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第3章 テイマーが大人気
21. 薬師の弟子だから…
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昨日、依頼を終わったから当分依頼を受けなくてもいいかな? そう思いながら来てしまった冒険者ギルド。入るや否や、指名依頼がある! と受付嬢リリアに捕まってしまうロックだった。
「どういうこと?」
「王国の南にネルエルという街があります。規模はこのアゥゴーよりも小さいのですが、王国有数のビム麦畑を持つ穀倉地帯の中心的な街です。このアゥゴーからは街道を馬車で10日程の距離です。そこで病魔が発生したのです。その、詳しくはギルドマスターから話があります」
「ロック?」
リルフィンも不思議? と思う表情。それくらいロックの顔付きが険しく、初めて見る近寄り難い雰囲気だったのだ。
「ロック!?」
寄り添い、手を絡めて握るリルフィン。ロックもリルフィンの温もりを感じて表情が戻る。
「あ、うん、大丈夫。その、ありがとう、リルフィン」
手を握り返すロック。
「ギルドマスターから詳しい話があるんだよね」
「こちらです。ギルマスの執務室へどうぞ」
執務室。
応接テーブルにはミルクと、今回はケーキがある。
「ルミナさん! 病魔が発生したって!!」
「ロック君、リルフィンさん。まずは座って。そうね。ネルエルという街で病魔が発生した事は聞いているのよね」
頷く2人。ロックの顔付きは相変わらず険しい。
「流行っているのは『赤斑病』。体力の少ない子供や老人がかかって拡がり、大人の女性へも拡がりつつある。高熱が出て赤い斑点が手足、そして身体に出来て、そこから臭く匂う体液?汁が出て痛みを伴う奇病。高熱が続いて体力・魔力を失い、やがて死に至る。その上感染力も強く患者を隔離しているけど、どんどん拡がっていってる不治の病。なので、王国の名で治療…って言うより薬を求めてるの。薬って言っても『ダイマイザ草』を湯煎したものだけど…」
ガタン。いきなり立ち上がるロック。
「『ダイマイザ草』って、それ只の痛み止め!しかも強い毒性がある!! 安楽死させてるんですか?」
「流石『黒き大賢者』の弟子ね。それを分かっちゃうんだ」
ロックの言う通り、『ダイマイザ草』は痛み止めとして強い効き目を持つ。毒性も強く、また睡眠薬としても強力な作用がある。眠る様に死ねる為『安楽死薬』という別名が有る位の薬…毒草なのだ。
また、ここでも病魔の為に理不尽な死が!
「ごめんなさい。病魔による理不尽な死を迎える事。貴方にとって辛い過去なのは分かる。分かってて頼みたいの!!」
悲しげに、でも何か望みをかけた目でロックを見るルミナ。ロックは、何故指名依頼なのかが分かった。
リルフィンも、ロックの厳しい顔付きの訳を知ったのである。
「ジッチャンが特効薬を知らないか、僕に確認してるんですね? 『赤斑病』…。確か…」
自分の中にある、入院中の日々で学んだ事。コルニクスから転写された知識。色々思い出して考える。確か…、確か何かがある! 何か…。何だ? 何かピースが一つ埋まらない。何か忘れてる事がある?
