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昔、昔の話し
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【昔、昔の話し】
まだ、神々との交流があった時代に一人の青年がいた。
その青年は、時折起こる現象”異界の隙間”から落ちてきた。
その世界では物珍しい黒い髪と黒い瞳だった。
その青年を見つけ、拾った神は寵愛し大事にした。
世界の言葉が話せない青年は、唯一言葉の通じる神を信頼していた。
互いに信頼し合っていた。
当時、神に外せない用事が出来てしまう。神殿にいる神官達をいまいち信用できない神はふと思い出した。
少し前に、気まぐれに少しの加護を与えていた魔法師を呼び寄せた。
神が呼び青年の前に現れたのは、銀の髪に紫眼の麗しい姿をした魔法師だった。
神は言う。自身が帰って来るまで側にいろと。
当然、魔法師は渋った。神の寵愛を受けている青年だとしても、言葉が通じない以上無理だと、難しいと、そう思った。
渋りつつも、魔法師はこの事は決定事項だろうなと考えていた。
だから神伝いに聞いた青年は、一人でも大丈夫だと言い、魔法師にも生活があるので無理強いは駄目だと進言していた。
魔法師は驚いた。神伝いに聞いた青年の言葉に。まず、自身の姿を見ても何の反応を嫌悪感も見せないことに。次に神に進言したことに。
少しの興味が湧いた魔法師は、必要最低限で良ければと伝えた。
その言葉を聞き、神は大層喜んだ。その姿を見て、魔法師は今度は動揺した。
神は青年に何かを伝えると、直ぐに側からいなくなった。用事を早々に片付けに行ったのだろう。
二人だけの空間になり、暫くはどちらも動かず静寂な間が続いた。
三ヵ月後に戻って来た神は驚いた。
身振り手振りで説明している青年と、その青年を真っ直ぐに見つめ笑っている魔法師がいたからだ。
離れたところにいた神に青年が気付き、魔法師に直ぐに伝えていた。
言葉は通じていないのに二人は信頼し合っていた、その姿を見て神は喜んだ。
神が帰ってきた事により、魔法師はお役御免となった。だが、時折、魔法師は時間を作っては青年の元へと通うようになった。
やって来た魔法師を青年は毎回喜んで出迎え、そんな二人を見て神は微笑ましく見守る。
その日常が崩れたのは直ぐだった。
その時も神は用事があり、青年の側を離れるため魔法師に頼んでいた。
頼んでいた、筈だった。
戻った神が見たのは、燃え盛る大陸だった。
踏み入れた場所は溶け出すほどの熱を持つ陸地となり、面した海も熱く生き物の姿が見えない。
むしろ、避ける姿が見える。
何事があったと神が急ぎ自身の神殿へと行くと、黒煙を上げ、瓦礫の山となっていた。
その前には、目立つ銀色が何かを両腕で、自らの身体で守るように蹲る姿があった。だが、周りを囲うように神官や武器を持った近隣国の兵士がいた。
神はその者達に視線を向けず、その銀色が、その両腕で何を守っているのか、気になった。が、見たくもなかった。
現実を受け止めたくなかった。気配を、感じないのだ。寵愛し、大事にしていた存在の、気配が。
それでも神は、銀色の魔法師に近寄った。(近寄りたくない)
確認しなくてはならない。(確認したくない)
近付く神に周りにいた者達は離れ、気配に気づいた魔法師はその身に魔力を迸らせはじめた。
息も絶え絶えの魔法師にとってそれは、命を削る行為だった。
その力を神は弾き、魔法師が守るように、見せないよう被せていたローブを捲り、中を見た。(見たくはなかった)
魔法師の腕から、青年を抱き上げて見る。
いつもはにこにことしている口元の端からは、一筋の赤い血が流れ、血色良く紅色に染まる頬は青白く、真っ直ぐとこちらを見る黒い瞳は閉じられている。
何があった、と神が聞く前に周りにいた者達が騒ぎ出す。
だが、神にはその内容は聞きたくも無いものだった。
曰く、神の寵愛を受ける青年が邪魔だったと。
曰く、青年さえいなくなれば神の関心はこちらへと向くと。
曰く、そうすればもっとこの大陸は潤うと。
そう騒ぐ者達の言葉に魔法師は怒りを露にしていく、その怒りは直ぐに掻き消えた。
神の表情を見て、本来の神の姿を、魔法師は思い出す。
