。俺は災害対応の支援をしてくる」
アナウンスの通りなら街の中心部は未曽有の大混乱に陥っていることだろう。
そして、住人たちを統制する役員たちとて地震の対応など習っていないはずだ。少なくとも、霧の都の災害対応マニュアルに地震対策なんて書いてなかったし、ジョージさんに聞いても地震が少ない北西諸国では見かけないとのこと。
となれば、大きい余震が起こる前に住人が崩れやすい建物に近寄らないように促さなければなるまい。
「……そうだ。こんなのを見つけたからお前に預けておく。帰ったら王女様に報告した方がいい書類だ。それじゃ、危ないことはするんじゃねえぞ」
何か言いたそうなソフィアに捲し立てるように伝えるべきことを伝えた俺は、全速力で街の中心部を目指した。
──夜半過ぎ。
日が暮れて生き残った人々が避難所で食事をとったのを見て回った俺は、崩落を免れたフロート辺境伯の屋敷へ身を寄せていた。
というか、ソフィアたちが先に辺境伯の屋敷にいると聞いたから避難所ではなく屋敷へ行ったのだ。俺は厚かましくないはずだ。
被災した街の世話になることに罪悪感を覚えるが、その分くらいは街に貢献したと思うことにした。
ソフィアと離れた後、俺は街にいくつかある避難所を回り、片っ端から魔導拡声器を用いて指示を出していた。
日本では当たり前とされる震災直後の動きが、この街ではほとんどの住人ができていなかったのだ。
幸い、これほど建造物への被害があったにもかかわらず、死者は奇跡ともいえるゼロだった。ベテラン冒険者がそこら中にいるため、地域の共助がいい方向に働いたのだろう。怪我人は少なくないが、命に係わるレベルの怪我を負った者は街の聖職者たちが優先的に治療を進めているそうだ。軽傷者については明日、ソフィアが避難所を回って治療にあたると言っていた。
余震対策もばっちり叩き込んでやったし今日のところは休んでいいだろう。さすがに色々あり過ぎた上にインフラが止まったため風呂に入れず不快感を覚えるが、いったん寝てリセットしよう。
そんなことを考えてぼんやりしていると、宛がわれた部屋の扉が叩かれた。
「ケンジロー殿、起きているだろうか。災害の件で近隣の街と情報交換ができた。優れた対応力を見せた貴殿の意見を聞きたいのだが、付き合ってもらえるだろうか」
フロート辺境伯の声だった。
微かに疲れを感じさせるトーンから察するに、こんな遅くまで近隣地域の偉い人たちと連絡を取り合っていたのだろう。
仕方ない。ソフィアたちは寝ているかもしれないが、ここは俺が同盟関係が確固たるものだと証明すべく力になるとしよう。
着替えたばかりの衣服から後ろの部分が長い執事服へと着替え直した俺は、フロート殿が待つ応接室へと向かった。
ほどなくして応接室に入り室内を見渡す。既にフロートさんとソフィア、それから初対面の貴族らしい初老の男性が二人いた。この二人がフロートさんと連絡を取り合っていたという方々だろう。
俺が席に着いたところでフロートさんが音頭を取り会議を始めた。
「では、揃ったので始めよう。まずは状況確認から行う故、手元の資料に目を通しつつ──」
近隣地域まで含めた全体的な状況を知らない俺とソフィアに向けた状況説明が始まった。
要約すると、二名のおじさんたちはそれぞれ葉薊の街と睡蓮の街を治める貴族だという。そして、その街との位置関係や被害についても知ることができた。
「以上になるが。ここまでで気になったことはあるだろうか」
フロートさんの言葉に、隣の席にいるソフィアが挙手。
「霧の国より友好の使者として訪れているソフィア・ラン・スターグリークと申します。早速ですが、一点確認しておきたいことがあります。この度の地震は自然発生したものでしょうか。それとも、土属性に秀でた魔物の仕業でしょうか」
なるほど。さすがは異世界。
自然災害に対して、何者かによる攻撃の可能性まで考慮する必要があるのか。
そういえば、ソフィアも竜巻を起こす魔法を使えるもんな。だが、ああいう魔法は確か。
