出撃!特殊戦略潜水艦隊

ノデミチ

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急転

32.

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 ソ連との密約。

 それは、ナチスドイツが行っていたユダヤ人迫害からの脱出行支援…の黙認。

 ドイツからの脱出行。
 地続きであるソ連から極東へ。
 その動きを見て見ぬふりをするよう、日本外交筋から要請があった。

 元々は、ドイツからの技術供与時に技術将校アルベルト=メレケス大尉との交流から始まった事だ。
 彼の母方の祖父がユダヤ人の技術者…職人であり、メレケスの技術者としてのスタートは、大好きな祖父の仕事への憧れからだった。

 ナチス党が政権をとり、やがてユダヤ人迫害に及び始めた時、祖父は敢えて娘夫婦と絶縁した。海軍士官であった娘婿は「自分の士官としての権限と技術者としての義父の技術力があれば、どうにかなる」と翻意を促したのだが、「ならばこそ儂を捨てて娘と孫の身の事だけを考えてくれ」と頑なに拒んだのである。

 結果、メレケスの祖父は収容所へ送られ、それが今生の別離となった。

 メレケスは、日本への技術交流の名目で祖父と同じ様な技術者を日本へ送る国外脱出させる事にした。

 同盟国の中でも、日本にはユダヤ人への偏見や迫害は無かった。日本も人種差別が皆無では無かったが、それは中国や朝鮮等アジアに対するモノで、西欧人へは憧れと劣等感が殆どと言えた。
 ユダヤ人の技術者は、日本人にとって尊敬の対象だったのだ。その意味では、ユダヤ人受け入れに人道的なモノは無かった。

 だが、リトアニアの杉浦大使がユダヤ人へビザを発行し続けた事もあり、ユダヤ系社会にとっては日本の行いは人道的な博愛主義と受け止められていた。彼らはシベリア鉄道や場合によっては徒歩で、必死に極東を目指したのである。

 それは、アメリカに於いても大きな布石となる。
 ユダヤ系資本は、当時のアメリカ経済にかなりの影響力を持っていたのだから。

 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

「日本はドイツの要請を蹴った、と」
「外交筋は勿論、東京にいる諜報員スパイからも同様の報告があります。彼等は我が国との不可侵条約を遵守すると」
「それは僥倖だな、同志。では我々は対ドイツに全力を集中しよう」

 スターリンにとっては、ドイツと日本の挟撃を何よりも恐れていた。日露戦争の敗北は、ソ連軍にとっても苦い現実であり、玉砕を考慮しない日本軍の攻撃は理解不能と言えた。
 そんな得体の知れない軍と戦う事はゴメンだ。

 とは言え、ドイツ軍は強力で確実にモスクワへと圧迫されつつある。

「だが、我々には冬将軍という味方がいる」

 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

「今回は、魚雷も供与されたようだな」
「ええ。これが日本の誇る酸素魚雷。馳走能力は我が国の比ではありません。性能も段違いだ。初回の技術交換では、日本はこの魚雷を秘匿しました」
「だが、例の戦略砲撃潜水艦や潜水空母の技術は依然秘匿されたまま、か」

 開戦直後。
 初の技術交換は、日本軍がドイツに赴いて行う。秘密裡の航海の為、使われたのは伊号第30潜水艦。ドイツまでの航海、ジグザグコースで迂回等もあり往復3万海里近いものがあり、Uボートでは航続距離は勿論艦型の小ささもあり、物資輸送にしても人材派遣にしても向いてはおらず、日本軍潜水艦が使われる事になっていた。
 だが、この時は日本側からドイツが欲する技術は殆ど供与されなかった。秘匿技術を、同盟国と言えども渡す事に難色を示したのである。

 2回目たる昭和17年の技術交流は、イ- 8潜が赴き、日本軍が誇る酸素魚雷や自動懸垂装置等日本海軍独自の技術がもたらされた。
 魚雷については、ドイツ軍も喉から手が出る程欲しいモノである為狂喜乱舞したのだが、大型の潜水艦を持たないドイツにとっては、巡洋艦並の船体と火力を持つ戦略砲撃潜水艦の技術は、それ以上に欲しいモノであり、またヒトラー総統からも開発をせっつかれてる艦種であった。
 イギリスを陥落させる切り札ともなり得る戦略砲撃潜水艦の存在は、その開発の噂だけでも充分にイギリスを恐れ慌てさせ、イギリス諜報部は必死にその真偽を確かめていたのだ。

「我々が持っている、いや、持つかもしれぬ。そう思わせるだけでもイギリスを追い詰める事が出来るのだよ」

 この辺り、海軍のデーニッツと宣伝相ゲッペルスの情報操作は完璧であり、間違いなくイギリスは追い詰められていた。

 ならばこそ、イギリスは秘密裡に日本と接触・交渉したのである。

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感想 4

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みんなの感想(4件)

月影 流詩亜(旧 るしあん)

投票しました。

微力ながら応援しています。

解除
月影 流詩亜(旧 るしあん)

久しぶりに一緒に同じ大賞に参加ですね。

微力ながら、応援しています。

解除
@ヤマト
2024.10.08 @ヤマト

史実以上に暴れまくる太平洋艦隊、面白いです!頑張って下さい!

解除

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