「図書室行きます。ジッチャンの資料、全部有りましたよね。僕に時間ください」
「分かったわ」
「よし。リルフィン、手を貸して」
「はい、ロック」
2人の子供は図書室に籠る。
「リルフィン、『赤斑病』『感染』『寄生』『ネズミ』ってのが表紙にあるの、ここに並べてくれる?」
そう言って、自分もそのワードがある本やノートを持って来て熱心に読み出すロック。
「分かった。えーと…」
田舎の山村出の獣人にしてはリルフィンは読み書きが出来た。母親が出来たのと、父親の、自分が全く書けないので子供には! という思いが強いのがあり、リルフィンに母親が出来るだけの事を教え込んだのだ。絵本好きも幸いし、リルフィンは直ぐ読み書き出来る様になった。
この辺りロックには想像を超える世界である。
前世で識字率の高い日本にいたが為に、リルフィンが読み書き出来る事に何の疑問も持たなかったのだ。
今こうして冒険者が出来る事、『賢者の弟子』たるロックの手伝いが出来る事。両親に感謝しつつ、言われたノートを探すリルフィンだった。
読み込み、探す事一晩。ピースの欠片が見付かりつつある。
「この薬草と呪文、魔力高めで湯煎して…、う~ん、後一歩? 何かもう一つピースが足らない…」
「ロック? これで終わりだと思う。このノートが最後」
「ありがとう、リルフィン」
受け取り、パラパラ捲るロック。
「あ? これ! よし!! 見付かった! ピースが揃った! パズルが完成した!!」
そこにあったのは、探していた薬草の自生場所。煎じ方と魔力を込める割合。ここを間違えると薬液が煎茶になってしまう。
「ボルケム魔草。コイツは火山地帯にしか自生しない。でも、ライカー王国で探すのに苦労する薬草じゃない」
旧ダイザイン王国との国境付近の山脈やザルダン帝国との国境にある火山地帯。北の温泉地帯の近くにも自生している。
「魔力高めの『ヒール』と毒液…、あはは、リントがいれば問題無し。そしてボルケム魔草。これで特効薬が出来る!」
「ロック?」
「うん、リルフィン。治せる! 『赤斑病』は治せる!でも臨床実験の時間が無いな。ぶっつけ本番、 ネルエルの領主が聞いてくれるかな」
リルフィンの不思議そうな顔。ロックはこの世界に臨床実験の概念が無い事を思い出す。
「ネズミによるウイルス感染もピンとこないだろうな。病魔という見えない魔物のせいになってるし」
「ロック?」
「あ、ごめん。リルフィン、探してくれてありがとう。早速ルミナさんの所に行かないと」
本やノートを片付けて、2人はギルドの受付カウンターへ行く。明け方だからか、いつもの受付嬢リリアではなく、初老の男性が座っていた。
「うん、おぉ、ロック。薬が見付かったかの?」
ロック達と同じ歳の孫がいる男性は、リリアから事情を引き継いでいた。
「はい、ギルドマスター・ルミナさんに取り次いで欲しいんです」
「うん。だが、時間がの。ここにおったかの?」
「トゥザ、いるわ。直ぐにこっちへ」
執務室が開いてルミナが顔を出し、手招きする。赴く2人。
「見付かったのね!」
「はい。ジッチャンの研究で。ボルケム魔草に『ヒール』の魔力を溶かし込んで、少しの『毒液』スキルの毒を混ぜる。それが『赤斑病』の特効薬です」
「ボルケム魔草? あんなに高熱が出る病魔の薬に『火』の魔力を持つ魔草を使うの?」
驚くルミナ。水魔法や氷魔法で熱を冷やす事が治療と思われてきたからだ。
「実は、この病魔は熱さに弱いんです。だから自然治癒の力で高熱が出ていた。でも、治る前に患者の体力が持たなかった。だから、短時間で体熱を上げてヒールの魔力でその分の体力を維持する。で、スキルの毒で病魔を殺す。ポイズンドートやスライムの毒液で病魔を殺せます。ジッチャンの研究の成果…。でも…、ジッチャン、試せていない」
「そうね。今までは隔離して安楽死、焼き払うのが『赤斑病』の処理。とても新しい薬や治療を試すなんてのは…。でも、変えなきゃ! 辺境伯から王都に連絡してもらいましょう。『黒き大賢者』の研究ノートに『赤斑病』の治療方法、特効薬があった。ネルエルで試させて欲しい、と」
「はい!」
ギルドマスター・ルミナから領主アルナーグ辺境伯へ、直ぐ様連絡が行き、辺境伯も、事の大きさを鑑み、即王都へ魔法の通信を入れた。
「何! 真か! 『赤斑病』の特効薬があったというのは?」
「不治の病なのだぞ? 何処のエセ僧侶? それとも錬金術師か?」
王城も大騒ぎとなる。