「ちょっと待ってほしい。ソフィアの言わんとすることはわかるが、災害を再現する魔法って威力は本物より低いんだろう。あんな本物みたいな規模の地震を起こせるものなのか?」
「それは、術者が人間に限った場合の話よ。例えば、ドラゴンを使役できる人が強い地龍を使えば大きな地震や地割れだって起こせるはずよ」
まあ、そもそもドラゴン自体が気まぐれで使役しづらいうえに、ある程度年齢を重ねた個体でないと無理でしょうけどね。と、ソフィアが付け加えた。
つまり、悪意のある人物が権力を持っていた場合、貴重なドラゴン使いと強力なドラゴンをカネで用意して悪事を働くことも可能といえば可能なのか。
「疑問は晴れた。ありがとな」
感謝を伝えるとドヤ顔を向けられた。少しウザいが頼りになるので放っておこう。
ソフィアの説明を聞いて拍手で応えた者が一人。葉薊の街を治める貴族が先ほどのソフィアの問に答える。
「まだ詳細な術者は割り出せていないが、地震が強かった集落から土属性の魔力痕が確認できた。地震を起こす魔法によるものとみて間違いないでしょうな」
「ありがとうございます。術者次第では私たちで対応できるかもしれませんので、何かわかったことがあればまた共有してください」
そう告げるソフィアの手首を、テーブルの影で見えないように気を付けながらチョップする。
少なくともドラゴンが使役されているかもしれないレベルの相手なのに安請け合いするんじゃない。
一瞬恨めしそうな視線を向けられたが、俺は何も悪くないはずなのでスルーの姿勢。
「頼りになりますな。いや、スターグリーク家ご令嬢の活躍は、隣国である我が国でも有名でございますからな」
そうか。有名なのか。これは使えそうだ。
もし困ったら『あの有名な霧の賢者だぞ』と喧伝して回ろうかと考えていると、俺の黒い思考に気づいていないであろうソフィアが袖を軽く引いてきた。
「恐縮です。……ですが、魔術戦には心得がありますので、任せてください。そこで、具体的な術者の居場所が分かればいいのですが」
袖を引いた意図は、術者がどこで魔法を使ったのか炙り出せということだろう。
詳しい計算は地学を習えば日本の大人は誰でもできるはずだが。
素直に専門家ヅラするのも悪くはないが、ここまで返答以外で喋っていなかった睡蓮の街の領主がフロート辺境伯の隣へと移動した。
震源を把握できているのだろう。この世界ではメートル法などほとんど普及していないが、いったいどれほどの精度を見せてくれるのだろうか。少し楽しみである。
ちなみに、メートル法を含むSI単位系を流行らせようと躍起になった結果、この頃は少しずつ学者の口から単語を耳にすることになった。ヤードポンド法なんかに負けてたまるか。このままこの世界で初であり唯一となる国際単位系の座を獲得するのだ。ヤーポン滅ぶべし。
そんなことを考えているうちに、壁に大きめの地図が貼られていく。
縮尺は薔薇の街と葉薊の街、それから睡蓮の街がすっぽり収まる程度だ。
葉薊の街と薔薇の街は比較的近く、それぞれ東西に二百キロメートルほど。睡蓮の街へはここから北へ五百キロメートル以上ある。余談だが、首都までは直線距離でも北北西へ千キロメートル以上あったと記憶している。この距離を半日で走破する王家御用達竜車のすごさを改めて理解した。だって、東京博多間を新幹線で移動するような時間感覚なのだから。現代日本ならいざ知らず、科学技術の水準で劣るこの世界での足としては意外だと言わざるを得ない。
そんな位置関係にある三つの街でそれぞれ強い揺れを観測したというのだから、恐ろしい規模の地震であったことがうかがえる。
そして、地図上に円が書かれているが、どうやらその範囲のどこかが震央らしい。
「半径六十キロメートル以上ありそうな円だな。……ソフィアはあの円を見て、魔法の分析と術者の追跡はできそうか?」
話を聞きながら、微妙な表情を浮かべるソフィア。
そんな彼女に念のため聞いてみるが。
「無理に決まっているわ」
即答された。そりゃそうだ。
