29 / 29
最終話 噂話
しおりを挟む
洞窟から出ると眩しい日差しがライアンの表情を歪める。
外は既に日が傾いていたが西日はまだまだ力強かった。
一陣の風が彼女のスカートをはためかせる。
「……これからどうしようか……あ、もう話しかける相手はいないんだっけ……」
ついいつもの様に思っている事を口ずさんでしまうがもうライアンの周りに四元徳の装備は存在しないのである。
ふと手元の亀裂の走った生命の宝玉を優しい眼差しで愛でる様に見つめる。
「ルシアン……」
ルシアンの魂が内在している筈の生命の玉も彼女に答えてはくれない。
しかしここで予想外の出来事が起こった、生命の玉の亀裂が独りでに広がり出したのだ。
「そんな!! 割れてしまうっていうのかい!? まだルシアンの魂を移す依り代も方法も分かっていないのに!!」
尚も続く亀裂の拡大、このままでは完全に二つに分割されるのも時間の問題だ。
「どうしようどうしよう!! このままじゃルシアンが……!!」
おどおどと右往左往するライアン。
対処しようにももう助言をくれる知恵はいないのだ。
「あ、そうだ……」
ライアンの脳裏にある出来事がフラッシュバックする。
「正義の盾の修復の時、一時的に盾にジャスティスとルシアンの魂が同時に入っていたことがあった……暫くの間なら他人の身体に魂をうつせるんじゃないか?」
生命の玉と自分の胸元を交互に見つめ、意を決したようにライアンは命の宝玉を胸に押し当てた。
「お願い!! ルシアンの魂よ俺の身体に移って!!」
ライアンの願いに生命の宝玉が応えた、以前魂を移したときに比べ限りなく弱々しいが薄紅色の光を放ったのだ。
光はライアンの胸に吸い込まれる様に消えていく。
直後、生命の玉は力尽きた様に真っ二つに割れたのだ。
「ふぅ……危なかった……」
緊張感と力が抜けがっくりと地面に膝をつく。
(ブライアン? これは一体どういう事?)
ライアンの頭の中に女性の声が呼び掛けてきた。
「!! ルシアンかい!? 無事でよかったよ!!」
(うんありがとう、それよりどうして私はあなたの身体の中に居るの?)
「それはね、生命の宝玉が割れそうになったから咄嗟に中に居る君の魂を俺の身体に移したんだよ」
(えっ!? そんな事をしてあなたの身体は大丈夫なの!? 前にもあったじゃない、一つの器に魂は二つ共存できないって!! 最悪どちらかの魂が消えてしまうって!!)
「そうだね、それでも君の魂が消えてしまうなんて俺は到底受け入れる事は出来ない、例え俺の魂の方が消えてしまおうともね」
(ブライアン……ごめんなさい……ううっ……)
ルシアンのすすり泣く声が聞こえる。
「大丈夫、今の状態は応急的な物、何か症状が起こる前に君の新しい身体を見付けられたら何とかなる筈だ……生命の玉が失われて魂を移す方法が今は無くても必ず代わりの方法を見つけ出して見せるさ!!」
(ブライアン……)
「そうと決まれば早く近くの町に行こう、全てはそこからだ!!」
(うん……!!)
