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驚異の潜水空母
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特型戦略潜水戦隊が狙っているアメリカ空母の2隻、サラトガはサンディエゴで改修点検中であり、ホーネットはミッドウェイ島への戦闘機輸送任務についていて真珠湾基地を留守にしていた。
特にホーネットは新型で就航直後だった。
大型なので戦闘機を多く積め、公称最大速力も34ノット。実際にはもう1ノット弱は出せる。
この2隻を失えば、完全に太平洋からアメリカ航空戦力が無くなってしまう。フォレスタル大将から交代した新海軍作戦部長キング大将は「空母を絶対に死守せよ」と厳命していた。
そして、キングは太平洋艦隊司令キンメルを更迭し、ニミッツを大将に引き上げると司令に任命したのである。
潜水艦畑出身だが冷静沈着で知られている。
無論、艦隊壊滅の責任を問われてではあるが、パナマ運河を守りきれなかったマーク大佐等が更迭されていないので、キンメルの戦意喪失が大きな理由と言えた。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
サンディエゴには、イ- 501が向かっていた。
ここで空母サラトガが改修点検中だという事は、日本軍情報部も流石に掴んでいる。とは言え、いたら幸い程度しか期待してはいない。いくら何でも、いつまでものんびりと改修工事をやっている程アメリカが腑抜けの訳が無く、何処かへ退避しているだろうし、いたとすれば、それは罠であろうと言うのが真田艦長の読みだった。
「潜望鏡上げ」
潜望鏡深度で辺りを見回す。
「軍港にいる。出航準備中か?」
真田は、そこに停泊している巨大な空母を見つけた。
「このまま雷撃する」
要地攻撃用戦略砲撃潜水艦であるイ- 501の最大火力はやはり30センチ級の主砲だ。停泊中の艦船ならばコッチの方がコストパフォーマンスもいい。
が、何かが勘にきたのだ。
真田は潜航したままの魚雷攻撃にする。
「雷撃戦用意!」
埠頭の位置の関係から、丁度此方に横腹を向けている。
「左舷連管4本使用」
「左舷連管4本、了解しました!」
左舷川壁際。そこに並べられている魚雷にチェーンを巻き、クレーンを使って発射管前へ移動。
連管長三島兵曹が発射管扉を開ける。
「信管装着」
「装着しました!」
ぶつけない様に慎重に丁寧に、しかも手早く。
「射点計算」
「発射管、用意出来ました!」
「射点まで5分‼︎」
停泊中だ。潜望鏡中心から外れる筈も無くて。
「撃てっ」
1番発射管。号令とともに空気弁を三島兵曹が引き下げ、高圧空気が発射管内に吹き込まれ魚雷を押し出す。
続いて2番、3番、4番の空気弁を引き下げていく。4本とも無事に飛び出し、反動で艦が震えた。
「左舷連管、全門発射」
「命中まで30秒」
10秒からカウントダウンを始め、0、1、2と2秒過ぎた時ドーンという音が4つ響いてきた。
「全弾命中」
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
イ- 501は罠を訝しんだが、サラトガ艦長シマード大佐は、本土軍港停泊という事にリラックスしきっていた。見張も同様であり、また日本軍の誇る95式酸素魚雷は無航跡の為、近くにその影が見えるまで全く警戒していなかった。
ドーン!ドーン!ドーン!ドーン‼︎
サラトガの左舷に3発、横に停泊していた駆逐艦ラドフォードに1発が当たり凄まじい爆発が起こった。
「な、何だ?」
雷撃された?そう感じた時にはサラトガはゆっくりと傾き始めた。横っ腹に大穴が3つ。あっという間に海水が入り込み、機関室や兵器庫等水没してしまっていた。
横ではラドフォードが轟沈していく。
傾きがどんどん大きくなり、甲板上の艦載機がどんどん港に滑り落ちていく。
「総員退避」
「て、敵潜浮上!」
シマード艦長が初めて見る巨大な潜水艦。
徐に甲板を開くと砲塔が旋回し始めた。
「あれが、例の化け物か?」
ドドーン!ドドーン‼︎
「敵艦発砲!」
悲鳴の様な報告が上がる。
傾いている飛行甲板や艦橋に砲弾が命中。もはや死に体のサラトガは、サルベージしても原型を留めていないと思える程のダメージを受けサンディエゴ軍港へ沈んだ。
巨大な砲撃潜水艦は、そのまま軍港設備を砲撃していく。停泊中の駆逐艦も退避する間も無く撃沈されていった。
「馬鹿な。空母は死守せよと厳命した筈だ」
いくら本土軍港に停泊中だからとは言え、虎の子の空母を為す術もなく撃沈された?