「せめて、この十分の一くらいの面積なら、現場の痕跡とかを見て術者を追跡できそうだけれど」
ソフィアのそんな言葉を聞いて、ようやく自分の出番が来たと確信した。
挙手をして困り顔を浮かべる貴族三人に発言許可をもらい、地図の前へ移動する。
「葉薊の街と睡蓮の街の初期微動継続時間……ああっと、揺れ始めてから揺れが強くなるまでの時間を教えて下さい。計測に必要なんで」
あぶねえ。地震に疎いこの辺りの人に伝わらないことを言うところだった。
貴族相手に知識をひけらかしに来たわけではないのだから、敵愾心を煽るような言動は控えれば控えるほどいい。
「ある程度の精度があれば体感でもいいですよ」
そう言ってやると、葉薊の領主と睡蓮の領主が互いに目を見合わせ、順番に答えた。
「十二秒、いや十三秒ほどだったと感じましたぞ」
「睡蓮の街では強く揺れるまでかなり長かったのう。一分は経っていないだろうが、十秒くらいは誤差があるだろう」
「そうですか。ありがとうございます」
メモを取りながら生返事。礼節に欠く態度だが計算中なので許してほしい。
薔薇の街では二十五秒ほどだったのを数えているので、これで震源の深さまで割り出せそうだ。
「震源との距離が八キロメートル離れるごとに一秒長くなるから……。算出できた。ソフィア、これならどうだ」
初期微動継続時間がそれぞれ体感なので誤差はあるだろうが、ほとんど点と言っていい範囲にまで魔法の発動地点を推測できた。
一連の計算を見ていた偉い大人たちも関心をもってくれたようで自己肯定感が爆上がりする。
現代の知識で無双する異世界でのお待ちかねイベントである。
思えば、これまでは剣と魔法の冒険者生活かと思いきや普通に銃や地雷が存在するわ、貴族同士のえぐい腹の探り合いとかを目の当たりにしてガッカリしていたっが、ようやくそれっぽい体験を得られた。
「いけると思うわ」
新たに地震魔法の発生地点を割り出した地図を見てソフィアがハッキリ言い切った。これには貴族連中もいい反応を示す。
ここまでとんとん拍子で事が進んでいるが、震源地を割り出した俺が言うのも憚られるもののすごく不安だ。
というのも、日本人の感覚からしても大地震と言っていいであろう震災が震源付近では起きていたと容易に想像がつくからだ。
人間が使う災害を再現する魔法はいずれも局所的かつ本物には威力面で遠く及ばない。にもかかわらず、おそらくものと思われる魔法でこれほど大規模な災害を起こったのだから、相応の存在が確実にいるということだ。
今までなんだかんだ強敵と渡り合ってきた俺たちだが、今回ばかりはきついと思う。
しかも、このまま話が進むと多分。
「さすがは賢者殿! 術者の特定と討伐。討伐が叶わぬなら撃退あるいは封印を任せたいが、期待していいですかな?」
やめろジジイ! 単純でまっすぐなソフィアを唆すんじゃない!
友好の使者としての職務を逸脱しかねない展開に、俺はソフィアに耳打ちする。
「いいか、ソフィア。引き受けるのは術者の特定までだからな。それ以上は命を落としかねない」
ソフィアの返事はない。
代わりに、ゴミを見る目を向けられたので、それが返答だろう。
それでもいい! 罵倒くらいなら甘んじて聞き流してやるから、その賢い頭で請けるべきかの線引きはしっかりするんだぞ!
祈るようにテーブルの下で両手を組むなか、考えがまとまったらしいソフィアは貴族たちに返答する。
「術者と魔法の特定までは約束します。しかし、国際法に則り術者への武力の行使は致しかねます。あくまで私たちは霧の国の使者ですので、その職務の範囲内でのみ協力しますが、それでよろしいですか?」
不安鹿なかったが、意外にもソフィアは線引きをキチンとしていた。
俺に言われずともなんとかなったのかもしれないな。
いや、違うな。
このメスガキ、俺を見る時と同じ目を貴族たちにも向けている。当の本人らは美少女に睨まれたところで痛痒も感じないだろうが、俺にはわかる。
自国のことくらい自国で解決しろ、と。暗にそう言い捨てているのだ。
……コイツ俺のこととやかく言えないな?
