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ハンバーグは幸せの形
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「鈴木さん、ご飯食べますか?」
「嗚呼、優くん。ありがとうございます。いつも作って頂いてすみません」
手にしていた鉛筆はニ・三転した後、机の端ギリギリでとまった。
「いや、大したものじゃないので。今日はハンバーグっすよ」
その一声を聞いて、胸が高鳴る。
「ホントですか。とても楽しみです」
「ええ、頑張っていらっしゃったので。俺が出来るささやかなご褒美です。」
「大きなご褒美の間違いですよ。優くんの作るご飯は美味しくて、創作活動が進みます」
彼は賛辞の言葉を聞いた後、目を見開き照れくさそうに笑った。
ハンバーグ、それは大人も子供も皆好きになる魔性の食べ物である。店で食べるようなハンバーグも勿論美味しいが、真価を発揮するのはやはり各家庭で作ったハンバーグだろう。
王道のデミグラスソースは濃厚で、箸で割り開いた際にでる肉汁とのハーモニーが非常に美味しい。
和風おろしはさっぱりとしていて、気が付いた時には無くなっている。好みによるが、大葉を合わせるとまた違った顔を見せるポテンシャルの高さ。
照り焼きは甘みを帯びていて食欲を刺激するし、トマトソースは酸味が良いアクセントになっている。いや、ホワイトソースなんかも美味しいよな。キノコを添えると尚良し。
果たして今日はどんなハンバーグなのだろうか。
「チーズハンバーグだ!とろとろチーズが沢山掛かってる、だと」
「んふっ。さあ、食べましょう」
二人で手を合わせ頂きますと声を合わせる。気を急かすように箸に手を掛け、肉片へと押し込んだ。
「チーズ入りだ」
カパリと開いたハンバーグからはこれまたトロトロのチーズが出てきた。今、自分は恍惚とした表情を浮かべているのだろうと頭の隅っこで思う。
「はははっ、そんなにうれしーですか?」
「嬉しい」
一口サイズよりもやや大きめに切り分ける。口をカッと広げて放り込んだハンバーグは、チーズと一緒に僕を温めた。
「それは幸いでーす」
「美味い。めちゃくちゃ美味い」
次は白米の上に一回のせて、米とハンバーグをセットで頬張る。合間に食べたキャベツは、キチンと千切りがされていて愛を感じた。息をつくように味噌汁を飲むと、人参がハート型になって入っている。
「あ、人参ハートだ。可愛いね」
「バレました?こだわりポイントです。ハート型可愛いでしょ」
ハンバーグをハート型にするのは、いささか恥ずかしかったのだろう。悪戯が見つかった子供みたいに笑う顔がとても可愛い。
「うん。優くんが可愛いよ」
「鈴木さん、冗談は辞めてくださいよ」
真面目くさった風に眉をひそめているが、赤くなった耳と首元は隠せていない。
「冗談じゃないんだけどなぁ」
「バッ馬鹿ですか?21歳の男が可愛いわけ無い」
「そ?28歳の僕から見たら可愛いけど」
彼の表情は、いつもコロコロと変わる。ついさっきまで子供みたいだったのに、今ではすっかり初夜を恥ずかしがる乙女だ。顔に赤みが浸食してきている。
「ばーか」
彼は目を細めた。ベーっと少し出ている舌が何だか官能的に感じてしまう。
僕は思わずゴクリと唾を飲み込んだ。普段は気にならない自分の前髪が視界に映り込んでいる。酷く鬱陶しい。
「優くん、お腹がすきました。」
「?、ご飯足りなかったですか?おかわり有りますよ」
「いえ……充分ですありがとうございます」
「そうですか?なら良いですけど」
残念ながら普段の顔に戻ってしまった。いや、普段の顔も好ましく思っているのだから残念ではないのだが。
「優くん。あの、その」
「はい。なんですか」
「今晩、どうですか?」
普段の顔から一転して体全体が真っ赤っかに変わった。ボフンという音が聞こえてきそうだ。
「鈴木さんっ。どこが琴線に触れたんですか」
「全てですね」
「ッッもう!お風呂入ってからですよ」
「はい。一緒に入りましょう」
「俺が入り終わってから入ってください。一緒に入ったら、イタズラするでしょ」
いじけたようにホッペタをぷくりと膨らます姿はいじらしい。
「おや、お嫌いで?」
「……好きですよ! 」
今度は僕が真っ赤っかになっているのだろう。
「優くんは僕の理性に感謝して欲しいですね」
