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運命の開戦
10.
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「これだけ撃ち込めばいいだろう。撃ち方やめーい」
重油タンクが破壊し尽くされ太平洋艦隊基地は焼け野原と化した。立ち込める黒煙と咽せる重油の匂い。
少し離れた病院の方は殆ど被害はない。
煙と匂いは仕方がない。呼吸器疾患の者には多少きついだろうが。
その為か、病院が避難場所となりつつあった。
彼等は恨めしげに湾内の巨大潜水艦を見ていた。
マストに翻る晴天旭日旗を。
とてつもない航空戦力による爆撃雷撃。その後の巨大潜水艦による艦砲射撃。まさかここまで一方的に叩かれるとは?
ハワイに駐留する太平洋艦隊。
戦艦8隻、空母2隻。巡洋艦や駆逐艦を多数あり、またカタリナ哨戒機やF4Fワイルドキャット戦闘機も数百機ある大戦力。
日本軍にここを攻略出来る程の戦力は無い。
誰もが固く、そう信じていた。
だからこそ、日本軍の攻略目標はフィリピンだと軍首脳陣は思っていたし、フィリピン基地司令マッカーサーも「日々警戒を怠るな」と臨戦態勢を維持していた。
今、目の前の湾内には無事な艦船等1隻も無かった。ことに戦艦8隻が悉く沈んでしまったのは、太平洋艦隊が壊滅したと言っても過言ではなく、初戦のダメージにしてはあまりにも大き過ぎた。
「どうなるんだ?これから」
目の前で甲板を閉じ、潜航していく巨大潜水艦を見送るしかない兵士達には、焼け野原という絶望感溢れる光景しか映らなかったのである。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
イ- 500は湾内を出た。
イ- 401は先に出て、1隻しか空母がいなかったので哨戒行動に入っていた。
「401は空母を見つけられると思うかね」
「無理でしょう。何せ太平洋は途轍もなく広い」
柴司令も山崎艦長もそこまで楽観的では無い。
ここまでの真珠湾攻撃が、あまりにも出来過ぎなのだから。
「で、400の方は?」
「南田艦長なら大丈夫でしょう。あの人に無理ならば、この作戦はどだい無理な話なんですよ」
単艦活動中のイ- 400に想いを馳せる。
「だが、この為にこそ特型は!潜水空母は存在するのだよ」
山崎も頷く。その時だった。
「艦長!近くに感有り!」
「フム。401との合流地点だったか?」
「いえ。それに401が浮上航行する筈が…、現在地は?」
「オアフ島より北へ420kmだと」
「艦長!大型艦の音源を確認。後、駆逐艦らしき音源多数‼︎」
「これは…、エンタープライズか?」
「急速潜航、深度30」
巨体のせいもあり、イ- 500の潜望鏡深度は通常の潜水艦とは違う。
潜望鏡を覗く山崎は、空母を中心に輪形陣をとる機動部隊の艦影を確認した。
「エンタープライズだ。姿を見ないと思ったら、別任務でもあったんだな。帰投に出くわすとは、ある意味ツイているぞ。司令?」
「無論、撃沈だ。空母攻撃が本作戦の最重要課題なのだからな」
「総員、雷撃戦用意!潜航、深度100」
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
12月6日。
日本から「国交断絶」という宣戦布告があった日。太平洋艦隊機動部隊司令ハルゼー提督は、太平洋の戦力増強の為、ウェーク島へ戦闘機の輸送を命じられていた。
エンタープライズに積めるだけのワイルドキャットを積載し「休暇を潰しおって」とブツクサ言いながらもハルゼーはウェーク島へ赴いたのだ。
「日本軍はハワイに来る。必ずだ!」
太平洋艦隊は大戦力。日本に此処を攻める戦力もなければ、此処まで来るのも各哨戒に引っかかって難儀するだろう。
軍首脳陣は、そう言ってハワイ攻略を本気にせず、キンメル司令は「私よりマッカーサーへ忠告すればどうかね」と取り合わなかった。
だが。
本日朝、日本軍の巨大砲撃潜水艦と言う常識外の化け物がニューヨークを砲撃し、自由の女神や沿岸部を破壊して回った。
自分達の玄関先で、日本軍が好き勝手しおった!
ハルゼーにとって、それだけでも充分腹が立つ事で「急いで帰るぞ!日本を血祭りにあげにゃならん」と息巻いていた。
そしてハワイへと近付き、それこそホームスピードという帰り付きばなの速足になってしまう頃に、日本軍の真珠湾攻撃の報を受けたのである。
「真珠湾が攻撃された?太平洋艦隊が壊滅しただと?」
俄には信じられない状況。
確かに日本軍の奇襲を注意喚起してはいたが、ここまで一方的にやられてしまうとは?