冷静沈着と評判の高いミニッツ大将だったが、その評を変えざるを得ない程の激昂を見せる。
だが、それ以上に日本軍の砲撃潜水艦が本土砲撃を行った事に、心配していた事が現実になってしまったと愕然としてしまう。
そして、このニュースはアメリカ全土に再び速報として衝撃的に伝えられた。
ホワイトハウス、オレンジルーム。
本土軍港停泊中の空母サラトガ雷撃及び砲撃による撃沈は、これまで以上の衝撃を軍首脳陣に与えていた。
「こうも、こうも好き勝手に日本に我が国土を蹂躙されるとは?アメリカには防衛軍は存在しないのか?」
日本を挑発し戦線布告させた事は、大統領の致命的な失策である。
連日、野党は勿論与党からも議会の追及を受けるルーズベルトは、ブチ切れんばかりに額の血管を浮き上がらせて海軍を詰ってきた。
だが、ノックス海軍長官もキング作戦部長も返す言葉を見出せない。
戦略砲撃潜水艦。
潜水空母。
日本軍の尖兵が予想…、いや想像を上回る存在と活躍をしているのだ。
「インド洋でも彼等は暴れ回っているらしい。チャーチルからも『とんだ藪蛇だよ』と言ってきた」
イギリス極東艦隊が、戦艦プリンス・オブ・ウェールズと巡洋戦艦レパルスが日本軍の大空襲を受け沈没してしまう。
真珠湾の時と違い、これは空母ではなく台湾から発した陸攻部隊の空襲だった。
またフィリピンのマッカーサーの所もゼロ戦の空襲を受け、当初マッカーサーは「近くに空母がいる筈」と海軍へ空母討伐を要請した。だが、これも台湾からの出撃である。
スリムで軽量のゼロ戦は1,800キロの航続距離を持ち、熟練者ならば2,000キロの飛行も不可能ではなかったのだ。
「信じられない性能だ。何故日本の開発力はそれ程優れている?」
後に判明する。
日本機には、全く防御力が備わっていないという事を。それ故の軽量化だという事を。
だが、この頃は「見たら逃げろ」と言われる程アメリカ軍パイロットに言わしめる戦闘機だった。
特にホーネットは新型で就航直後だった。
大型なので戦闘機を多く積め、公称最大速力も34ノット。実際にはもう1ノット弱は出せる。
この2隻を失えば、完全に太平洋からアメリカ航空戦力が無くなってしまう。フォレスタル大将から交代した新海軍作戦部長キング大将は「空母を絶対に死守せよ」と厳命していた。
そして、キングは太平洋艦隊司令キンメルを更迭し、ニミッツを大将に引き上げると司令に任命したのである。
潜水艦畑出身だが冷静沈着で知られている。
無論、艦隊壊滅の責任を問われてではあるが、パナマ運河を守りきれなかったマーク大佐等が更迭されていないので、キンメルの戦意喪失が大きな理由と言えた。
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サンディエゴには、イ- 501が向かっていた。
ここで空母サラトガが改修点検中だという事は、日本軍情報部も流石に掴んでいる。とは言え、いたら幸い程度しか期待してはいない。いくら何でも、いつまでものんびりと改修工事をやっている程アメリカが腑抜けの訳が無く、何処かへ退避しているだろうし、いたとすれば、それは罠であろうと言うのが真田艦長の読みだった。
「潜望鏡上げ」
潜望鏡深度で辺りを見回す。
「軍港にいる。出航準備中か?」
真田は、そこに停泊している巨大な空母を見つけた。
「このまま雷撃する」
要地攻撃用戦略砲撃潜水艦であるイ- 501の最大火力はやはり30センチ級の主砲だ。停泊中の艦船ならばコッチの方がコストパフォーマンスもいい。
が、何かが勘にきたのだ。
真田は潜航したままの魚雷攻撃にする。
「雷撃戦用意!」
埠頭の位置の関係から、丁度此方に横腹を向けている。
「左舷連管4本使用」
「左舷連管4本、了解しました!」
左舷川壁際。そこに並べられている魚雷にチェーンを巻き、クレーンを使って発射管前へ移動。
連管長三島兵曹が発射管扉を開ける。
「信管装着」
「装着しました!」
ぶつけない様に慎重に丁寧に、しかも手早く。
「射点計算」
「発射管、用意出来ました!」