「どこに理性があるんですか!」
僕のお嫁さんは今日も可愛い。
「嗚呼、優くん。ありがとうございます。いつも作って頂いてすみません」
手にしていた鉛筆はニ・三転した後、机の端ギリギリでとまった。
「いや、大したものじゃないので。今日はハンバーグっすよ」
その一声を聞いて、胸が高鳴る。
「ホントですか。とても楽しみです」
「ええ、頑張っていらっしゃったので。俺が出来るささやかなご褒美です。」
「大きなご褒美の間違いですよ。優くんの作るご飯は美味しくて、創作活動が進みます」
彼は賛辞の言葉を聞いた後、目を見開き照れくさそうに笑った。
ハンバーグ、それは大人も子供も皆好きになる魔性の食べ物である。店で食べるようなハンバーグも勿論美味しいが、真価を発揮するのはやはり各家庭で作ったハンバーグだろう。
王道のデミグラスソースは濃厚で、箸で割り開いた際にでる肉汁とのハーモニーが非常に美味しい。
和風おろしはさっぱりとしていて、気が付いた時には無くなっている。好みによるが、大葉を合わせるとまた違った顔を見せるポテンシャルの高さ。
照り焼きは甘みを帯びていて食欲を刺激するし、トマトソースは酸味が良いアクセントになっている。いや、ホワイトソースなんかも美味しいよな。キノコを添えると尚良し。
果たして今日はどんなハンバーグなのだろうか。
「チーズハンバーグだ!とろとろチーズが沢山掛かってる、だと」
「んふっ。さあ、食べましょう」
二人で手を合わせ頂きますと声を合わせる。気を急かすように箸に手を掛け、肉片へと押し込んだ。
「チーズ入りだ」
カパリと開いたハンバーグからはこれまたトロトロのチーズが出てきた。今、自分は恍惚とした表情を浮かべているのだろうと頭の隅っこで思う。
「はははっ、そんなにうれしーですか?」
「嬉しい」
一口サイズよりもやや大きめに切り分ける。口をカッと広げて放り込んだハンバーグは、チーズと一緒に僕を温めた。
「それは幸いでーす」
「美味い。めちゃくちゃ美味い」
次は白米の上に一回のせて、米とハンバーグをセットで頬張る。合間に食べたキャベツは、キチンと千切りがされていて愛を感じた。息をつくように味噌汁を飲むと、人参がハート型になって入っている。
「あ、人参ハートだ。可愛いね」
「バレました?こだわりポイントです。ハート型可愛いでしょ」
ハンバーグをハート型にするのは、いささか恥ずかしかったのだろう。悪戯が見つかった子供みたいに笑う顔がとても可愛い。
「うん。優くんが可愛いよ」
「鈴木さん、冗談は辞めてくださいよ」
真面目くさった風に眉をひそめているが、赤くなった耳と首元は隠せていない。
「冗談じゃないんだけどなぁ」
「バッ馬鹿ですか?21歳の男が可愛いわけ無い」
「そ?28歳の僕から見たら可愛いけど」
彼の表情は、いつもコロコロと変わる。ついさっきまで子供みたいだったのに、今ではすっかり初夜を恥ずかしがる乙女だ。顔に赤みが浸食してきている。
「ばーか」
彼は目を細めた。ベーっと少し出ている舌が何だか官能的に感じてしまう。
僕は思わずゴクリと唾を飲み込んだ。普段は気にならない自分の前髪が視界に映り込んでいる。酷く鬱陶しい。
「優くん、お腹がすきました。」
「?、ご飯足りなかったですか?おかわり有りますよ」
「いえ……充分ですありがとうございます」
「そうですか?なら良いですけど」
残念ながら普段の顔に戻ってしまった。いや、普段の顔も好ましく思っているのだから残念ではないのだが。
「優くん。あの、その」
「はい。なんですか」
「今晩、どうですか?」
普段の顔から一転して体全体が真っ赤っかに変わった。ボフンという音が聞こえてきそうだ。
「鈴木さんっ。どこが琴線に触れたんですか」
「全てですね」
「ッッもう!お風呂入ってからですよ」
「はい。一緒に入りましょう」
「俺が入り終わってから入ってください。一緒に入ったら、イタズラするでしょ」
いじけたようにホッペタをぷくりと膨らます姿はいじらしい。
「おや、お嫌いで?」
「……好きですよ! 」
今度は僕が真っ赤っかになっているのだろう。
「優くんは僕の理性に感謝して欲しいですね」
「どこに理性があるんですか!」
僕のお嫁さんは今日も可愛い。
応援ありがとうございます!
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