送り狼(エスコートウルフ)によろしく。

美作美琴

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プロローグ AWW3(アフターワールドウォー3)

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 草木一つ自生しない岩と砂地がどこまでも広がるフィールド。
 
 派手な砂埃を巻き上げボロボロのトラックが高速で走っている。

「もっとスピードは出ないのか!? このままじゃ追い付かれちまう!!」

「そんなこと言ったっておやっさん、さっきからアクセルべた踏みでさぁ!!
 これ以上無理したらエンジンがイカれちまいます!!」

「くそっ……」

 トラックの運転席、助手席で頭を抱える初老の男とハンドルを握る若者。
 二人とも汗で身体中ぐっしょりで焦燥しきっていた。
 それは何故か?

「ヒャッハーーー!! 命が惜しければ荷物を置いて行けーーー!!」

「食い物と水を寄越せーーー!!」

「女でもいいぜーーー!! 最近ご無沙汰だからなーーー!!」

 棘や角など様々な厳ついカスタマイズをしたバイク、バギーの10台ほどの一団が先のトラックを追走している。
 この一団は所謂野盗バンデット呼ばれる者たちだ。
 重火器や鈍器で武装し人里離れた荒野を通行する車両や人々を襲い金品や食料を略奪しているのだ。
 大抵パンクファッションに身を包み髪をモヒカンにしたり顔や体に大量のタトゥーを入れており明らかに柄が悪い。
 
「おい!! 一発喰らわせてやれ!!」

「おうよお頭!!」

 バギーの後部座席でふんぞり返る一際大柄の男の指示で横の二人乗りバイクの後部座席のモヒカン男がバズーカ砲を構え、トラック目掛け躊躇なく発射した。
 発射の反動でバイクはスピン、転倒するが砲弾はトラックの右後輪に中りトラックは制御を失う。

「うわああああああっ!! ハンドルが……ハンドルが利かねぇ!!」

「車が横転するぞ!! みんな何かに捕まれぃ!!」

 トラックを立て直そうと最後まで奮闘する若者の努力も虚しくトラックは横倒しになり激しい振動をともない地面を長々と滑り、やがて止まる。

「いてててて……みんな無事か……?」

 横倒しになった車内、初老の老人は何とか無事であった。

「おい!! サム!! しっかりしろ!!」

 しかし運転していた若者は頭から血を流し気を失っていた。

「きゃあああっ!!」

「オホゥ!! これは上玉だな!! 今夜はお楽しみだぁ!!」

「くっ……あいつら」

 トラック後方から聞こえる悲鳴に初老の男性は痛む身体に鞭打ち、今や天井の穴と化した助手席の窓から何とか這い出た。
 後ろのコンテナには食料衣料などの物資と複数人の女性、子供たちが乗っていたのだ。

「放して!! 放してください!!」

「こいつは活きのいい女だなぁ」

 女性の両腕をひとまとめにし片手で手首を掴み軽々と吊るし上げる巨体の男。
 先ほど部下にバズーカ砲の発射を指示したこの野盗バンデットの親分だ。
 筋骨隆々で腕周りは成人男性の胴回り以上の太さがあった。

「俺はこう言った気の強い女を痛めつけて屈服させながら壊れるまで抱くのが堪らなく好きなんだ」

 女性が暴れてバタつかせている脚が腹に中っていても意に介さず嫌らしい笑みを浮かべ舌なめずりをする。

「ひぃっ……!!」

 それを聞いて女性の顔が見る見る青ざめていく。

「アハハッ!! 相変わらずの変態趣味ですねお頭!!」

 部下の一人が冗談のつもりで口走った言葉が耳に入った途端。

「うるせえな……」

 途端親分の目が見開かれ、開いていたもう一方の腕の拳をその部下の顔面目掛けて繰り出す。
 子分の頭はスイカ割りのスイカの如く弾け飛んでいた。
 倒れ込んだ身体の頭を失った首元から大量の赤い物が溢れ出し血だまりが出来る。

