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第11話 初めての大喧嘩
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「くそう……一生の不覚である……」
木の枝で組んだ四角い鳥籠に移されたチュウ左衛門は格子にしがみ付きうな垂れていた。
「恨むのなら自分の食欲を恨むんだな!!」
林檎がチュウ左衛門の鼻先を指さし得意顔だ。
「林檎ちゃん何もしてないじゃん、この子を捕まえたのは、わ・た・し」
「うるさいな……」
得意げなみかんのドヤ顔が心底気に食わない林檎……拳がプルプルと震える。
チュウ左衛門を捕まえる際、虫取り網に振り回され盛大に尻もちを付いたのを他の二人に見られてしまったのだ……特にみかんには当分いじられる事だろう。
「危ないですよ林檎さん、ネズミさんは病原菌を媒介する事があるので迂闊に触らないでくださいね」
「おっと……」
レモンの指摘に慌てて指を引っ込める。
「貴様!! 拙者を愚弄するか!! 身体は毎日水浴びをして清潔にしておるわ!!」
「あっ、ごめんなさい……私たちの世界の話しなので、こちらでは通用しない常識かも知れないですね……」
「うむ……分かればそれでよい……」
深々と頭を下げるレモンに拍子抜けし思わず口籠るチュウ左衛門。
「お前はまだ自分の立場が分かってないようだな!! ウリウリ!!」
「うおっ!! 止めろ!! 捕虜の虐待反対でござる!!」
林檎が木の枝を籠の中に突っ込みチュウ左衛門を追いかけまわす。
「林檎ちゃん……そのセリフ、完全に悪役だよぅ……」
さすがのみかんもあきれ顔だ。
「レモンもレモンだ、簡単に謝ってんじゃないよ!!」
「いえ、私がチュウ左衛門さんに失礼なことを言ったのには違いありませんから……」
「………」
愛想笑いするレモンを無言で見つめる林檎の眼差しは何とも例えようがないものだった。
「では早速本題に入ります……チュウ左衛門さん、あなた方の目的は何でしょう? 私たちを監視していたのは何故ですか?」
「………」
「おっ、少しは学習したようだな……黙秘権を使うって訳だ」
「知らぬ……」
「はっ?」
「他の者はどうか分からぬが、拙者には知らされておらぬ……」
チュウ左衛門意外な答えが返ってきた。
「そんな馬鹿な事があるか!! 何で目的も分からないのにお前らは命令を聞いてんだ!?」
「まあまあ林檎さん落ち着いて……組織が大きい場合、末端の構成員にまで作戦内容の詳細が行き渡らない事があるんですよ」
チュウ左衛門に食って掛かる林檎を押しとどめるレモン。
しかしレモンはどこでそんな知識を仕入れたのかは甚だ疑問ではある。
「そうとも、我ら下っ端の下忍は上の命令に従うのみ……内容を質問するなどもっての外……」
「お前らはそんなんでいいのかよ!? そんな使い捨ての駒みたいな扱いを受けてよ!!」
「それが忍びの本懐であるならば……」
「話しにならないな!! アタイはそんな事を許容出来る程諦めが良くないんでね!! ちったーー自分で考える頭は無いのか!?」
「うるさい!! 貴様に何が分かる!?」
「まあまあ、林檎ちゃんもネズミさんに本気で食って掛からないの!!」
いがみ合う林檎とチュウ左衛門を引き離すみかん……いつものほほんとしているみかんであったが、さすがにこれは止めざるを得なかった。
「では、チュウ左衛門さんは黒幕である人物には心当たりがないと、そういう事ですか?」
「ウム……答えられることは何もない」
籠の中で胡坐と腕を組みふんぞり返るチュウ左衛門。
「そうですか……ではここまでの様ですね」
レモンが籠の蓋を持ち上げて、チュウ左衛門が出られるようにした。
「ちょっと待て!! 何してるレモン!? お前、まさかこいつを逃がすってんじゃないだろうな!?」
「はいそのとおりですよ、チュウ左衛門さんから聞き出せることはもう無いようですし、逃がしてあげるのが良いでしょう」
「おい!! こんな奴の言う事信じるってんじゃないよな!? もっともらしい事を言って嘘を吐いてるかもしれないんだぞ!?」
「チュウ左衛門さんからは嘘を吐いている感じがしなかったんです……林檎さんも見ていたでしょう、私たちが聞きもしないのに次から次へと情報を漏らしてしまう彼が知らないというのですから本当に知らないのでしょう……」
