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深夜は焼おにぎり
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「ん……ドーナツの穴に落ちゃうよ~」
どういう状況なのだろうか。凄い寝言だと思いながら、ベットに足を滑り込ませた。彼は食欲がいつも旺盛だ。もっとも僕自身も人のことは言えないくらい、食事は好きな方なのだが。
「おやすみなさい」
隣で寝ている彼へと挨拶をしながら、目を閉じた。
「みたらし団子のタレに溺れる!」
ハッと、自分の声で起きた。僕は何の夢を見てるのだ。どうやらおやつの夢が、彼から移ってきたらしい。何故、洋菓子から和菓子へと変わっているのだというツッコミは、聞かないものとする。どちらも美味しいから良いのだ。
醤油の甘いタレの匂いがする幸せな夢だった。溺れ死にかけていたが。
ギュルルルとお腹の方から聞こえてきたのは、切ない虫の鳴き声だった。
「なにか、食べるか」
僕はおもむろに布団から抜け出し、キッチンへと歩き始めた。
「何にも無い……」
悲しいことに冷蔵庫の中は空っぽであった。お腹が空いているときに限って、冷蔵庫の中身がない現象の名前を、誰か僕に教えて欲しい。めぼしいものは卵とベーコンくらいだ。
トーストでも作ろうか?しかし、明日の朝食が無くなるのは痛い。恐らく明日の朝食は、ベーコンエッグトーストのはずだ。後は、卵かけご飯……醤油?
「あ」
決めた。焼おにぎりにしよう。
一度何を食べるか決めたら後は早いものだった。三角形に握った、両面に醤油が塗られているおこげ付きの焼おにぎりを、僕は食べるのだ。
焼おにぎり。それは、単純なようで奥の深い食べ物である。なぜかというと、醤油と米の割合によって味付けが大きく変わってしまうからだ。醤油とご飯を混ぜる際は、均等になるように意識をする。この時の隠し味にみりんを入れるのを、僕はおすすめしたい。程よい甘みが醤油の旨みを、更に引き立ててくれるはずだ。
ごま油をフライパンへ引き、両面に焼き目がつくまで焼く。そしたら醤油をスプーンの裏で塗りたくり、また焼くのだ。
醤油が乾くまで交互にこんがりと焼いたおにぎりは、深夜に食べるにはいささか罪な味わいになっているだろう。
罪悪感が空腹に勝ることは、不可能なのである。これは仕方無いことなのだ。
自分自身に言い聞かせた言葉は悪魔の囁きに近しいものだった。
「頂きます」
肺いっぱいになるまで息を吸った。醤油の香りが僕の体を喜ばす。
「うま」
口に広がった醤油が、僕に良い気づきを教えてくれた。醤油は米を倍以上美味しくする秘密道具だと。ありがとう醤油、ありがとうお米。
「良いな~美味しそうなものなんか食べてる!」
見つかった。元気な怪獣が現れた。
「良い匂いで起きちゃいました!何食べてるんですか?俺にも分けて下さいよ」
餌を分けてくれという姿は、大変元気があってよろしい。
「何個食べたいんだい?」
「2個で」
「はいよ」
僕は焼おにぎりを分け与えた。食べ物を大好きな人と共有することは、美味しさをプラスさせる行為だ。きっと焼おにぎりは、もっと美味しく進化するだろう。幸せと言うのは、案外こんなものなのかもしれない。
「おいし?」
「……はい」
首を傾げながら聞いた。するとどうだろう、優くんはポーッとした顔をしているではないか。
「なに?僕に見とれちゃいましたか?」
揶揄うように軽く彼に問いかける。
はにかみながら彼は、「だって、鈴木さんが素敵だったから」と笑いかけてきた。
昔から惚れた方が負けという言葉がある。きっと僕が彼に勝てる日は、いつまでたっても来ないのだろう。
どういう状況なのだろうか。凄い寝言だと思いながら、ベットに足を滑り込ませた。彼は食欲がいつも旺盛だ。もっとも僕自身も人のことは言えないくらい、食事は好きな方なのだが。
「おやすみなさい」
隣で寝ている彼へと挨拶をしながら、目を閉じた。
「みたらし団子のタレに溺れる!」
ハッと、自分の声で起きた。僕は何の夢を見てるのだ。どうやらおやつの夢が、彼から移ってきたらしい。何故、洋菓子から和菓子へと変わっているのだというツッコミは、聞かないものとする。どちらも美味しいから良いのだ。
醤油の甘いタレの匂いがする幸せな夢だった。溺れ死にかけていたが。
ギュルルルとお腹の方から聞こえてきたのは、切ない虫の鳴き声だった。
「なにか、食べるか」
僕はおもむろに布団から抜け出し、キッチンへと歩き始めた。
「何にも無い……」
悲しいことに冷蔵庫の中は空っぽであった。お腹が空いているときに限って、冷蔵庫の中身がない現象の名前を、誰か僕に教えて欲しい。めぼしいものは卵とベーコンくらいだ。
トーストでも作ろうか?しかし、明日の朝食が無くなるのは痛い。恐らく明日の朝食は、ベーコンエッグトーストのはずだ。後は、卵かけご飯……醤油?
「あ」
決めた。焼おにぎりにしよう。
一度何を食べるか決めたら後は早いものだった。三角形に握った、両面に醤油が塗られているおこげ付きの焼おにぎりを、僕は食べるのだ。
焼おにぎり。それは、単純なようで奥の深い食べ物である。なぜかというと、醤油と米の割合によって味付けが大きく変わってしまうからだ。醤油とご飯を混ぜる際は、均等になるように意識をする。この時の隠し味にみりんを入れるのを、僕はおすすめしたい。程よい甘みが醤油の旨みを、更に引き立ててくれるはずだ。
ごま油をフライパンへ引き、両面に焼き目がつくまで焼く。そしたら醤油をスプーンの裏で塗りたくり、また焼くのだ。
醤油が乾くまで交互にこんがりと焼いたおにぎりは、深夜に食べるにはいささか罪な味わいになっているだろう。
罪悪感が空腹に勝ることは、不可能なのである。これは仕方無いことなのだ。
自分自身に言い聞かせた言葉は悪魔の囁きに近しいものだった。
「頂きます」
肺いっぱいになるまで息を吸った。醤油の香りが僕の体を喜ばす。
「うま」
口に広がった醤油が、僕に良い気づきを教えてくれた。醤油は米を倍以上美味しくする秘密道具だと。ありがとう醤油、ありがとうお米。
「良いな~美味しそうなものなんか食べてる!」
見つかった。元気な怪獣が現れた。
「良い匂いで起きちゃいました!何食べてるんですか?俺にも分けて下さいよ」
餌を分けてくれという姿は、大変元気があってよろしい。
「何個食べたいんだい?」
「2個で」
「はいよ」
僕は焼おにぎりを分け与えた。食べ物を大好きな人と共有することは、美味しさをプラスさせる行為だ。きっと焼おにぎりは、もっと美味しく進化するだろう。幸せと言うのは、案外こんなものなのかもしれない。
「おいし?」
「……はい」
首を傾げながら聞いた。するとどうだろう、優くんはポーッとした顔をしているではないか。
「なに?僕に見とれちゃいましたか?」
揶揄うように軽く彼に問いかける。
はにかみながら彼は、「だって、鈴木さんが素敵だったから」と笑いかけてきた。
昔から惚れた方が負けという言葉がある。きっと僕が彼に勝てる日は、いつまでたっても来ないのだろう。
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