てんどらっ!!~気が付いたらドラゴンに転生していたので優しい世界を作ります~

美作美琴

文字の大きさ
28 / 44

第28話 ドラゴン会議

しおりを挟む

 俺が新たな日課の森の巡回を開始して数日…。
 
 人間の森への出入りが以前より増している。
 切っ掛けは言わずと知れた猟師と揉めたあの日からなのだが…。

 これは物凄く良くない傾向だ…俺は完全に人間を敵に回してしまった様だ。
 何故ならここ最近は明らかに狩り用の装備ではなく、戦闘用の武器を持った冒険者風の人間の割合が増えていたからだ…しかも少人数で統率の取れた者達の。
 今は彼らも本格的な戦闘行動には及んでこない…要するにこの森の地形に把握、ドラゴンであるこの俺の分析…偵察行動の段階だからだ。
 きっと情報収集が終わり、それに対しての戦力を準備出来た段階でこの森に攻め入ってくる事だろう。

 知っての通り俺が人間と揉めたのはこれが初めてでは無い…前回も今回同様、人間によるリアンヌ俺の家族への耐えがたい仕打ちへの報復だったのだが、あの時は我を忘れ、村ごと魔法で水没させるという暴挙に出てしまった。
 しかしこれについては何故か人間は俺に攻撃を仕掛けて来なかった。
 ドラミたちが言っていたが、俺の討伐依頼が冒険者ギルドはおろか、人間の各国の軍にすら出なかったというのだ。
 この話を聞いた時は素直に安堵したものだが人間の事だ…今ではそれすらも何かしらの意図があったのではと勘繰ってしまう。

 だけど何でこんな事に…俺は前世の苦い記憶とこの世界での経験から『弱きを助け強きを挫く』という目標を掲げていたはずだ…それは自分と家族、兄弟は元より、他者である人間たちをもひっくるめたものの筈であった。
 しかしいざ蓋を開けてみればどうだ…人間のあまりに自分勝手な振る舞いに我慢できず衝突を繰り返し、終いには敵対してしまうとは…。
 自分の煽り耐性の無さに落胆すると共に、人間という存在の業の深さも改めて思い知ったのだ。
 
 ただ嘆いていてもこの状況がどうなる訳でも無い…これ以上関係が拗れない様に自重はするが、人間側が一線を越えた場合はその限りではない…そう、家族に手を上げた場合はだ。
 そうならないためにも家族をどこか安全な場所に匿わなければならないのだが、こう、森への人間の出入りが激しいとかなり難しいものがある。

 そしてそんな状況が続いたある日…。

 人間形態で家の洞窟前に佇んでいると、一羽の真っ赤なオウムが飛んで来たではないか。
 そして俺の前でホバリングの様に空中で羽ばたきを維持している…これは飼いならされているもののようだな…俺が腕を差し出すとそのオウムはおもむろに降り立つ。

『よう、リュウジ…元気か!?』

 オウムが喋ったーーーー!? 
 なんてね、オウムが人の言葉を発する事はそんなに珍しい事ではない…ただこいつはここにいない誰かの言葉を発しているのだ、そう…兄のリュウイチの言葉を。

『驚いたかい?知り合いの魔導士に施してもらった、オウムを通して離れた相手と会話できる魔法さ』

「ほう、それは便利だな…それで何の用だ?」

 大体予想は付いているが敢えて聞いてみる。

『冒険者ギルドにある依頼が張り出されているんだ、それも近隣の街はおろか国全体にね…』

「それはどんな依頼だ?」

『カリフの森のブルードラゴンを討伐せよ…』

「へぇ~俺たちの住んでる森に名前があったのか…後でマーニャとミコトに教えてやろう」

『はぐらかすなよ…お前、一体今度は何をやらかしたんだ?』

 流石に今のはわざとらしかったか…隠し立てしても仕方がないので俺はリュウイチに事の顛末を全て話した。

『そうか、そんな事が…しかし仮にこちらがこの話を人間側に伝える事が出来たとして、信じてもらう事は出来ないだろうね…人間が人間の肩を持つのは目に見えている…』

「そうさ…経験上、人間と対話など成立しない、挑んで来るというなら跳ねのけるまでさ…」

『リュウジ…本当に君はそれでいいのかい?』

「いいも何もどうしようもないじゃないか!!話が通じない相手だってのはお前もさっき言ってたろう!!」

『それはそうだけど、その事じゃなくてさ、僕は君の本心が知りたいんだ…』

「本心?」

『そう、人間と争うのは君の本意じゃないんだろう?君は優しいからね…』

「………」

 俺は何も言い返せなかった、図星を突かれるとはこの事…これではまるで俺の心が覗かれているかのようだ。
 何となくおっとりと大人しく、ボーっとしている印象があるリュウイチだが、意外に鋭い所があるんだな。

 ここで又新たに何者かの羽音がする…今度は何だ?