「甘いな!! 仮にもこいつは忍者だぞ!? 他人を欺くのなんてことはお手の物だろう!! こいつを逃したら直接謎の敵がアタイたちを襲ってくるかもしれないんだぞ!?」
林檎がレモンの胸倉を掴む……みかんがすかさず割って入る。
「ちょっと待って!! どうしたの林檎ちゃん!! 今日はおかしいよ!?」
「何だみかんまで!! アタイが間違ってるってのかい!?」
「そうは言わないけど……こんなのって……あたし達はたった三人でこの不思議な世界迷い込んでしまったんだよ!? お互い助け合わなきゃ!!」
はっとなる林檎、彼女に手から徐々に力が抜けていく。
「はっ!! 勝手にしろ!! 後で痛い目をみても知らないからな!?」
「分かりました、責任は全部私にあるという事でよいですよ」
乱れた襟をただすレモン。
「さあチュウ左衛門さん、出てください」
「………」
しかしチュウ左衛門は籠から出ようとしない。
「どうしたんですか?」
「たわいのない事とはいえ少なからず情報を漏らしたのだ、拙者はもう仲間の元には戻れない……戻れば即刻処刑されてしまうであろう」
「あっ、それはそうですね!! ごめんなさい!!」
「そこの女が申した通りこれは欲望を押さえられなかった拙者が悪いのだ……自業自得という奴だな……そこでどうだろう、拙者が貴様らと同行するというのは……」
「えっ!? それはつまり……」
「みっ、道案内を買って出てやると言っているのだ……拙者の里の方角なら教えてやれる……決して貴様たちに同情した訳ではないぞ?」
チュウ左衛門は目を逸らしながら淡々と言葉を紡ぐ。
「ぷっ……とんだツンデレさんだねチュウさん」
みかんがせせら笑う。
「なっ、チュウさんとは何だ、馴れ馴れしい!! それにツン……デレとは何だ!?」
「そういう状態の事を言うんだよ、チュ・ウ・さん」
「うがーーー!! そのチュウさんという呼び方を止めろーーー!!」
チュウ左衛門が籠から出てみかんの肩に駆け上がる。
そしてしばらく二人の言い争いが続く。
「レモン、アタイは謝らないからな……だけどみかんの言う通り三人だけの仲間だ、仲間割れだけは止めような……」
林檎はレモンに背を向けたまま話しかける。
「はい、誰も悪くないんだから謝るのは違うと思います、あなたも私も……それに少なくとも私からはその話は持ち掛けないと思います」
「言ってくれるよ……」
雨降って地固まる……というのだろうか、三人のJKの旅に同行する仲間が一匹増えたのであった。
木の枝で組んだ四角い鳥籠に移されたチュウ左衛門は格子にしがみ付きうな垂れていた。
「恨むのなら自分の食欲を恨むんだな!!」
林檎がチュウ左衛門の鼻先を指さし得意顔だ。
「林檎ちゃん何もしてないじゃん、この子を捕まえたのは、わ・た・し」
「うるさいな……」
得意げなみかんのドヤ顔が心底気に食わない林檎……拳がプルプルと震える。
チュウ左衛門を捕まえる際、虫取り網に振り回され盛大に尻もちを付いたのを他の二人に見られてしまったのだ……特にみかんには当分いじられる事だろう。
「危ないですよ林檎さん、ネズミさんは病原菌を媒介する事があるので迂闊に触らないでくださいね」
「おっと……」
レモンの指摘に慌てて指を引っ込める。
「貴様!! 拙者を愚弄するか!! 身体は毎日水浴びをして清潔にしておるわ!!」
「あっ、ごめんなさい……私たちの世界の話しなので、こちらでは通用しない常識かも知れないですね……」
「うむ……分かればそれでよい……」
深々と頭を下げるレモンに拍子抜けし思わず口籠るチュウ左衛門。
「お前はまだ自分の立場が分かってないようだな!! ウリウリ!!」
「うおっ!! 止めろ!! 捕虜の虐待反対でござる!!」
林檎が木の枝を籠の中に突っ込みチュウ左衛門を追いかけまわす。
「林檎ちゃん……そのセリフ、完全に悪役だよぅ……」
さすがのみかんもあきれ顔だ。
「レモンもレモンだ、簡単に謝ってんじゃないよ!!」
「いえ、私がチュウ左衛門さんに失礼なことを言ったのには違いありませんから……」
「………」
愛想笑いするレモンを無言で見つめる林檎の眼差しは何とも例えようがないものだった。
「では早速本題に入ります……チュウ左衛門さん、あなた方の目的は何でしょう? 私たちを監視していたのは何故ですか?」
「………」
「おっ、少しは学習したようだな……黙秘権を使うって訳だ」
「知らぬ……」
「はっ?」
「他の者はどうか分からぬが、拙者には知らされておらぬ……」
チュウ左衛門意外な答えが返ってきた。
「そんな馬鹿な事があるか!! 何で目的も分からないのにお前らは命令を聞いてんだ!?」