「そ、そうですか。それは些か残念ですな。仕方ありませぬが、術者の件は任せましたぞ」
葉薊の領主が返事をすると、フロートさんと睡蓮の領主も頷いた。地震魔法の調査についてはこれでいいとして、あとは災害対応についてどのように連携するか話すだろうし、俺とソフィアの役目はここで終わりだろう。
気分転換に深呼吸すると、その瞬間ドッと眠気を感じた。
意識していなかったが結構疲れたらしい。
もっとも、それはソフィアも同じらしく。
「わたくしとケンジローでお茶を淹れてこようかと思いますが、お砂糖は入れますか?」
彼女は貴族の御三方に問いかけた。
娘世代の美少女の気の利いた言動に葉薊と睡蓮の領主が露骨に気分良さそうにしたまさにその瞬間だった。
思わずホッとした会議室の雰囲気を嘲笑うように、建物が揺れ始めた!
瓦礫を退かしながらなんとか本館があったと思わしき場所へと戻ってこれた。
本館は一部の壁が面影を残していることを除き原型がなくなっている。右館左館は本館ほど崩れていないが、もう修繕は不可能だろう。
街中の至るところから土煙が上がっている様子をみるに、今回のが罠等による爆発ではなく地域全体を襲った地震災害であるという直感が正しかったと証明された。そんなこと、なんの救いにもなりはしないが。
当然、日本にいた頃にも地震を経験したが、体感の震度は五強といったところだろうか。
もっとも、こちらと日本の耐震基準など比べ物にならないほどの差があるので、ご覧の通り揺れの強さに対して被害は大きい。
しばらくしているうちに街内放送が響き渡ってきた。
『大地震発生! 大地震発生! 倒れやすい家屋や外壁などには近づかず、お近くの避難所へ焦らず冷静に向かってください!』
アナウンスの声からは隠しきれない焦燥感と絶望が伝わってくる。
無理もないだろう。霧の国で周辺諸国の歴史を調査した際、地震の頻度が少なくて驚いたくらいなのだ。今アナウンスで必死に避難を呼びかけている人も経験したことないはずだ。
何かしらの形で手を貸してやるべきだと考えていると、瓦礫の一部が浮き上がりそこから魔法でバリアを張ったソフィアが出てきた。
こちらに気づいたソフィアが瓦礫の上を駆けてくる。
「よかった! ケンジローは怪我とかしてない⁉」
「左肩を少し擦ったがそれ以外は無事だ。ソフィアこそ怪我はなかったか?」
「私は揺れ始めた瞬間から魔法で守ったから平気よ。それより、支援魔法とか何もかかってないアンタが生き埋めにならなくてよかったわ」
はぐれたあとも一人で寂しい……怖い思いをしたであろうソフィアだが、そんな様子を悟らせないよう気丈に振る舞っているのがわかる。本当は怖かっただろうが、それでも俺の安否を優先してくれるような、他者への慈しみや配慮がコイツの魅力だと再認識させられた。
「安心してくれていい。俺のことはいいから、先にマキと『月夜見』と合流するんだ。俺は災害対応の支援をしてくる」
アナウンスの通りなら街の中心部は未曽有の大混乱に陥っていることだろう。
そして、住人たちを統制する役員たちとて地震の対応など習っていないはずだ。少なくとも、霧の都の災害対応マニュアルに地震対策なんて書いてなかったし、ジョージさんに聞いても地震が少ない北西諸国では見かけないとのこと。
となれば、大きい余震が起こる前に住人が崩れやすい建物に近寄らないように促さなければなるまい。
「……そうだ。こんなのを見つけたからお前に預けておく。帰ったら王女様に報告した方がいい書類だ。それじゃ、危ないことはするんじゃねえぞ」
何か言いたそうなソフィアに捲し立てるように伝えるべきことを伝えた俺は、全速力で街の中心部を目指した。
──夜半過ぎ。
日が暮れて生き残った人々が避難所で食事をとったのを見て回った俺は、崩落を免れたフロート辺境伯の屋敷へ身を寄せていた。
というか、ソフィアたちが先に辺境伯の屋敷にいると聞いたから避難所ではなく屋敷へ行ったのだ。俺は厚かましくないはずだ。
被災した街の世話になることに罪悪感を覚えるが、その分くらいは街に貢献したと思うことにした。
ソフィアと離れた後、俺は街にいくつかある避難所を回り、片っ端から魔導拡声器を用いて指示を出していた。
日本では当たり前とされる震災直後の動きが、この街ではほとんどの住人ができていなかったのだ。