『ヤッホー!!お久し振りリュウジ兄さん!!』

 小鳥サイズの黄色いミニドラゴンが目の前に降り立った。
 ドラゴンの癖にリュウイチのオウムより小さい。

「何だ今度はドラミか…今日はどうなってるんだ一体…」

『えっ?どういう事よ…』

『やあドラミ』

『あれ!?その声はリュウイチ兄さん!?いつからオウムになったの!?』

「やれやれ…」

 聞けばこのミニドラゴンはドラミの鱗を埋め込んだ魔導器と呼ばれるからくり人形らしい…魔力で操る事が出来、今のように離れた相手と会話もできる優れモノだ。
 大方ドラミも冒険者ギルドの情報から俺達を心配して連絡をくれたのだろう。
 まったく俺の兄妹は揃いも揃って心配性だな。
 しかしリュウイチに話した内容を又新たにドラミにも話さなければならなくなった…二度手間である。

『なあリュウジ…僕たちもそちらに行こうか?』

「いや、駄目だ…」

『どうして!?私の所属ギルドでは、ドラゴン退治を生業にする集団『竜滅隊』や、救国の女傑、『女勇者ライラ』がリュウジ兄さんの討伐に参加するって専らの噂なのよ!?』

 外の情勢に疎い俺には誰だそれは?とも思ったが、ドラミの口調からしてとても厄介な者達に違いない…。
 だがそれでも…いや、だからこそ…。

「なら尚更だ、俺に加担すればお前たちもそんな人間に目を付けられる…そうなってしまっては俺達ドラゴンの世界を維持する使命に支障がでるだろう…俺一人で何とか凌いでみるよ」

 二人の申し出はとてもありがたい…しかし俺が招いた争いにこいつらを巻き込みたくないのだ。

『危険だわ…このままじゃリュウジ兄さんだけじゃなく義姉おねえさんやマーニャちゃん、ミコトちゃんも危険に晒されるかもしれないのよ?』

「そうだな、唯一の気掛かりはそれだ、だから家族は川から逃がす…お前たちは森の外の下流であいつらを保護してもらいたい…頼むよ…」

『………』

 流石に二人共押し黙ってしまったか…だがこれは俺が決着を着けなければならない事だ…どうか俺の我儘を聞き届けて欲しい…。

『分かったよ…』

『リュウイチ兄さん!?』
 
 リュウイチが重い口を開いた…ドラミは信じられないといった様子だ。

『君のやりたいようにやればいいよ…家族の事は僕が責任を持つから心配はいらない…』

「済まないな…」

『二人共…どうしてそんなこと………』

 ドラミは涙ぐんでいるみたいだな…馬鹿な兄貴だと思ってくれて構わない。
 
 やがて二人の使いが帰っていった、その後ろ姿を複雑な気持ちで見送る。
 そして俺は踵を返し歩き出す…自分に降りかかる火の粉を払う為に…。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中に呆然と佇んでいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出したのだ。前世、日本伝統が子供の頃から大好きで、小中高大共に伝統に関わるクラブや学部に入り、卒業後はお世話になった大学教授の秘書となり、伝統のために毎日走り回っていたが、旅先の講演の合間、教授と2人で歩道を歩いていると、暴走車が突っ込んできたので、彼女は教授を助けるも、そのまま跳ね飛ばされてしまい、死を迎えてしまう。 享年は25歳。 周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっている。 25歳の精神だからこそ、これが何を意味しているのかに気づき、ショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

捨てられた貴族六男、ハズレギフト『家電量販店』で僻地を悠々開拓する。~魔改造し放題の家電を使って、廃れた土地で建国目指します~

荒井竜馬@書籍発売中
ファンタジー
 ある日、主人公は前世の記憶を思いだし、自分が転生者であることに気がつく。転生先は、悪役貴族と名高いアストロメア家の六男だった。しかし、メビウスは前世でアニメやラノベに触れていたので、悪役転生した場合の身の振り方を知っていた。『悪役転生ものということは、死ぬ気で努力すれば最強になれるパターンだ!』そう考えて死ぬ気で努力をするが、チート級の力を身につけることができなかった。  それどころか、授かったギフトが『家電量販店』という理解されないギフトだったせいで、一族から追放されてしまい『死地』と呼ばれる場所に捨てられてしまう。 「……普通、十歳の子供をこんな場所に捨てるか?」 『死地』と呼ばれる何もない場所で、メビウスは『家電量販店』のスキルを使って生き延びることを決意する。  しかし、そこでメビウスは自分のギフトが『死地』で生きていくのに適していたことに気がつく。  家電を自在に魔改造して『家電量販店』で過ごしていくうちに、メビウスは周りから天才発明家として扱われ、やがて小国の長として建国を目指すことになるのだった。  メビウスは知るはずがなかった。いずれ、自分が『機械仕掛けの大魔導士』と呼ばれ存在になるなんて。  努力しても最強になれず、追放先に師範も元冒険者メイドもついてこず、領地どころかどの国も管理していない僻地に捨てられる……そんな踏んだり蹴ったりから始まる領地(国家)経営物語。 『ノベマ! 異世界ファンタジー:8位(2025/04/22)』 ※別サイトにも掲載しています。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

処理中です...