「キンメル!何をやっていたのだ‼︎」
上官を怒鳴りつける程、ハルゼーは激怒していたのである。
と、その時。
「魚雷音、感!」
ソナー室から報告が上がった。
ズガガガーン!ドガガガーン‼︎
「雷撃されました。艦尾及び左舷に命中。左舷スクリューシャフトや転舵が吹っ飛んだ模様」
「見張員は何処を見てた?」
「雷跡、確認出来ず」
「何だとぉ?」
駆逐艦が慌てて動き出す。
と、遥か彼方に巨大な潜水艦が浮上し、甲板を開いた。
「何だ、アレは?」
ハルゼーも初めて見る巨大潜水艦。
化け物潜水艦とは、決して誇張された、臆病風に吹かれた者の世迷言ではなかったと言う事か?
「敵艦、発砲!」
ズガガガーン!
飛行甲板が大破し、格納庫や武器庫から誘爆が起こり出す。
ズガガガーン、ドドーン!
向かおうとした駆逐艦が撃沈される。1発の命中で、とてつもない威力だ。
ザバババァーン!
他の駆逐艦には直撃はなかった。だが、これだけの水中爆発は、充分転舵やスクリューに被害を与えてしまうし、立ち上った水柱は、駆逐艦の上部からたっぷりと海水を浴びせてしまう。
「駆逐艦が止まった?」
「機関に水が入ったんだ。あれ程上から被ってしまっては」
スクリューを半分失い、転舵さえ壊れたエンタープライズはもはや自走出来ない。甲板も捲れた上に、そもそも自走出来ない空母に艦載機の発艦は出来る筈も無く。
「総員、退艦。駆逐艦は救助に回れ」
ズガガガーン!ガガーン‼︎
前に出ようとした巡洋艦に直撃!
やはり戦艦主砲並の搭載砲。コチラの射程外から撃ってくる。エンタープライズにも、再び砲撃が加えられて。
アメリカが誇る巨大空母が、黒煙を濛々と上げながら沈んでいく。
「これでは全滅する」
だが、巨大潜水艦は甲板を閉じると潜航し始めた。
「フン。救助用の駆逐艦2隻は見逃してくれるか。だが、覚えておれ!この借は必ず返す‼︎」
駆逐艦の甲板で、濡れ鼠となったハルゼーの声は、燃え盛る爆音に掻き消されてしまった。
太平洋艦隊は、空母を2隻とも失ってしまった。
重油タンクが破壊し尽くされ太平洋艦隊基地は焼け野原と化した。立ち込める黒煙と咽せる重油の匂い。
少し離れた病院の方は殆ど被害はない。
煙と匂いは仕方がない。呼吸器疾患の者には多少きついだろうが。
その為か、病院が避難場所となりつつあった。
彼等は恨めしげに湾内の巨大潜水艦を見ていた。
マストに翻る晴天旭日旗を。
とてつもない航空戦力による爆撃雷撃。その後の巨大潜水艦による艦砲射撃。まさかここまで一方的に叩かれるとは?
ハワイに駐留する太平洋艦隊。
戦艦8隻、空母2隻。巡洋艦や駆逐艦を多数あり、またカタリナ哨戒機やF4Fワイルドキャット戦闘機も数百機ある大戦力。
日本軍にここを攻略出来る程の戦力は無い。
誰もが固く、そう信じていた。
だからこそ、日本軍の攻略目標はフィリピンだと軍首脳陣は思っていたし、フィリピン基地司令マッカーサーも「日々警戒を怠るな」と臨戦態勢を維持していた。
今、目の前の湾内には無事な艦船等1隻も無かった。ことに戦艦8隻が悉く沈んでしまったのは、太平洋艦隊が壊滅したと言っても過言ではなく、初戦のダメージにしてはあまりにも大き過ぎた。
「どうなるんだ?これから」
目の前で甲板を閉じ、潜航していく巨大潜水艦を見送るしかない兵士達には、焼け野原という絶望感溢れる光景しか映らなかったのである。
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イ- 500は湾内を出た。
イ- 401は先に出て、1隻しか空母がいなかったので哨戒行動に入っていた。
「401は空母を見つけられると思うかね」
「無理でしょう。何せ太平洋は途轍もなく広い」
柴司令も山崎艦長もそこまで楽観的では無い。
ここまでの真珠湾攻撃が、あまりにも出来過ぎなのだから。
「で、400の方は?」
「南田艦長なら大丈夫でしょう。あの人に無理ならば、この作戦はどだい無理な話なんですよ」
単艦活動中のイ- 400に想いを馳せる。
「だが、この為にこそ特型は!潜水空母は存在するのだよ」
山崎も頷く。その時だった。
「艦長!近くに感有り!」
「フム。401との合流地点だったか?」
「いえ。それに401が浮上航行する筈が…、現在地は?」