この神の本来の性質は、恐ろしく残酷な姿なのだと。
何故、忘れていたと魔法師は思ったが、直ぐに答えにいきついた。
青年だと。青年がいたからこそだと。
ぼんやりと神の腕の中にいる青年を見る。
もう、青年は動かない。
もう、笑いかけてくれない。
もう、笑い声が聞けない。
もう、青年に会えないのか。
魔法師はそう思った瞬間、どうでもよくなった。
荒ぶる神の気配を感じ、自身もこのまま死ぬのだろうと分かっても、どうでもいいと思った。
ただ、青年の顔を見ながら死にたいと思い、神の力に当てられ、その身が崩れていくのも気にせず近付く。
近付き青年の顔を見る。口元にある赤い筋を拭い取り、額に口付け、何かを呟く。
そして、魔法師は愛しいと言わんばかり表情で崩れて消えた。
それを見た周りにいた者達は漸く自分達のした事に気付き、誰を怒らせたのか自覚した。
許しを請うも許される筈もなく、神の怒りにより、その大陸は人の住めない土地となった。
***
「と、言う訳でこの土地は千年以上たった今でも人は住めないが、今現在高ランクの魔物がいると確認されている」
黒板の前で説明する教師は、教室の後ろに視線を送る。そこには不自然に場所が空き、ポツンと一つの机がある。
目立つ銀髪の少年が頬杖付き、つまらなさそうにその紫眼の瞳をこちらに向けていた。
教師は向けられたその瞳を見て、恐怖感が沸き上がる。
千年前、神の寵愛を受けた人間を殺害。それにより起こった神の怒りは呪いとなり、いまだ人の住めない土地となっている。
そのことよりも、この千年で語られるのは神の怒りより、銀の魔法師の方が多い。
千年。幾度か同じ色を纏う銀の魔法師が確認されていた。
そして毎回、その魔法師は国を滅ぼすのだ。理由は未だ解かっていない。
ただ、とある研究者が銀の魔法師は寵愛を受けていた人物を探しているのでは、と仮説を立てていた。
信憑性はあった。なんせ銀の魔法師が現れる所には、神の加護を受けていると言われている者がいたからだ。
だから、教師は恐怖感で一杯だった。今いるこの国にも、神の加護を受けていると言われている人物がいたからだ。
何が原因でこのつまらなさそうな顔をした少年が、いつこの国に牙を向けるのか分からずにいた。
まだ、神々との交流があった時代に一人の青年がいた。
その青年は、時折起こる現象”異界の隙間”から落ちてきた。
その世界では物珍しい黒い髪と黒い瞳だった。
その青年を見つけ、拾った神は寵愛し大事にした。
世界の言葉が話せない青年は、唯一言葉の通じる神を信頼していた。
互いに信頼し合っていた。
当時、神に外せない用事が出来てしまう。神殿にいる神官達をいまいち信用できない神はふと思い出した。
少し前に、気まぐれに少しの加護を与えていた魔法師を呼び寄せた。
神が呼び青年の前に現れたのは、銀の髪に紫眼の麗しい姿をした魔法師だった。
神は言う。自身が帰って来るまで側にいろと。
当然、魔法師は渋った。神の寵愛を受けている青年だとしても、言葉が通じない以上無理だと、難しいと、そう思った。
渋りつつも、魔法師はこの事は決定事項だろうなと考えていた。
だから神伝いに聞いた青年は、一人でも大丈夫だと言い、魔法師にも生活があるので無理強いは駄目だと進言していた。
魔法師は驚いた。神伝いに聞いた青年の言葉に。まず、自身の姿を見ても何の反応を嫌悪感も見せないことに。次に神に進言したことに。
少しの興味が湧いた魔法師は、必要最低限で良ければと伝えた。
その言葉を聞き、神は大層喜んだ。その姿を見て、魔法師は今度は動揺した。
神は青年に何かを伝えると、直ぐに側からいなくなった。用事を早々に片付けに行ったのだろう。
二人だけの空間になり、暫くはどちらも動かず静寂な間が続いた。
三ヵ月後に戻って来た神は驚いた。
身振り手振りで説明している青年と、その青年を真っ直ぐに見つめ笑っている魔法師がいたからだ。
離れたところにいた神に青年が気付き、魔法師に直ぐに伝えていた。
言葉は通じていないのに二人は信頼し合っていた、その姿を見て神は喜んだ。
神が帰ってきた事により、魔法師はお役御免となった。だが、時折、魔法師は時間を作っては青年の元へと通うようになった。
