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出オチて!!マジカルヴァージン
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「バイバ~イ!!」
「またね~!!」
中学校の帰り道、花園花梨は手を振りながら友達に別れの挨拶をした。
いつもの様にひとり、ポニーテールを揺らしながら自宅へ向かう路地を歩いて行く。
登下校時に必ず前を通る公園に差し掛かった時、花梨は柵越しに砂場に妙なものが落ちているのに気付いた。
「あれは何かしら…!?」
好奇心に負け、公園に入り砂場へと足を運ぶ…近づくとそれは掌に載りそうなほど小さな馬のぬいぐるみであった…いや、額から角と背中から羽根が生えているのでこれはユニコーンだ。
花梨はそのぬいぐるみを手に取った。
「…ここは…地獄か…?俺はもう駄目だ…」
「きゃっ…!!何…!?」
やたらと渋い声で呻くそのユニコーンのぬいぐるみ…しかし普通のぬいぐるみがしゃべるはずも無く、花梨はとても驚きユニコーンを放り出してしまった。
「み…みずをくれ…」
「ミミズ!?私、ミミズなんか触れないよ…」
「中々やるな…何か飲ませてくれ…ウォータープリーズ…」
「ああ~水が飲みたいのね!?ちょっと待って!!」
ピント外れなやり取りの末、花梨はカバンにぶら下げていたペットボトルホルダーからペットボトルを取り出すとキャップを外しユニコーンの口にあてがった。
「…ありがとう…ぶふぉっ!?何だこれは!?」
「アゴダシソーダだよ、トビウオの出汁が効いていておいしいでしょう?」
自販機に必ず一つはあるハズレ飲料…何故か花梨はそういう物を好んで買っていた。
「ゼイ…ゼイ…味はとんでもなかったが取り敢えず水分は補給できたぜ…礼を言う」
「どういたしまして~」
胸の前で手を合わせ満面の笑みを浮かべる花梨。
ユニコーンは何とか立ち上がり花梨を見上げ、話しかけてきた。
「俺の名はジョージ…アンタは?」
「あっ…はい、私は花梨…花園花梨です」
「そうか…花梨には俺の姿が見えて声も聞こえるんだな?これは素質ありと見た…」
「えっ?それはどういう事?」
ジョージの言っている事がさっぱり分からない花梨…するとジョージはドヤ顔でこう言った。
「花梨…君には魔法処女、『マジカルヴァージン』になる素質があるんだよ!!」
「ええっ!?魔法少女!?」
「いや違う…魔法処女だ…ちょっと違うから気を付けな…これテストに出すから」
魔法処女…?魔法少女ではないの…?そんな疑問が花梨の口をつく。
「聞きなれないよな確かに…まあ百聞は一見に如かずだ…取り敢えずこれを持ってみてくれ」
花梨の目の前に光が瞬き、やがて収まると一本のマジカルステッキが現れ空中に浮かんでいた…思わずそれを手に取ってしまう。
「さあそれを天にかざして『マジカルヴァージンコンバージョン』と叫ぶんだ!!」
「…そうすれば魔法が使える…?」
花梨の様子が少しおかしい…何かに魅入られた様な虚ろな目だ。
「ああ約束しよう…さあ!!」
じっと手に握られたマジカルステッキを見つめていた花梨だが、やがて意を決して手を上に伸ばす。
「『マジカルヴァージンコンバージョン』!!」
呪文を唱えると花梨の身体が眩い光に包まれた…その光の中で彼女の服は飛び散り、その代わり布地のやたらに少ないビキニ水着の様なコスチュームが身体を包んでいた…というか全然包まさっていないのだが…。
「きゃ~~~~っ!!!何この恥ずかしい格好!!?」
咄嗟にしゃがみ込み身体を腕で抱きしめる様に隠す。
花梨の身体は同級生に比べて若干発育が遅れていたのだ。
「おおっ…!!これは中々犯罪的な…じゃなかった神々しい姿だ!!」
目を爛々と輝かせるジョージ…するとどうだろう、花梨の身体から虹色に輝く光が滲み出したかと思うと、その光はジョージの方に移っていき、やがてすべてがジョージに吸収されてしまったではないか。
花梨の手からはマジカルステッキも消えていた…しかしコスチュームはそのままだった。
「なっ…何が起こったんですか…?」
何が何やら全く分からず呆然とする花梨…その疑問にキメ顔のジョージがこう答えた。
「『マジカルヴァージン』は魔法を使った事が無い少女にのみなる事を許される存在だ…だから変身魔法を使った途端に少女はその資格を失うのさ…言うなれば魔法の処女を失ったと言う事…」
「えっ…!?」
「要するに花梨はもう『マジカルヴァージン』にはなれない…一回こっきりの変身だって事…」
「何よそれ!!魔法を使えるようになるって言ったのに!!」
「使えたろう…?一回だけ変身できたじゃないか…そうだろう?」
「………」
憤慨する花梨を一蹴するジョージ。
「だが悪く思わないでくれよ?俺は少女が『マジカルヴァージン』に変身した時に発生する『ヴァージンエナジー』を吸収し続けなければ死んでしまうんだ…お陰でもう少しだけ生きていられるよ…」
悪びれもせず堂々と言い放つジョージ。
「じゃあ俺は次のカワイ子ちゃんの元へ行くぜ!!じゃあな花梨ちゃん!!」
そう言い捨て、ジョージは何処ともなく飛び立っていった。
「ちょっと!!私の服はどうするのよ!?待ちなさ~~~~~い!!!」
