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第20話 伝説の女勇者の伝説
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シャルロットが石造りの長い階段を降りるとやがてやや広めの部屋へとたどり着いた。
何かの魔法的な仕掛けで灯っているであろう蝋燭が壁を囲う様に並んでいるので部屋内はかなり明るかった。
そして奥の壁には大きな水晶玉が鎮座した祭壇と思しきものが存在していた。
「…ここは一体…?」
キョロキョロと辺りを見回す。
しかし何故、森の開発などを嫌う耳長族の森にこんな人口建造物があるのか…。
頭に響く謎の声に導かれるままここに来てしまったシャルロットだが今になって一抹の不安が心に湧き上がって来た。
『良く来ましたねシャルロット…』
ここに来るまで頭の中に聞こえていた声と同じ声が再びシャルロットに語り掛けてくる。
突然の事に一瞬身体がビクンと跳ねる。
無理もない…今迄と違い謎の声がハッキリと自分に向けて話しかけてきたのだから。
その声はどうやら祭壇の水晶玉から発せられている様だ。
「…あなたは誰!?ここは一体何なんですか!?何故私の名前を知っているのですか!?」
彼女の口から矢継ぎ早に質問が飛び出す…そうでもしていないと不安に耐えられなくなりそうだったからだ。
『質問は一つずつにしてくれない…?そんなにいっぺんには答えられません…』
謎の声は半ば呆れたように返事を返して来る。
「…済みません…」
『まあいいわ…こちらも不必要に脅かしてしまった事を謝罪しましょう…
今のあなたには突然の事で何が何やら分からない事ですものね』
謎の声は案外気配りの出来る存在の様だ。
『では質問に答えましょう…私はこの祠の番人…そうは言っても私の身体はとうに滅んでしまいましたが…私は二千年前の伝説を然るべき者に伝えるのが役目…』
「…二千年前の伝説…」
シャルロットは思い出していた…。
今より小さかった子供の頃…就寝前に母であるエリザベート王妃が添い寝しながら語ってくれた昔ばなし…。
「遥か昔…
世界にはエターニア王国はおろか、大陸にまだ一つも国が無い頃…。
強大な力を持った魔王とその配下の邪悪な者たちが現れました。
魔王たちは三日で大陸を蹂躙し海を渡って別の大陸の侵略に乗り出そうとしたその時…女勇者様と彼女の仲間たちが立ちふさがります。
女勇者様は女神様の祝福を受けた剣と盾と鎧を纏い次々と魔王の配下を打ち倒していきました。
戦いの中で多くの仲間を失いましたが女勇者様は一人になっても戦い抜き激闘の末、遂に魔王を打ち倒しました。
しかし魔王は滅ぶ間際にこう言い残します。
「儂は必ず二千年後に復活を遂げてこの世界を手に入れて見せるぞ!!……それまでお前は生きてはいまい!!儂の活躍をあの世で指をくわえて見ているがよい!!ワッハッハ~!!」
と…」
「ふえっ…魔王は復活してしまうの…お母様?」
エリザベートのあまりの迫真の演技に怯えるシャルロット。
「大丈夫!!女勇者様は魔王にこう言ったのよ!!」
「やれるものならやってみなさい!!お前が復活しても必ずや私の子孫があなたの野望を挫くでしょう!!」
「わぁ…」
右腕を突き上げ勇ましく宣言するエリザベート。
すると一転、シャルロットの瞳が輝き出す。
「ねえねえ!!私も武芸を習えば女勇者様の子孫と一緒に魔王と戦える!?」
「そうね…しっかり努力を積めば戦えるかもね…」
優しく頭を愛娘の撫でる。
「うん!!明日から武芸の練習する!!」
「う~ん…シャルロットはまだ小さいからもう少ししてからね…」
「うん!!」
(女勇者様の伝説…!!あれは本当の話だったんだ…)
シャルロットの頭の中で一つの結論が出た…パズルの抜けていたピースが嵌った時の様な感覚だ。
それから祠の番人が語った伝説の内容はほぼエリザベートの昔ばなしと同意なので割愛する。