やって来た魔法師を青年は毎回喜んで出迎え、そんな二人を見て神は微笑ましく見守る。
その日常が崩れたのは直ぐだった。
その時も神は用事があり、青年の側を離れるため魔法師に頼んでいた。
頼んでいた、筈だった。
戻った神が見たのは、燃え盛る大陸だった。
踏み入れた場所は溶け出すほどの熱を持つ陸地となり、面した海も熱く生き物の姿が見えない。
むしろ、避ける姿が見える。
何事があったと神が急ぎ自身の神殿へと行くと、黒煙を上げ、瓦礫の山となっていた。
その前には、目立つ銀色が何かを両腕で、自らの身体で守るように蹲る姿があった。だが、周りを囲うように神官や武器を持った近隣国の兵士がいた。
神はその者達に視線を向けず、その銀色が、その両腕で何を守っているのか、気になった。が、見たくもなかった。
現実を受け止めたくなかった。気配を、感じないのだ。寵愛し、大事にしていた存在の、気配が。
それでも神は、銀色の魔法師に近寄った。(近寄りたくない)
確認しなくてはならない。(確認したくない)
近付く神に周りにいた者達は離れ、気配に気づいた魔法師はその身に魔力を迸らせはじめた。
息も絶え絶えの魔法師にとってそれは、命を削る行為だった。
その力を神は弾き、魔法師が守るように、見せないよう被せていたローブを捲り、中を見た。(見たくはなかった)
魔法師の腕から、青年を抱き上げて見る。
いつもはにこにことしている口元の端からは、一筋の赤い血が流れ、血色良く紅色に染まる頬は青白く、真っ直ぐとこちらを見る黒い瞳は閉じられている。
何があった、と神が聞く前に周りにいた者達が騒ぎ出す。
だが、神にはその内容は聞きたくも無いものだった。
曰く、神の寵愛を受ける青年が邪魔だったと。
曰く、青年さえいなくなれば神の関心はこちらへと向くと。
曰く、そうすればもっとこの大陸は潤うと。
そう騒ぐ者達の言葉に魔法師は怒りを露にしていく、その怒りは直ぐに掻き消えた。
神の表情を見て、本来の神の姿を、魔法師は思い出す。
この神の本来の性質は、恐ろしく残酷な姿なのだと。
何故、忘れていたと魔法師は思ったが、直ぐに答えにいきついた。
青年だと。青年がいたからこそだと。
ぼんやりと神の腕の中にいる青年を見る。
もう、青年は動かない。
もう、笑いかけてくれない。
もう、笑い声が聞けない。
もう、青年に会えないのか。
魔法師はそう思った瞬間、どうでもよくなった。
荒ぶる神の気配を感じ、自身もこのまま死ぬのだろうと分かっても、どうでもいいと思った。
ただ、青年の顔を見ながら死にたいと思い、神の力に当てられ、その身が崩れていくのも気にせず近付く。
近付き青年の顔を見る。口元にある赤い筋を拭い取り、額に口付け、何かを呟く。
そして、魔法師は愛しいと言わんばかり表情で崩れて消えた。
それを見た周りにいた者達は漸く自分達のした事に気付き、誰を怒らせたのか自覚した。
許しを請うも許される筈もなく、神の怒りにより、その大陸は人の住めない土地となった。
***
「と、言う訳でこの土地は千年以上たった今でも人は住めないが、今現在高ランクの魔物がいると確認されている」
黒板の前で説明する教師は、教室の後ろに視線を送る。そこには不自然に場所が空き、ポツンと一つの机がある。
目立つ銀髪の少年が頬杖付き、つまらなさそうにその紫眼の瞳をこちらに向けていた。
教師は向けられたその瞳を見て、恐怖感が沸き上がる。
千年前、神の寵愛を受けた人間を殺害。それにより起こった神の怒りは呪いとなり、いまだ人の住めない土地となっている。
そのことよりも、この千年で語られるのは神の怒りより、銀の魔法師の方が多い。
千年。幾度か同じ色を纏う銀の魔法師が確認されていた。
そして毎回、その魔法師は国を滅ぼすのだ。理由は未だ解かっていない。
ただ、とある研究者が銀の魔法師は寵愛を受けていた人物を探しているのでは、と仮説を立てていた。
信憑性はあった。なんせ銀の魔法師が現れる所には、神の加護を受けていると言われている者がいたからだ。
だから、教師は恐怖感で一杯だった。今いるこの国にも、神の加護を受けていると言われている人物がいたからだ。
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