「まあまあ林檎さん落ち着いて……組織が大きい場合、末端の構成員にまで作戦内容の詳細が行き渡らない事があるんですよ」
チュウ左衛門に食って掛かる林檎を押しとどめるレモン。
しかしレモンはどこでそんな知識を仕入れたのかは甚だ疑問ではある。
「そうとも、我ら下っ端の下忍は上の命令に従うのみ……内容を質問するなどもっての外……」
「お前らはそんなんでいいのかよ!? そんな使い捨ての駒みたいな扱いを受けてよ!!」
「それが忍びの本懐であるならば……」
「話しにならないな!! アタイはそんな事を許容出来る程諦めが良くないんでね!! ちったーー自分で考える頭は無いのか!?」
「うるさい!! 貴様に何が分かる!?」
「まあまあ、林檎ちゃんもネズミさんに本気で食って掛からないの!!」
いがみ合う林檎とチュウ左衛門を引き離すみかん……いつものほほんとしているみかんであったが、さすがにこれは止めざるを得なかった。
「では、チュウ左衛門さんは黒幕である人物には心当たりがないと、そういう事ですか?」
「ウム……答えられることは何もない」
籠の中で胡坐と腕を組みふんぞり返るチュウ左衛門。
「そうですか……ではここまでの様ですね」
レモンが籠の蓋を持ち上げて、チュウ左衛門が出られるようにした。
「ちょっと待て!! 何してるレモン!? お前、まさかこいつを逃がすってんじゃないだろうな!?」
「はいそのとおりですよ、チュウ左衛門さんから聞き出せることはもう無いようですし、逃がしてあげるのが良いでしょう」
「おい!! こんな奴の言う事信じるってんじゃないよな!? もっともらしい事を言って嘘を吐いてるかもしれないんだぞ!?」
「チュウ左衛門さんからは嘘を吐いている感じがしなかったんです……林檎さんも見ていたでしょう、私たちが聞きもしないのに次から次へと情報を漏らしてしまう彼が知らないというのですから本当に知らないのでしょう……」
「甘いな!! 仮にもこいつは忍者だぞ!? 他人を欺くのなんてことはお手の物だろう!! こいつを逃したら直接謎の敵がアタイたちを襲ってくるかもしれないんだぞ!?」
林檎がレモンの胸倉を掴む……みかんがすかさず割って入る。
「ちょっと待って!! どうしたの林檎ちゃん!! 今日はおかしいよ!?」
「何だみかんまで!! アタイが間違ってるってのかい!?」
「そうは言わないけど……こんなのって……あたし達はたった三人でこの不思議な世界迷い込んでしまったんだよ!? お互い助け合わなきゃ!!」
はっとなる林檎、彼女に手から徐々に力が抜けていく。
「はっ!! 勝手にしろ!! 後で痛い目をみても知らないからな!?」
「分かりました、責任は全部私にあるという事でよいですよ」
乱れた襟をただすレモン。
「さあチュウ左衛門さん、出てください」
「………」
しかしチュウ左衛門は籠から出ようとしない。
「どうしたんですか?」
「たわいのない事とはいえ少なからず情報を漏らしたのだ、拙者はもう仲間の元には戻れない……戻れば即刻処刑されてしまうであろう」
「あっ、それはそうですね!! ごめんなさい!!」
「そこの女が申した通りこれは欲望を押さえられなかった拙者が悪いのだ……自業自得という奴だな……そこでどうだろう、拙者が貴様らと同行するというのは……」
「えっ!? それはつまり……」
「みっ、道案内を買って出てやると言っているのだ……拙者の里の方角なら教えてやれる……決して貴様たちに同情した訳ではないぞ?」
チュウ左衛門は目を逸らしながら淡々と言葉を紡ぐ。
「ぷっ……とんだツンデレさんだねチュウさん」
みかんがせせら笑う。
「なっ、チュウさんとは何だ、馴れ馴れしい!! それにツン……デレとは何だ!?」
「そういう状態の事を言うんだよ、チュ・ウ・さん」
「うがーーー!! そのチュウさんという呼び方を止めろーーー!!」
チュウ左衛門が籠から出てみかんの肩に駆け上がる。
そしてしばらく二人の言い争いが続く。
「レモン、アタイは謝らないからな……だけどみかんの言う通り三人だけの仲間だ、仲間割れだけは止めような……」
林檎はレモンに背を向けたまま話しかける。
「はい、誰も悪くないんだから謝るのは違うと思います、あなたも私も……それに少なくとも私からはその話は持ち掛けないと思います」
「言ってくれるよ……」
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