出撃!特殊戦略潜水艦隊

ノデミチ

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 昭和15年。
 
 アメリカ合衆国との関係は、日に日に悪くなっていく。
 鉄屑の禁輸や中国・東南アジアとの対応への介入等、誰の目にも敵対国扱いなのが明らかになっていった。

 決定的となったのは、日本がドイツと同盟を結んでからである。

 日独伊三国同盟。

 ドイツが欧州をほぼ支配下に収め、イギリスが最後の砦として必死の抵抗を続けている今、イギリスからの救援・参戦要請がアメリカに毎日矢の如く届いている。
 だが、現状アメリカ国民にとっては対岸の火事であり、またルーズベルト大統領は不戦を公約としており欧州の戦争に参戦する事は出来なかった。ドイツが手を出してくれれば、国民性から言っても、アメリカ人は燃える正義感と愛国心で参戦を支持してくれるだろう。
 尤も、流石のヒットラーもアメリカと真っ向から戦争する愚は避けようとしている。それ故にルーズベルトは、ドイツ同盟国である日本を巻き込み、国民に公約違反を問われない形で参戦しようと目論んでいた。

 その対応、もはや挑発と呼べるアメリカの態度に、大日本帝国軍人は勿論、新聞マスコミに煽られた国民の殆どが「米英討つべし」との気勢をあげている。

 特殊戦略潜水艦隊構想。
 現状、対中国戦ではほぼ必要としない海軍力は、誰の目にも対アメリカ用決戦兵器だと明らかに思えたのである。
 ならばこそ軍令部他、海軍一兵卒に至るまでアメリカを敵性国と認める事に異論はなかったが、そうは言っても、これ程の大型潜水艦の建造は、何処をどうやり繰りすれば予算化出来るのか、議論が紛糾したのだった。

「大和型の予算を回せと?戦艦を造らず、その様な奇抜な潜水艦を建造すべしとでも?あなた方はそもそも戦艦を『無用の長物』と公言して憚らないが、その巨大な棺桶にしかならぬ潜水艦こそ無用無駄な代物では無いのですか?」

 元々、帝国海軍は大艦巨砲主義が主流だ。
 航空機主力と考える当時海軍次官山本五十六の方が異端と言えるし、「主力は航空機と潜水艦」と誤解のある言い方をする井上成美鎮守府参謀長も同様である。この2人と米内光政横須賀鎮守府司令の3人が、頑として日独伊三国同盟に反対していた事もあって左派3人と呼ばれていた。

「大和を造るなとは言っておらん。対アメリカ戦で米軍戦艦よりも口径の大きい主砲を持つ戦艦は必要だ。だから2番艦の武蔵、あっても3番艦信濃までで、それ以降の尾張や紀伊の計画を凍結し特型潜水艦の建造に回したいと提案しているのだ」

 戦艦史上主義とまではいかなくとも、豊田副武海軍省軍務局長等は戦艦の建造を取りやめてまでも大型潜水艦構想に反対していた。また、潜水艦の現場や艦政本部も大型潜水艦の存在価値に異を唱えたのである。

「通商破壊戦は必要だ。潜水艦はその事に邁進してもらうのは当然だが、アメリカとの早期決戦構想に、どうしても特殊戦略潜水艦隊がいるのだ」

 山本の強い意向を無視は出来ない。

 これ以降も、真珠湾攻撃において「本作戦を実施出来なければ私は艦隊司令長官を辞する」と言って山本は強権を発動している。

 そして秋。
 先ずは伊号第401潜水艦が竣工する。

 いよいよ、特殊戦略潜水艦隊が動き出す日が近付きつつあった。
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