『しかし、魔王が復活を宣言した二千年までにはまだ三年あるはずなのですが…彼の眷属が既に活動を開始している様なのです…』
(アルタイルの言っていた『無色の疫病神』の事ねきっと…)
祠の番人は先程然るべき者に伝説を伝えると言っていた…と言う事は…シャルロットにある仮説が思い浮かぶ。
「もしかするとですけど…女勇者様の子孫って私の事でしょうか…
私だけがここに呼び出されているという事はそう言う事ですよね?」
『何で先に気付いちゃうの!?勿体つけて後で驚かそうと思ったのに~』
どこか祠の番人は悔し気だ…もしかすると生前はかなり茶目っ気のある人物だったのではないだろうか。
『オホン…まあいいでしょう…話が早い事に越したことはありません…
単刀直入に言います…シャルロット、あなたにはあの怪物を倒して頂きます…』
「えっ!?そんなことが可能なのですか!?」
再生能力と生命力や能力の吸収能力を有し、耳長族とアルタイルが協力しても全く歯が立たなかった相手…尚且つ炎系の魔法が使えないなどの戦闘ロケーション的に制限のある戦いをどう戦えばよいのか。
『可能です…それが私、じゃなかった…女勇者ダイアナの血を引く者の力…』
「そんな力が私に…?」
自分の両手を見つめるシャルロット…にわかには信じられないと言った顔だ。
『しかしその力を十分に発揮するにはそれなりの装備が必要です…』
祠の番人がそう言うと床の一部が開き、下から新たに床がせりあがって来た。
現れた台座には女性用の鎧と一振りのミドルソードが乗っていた。
「これは…」
『これらの装備は二千年前の戦いで女勇者ダイアナが実際に使っていた物です…
剣の方は『未来の剣』、鎧の方は『過去の鎧』と呼ばれています…』
シャルロットは目を見張った。
目の前にあるそれらはとても二千年前の物とは思えない程保存状態が良く、剣には刃こぼれ一つ、鎧には傷一つなかったのだ。
『本当は『現在の盾』という円形の盾があったのですけど行方知れずになってしまって…しかし『無色の疫病神』を倒すにはこれで十分可能なはずです…さあ…』
『過去の鎧』が光り輝きながら宙に浮く…やがてそれらは各パーツに分離し勢いよくシャルロットの目がけて飛んで来た…衣服が弾け飛び全裸になった彼女に頭、肩、胸、腰、手甲、脛…身体の各所に次々と装着されていく『過去の鎧』。
「わあっ…素敵…」
装着終了後、自分の身体を見回す…そこはに美しい女戦士…いや女勇者が現れたのだ。
『過去の鎧』は俗に言うビキニアーマーと言われる事がある物で、デコルテやお腹、二の腕に太腿と肌がこれでもかと露出している物だ。
鎧としては機能的にどうかと思われるが、全身を女神の加護が包み込んでいるので防御力としての問題は無いのだ。
「…ちょっと胸がキツイかな…」
夕食時に食べたパイチの実のせいでシャルロットの胸は年齢に不釣り合いなほどたわわに育ってしまっていた。
いや、そもそも男なのだから乳房が育っていては問題なのだが…。
おかげで胸のカップの部分のサイズが合っていなかったのだ。
『………』
それを受けて無言になる祠の番人…本体である水晶玉があからさまに不機嫌な空気を醸し出している。
しかし突然の大きな地響きが起き、祠の中も天井から埃が降って来る。
『どうやら『無色の疫病神』がこの伝説の装備の復活に気付いたようですね…こちらへ向かって来ます』
「これが私の生まれた時からの宿命なのですね…ならば存分にその使命を果たすまで…!!」
シャルロットは台座から『未来の剣』を手に取り、勇ましい表情を浮かべ踵を返し元来た石造りの階段を駆けあがっていく。
『…頑張るのですよ我が子孫…女勇者シャルロット…』
水晶は優しく、そして誇らしげにそう呟いた。
『…しかしやはり男の子なのですね…もしかしたらと期待もしていたのですが…女性用のあの装備を使いこなせるのかしら…』
実は先程の鎧の装着時に彼女はシャルロットの裸を見てしまったのだ。