「アルナーグ辺境伯からの連絡です。何でも『黒き大賢者』の研究で『赤斑病』の特効薬を作っていたとか。その資料は全て冒険者ギルドが保管しており、今回その資料を精査して分かったとの事」
「アルナーグ辺境伯…。『黒き大賢者』の研究…。成る程、あそこには弟子が、件のテイマーがいたな」
ライカー公爵が唸る。それを聞いて、
「そうか、ロックが! 彼は確かに錬金術の才能は無いとは言っていたが、薬師の才、というより知識だな。かなり深く学んだと聞いた。父上! これは試す価値はあると考えます」
ウィリス王太子も国王マシウス3世に言上する。
「宰相は如何に?」
「試す価値あり、と考えます。ダメであれば何時もの如く『ダイマイザ草』にて処理すればよろしいですし」
流石に宰相ラーデウス公爵もウィリス王太子やライカー公爵に反対する事はなかった。
そして王は決断する。
「アルナーグ辺境伯に伝えよ。件のテイマー、『黒き大賢者』の弟子が特効薬を作れるのならば、やってみせよ! とな」
「御意」
「この特効薬は報奨物だよ、ロック君。爵位叙勲も出来るけど、彼は受け取ってくれるかな?」
ウィリス王太子の微笑み。だが、ライカー公爵は笑みを浮かべながらも、首を横に振る。
「叔父上…。フフ、分かっていらっしゃるようだ。まぁ、あのロック君が私達に牙を剥くとは思えないけどね」
王城から魔法通信が送られ、辺境伯の館から冒険者ギルドに、即王命が伝えられた。
王命を待つ間に『ボルケム魔草』の採集が行われており、命を受けたロックは、自らの莫大な魔力とポイズンスライム『リント』の協力を得て、相応の数の薬を確保していたのである。
「後は現場でも出来るし、ネルエルにだって薬師はいるよね? よし! 向かいます!!」
薬をザックに入れて、1人出て行こうとするロック。
ルミナやリルフィンが慌てて呼び止める。
「ロック? 待って!」
「待ちなさい! ロック君、貴方1人で行くつもり?」
コクリ。
頷くと、そのまま行こうとする。
「ロック?」
「ダメ。今回リルフィンはここに居て。ネルエルは病魔が蔓延してる。誰も連れて行けない」
「かかっても薬があれば!?」
「わざわざかかりに行く事は無いよ、リルフィン。だから、僕1人で行く」
再び険しい顔付きをするロック。有無を言わさない!頑なと言える意思を全面に出している。
「そんなのロックも同じ! 貴方はかかってもいいの?イヤ! 私、絶対イヤだから…」
「リルフィン、僕はかからない。大丈夫。だから、待っていて欲しい。うん。安心できる証拠」
ロックは羊皮紙を出す。
「ステイタス、スキルオープン。身体関係のみ」
映し出されるロックのスキル。
健康 Lv8
回復力Lv9 ボーナス15%
持久限界Lv8 ボーナス10%
苦痛耐性Lv9
病気 無効
「見ての通りです。僕、病気にはかかりません。回復力も高くしかも人より回復速いんです。苦痛にも耐えられるし、我慢の限界点も人より高い」
「病気…無効って? こんなスキル、初めて見た」
「病気耐性、子供の頃、結構病気がちでジッチャンが色々薬試した。それで耐性Lv上がっていった。そして、あの『イダケル木石病』。村を襲った、ジッチャンも薬、作れなかった病気…。あの病気、高い病気耐性で乗り切った時、Lv Maxになった。そしたら、スキルが進化した」
この世界ルーセリアに転生する時、女神ルーシアンのお詫び加護の最たるモノ。
「この世界で、貴方が病気になる事はありません。だから、思う存分生きる事を楽しんで下さい」
そう、最初から『病気無効』だったのだ。
だが、これは生物としてあり得ないスキル。『亜神』の領域。なのでコルニクスが女神ルーシアンに助言したのだ。
「儂が色々手を加えた事にすればよい。世間は納得するぞい? カッカッカ」
「やっぱり楽しんでますね、コルニクス」
女神にダメ出し出来るのも大賢者ならでは。
確かに、ルミナとリルフィンは納得した。
多分、それ以外の皆も納得するだろう。それくらい『黒き大賢者』の仕業という事には説得力があるのだ。
「それじゃ。ドランに乗れば2日位かな。行きます」
「待って! やっぱり、途中迄行く。私が送る」
「リルフィン?」
「私、イーノ村の生まれ。ネルエルの南の山奥の村。だから、イーノ迄送る。そこで貴方を待つ!ならいいでしょう?」
リルフィンもまた頑なである。一歩も引かない!そんな思いでロックの腕を掴む。
ムギュ。ボン!!