幸い、これほど建造物への被害があったにもかかわらず、死者は奇跡ともいえるゼロだった。ベテラン冒険者がそこら中にいるため、地域の共助がいい方向に働いたのだろう。怪我人は少なくないが、命に係わるレベルの怪我を負った者は街の聖職者たちが優先的に治療を進めているそうだ。軽傷者については明日、ソフィアが避難所を回って治療にあたると言っていた。
余震対策もばっちり叩き込んでやったし今日のところは休んでいいだろう。さすがに色々あり過ぎた上にインフラが止まったため風呂に入れず不快感を覚えるが、いったん寝てリセットしよう。
そんなことを考えてぼんやりしていると、宛がわれた部屋の扉が叩かれた。
「ケンジロー殿、起きているだろうか。災害の件で近隣の街と情報交換ができた。優れた対応力を見せた貴殿の意見を聞きたいのだが、付き合ってもらえるだろうか」
フロート辺境伯の声だった。
微かに疲れを感じさせるトーンから察するに、こんな遅くまで近隣地域の偉い人たちと連絡を取り合っていたのだろう。
仕方ない。ソフィアたちは寝ているかもしれないが、ここは俺が同盟関係が確固たるものだと証明すべく力になるとしよう。
着替えたばかりの衣服から後ろの部分が長い執事服へと着替え直した俺は、フロート殿が待つ応接室へと向かった。
ほどなくして応接室に入り室内を見渡す。既にフロートさんとソフィア、それから初対面の貴族らしい初老の男性が二人いた。この二人がフロートさんと連絡を取り合っていたという方々だろう。
俺が席に着いたところでフロートさんが音頭を取り会議を始めた。
「では、揃ったので始めよう。まずは状況確認から行う故、手元の資料に目を通しつつ──」
近隣地域まで含めた全体的な状況を知らない俺とソフィアに向けた状況説明が始まった。
要約すると、二名のおじさんたちはそれぞれ葉薊の街と睡蓮の街を治める貴族だという。そして、その街との位置関係や被害についても知ることができた。
「以上になるが。ここまでで気になったことはあるだろうか」
フロートさんの言葉に、隣の席にいるソフィアが挙手。
「霧の国より友好の使者として訪れているソフィア・ラン・スターグリークと申します。早速ですが、一点確認しておきたいことがあります。この度の地震は自然発生したものでしょうか。それとも、土属性に秀でた魔物の仕業でしょうか」
なるほど。さすがは異世界。
自然災害に対して、何者かによる攻撃の可能性まで考慮する必要があるのか。
そういえば、ソフィアも竜巻を起こす魔法を使えるもんな。だが、ああいう魔法は確か。
「ちょっと待ってほしい。ソフィアの言わんとすることはわかるが、災害を再現する魔法って威力は本物より低いんだろう。あんな本物みたいな規模の地震を起こせるものなのか?」
「それは、術者が人間に限った場合の話よ。例えば、ドラゴンを使役できる人が強い地龍を使えば大きな地震や地割れだって起こせるはずよ」
まあ、そもそもドラゴン自体が気まぐれで使役しづらいうえに、ある程度年齢を重ねた個体でないと無理でしょうけどね。と、ソフィアが付け加えた。
つまり、悪意のある人物が権力を持っていた場合、貴重なドラゴン使いと強力なドラゴンをカネで用意して悪事を働くことも可能といえば可能なのか。
「疑問は晴れた。ありがとな」
感謝を伝えるとドヤ顔を向けられた。少しウザいが頼りになるので放っておこう。
ソフィアの説明を聞いて拍手で応えた者が一人。葉薊の街を治める貴族が先ほどのソフィアの問に答える。
「まだ詳細な術者は割り出せていないが、地震が強かった集落から土属性の魔力痕が確認できた。地震を起こす魔法によるものとみて間違いないでしょうな」
「ありがとうございます。術者次第では私たちで対応できるかもしれませんので、何かわかったことがあればまた共有してください」
そう告げるソフィアの手首を、テーブルの影で見えないように気を付けながらチョップする。
少なくともドラゴンが使役されているかもしれないレベルの相手なのに安請け合いするんじゃない。
一瞬恨めしそうな視線を向けられたが、俺は何も悪くないはずなのでスルーの姿勢。
「頼りになりますな。いや、スターグリーク家ご令嬢の活躍は、隣国である我が国でも有名でございますからな」
そうか。有名なのか。これは使えそうだ。
もし困ったら『あの有名な霧の賢者だぞ』と喧伝して回ろうかと考えていると、俺の黒い思考に気づいていないであろうソフィアが袖を軽く引いてきた。