「射点まで5分‼︎」
停泊中だ。潜望鏡中心から外れる筈も無くて。
「撃てっ」
1番発射管。号令とともに空気弁を三島兵曹が引き下げ、高圧空気が発射管内に吹き込まれ魚雷を押し出す。
続いて2番、3番、4番の空気弁を引き下げていく。4本とも無事に飛び出し、反動で艦が震えた。
「左舷連管、全門発射」
「命中まで30秒」
10秒からカウントダウンを始め、0、1、2と2秒過ぎた時ドーンという音が4つ響いてきた。
「全弾命中」
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イ- 501は罠を訝しんだが、サラトガ艦長シマード大佐は、本土軍港停泊という事にリラックスしきっていた。見張も同様であり、また日本軍の誇る95式酸素魚雷は無航跡の為、近くにその影が見えるまで全く警戒していなかった。
ドーン!ドーン!ドーン!ドーン‼︎
サラトガの左舷に3発、横に停泊していた駆逐艦ラドフォードに1発が当たり凄まじい爆発が起こった。
「な、何だ?」
雷撃された?そう感じた時にはサラトガはゆっくりと傾き始めた。横っ腹に大穴が3つ。あっという間に海水が入り込み、機関室や兵器庫等水没してしまっていた。
横ではラドフォードが轟沈していく。
傾きがどんどん大きくなり、甲板上の艦載機がどんどん港に滑り落ちていく。
「総員退避」
「て、敵潜浮上!」
シマード艦長が初めて見る巨大な潜水艦。
徐に甲板を開くと砲塔が旋回し始めた。
「あれが、例の化け物か?」
ドドーン!ドドーン‼︎
「敵艦発砲!」
悲鳴の様な報告が上がる。
傾いている飛行甲板や艦橋に砲弾が命中。もはや死に体のサラトガは、サルベージしても原型を留めていないと思える程のダメージを受けサンディエゴ軍港へ沈んだ。
巨大な砲撃潜水艦は、そのまま軍港設備を砲撃していく。停泊中の駆逐艦も退避する間も無く撃沈されていった。
「馬鹿な。空母は死守せよと厳命した筈だ」
いくら本土軍港に停泊中だからとは言え、虎の子の空母を為す術もなく撃沈された?
冷静沈着と評判の高いミニッツ大将だったが、その評を変えざるを得ない程の激昂を見せる。
だが、それ以上に日本軍の砲撃潜水艦が本土砲撃を行った事に、心配していた事が現実になってしまったと愕然としてしまう。
そして、このニュースはアメリカ全土に再び速報として衝撃的に伝えられた。
ホワイトハウス、オレンジルーム。
本土軍港停泊中の空母サラトガ雷撃及び砲撃による撃沈は、これまで以上の衝撃を軍首脳陣に与えていた。
「こうも、こうも好き勝手に日本に我が国土を蹂躙されるとは?アメリカには防衛軍は存在しないのか?」
日本を挑発し戦線布告させた事は、大統領の致命的な失策である。
連日、野党は勿論与党からも議会の追及を受けるルーズベルトは、ブチ切れんばかりに額の血管を浮き上がらせて海軍を詰ってきた。
だが、ノックス海軍長官もキング作戦部長も返す言葉を見出せない。
戦略砲撃潜水艦。
潜水空母。
日本軍の尖兵が予想…、いや想像を上回る存在と活躍をしているのだ。
「インド洋でも彼等は暴れ回っているらしい。チャーチルからも『とんだ藪蛇だよ』と言ってきた」
イギリス極東艦隊が、戦艦プリンス・オブ・ウェールズと巡洋戦艦レパルスが日本軍の大空襲を受け沈没してしまう。
真珠湾の時と違い、これは空母ではなく台湾から発した陸攻部隊の空襲だった。
またフィリピンのマッカーサーの所もゼロ戦の空襲を受け、当初マッカーサーは「近くに空母がいる筈」と海軍へ空母討伐を要請した。だが、これも台湾からの出撃である。
スリムで軽量のゼロ戦は1,800キロの航続距離を持ち、熟練者ならば2,000キロの飛行も不可能ではなかったのだ。
「信じられない性能だ。何故日本の開発力はそれ程優れている?」
後に判明する。
日本機には、全く防御力が備わっていないという事を。それ故の軽量化だという事を。
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