『それはそうとあの大きな胸は一体…?生前の私より大きいなんて…』
嫉妬するとともに理解に苦しむ祠の番人であった。
何かの魔法的な仕掛けで灯っているであろう蝋燭が壁を囲う様に並んでいるので部屋内はかなり明るかった。
そして奥の壁には大きな水晶玉が鎮座した祭壇と思しきものが存在していた。
「…ここは一体…?」
キョロキョロと辺りを見回す。
しかし何故、森の開発などを嫌う耳長族の森にこんな人口建造物があるのか…。
頭に響く謎の声に導かれるままここに来てしまったシャルロットだが今になって一抹の不安が心に湧き上がって来た。
『良く来ましたねシャルロット…』
ここに来るまで頭の中に聞こえていた声と同じ声が再びシャルロットに語り掛けてくる。
突然の事に一瞬身体がビクンと跳ねる。
無理もない…今迄と違い謎の声がハッキリと自分に向けて話しかけてきたのだから。
その声はどうやら祭壇の水晶玉から発せられている様だ。
「…あなたは誰!?ここは一体何なんですか!?何故私の名前を知っているのですか!?」
彼女の口から矢継ぎ早に質問が飛び出す…そうでもしていないと不安に耐えられなくなりそうだったからだ。
『質問は一つずつにしてくれない…?そんなにいっぺんには答えられません…』
謎の声は半ば呆れたように返事を返して来る。
「…済みません…」
『まあいいわ…こちらも不必要に脅かしてしまった事を謝罪しましょう…
今のあなたには突然の事で何が何やら分からない事ですものね』
謎の声は案外気配りの出来る存在の様だ。
『では質問に答えましょう…私はこの祠の番人…そうは言っても私の身体はとうに滅んでしまいましたが…私は二千年前の伝説を然るべき者に伝えるのが役目…』
「…二千年前の伝説…」
シャルロットは思い出していた…。
今より小さかった子供の頃…就寝前に母であるエリザベート王妃が添い寝しながら語ってくれた昔ばなし…。
「遥か昔…
世界にはエターニア王国はおろか、大陸にまだ一つも国が無い頃…。
強大な力を持った魔王とその配下の邪悪な者たちが現れました。
魔王たちは三日で大陸を蹂躙し海を渡って別の大陸の侵略に乗り出そうとしたその時…女勇者様と彼女の仲間たちが立ちふさがります。
女勇者様は女神様の祝福を受けた剣と盾と鎧を纏い次々と魔王の配下を打ち倒していきました。
戦いの中で多くの仲間を失いましたが女勇者様は一人になっても戦い抜き激闘の末、遂に魔王を打ち倒しました。
しかし魔王は滅ぶ間際にこう言い残します。
「儂は必ず二千年後に復活を遂げてこの世界を手に入れて見せるぞ!!……それまでお前は生きてはいまい!!儂の活躍をあの世で指をくわえて見ているがよい!!ワッハッハ~!!」
と…」
「ふえっ…魔王は復活してしまうの…お母様?」
エリザベートのあまりの迫真の演技に怯えるシャルロット。
「大丈夫!!女勇者様は魔王にこう言ったのよ!!」
「やれるものならやってみなさい!!お前が復活しても必ずや私の子孫があなたの野望を挫くでしょう!!」
「わぁ…」
右腕を突き上げ勇ましく宣言するエリザベート。
すると一転、シャルロットの瞳が輝き出す。
「ねえねえ!!私も武芸を習えば女勇者様の子孫と一緒に魔王と戦える!?」
「そうね…しっかり努力を積めば戦えるかもね…」
優しく頭を愛娘の撫でる。
「うん!!明日から武芸の練習する!!」
「う~ん…シャルロットはまだ小さいからもう少ししてからね…」
「うん!!」
(女勇者様の伝説…!!あれは本当の話だったんだ…)
シャルロットの頭の中で一つの結論が出た…パズルの抜けていたピースが嵌った時の様な感覚だ。
それから祠の番人が語った伝説の内容はほぼエリザベートの昔ばなしと同意なので割愛する。
『しかし、魔王が復活を宣言した二千年までにはまだ三年あるはずなのですが…彼の眷属が既に活動を開始している様なのです…』
(アルタイルの言っていた『無色の疫病神』の事ねきっと…)