「恐縮です。……ですが、魔術戦には心得がありますので、任せてください。そこで、具体的な術者の居場所が分かればいいのですが」
袖を引いた意図は、術者がどこで魔法を使ったのか炙り出せということだろう。
詳しい計算は地学を習えば日本の大人は誰でもできるはずだが。
素直に専門家ヅラするのも悪くはないが、ここまで返答以外で喋っていなかった睡蓮の街の領主がフロート辺境伯の隣へと移動した。
震源を把握できているのだろう。この世界ではメートル法などほとんど普及していないが、いったいどれほどの精度を見せてくれるのだろうか。少し楽しみである。
ちなみに、メートル法を含むSI単位系を流行らせようと躍起になった結果、この頃は少しずつ学者の口から単語を耳にすることになった。ヤードポンド法なんかに負けてたまるか。このままこの世界で初であり唯一となる国際単位系の座を獲得するのだ。ヤーポン滅ぶべし。
そんなことを考えているうちに、壁に大きめの地図が貼られていく。
縮尺は薔薇の街と葉薊の街、それから睡蓮の街がすっぽり収まる程度だ。
葉薊の街と薔薇の街は比較的近く、それぞれ東西に二百キロメートルほど。睡蓮の街へはここから北へ五百キロメートル以上ある。余談だが、首都までは直線距離でも北北西へ千キロメートル以上あったと記憶している。この距離を半日で走破する王家御用達竜車のすごさを改めて理解した。だって、東京博多間を新幹線で移動するような時間感覚なのだから。現代日本ならいざ知らず、科学技術の水準で劣るこの世界での足としては意外だと言わざるを得ない。
そんな位置関係にある三つの街でそれぞれ強い揺れを観測したというのだから、恐ろしい規模の地震であったことがうかがえる。
そして、地図上に円が書かれているが、どうやらその範囲のどこかが震央らしい。
「半径六十キロメートル以上ありそうな円だな。……ソフィアはあの円を見て、魔法の分析と術者の追跡はできそうか?」
話を聞きながら、微妙な表情を浮かべるソフィア。
そんな彼女に念のため聞いてみるが。
「無理に決まっているわ」
即答された。そりゃそうだ。
「せめて、この十分の一くらいの面積なら、現場の痕跡とかを見て術者を追跡できそうだけれど」
ソフィアのそんな言葉を聞いて、ようやく自分の出番が来たと確信した。
挙手をして困り顔を浮かべる貴族三人に発言許可をもらい、地図の前へ移動する。
「葉薊の街と睡蓮の街の初期微動継続時間……ああっと、揺れ始めてから揺れが強くなるまでの時間を教えて下さい。計測に必要なんで」
あぶねえ。地震に疎いこの辺りの人に伝わらないことを言うところだった。
貴族相手に知識をひけらかしに来たわけではないのだから、敵愾心を煽るような言動は控えれば控えるほどいい。
「ある程度の精度があれば体感でもいいですよ」
そう言ってやると、葉薊の領主と睡蓮の領主が互いに目を見合わせ、順番に答えた。
「十二秒、いや十三秒ほどだったと感じましたぞ」
「睡蓮の街では強く揺れるまでかなり長かったのう。一分は経っていないだろうが、十秒くらいは誤差があるだろう」
「そうですか。ありがとうございます」
メモを取りながら生返事。礼節に欠く態度だが計算中なので許してほしい。
薔薇の街では二十五秒ほどだったのを数えているので、これで震源の深さまで割り出せそうだ。
「震源との距離が八キロメートル離れるごとに一秒長くなるから……。算出できた。ソフィア、これならどうだ」
初期微動継続時間がそれぞれ体感なので誤差はあるだろうが、ほとんど点と言っていい範囲にまで魔法の発動地点を推測できた。
一連の計算を見ていた偉い大人たちも関心をもってくれたようで自己肯定感が爆上がりする。
現代の知識で無双する異世界でのお待ちかねイベントである。
思えば、これまでは剣と魔法の冒険者生活かと思いきや普通に銃や地雷が存在するわ、貴族同士のえぐい腹の探り合いとかを目の当たりにしてガッカリしていたっが、ようやくそれっぽい体験を得られた。
「いけると思うわ」
新たに地震魔法の発生地点を割り出した地図を見てソフィアがハッキリ言い切った。これには貴族連中もいい反応を示す。
ここまでとんとん拍子で事が進んでいるが、震源地を割り出した俺が言うのも憚られるもののすごく不安だ。
