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魔族の世界は色づいた
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新月の日、それは魔族の力が弱まる日で。ライラもその日だけは、人が来ないような森の中で身を潜めていた。
しかし、魔族が新月の日は見つかりたくないと考えるのと同じように、人間は新月の日に魔族を見つけたいと思っていて。なけなしの魔力を使って人間から逃れたライラは、自分でもどこか分からない場所で倒れるような事態になってしまっていた。
そんなライラに、魔族にしか見えないであろうライラに近づいてきた人間は酷く小さく、触れれば折れてしまいそうなほどに細く。なのに、魔族であるライラを恐れようともしなかった。
「何で倒れているの?怪我してるの?リンゴ食べる?お水もあるよ」
本当に、こんな状況でもなければ面白いほど魔族を恐れない人間は、ライラの口に木の実を押し付け、驚くほど冷たい水を(恐らく口を狙ったのだろうけれど)顔中に降り注ぎ、ライラのことを(多分)心配してくれた。
魔族に話しかけるだなんて、そんな光景を他の人間に見られてしまえば、小さな人間も危ないだろうに。
「お兄ちゃん、地面が好きなの?」
「そんな物好き、なかなか居ないと思うよ」
「シアは地面に寝転ぶの好きよ。あのね、空が青くてきれいで、地面はひんやりしてて気持ちいいの」
「…そっかぁ」
魔族と人間、なのに。何故こんなにも穏やかなことを話しているのか。
あまりの場違いさに、ライラは何だか呆れてしまった。
「お兄ちゃん、遊ぼう!ねぇ、遊ぼうよ~!シア、かくれんぼが得意なの!」
「魔力がすっからかんだから無理だよ」
「魔力?シアね、魔力持ってるよ!いる?」
「…え?」
正直に言えば、人間はなぜか目を輝かせて身を乗り出した。
人間が魔力を持っていることなんて、ライラにだって知っていた。
魔力切れで動かないはずの手が、思わず伸びてしまいそうになるほどの魅力的な魔の香りが、人間からプンプンしていたのだから。
「シアは魔力があるから、お母さんに要らないって言われちゃったの。だからね、お兄ちゃんが魔力欲しいなら、全部あげる!」
そう言う人間の顔は、まるで泣いているかのようで。
躊躇い無く小さな手を差し出した人間は、ライラにありったけの魔力を注いだ。
それはもう、新月の日だなんて関係なく、ライラが猛威を震えるようになるくらい。
そして、ライラに魔力を与えた人間は、それと入れ替わりに倒れてしまった。
思わず手を伸ばしてしまい、地面にぶつかる直前に掴むことができた人間は思っていた以上に軽くて。
殺してもいないのに倒れてしまった人間の、息があることに何故かほっとした。
「…どうすればいいんだろう」
ポツリと呟いても、帰ってくるのは鳥の鳴き声ばかり。
ライラは諦めて、人間が目覚めるまで待つことにした。
しかし、魔族が新月の日は見つかりたくないと考えるのと同じように、人間は新月の日に魔族を見つけたいと思っていて。なけなしの魔力を使って人間から逃れたライラは、自分でもどこか分からない場所で倒れるような事態になってしまっていた。
そんなライラに、魔族にしか見えないであろうライラに近づいてきた人間は酷く小さく、触れれば折れてしまいそうなほどに細く。なのに、魔族であるライラを恐れようともしなかった。
「何で倒れているの?怪我してるの?リンゴ食べる?お水もあるよ」
本当に、こんな状況でもなければ面白いほど魔族を恐れない人間は、ライラの口に木の実を押し付け、驚くほど冷たい水を(恐らく口を狙ったのだろうけれど)顔中に降り注ぎ、ライラのことを(多分)心配してくれた。
魔族に話しかけるだなんて、そんな光景を他の人間に見られてしまえば、小さな人間も危ないだろうに。
「お兄ちゃん、地面が好きなの?」
「そんな物好き、なかなか居ないと思うよ」
「シアは地面に寝転ぶの好きよ。あのね、空が青くてきれいで、地面はひんやりしてて気持ちいいの」
「…そっかぁ」
魔族と人間、なのに。何故こんなにも穏やかなことを話しているのか。
あまりの場違いさに、ライラは何だか呆れてしまった。
「お兄ちゃん、遊ぼう!ねぇ、遊ぼうよ~!シア、かくれんぼが得意なの!」
「魔力がすっからかんだから無理だよ」
「魔力?シアね、魔力持ってるよ!いる?」
「…え?」
正直に言えば、人間はなぜか目を輝かせて身を乗り出した。
人間が魔力を持っていることなんて、ライラにだって知っていた。
魔力切れで動かないはずの手が、思わず伸びてしまいそうになるほどの魅力的な魔の香りが、人間からプンプンしていたのだから。
「シアは魔力があるから、お母さんに要らないって言われちゃったの。だからね、お兄ちゃんが魔力欲しいなら、全部あげる!」
そう言う人間の顔は、まるで泣いているかのようで。
躊躇い無く小さな手を差し出した人間は、ライラにありったけの魔力を注いだ。
それはもう、新月の日だなんて関係なく、ライラが猛威を震えるようになるくらい。
そして、ライラに魔力を与えた人間は、それと入れ替わりに倒れてしまった。
思わず手を伸ばしてしまい、地面にぶつかる直前に掴むことができた人間は思っていた以上に軽くて。
殺してもいないのに倒れてしまった人間の、息があることに何故かほっとした。
「…どうすればいいんだろう」
ポツリと呟いても、帰ってくるのは鳥の鳴き声ばかり。
ライラは諦めて、人間が目覚めるまで待つことにした。
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