「ふわぁん! え、ロック?」
「分かった。ありがとう、リルフィン」
真っ赤な瞬間ボイラーをしっかり抱き締めるロック。
ちょっぴり生暖かい目で見た後、
「さぁ、時間無いわ。ネルエルへはギルドを通して連絡しておく。2人とも、しっかりね」
出発を促すルミナ。
「それじゃ、行きます。『テレポート』」
リルフィンの時空魔法。『ワープ』の上位版。
場所を明確に頭に思い浮かべられたら、後は魔力がモノを言う。生まれ故郷の場所だから、座標特定に多少のボーナスがある。なので、今のリルフィンの魔力で充分辿り着ける距離だった。
「オーブ起動。アゥゴーのギルドよりネルエルのギルドへ。こちらルミナ。シーマ? 聞こえて?」
ギルド間の緊急通信用にある連絡オーブ。
本来は魔力で動くのだが、莫大な魔力を必要とする為魔晶石という魔力の籠った水晶を台座に組み込んで起動させる。その消費はかなりのモノで、話中にガチャガチャと継ぎ足していかなくてはならない代物。
オーブに映し出される深紅の髪の女性。
ルミナの元冒険者仲間。同じパーティーにいた賢者上がりのネルエル・ギルドマスター・シーマ=リスニン。ルミナもだが、冒険中の依頼で国の報奨を受け騎士叙勲されている。下級騎士ではあるが、叙勲は叙勲。貴族は貴族である。
「ルミナ。薬は? 『ダイマイザ草』は集まったのね?アゥゴーなら収集は容易でしょう。3つ首竜の森に幾らでも自生しているし、そこの冒険者ランクは高い人が多いし」
「シーマ! ウチの若手テイマー、ロックは知っているわよね」
「勿論よ。その子を知らない冒険者はいないわ。また凄い子が入ったわね。彼が持って来てくれるの?」
「ええ。でも、『ダイマイザ草』じゃないわ。ロックが持って来るのは『特効薬』よ!」
「は? え? 何? 何を持って来るって?」
「特効薬!ロックの師匠、『黒き大賢者』は『赤斑病』の特効薬を作り上げていたの。ロックはその製法を学んでいた。まだ世に出ていない薬だけど、あの子を、ロックと『黒き大賢者』を信じて欲しいのよ」
「まさか、そんな。本当に? 本当に信じていいの? 希望を持っていいのね?」
降って湧いた希望。思ってもみなかった言葉に、シーマは涙が溢れてしまう。
「シーマ、私を信じて! ウチの冒険者を信じて! 今、ロックは大急ぎでそっちにむかってるわ」
「ありがとう、ルミナ。アゥゴーからなら10日ね。ちょっと厳しいけど希望が出来るのなら…」
「ううん、もうすぐ着くわ。ロックのパートナー、リルフィンはイーノ村の出身だった。そこまでリルフィンが『テレポート』で送ったの」
「イーノ村? そこからなら1日で来れる。本当にありがとう、ルミナ」
「まだよ、ロックの従魔はトライギドラス。乗って飛んでくるから。だからもうすぐ着くから。急いで街中に、門番にも知らせて!」
「飛んで? …あ、そ、そうね。分かったわ! 本当にありがとう。直ぐ手配するわ」
「頑張ってね、シーマ。通信終わり」
オーブに映るルミナの顔が消える。結構長く話した。おそらく、かなりの魔晶石を使い潰した筈。
「ありがとう、ルミナ。さぁ、こうしちゃいられない!」
ギルドマスター・シーマの指揮で街中に薬が、特効薬が来る事が広まった。
夢のような話。だが、人々は希望にすがり付く。
「ギルドマスター!」
門番が空を指す。その指の先に、3つ首竜の姿がどんどん大きくなっていく。
「トライギドラス…」
ネルエルの街を滅ぼせる力を持つAランクの魔物。
だが、その背には少年がいる!