「きゃああああっ!!」

「いやああああああっ!!」

 その場に居た女性たちが一斉に悲鳴を上げる。

「俺を揶揄うとはいい度胸だ、死んで詫びろ」

 子分だった物の身体を足蹴にする。

「あっ……あっ……」

 捕まっている女性の口からはうわ言が漏れ、気が触れた様に白目を向き失禁してしまった。

 チュン……。

「ああっ?」

 親分の足元で何かが跳ねた、どうやら銃弾の様だ。

「この野盗バンデット共め!! その娘から手を放せ!!」

 初老の男性が親分に向けピストルを発射したのだ。
 今の弾丸は親分を狙ったはずが身体の痛みで銃を構える手元が狂ってしまったのだ。

「ジジイ……この俺に向かって引き金を引くとはな、棺桶に片足突っ込んでいるくせによっぽど死に急ぎたいらしい」

 子分たちが初老の男性に銃口を向けるのを親分が制止する。
 掴んでいた女性を地面に乱暴に放り投げるとのしのしと男性に近付いていく。

「近付くんじゃねぇ!!」

 パン……パン……パン……。

 男性がピストルを発砲し今度こそ親分の身体を捉える。
 三発の銃弾はそれぞれ親分の右脇腹、右肩、左大腿部に命中。
 しかし流血こそしているが親分に怯む様子は見られない。
 遂に親分は男性のすぐ目の前に迫っていた。
 そして血走った眼で男性を見下ろす。

「何かしたか? ジジイ……」

「ばっ……化け物……!!」

 先ほど無礼な子分を葬った強烈な拳が男性に迫る。
 男性は反射的に両腕で顔を覆うが恐らくは無意味であろう。

 ボキン……。

 直後骨が折れたような鈍い音が響く。

「あ……れ……?」

 しかし男性は無事だ。

「ぐわあっ!! 何だ!? 何が起こった!?」

 親分の丸太の様な太い腕が肘の辺りから有り得ない角度でボッキリと折れ曲がり、拳がプラプラと垂れ下がっていた。

「何者だ!?」

 折れた腕を押さえて親分が激昂する。
 男性と親分のいた所から僅かに離れた場所に屈みこんでいる人物がいた。
 肩には建物の骨格などに使われる赤い鉄骨を担いでいる。
 その鉄骨を使って親分の腕を折ったらしいのは想像に難くない。

「何者かと聞いたな? そうだな送り狼エルコートウルフ……人は俺の事を送り狼エルコートウルフと呼ぶぜ!!」

 真っ赤なスポーツキャップを被り”EscortWorf”のロゴが背中に入った真っ赤なジャンバーにジーンズ姿の若者が自身満々の顔でそう宣う。

送り狼エルコートウルフだぁ!? ふざけるな!!」

 無事な左腕で親分がその謎の男に殴り掛かる。
 が、既にそこには赤い若者はいない。

「その鈍重な頭に刻み込むんだな!! 俺の名前を!!」

 赤い若者は上空に飛んでいた。
 そして持っていた鉄骨を渾身の力で振り下ろし親分の頭に叩きつけた。

 グシャァ……。

 生々しい音を立て親分の頭が真っ二つになった。
 断末魔さえ上げる暇が無かった。
 頭の中心には鉄骨がめり込んでいる。

「俺はお前を地獄に送る送り狼だ」

 赤い若者の目が一瞬だが青く輝いた気がした。

 当然血が飛び散ったが元々着ているのが真っ赤なジャンバーなので返り血が目立たない。

「うっ……うわああああああっ!!」

 かしらを失った残りの野盗バンデット達は蜘蛛の子を散らすように一目散に逃げ帰っていった。

「よう、爺さん、大丈夫かい?」

「あっ……ああ……」

 腰を抜かしてへたり込んでいる男性に手を差し伸べる赤い若者。

「助けてくれた事には感謝するが、あんたは一体?」

「俺か? 俺はあんたの雇い主に雇われた『送り屋』だ」

 『送り屋』とは……物資や人間を移送する際に随伴しそれらを警護する役割を担う事を生業とする者の総称だ。

「ここからは俺たちが同行するから心配するな」
 
赤い青年は屈託のない笑顔を浮かべ右手の親指を立てる。

「そうかそうか!! それはありがたい!! 俺はゴードンと言う、で、お前さんはなんて呼んだらいいんだ?」

「ウルフだ、ウルフ・スカーレット……ウルフと呼んでくれ」
 
 時は第三次世界大戦後荒廃した西暦2042年地球。
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 これはそんな警護に命と誇りを掛けた命知らずたちの活躍の物語。
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