というのも、日本人の感覚からしても大地震と言っていいであろう震災が震源付近では起きていたと容易に想像がつくからだ。
人間が使う災害を再現する魔法はいずれも局所的かつ本物には威力面で遠く及ばない。にもかかわらず、おそらくものと思われる魔法でこれほど大規模な災害を起こったのだから、相応の存在が確実にいるということだ。
今までなんだかんだ強敵と渡り合ってきた俺たちだが、今回ばかりはきついと思う。
しかも、このまま話が進むと多分。
「さすがは賢者殿! 術者の特定と討伐。討伐が叶わぬなら撃退あるいは封印を任せたいが、期待していいですかな?」
やめろジジイ! 単純でまっすぐなソフィアを唆すんじゃない!
友好の使者としての職務を逸脱しかねない展開に、俺はソフィアに耳打ちする。
「いいか、ソフィア。引き受けるのは術者の特定までだからな。それ以上は命を落としかねない」
ソフィアの返事はない。
代わりに、ゴミを見る目を向けられたので、それが返答だろう。
それでもいい! 罵倒くらいなら甘んじて聞き流してやるから、その賢い頭で請けるべきかの線引きはしっかりするんだぞ!
祈るようにテーブルの下で両手を組むなか、考えがまとまったらしいソフィアは貴族たちに返答する。
「術者と魔法の特定までは約束します。しかし、国際法に則り術者への武力の行使は致しかねます。あくまで私たちは霧の国の使者ですので、その職務の範囲内でのみ協力しますが、それでよろしいですか?」
不安鹿なかったが、意外にもソフィアは線引きをキチンとしていた。
俺に言われずともなんとかなったのかもしれないな。
いや、違うな。
このメスガキ、俺を見る時と同じ目を貴族たちにも向けている。当の本人らは美少女に睨まれたところで痛痒も感じないだろうが、俺にはわかる。
自国のことくらい自国で解決しろ、と。暗にそう言い捨てているのだ。
……コイツ俺のこととやかく言えないな?
「そ、そうですか。それは些か残念ですな。仕方ありませぬが、術者の件は任せましたぞ」
葉薊の領主が返事をすると、フロートさんと睡蓮の領主も頷いた。地震魔法の調査についてはこれでいいとして、あとは災害対応についてどのように連携するか話すだろうし、俺とソフィアの役目はここで終わりだろう。
気分転換に深呼吸すると、その瞬間ドッと眠気を感じた。
意識していなかったが結構疲れたらしい。
もっとも、それはソフィアも同じらしく。
「わたくしとケンジローでお茶を淹れてこようかと思いますが、お砂糖は入れますか?」
彼女は貴族の御三方に問いかけた。
娘世代の美少女の気の利いた言動に葉薊と睡蓮の領主が露骨に気分良さそうにしたまさにその瞬間だった。
思わずホッとした会議室の雰囲気を嘲笑うように、建物が揺れ始めた!
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~
カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。
気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。
だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう――
――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。
【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~
みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】
事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。
神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。
作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。
「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。
※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる