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お兄ちゃんとリアル妹

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『かぷっ、かぷかぷかぷ……んっはぁ、くすくすくす、お兄ちゃんって耳たぶを嬲られるの弱いんだあ、ザコすぎーwww』

「……ん、んぅ?」



 寝ぼけ脳と股間に刺激を与えるメスガキの声。

僕は昨晩、男娼が黒板を爪で引っ掻くASMRを聞きながらすやすやと天使のようにオネンネは致しましたが、このような心が沸き立つナマ幼女のボロカス囁きASMR動画を聞いていた覚えはありません。そもそもイヤホンが耳から抜け落ちておりますのでASMR動画ではない事は明らかです。



 さて、メスガキボイスが至近距離から聞こえることから推測するに僕のスマホが発信源であることは明白です。ふむ、このような素晴らし、ではなく悪質なご褒美、ではなく悪戯をする人物はこの家には一人しかいません。その人物には後程、じっくりとねっとりとたっぷりと説教をすると致しまして一先ずは二度寝タイムに入るとしましょう。



『ズガガガガガガガ、ドドッドドドッドドドドド、バリバリバリバリッガッッシャッーーン』



 お布団に入り、すやすやと悪魔のようにオネンネを再開しようとすると今度は目覚まし時計から爆撃機が窓ガラスをマシンガンで狙撃するようなけたたましい音が鳴り響きます。僕の目覚まし時計のデフォルト音は女王様にシバかれて喘ぐおやぢの声だったはずなのですが。



『顔だけでなく耳まで真っ赤になっててマジでキモすぎ~www 雑魚過ぎでヤッッバ~~イwww ザーコ! ザーコ! ザーコ! ザーコ!』

『ウォオオオオオオオオオ、ズガガガガガガガガガッ、ドドドドドッドンツクドンツク、おギャアアアアア』



 悲鳴があちこちで響き渡る戦場でメスガキがお構いなしに僕のお耳を攻撃するというカオスな状況になってしまいましたので僕は仕方なく起き上がり、スマホと目覚まし時計の音を止めます。やれやれ、気持ちの良い朝から皆様のお兄ちゃんである僕をいぢめるとは一体どういうつもりなのでしょう。



────



「小夜さよ、僕の前に座りなさい」



 夜、僕は朝の素敵な悪戯に対してお説教をするために二つ年下の実の妹である小夜を呼びました。リビングのソファーで寛いでいた小夜は気怠そうな顔で振り向きます。



「既に座ってるんですけど」

「それは結構。お兄ちゃんは全●土下座でクレーマーにお仕置きしているA●男優と同じくらい怒っているのですよ?」

「突然何を言い出すんだ、このゴミ」



 僕に軽蔑の眼差しで見つめ、暴言を吐く小夜。

実の兄に向かってゴミとは……素晴らしい、じゃなくヒドイデス(タ●ちゃんボイス)。



「分かっているのですか? 同僚だった社員が突然会社を辞めたと思ったらA●女優に転職していた時と同じくらいお兄ちゃんはびっくり発情したのですよ?」

「何時まで続けるんだそのクソみたいな意味不明な例え。さっきから何が言いたいのかさっぱり分かんないんですけど。言いたいことがあるならハッキリ言ってよ」



 おっと、興奮しすぎて思わず訳の分からないことをツイートしてしまいました。小夜はイライラしているのか今にも僕の乳房に噛みつく様なオーラで僕を威嚇します。いやだ、ハゲしい。



「今朝の乳房の件についてお聞きしたいのですが」

「はあ?」

「おっと、失礼。間違えました。今朝の目覚ましボイスの件についてお聞きしたいのですが」

「間違う要素どこにある? なに、私にセクハラ発言したかっただけ? そろそろコ●してもいい?」



 ソファーから立ち上がり、ニコニコと笑顔で僕に近寄ってきます。ウッッ、僕の膝の上に座りなさいと言いましたのに(←言っていない)。



「ぼっ暴力はやめましょう、暴力は。お兄ちゃんに対して愛欲があっても暴力はいけないことです。まずは落ち着いて冷静に貴方様のお兄ちゃんである僕の乳首を愛撫しながらお話を……」

「お前に対して愛欲なんか一切ないけど、純粋なお前を痛めつけるというただの暴力を行使しようとしているだけだよ。はあ、まあいいよ。で? 今朝の目覚ましボイスの件って何?」

「ええ、今朝ですね、阿鼻叫喚の地獄のような戦場で魔法使いである僕(39)にナマ幼女がボロカスに囁いてきたのですが……知らないですか?」

「何だそれ、目覚ましボイスの話はどこにいった。ますます訳が分からないんですけど。ていうか『ナマ』とか言うな、キモいんですけど」

 

 なんと。

小夜はエッチな目覚ましボイスについてどうやら何も知らないようです。おかしいですね、5年前はよく僕に悪戯を仕掛けて、楽しませてくれた実に兄想いの妹でしたのに。



「分かりました、エッチボイスの件は取り敢えずは小夜の可能性も無きにしも非ず、という結論で小夜のまな板パイ乙に置いておきます」

「お前、私の話を聞いていたか? 嬲りコ●スぞ?」

「それです、それ……皆様のお兄ちゃんである僕に『お前』呼ばわりは無いでしょう、ちゃんと『お兄ちゃん』と呼んでくださいませ」

「何が、『皆様のお兄ちゃん』だよ。あとその作ったような気持ち悪い敬語はヤメロ。昔はそんなんじゃなかったでしょ」

「昔……。そうですね、僕と小夜が一糸纏わぬ姿で一緒にお医者さんゴッコをした楽しい記憶が蘇りますね……嗚呼、えくすたしい」

「何か私の知らない記憶が来た。妄想も大概にしておけよ、変態」

「ありがとうございます」

「そこでお礼はおかしいだろ、こら」



 特に今朝の目覚ましボイスの件で何の収穫も得られるぬまま夜が更けていきました。ふむ、小夜ではないとしたらいったい誰があの悪戯を仕掛けたというのでしょうか。分からないですが、僕の脳内妖精さんが仕掛けた悪戯ということにしておきましょう。
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