花梨の叫び声だけが夕方の公園に虚しくこだました。
完
「またね~!!」
中学校の帰り道、花園花梨は手を振りながら友達に別れの挨拶をした。
いつもの様にひとり、ポニーテールを揺らしながら自宅へ向かう路地を歩いて行く。
登下校時に必ず前を通る公園に差し掛かった時、花梨は柵越しに砂場に妙なものが落ちているのに気付いた。
「あれは何かしら…!?」
好奇心に負け、公園に入り砂場へと足を運ぶ…近づくとそれは掌に載りそうなほど小さな馬のぬいぐるみであった…いや、額から角と背中から羽根が生えているのでこれはユニコーンだ。
花梨はそのぬいぐるみを手に取った。
「…ここは…地獄か…?俺はもう駄目だ…」
「きゃっ…!!何…!?」
やたらと渋い声で呻くそのユニコーンのぬいぐるみ…しかし普通のぬいぐるみがしゃべるはずも無く、花梨はとても驚きユニコーンを放り出してしまった。
「み…みずをくれ…」
「ミミズ!?私、ミミズなんか触れないよ…」
「中々やるな…何か飲ませてくれ…ウォータープリーズ…」
「ああ~水が飲みたいのね!?ちょっと待って!!」
ピント外れなやり取りの末、花梨はカバンにぶら下げていたペットボトルホルダーからペットボトルを取り出すとキャップを外しユニコーンの口にあてがった。
「…ありがとう…ぶふぉっ!?何だこれは!?」
「アゴダシソーダだよ、トビウオの出汁が効いていておいしいでしょう?」
自販機に必ず一つはあるハズレ飲料…何故か花梨はそういう物を好んで買っていた。
「ゼイ…ゼイ…味はとんでもなかったが取り敢えず水分は補給できたぜ…礼を言う」
「どういたしまして~」
胸の前で手を合わせ満面の笑みを浮かべる花梨。
ユニコーンは何とか立ち上がり花梨を見上げ、話しかけてきた。
「俺の名はジョージ…アンタは?」
「あっ…はい、私は花梨…花園花梨です」
「そうか…花梨には俺の姿が見えて声も聞こえるんだな?これは素質ありと見た…」
「えっ?それはどういう事?」
ジョージの言っている事がさっぱり分からない花梨…するとジョージはドヤ顔でこう言った。
「花梨…君には魔法処女、『マジカルヴァージン』になる素質があるんだよ!!」
「ええっ!?魔法少女!?」
「いや違う…魔法処女だ…ちょっと違うから気を付けな…これテストに出すから」
魔法処女…?魔法少女ではないの…?そんな疑問が花梨の口をつく。
「聞きなれないよな確かに…まあ百聞は一見に如かずだ…取り敢えずこれを持ってみてくれ」
花梨の目の前に光が瞬き、やがて収まると一本のマジカルステッキが現れ空中に浮かんでいた…思わずそれを手に取ってしまう。
「さあそれを天にかざして『マジカルヴァージンコンバージョン』と叫ぶんだ!!」
「…そうすれば魔法が使える…?」
花梨の様子が少しおかしい…何かに魅入られた様な虚ろな目だ。
「ああ約束しよう…さあ!!」
じっと手に握られたマジカルステッキを見つめていた花梨だが、やがて意を決して手を上に伸ばす。
「『マジカルヴァージンコンバージョン』!!」
呪文を唱えると花梨の身体が眩い光に包まれた…その光の中で彼女の服は飛び散り、その代わり布地のやたらに少ないビキニ水着の様なコスチュームが身体を包んでいた…というか全然包まさっていないのだが…。
「きゃ~~~~っ!!!何この恥ずかしい格好!!?」
咄嗟にしゃがみ込み身体を腕で抱きしめる様に隠す。
花梨の身体は同級生に比べて若干発育が遅れていたのだ。
「おおっ…!!これは中々犯罪的な…じゃなかった神々しい姿だ!!」
目を爛々と輝かせるジョージ…するとどうだろう、花梨の身体から虹色に輝く光が滲み出したかと思うと、その光はジョージの方に移っていき、やがてすべてがジョージに吸収されてしまったではないか。
花梨の手からはマジカルステッキも消えていた…しかしコスチュームはそのままだった。
「なっ…何が起こったんですか…?」
何が何やら全く分からず呆然とする花梨…その疑問にキメ顔のジョージがこう答えた。
「『マジカルヴァージン』は魔法を使った事が無い少女にのみなる事を許される存在だ…だから変身魔法を使った途端に少女はその資格を失うのさ…言うなれば魔法の処女を失ったと言う事…」
「えっ…!?」
「要するに花梨はもう『マジカルヴァージン』にはなれない…一回こっきりの変身だって事…」
「何よそれ!!魔法を使えるようになるって言ったのに!!」
「使えたろう…?一回だけ変身できたじゃないか…そうだろう?」
「………」
憤慨する花梨を一蹴するジョージ。
「だが悪く思わないでくれよ?俺は少女が『マジカルヴァージン』に変身した時に発生する『ヴァージンエナジー』を吸収し続けなければ死んでしまうんだ…お陰でもう少しだけ生きていられるよ…」
悪びれもせず堂々と言い放つジョージ。
「じゃあ俺は次のカワイ子ちゃんの元へ行くぜ!!じゃあな花梨ちゃん!!」
そう言い捨て、ジョージは何処ともなく飛び立っていった。
「ちょっと!!私の服はどうするのよ!?待ちなさ~~~~~い!!!」
花梨の叫び声だけが夕方の公園に虚しくこだました。
完
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