「オアフ島より北へ420kmだと」
「艦長!大型艦の音源を確認。後、駆逐艦らしき音源多数‼︎」
「これは…、エンタープライズか?」
「急速潜航、深度30」
巨体のせいもあり、イ- 500の潜望鏡深度は通常の潜水艦とは違う。
潜望鏡を覗く山崎は、空母を中心に輪形陣をとる機動部隊の艦影を確認した。
「エンタープライズだ。姿を見ないと思ったら、別任務でもあったんだな。帰投に出くわすとは、ある意味ツイているぞ。司令?」
「無論、撃沈だ。空母攻撃が本作戦の最重要課題なのだからな」
「総員、雷撃戦用意!潜航、深度100」
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12月6日。
日本から「国交断絶」という宣戦布告があった日。太平洋艦隊機動部隊司令ハルゼー提督は、太平洋の戦力増強の為、ウェーク島へ戦闘機の輸送を命じられていた。
エンタープライズに積めるだけのワイルドキャットを積載し「休暇を潰しおって」とブツクサ言いながらもハルゼーはウェーク島へ赴いたのだ。
「日本軍はハワイに来る。必ずだ!」
太平洋艦隊は大戦力。日本に此処を攻める戦力もなければ、此処まで来るのも各哨戒に引っかかって難儀するだろう。
軍首脳陣は、そう言ってハワイ攻略を本気にせず、キンメル司令は「私よりマッカーサーへ忠告すればどうかね」と取り合わなかった。
だが。
本日朝、日本軍の巨大砲撃潜水艦と言う常識外の化け物がニューヨークを砲撃し、自由の女神や沿岸部を破壊して回った。
自分達の玄関先で、日本軍が好き勝手しおった!
ハルゼーにとって、それだけでも充分腹が立つ事で「急いで帰るぞ!日本を血祭りにあげにゃならん」と息巻いていた。
そしてハワイへと近付き、それこそホームスピードという帰り付きばなの速足になってしまう頃に、日本軍の真珠湾攻撃の報を受けたのである。
「真珠湾が攻撃された?太平洋艦隊が壊滅しただと?」
俄には信じられない状況。
確かに日本軍の奇襲を注意喚起してはいたが、ここまで一方的にやられてしまうとは?
「キンメル!何をやっていたのだ‼︎」
上官を怒鳴りつける程、ハルゼーは激怒していたのである。
と、その時。
「魚雷音、感!」
ソナー室から報告が上がった。
ズガガガーン!ドガガガーン‼︎
「雷撃されました。艦尾及び左舷に命中。左舷スクリューシャフトや転舵が吹っ飛んだ模様」
「見張員は何処を見てた?」
「雷跡、確認出来ず」
「何だとぉ?」
駆逐艦が慌てて動き出す。
と、遥か彼方に巨大な潜水艦が浮上し、甲板を開いた。
「何だ、アレは?」
ハルゼーも初めて見る巨大潜水艦。
化け物潜水艦とは、決して誇張された、臆病風に吹かれた者の世迷言ではなかったと言う事か?
「敵艦、発砲!」
ズガガガーン!
飛行甲板が大破し、格納庫や武器庫から誘爆が起こり出す。
ズガガガーン、ドドーン!
向かおうとした駆逐艦が撃沈される。1発の命中で、とてつもない威力だ。
ザバババァーン!
他の駆逐艦には直撃はなかった。だが、これだけの水中爆発は、充分転舵やスクリューに被害を与えてしまうし、立ち上った水柱は、駆逐艦の上部からたっぷりと海水を浴びせてしまう。
「駆逐艦が止まった?」
「機関に水が入ったんだ。あれ程上から被ってしまっては」
スクリューを半分失い、転舵さえ壊れたエンタープライズはもはや自走出来ない。甲板も捲れた上に、そもそも自走出来ない空母に艦載機の発艦は出来る筈も無く。
「総員、退艦。駆逐艦は救助に回れ」
ズガガガーン!ガガーン‼︎
前に出ようとした巡洋艦に直撃!
やはり戦艦主砲並の搭載砲。コチラの射程外から撃ってくる。エンタープライズにも、再び砲撃が加えられて。
アメリカが誇る巨大空母が、黒煙を濛々と上げながら沈んでいく。
「これでは全滅する」
だが、巨大潜水艦は甲板を閉じると潜航し始めた。
「フン。救助用の駆逐艦2隻は見逃してくれるか。だが、覚えておれ!この借は必ず返す‼︎」
駆逐艦の甲板で、濡れ鼠となったハルゼーの声は、燃え盛る爆音に掻き消されてしまった。
太平洋艦隊は、空母を2隻とも失ってしまった。
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