ライアンの力強い言葉にルシアンも希望を持つことにしたのであった。
数年後……。
「なあ聞いたか? 新しくこの街に現れた女戦士の話」
「ああ聞いたぜ、物凄く腕が立つ上にかなりの別嬪さんなんだってな、俺の所属ギルドでもその話題で持ちきりよ」
屈強な男たちが酒場のテーブルを囲み酒盛りをしながら噂話に花を咲かせている。
「聞く所によると気配を察するの能力が尋常じゃないらしい、よそ者にデカい顔されてたまるかとその女戦士を闇討ちをしようと彼女をつけたしたけしからん冒険者ギルドの連中が居たらしいんだがかなり離れた所で尾行がバレた上に十数人がかりでも太刀打ちできなかったらしい、隙が無さ過ぎて背中にも目が付いてるんじゃないかって専らの噂だぜ」
「へぇ」
「昨日もソロで紅鎧竜を狩って来たって話だ、おっそろしいねぇ」
「化け物じゃねぇかその女!! いくら別嬪でも近付きたくねぇ!!」
「んでその女戦士、名前は何て言うんだい?」
「ああ、確かその女戦士の名前は確か……」
END
外は既に日が傾いていたが西日はまだまだ力強かった。
一陣の風が彼女のスカートをはためかせる。
「……これからどうしようか……あ、もう話しかける相手はいないんだっけ……」
ついいつもの様に思っている事を口ずさんでしまうがもうライアンの周りに四元徳の装備は存在しないのである。
ふと手元の亀裂の走った生命の宝玉を優しい眼差しで愛でる様に見つめる。
「ルシアン……」
ルシアンの魂が内在している筈の生命の玉も彼女に答えてはくれない。
しかしここで予想外の出来事が起こった、生命の玉の亀裂が独りでに広がり出したのだ。
「そんな!! 割れてしまうっていうのかい!? まだルシアンの魂を移す依り代も方法も分かっていないのに!!」
尚も続く亀裂の拡大、このままでは完全に二つに分割されるのも時間の問題だ。
「どうしようどうしよう!! このままじゃルシアンが……!!」
おどおどと右往左往するライアン。
対処しようにももう助言をくれる知恵はいないのだ。
「あ、そうだ……」
ライアンの脳裏にある出来事がフラッシュバックする。
「正義の盾の修復の時、一時的に盾にジャスティスとルシアンの魂が同時に入っていたことがあった……暫くの間なら他人の身体に魂をうつせるんじゃないか?」
生命の玉と自分の胸元を交互に見つめ、意を決したようにライアンは命の宝玉を胸に押し当てた。
「お願い!! ルシアンの魂よ俺の身体に移って!!」
ライアンの願いに生命の宝玉が応えた、以前魂を移したときに比べ限りなく弱々しいが薄紅色の光を放ったのだ。
光はライアンの胸に吸い込まれる様に消えていく。
直後、生命の玉は力尽きた様に真っ二つに割れたのだ。
「ふぅ……危なかった……」
緊張感と力が抜けがっくりと地面に膝をつく。
(ブライアン? これは一体どういう事?)
ライアンの頭の中に女性の声が呼び掛けてきた。
「!! ルシアンかい!? 無事でよかったよ!!」
(うんありがとう、それよりどうして私はあなたの身体の中に居るの?)
「それはね、生命の宝玉が割れそうになったから咄嗟に中に居る君の魂を俺の身体に移したんだよ」
(えっ!? そんな事をしてあなたの身体は大丈夫なの!? 前にもあったじゃない、一つの器に魂は二つ共存できないって!! 最悪どちらかの魂が消えてしまうって!!)
「そうだね、それでも君の魂が消えてしまうなんて俺は到底受け入れる事は出来ない、例え俺の魂の方が消えてしまおうともね」
(ブライアン……ごめんなさい……ううっ……)
ルシアンのすすり泣く声が聞こえる。
「大丈夫、今の状態は応急的な物、何か症状が起こる前に君の新しい身体を見付けられたら何とかなる筈だ……生命の玉が失われて魂を移す方法が今は無くても必ず代わりの方法を見つけ出して見せるさ!!」
(ブライアン……)
「そうと決まれば早く近くの町に行こう、全てはそこからだ!!」
(うん……!!)
ライアンの力強い言葉にルシアンも希望を持つことにしたのであった。
数年後……。
「なあ聞いたか? 新しくこの街に現れた女戦士の話」
「ああ聞いたぜ、物凄く腕が立つ上にかなりの別嬪さんなんだってな、俺の所属ギルドでもその話題で持ちきりよ」
屈強な男たちが酒場のテーブルを囲み酒盛りをしながら噂話に花を咲かせている。
「聞く所によると気配を察するの能力が尋常じゃないらしい、よそ者にデカい顔されてたまるかとその女戦士を闇討ちをしようと彼女をつけたしたけしからん冒険者ギルドの連中が居たらしいんだがかなり離れた所で尾行がバレた上に十数人がかりでも太刀打ちできなかったらしい、隙が無さ過ぎて背中にも目が付いてるんじゃないかって専らの噂だぜ」
「へぇ」
「昨日もソロで紅鎧竜を狩って来たって話だ、おっそろしいねぇ」
「化け物じゃねぇかその女!! いくら別嬪でも近付きたくねぇ!!」
「んでその女戦士、名前は何て言うんだい?」
「ああ、確かその女戦士の名前は確か……」
END
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる