思いついたBL短編集

佐芥

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BLぽくない?

どちらが囚われている?2

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『気持ち悪い! 近付くな!!』
 血の繋がった兄姉は言った。
『このような気味の悪い者は、私の子ではないわ!!』
 産みの母は言った。
『使えなければ捨てるだけだ』
 産ませた父は言った。
『お可哀想に……でも、あのような目では……ねぇ?』
 クスクスと笑いながら、使用人達は言った。


 忌み嫌われ、地下室へと入れられた。食事も、二、三日に一回、もらえれば良いほうだ。
 毎日が地獄の日々だった。
 血縁の家族の機嫌が良くても、悪くても、魔法の的にされたり、武器の試し切りもされた。
 死なないよう、ギリギリを治され傷跡は残っていく。
 そして、七つの時、転機が訪れた。
 自分には魔力が無かったらしく、旦那様と呼ばれていた男が告げてきた。
『使えない役立たずはこの家に、必要はない』
 気付けば一人、森のなかにいた。
 さ迷い歩いていれば魔物と出会う。目から暖かいものが流れた。
 ああ、死んだ。これで自分は自由だと思ってしまった。
 目を閉じ、その爪が、牙が自分を穿つのを待つ。散々苦しんだのだから、一瞬で楽になりたいと望みながら。

 でも、その望みは叶わなかった。

 魔物は背後から穿たれ、その血を自分は浴びた。苦しそうに呻き声を上げながらこちらに倒れる魔物を見る。
 魔物の血を浴びたせいで全身は赤く染まっている。そして血の匂いが酷い。
 倒れた魔物の背後には、人の形をした、ナニかがいた。
 そのナニかは自分を見て、とても綺麗な笑顔を向け近付いて来た。
 そして言った。
「ココで魔物に喰われ死ぬのと、ワタシに魂を喰われ死ぬのはどちらがヨイ?」
 その台詞で、人ではないということは分かった。
 魔物を瞬時に殺せるんだ、自分なぞ簡単に殺せるだろうに、何故聞いてきたのだろうと思った。
 じぃ、とこちらを見ている綺麗な人に、ふと、一つの思惑が思い浮かんだ。成功しても、しなくても、どちらでも構わない。
 あの、元家族に復讐ができるかもしれない。
 今できる、精一杯の笑顔を作り言う。
「貴方は悪魔様ですか。魂は勿論のこと身体も食べるのですか? それなら少し肥らせて食べるのをオススメします」
 こんなにも綺麗なら、悪魔というのは納得できる。
 地下室に入れられる前に読んだ本に書いてあった。
 どうだろうかと伺い見ると、とても楽しそうな表情をしていた。
「いいダロウ」
「!」
 悪魔は自分と目線を合わせるように屈み、黒爪の両の手が頬を伝わせ『契約ダ、その命、その身体はワタシのダ』そう言い、口元をいびつに歪ませた。
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