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第2章

1 外れた二人①

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 新年が明けて初日。
 出勤するやいなや、マグカップ片手にデザイン室から出てくる理雄先輩に出くわした。
「あ。あけましておめでとうございます」
「おう、おめでとう」
 二十センチくらい高い位置からこちらを見下ろしながら、いつもどおり無愛想にいつもと変わらない短いあいさつをした後、理雄先輩は部に設置してあるコーヒーメーカー目指して通り過ぎていった。

 毎朝デスクでコーヒーを飲んでいることは知っていたものの、あの朝ドリップしていた姿を見た後だと、印象が変わる。
 先輩が淹れてくれたコーヒーと職場のコーヒーの味にはだいぶ差があるように思うけど、あんまりこだわりないのかな。
 いったい何にこだわって何にこだわらない人なのか、そういえば長いつき合いの割にあんまり知らないかもしれない。というか、そういう主張をわざわざしてくるタイプじゃない。
 これからソフレとしてつき合っていくなら、少しずつでも把握していきたいところだ。

 年末年始は推しのテレビ出演が続いたり帰省したりで忙しくて、理雄先輩とは会っていないどころか連絡も取っていなかった。
 クリスマスの後、三日間は職場ここで顔を合わせていたけど、二人で飲みには行かなかったし、そういう話を何もしていない。
 また添い寝したいなー、と、PCを立ち上げながら、久しぶりにあの日のことを思い返す。

 健康維持のために週一くらいでジムに行ってるとは聞いていたけど、そのくらいの頻度でもあの胸板をキープできるのは、体質なんだろうか。
 身長は一八六センチって言ってたから、推しのZee様より少し高いくらい。運動量としてはZee様のほうが圧倒的に多いだろうに、Zee様はもっとスッキリとした体型だ。
 あんなに立派な体躯をお持ちでありながら特にスポーツをせずに生きてきたというから、持って生まれた体と人の興味とは必ずしも同じ方を向くものではないらしい。

 次に誘うとしたら、週末なのかなぁ。
 飲みに誘うのは簡単だけど、家に行って添い寝となると、どのくらいの頻度で誘えばいいか、地味に悩む。
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