祠の番人は先程然るべき者に伝説を伝えると言っていた…と言う事は…シャルロットにある仮説が思い浮かぶ。
「もしかするとですけど…女勇者様の子孫って私の事でしょうか…
私だけがここに呼び出されているという事はそう言う事ですよね?」
『何で先に気付いちゃうの!?勿体つけて後で驚かそうと思ったのに~』
どこか祠の番人は悔し気だ…もしかすると生前はかなり茶目っ気のある人物だったのではないだろうか。
『オホン…まあいいでしょう…話が早い事に越したことはありません…
単刀直入に言います…シャルロット、あなたにはあの怪物を倒して頂きます…』
「えっ!?そんなことが可能なのですか!?」
再生能力と生命力や能力の吸収能力を有し、耳長族とアルタイルが協力しても全く歯が立たなかった相手…尚且つ炎系の魔法が使えないなどの戦闘ロケーション的に制限のある戦いをどう戦えばよいのか。
『可能です…それが私、じゃなかった…女勇者ダイアナの血を引く者の力…』
「そんな力が私に…?」
自分の両手を見つめるシャルロット…にわかには信じられないと言った顔だ。
『しかしその力を十分に発揮するにはそれなりの装備が必要です…』
祠の番人がそう言うと床の一部が開き、下から新たに床がせりあがって来た。
現れた台座には女性用の鎧と一振りのミドルソードが乗っていた。
「これは…」
『これらの装備は二千年前の戦いで女勇者ダイアナが実際に使っていた物です…
剣の方は『未来の剣』、鎧の方は『過去の鎧』と呼ばれています…』
シャルロットは目を見張った。
目の前にあるそれらはとても二千年前の物とは思えない程保存状態が良く、剣には刃こぼれ一つ、鎧には傷一つなかったのだ。
『本当は『現在の盾』という円形の盾があったのですけど行方知れずになってしまって…しかし『無色の疫病神』を倒すにはこれで十分可能なはずです…さあ…』
『過去の鎧』が光り輝きながら宙に浮く…やがてそれらは各パーツに分離し勢いよくシャルロットの目がけて飛んで来た…衣服が弾け飛び全裸になった彼女に頭、肩、胸、腰、手甲、脛…身体の各所に次々と装着されていく『過去の鎧』。
「わあっ…素敵…」
装着終了後、自分の身体を見回す…そこはに美しい女戦士…いや女勇者が現れたのだ。
『過去の鎧』は俗に言うビキニアーマーと言われる事がある物で、デコルテやお腹、二の腕に太腿と肌がこれでもかと露出している物だ。
鎧としては機能的にどうかと思われるが、全身を女神の加護が包み込んでいるので防御力としての問題は無いのだ。
「…ちょっと胸がキツイかな…」
夕食時に食べたパイチの実のせいでシャルロットの胸は年齢に不釣り合いなほどたわわに育ってしまっていた。
いや、そもそも男なのだから乳房が育っていては問題なのだが…。
おかげで胸のカップの部分のサイズが合っていなかったのだ。
『………』
それを受けて無言になる祠の番人…本体である水晶玉があからさまに不機嫌な空気を醸し出している。
しかし突然の大きな地響きが起き、祠の中も天井から埃が降って来る。
『どうやら『無色の疫病神』がこの伝説の装備の復活に気付いたようですね…こちらへ向かって来ます』
「これが私の生まれた時からの宿命なのですね…ならば存分にその使命を果たすまで…!!」
シャルロットは台座から『未来の剣』を手に取り、勇ましい表情を浮かべ踵を返し元来た石造りの階段を駆けあがっていく。
『…頑張るのですよ我が子孫…女勇者シャルロット…』
水晶は優しく、そして誇らしげにそう呟いた。
『…しかしやはり男の子なのですね…もしかしたらと期待もしていたのですが…女性用のあの装備を使いこなせるのかしら…』
実は先程の鎧の装着時に彼女はシャルロットの裸を見てしまったのだ。
『それはそうとあの大きな胸は一体…?生前の私より大きいなんて…』
嫉妬するとともに理解に苦しむ祠の番人であった。
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