「ドラン、あそこ」
「パルルルル【おう! あそこ、降りる】」
「ピルルルル【降りていいのか?】」
「プルルルル【降りるー!】」
「あぁ、頼むよ」
ゆっくり降りてくるトライギドラス。
「シーマさん?」
「あれは従魔。人を襲う事は無いわ。王都で曲芸飛行を見せたって、貴方達も聞いたでしょう」
戦勝パレードで見せたという話。国中の語り草になってはいた。だが、目の前にトライギドラスが迫って来ると、やはり恐怖心が大きくなる。
「ギルドマスター・シーマさん? アゥゴー・ギルド所属のテイマー、ロックです」
トライギドラスから降りるや否や、背にあるザックから薬瓶を取り出すロック。
「これが?」
「はい! ジッチャンの作った特効薬です。これを飲ませてみて下さい」
「数は?」
「とりあえず、王都からの指示待ちの間に100本は作りました。材料もたっぷりあるので今から作りますし、ここの僧侶や回復師にも手伝ってもらえれば」
「ありがとう、ロック君。先ずは子供、老人から!急いで、手分けして配布、飲ませてあげて!!」
配られた薬は、直ぐ様子供達から与えられた。
「飲んだ直後は高熱が出てグッタリします。でも、この病魔は熱さに弱いんです。また、病魔を殺す毒液も入っています。しばらくすれば、赤斑が消えていきます。1日経っても熱が上がらなければ完治です」
薬を服用後、皆一様に高熱が出てグッタリと昏睡状態になった。ロックから最初の説明がなければ大騒ぎだっただろう。だが数時間後、熱が下がるのと同時に赤斑が消えていく。勿論身体中の痛みも、臭い体液もなくなったのである。
「大丈夫? もう痛くない?」
回復が早かったのはやはり子供達だった。
母親達の歓喜の声が街中に響く。
勿論、病魔に倒れた親達も続いて良くなっていった。老人達も遅い回復であったものの、それでも翌日には楽になったのである。
「ネズミ?」
「はい。元々この病魔はネズミの中で生きる寄生虫が持つものなんです。ネズミの中に、やっと見えるくらいの白い虫。本来下水道、地下水道やトイレの奥にしかいないネズミが、何らかの条件で増えてしまった。で、街中に出て来たネズミの糞の中に、その虫の卵があったと思うんです。卵だと、もう見えないかもしれない小ささなので。その卵から生まれた虫が、街中の水や店の食べ物に入ってしまった」
「それを飲み食いして病魔が体内に入った。確かに、最近ネズミを見かける事は多かったけど…」
ロックが原因を「推測ですけど…」と語り始めた。師匠からの知識。現代医学の知恵。ギルドマスターや街の者から聞いた事象から導き出される推測。
「だから、地下か何処か、ネズミが街中に出て来た原因があります。それを突き止め取り除いた上で、ネズミの駆除をしないと、多分また『赤斑病』が流行ります。特効薬ありますけど、病魔を作らない、増やさない取り組みが大事です」
「全くだわ。それにしても、どうしてネズミがこんなに増えたのかしら?」
地下水道に、厄介な異変が起きていたのだった。
「どういうこと?」
「王国の南にネルエルという街があります。規模はこのアゥゴーよりも小さいのですが、王国有数のビム麦畑を持つ穀倉地帯の中心的な街です。このアゥゴーからは街道を馬車で10日程の距離です。そこで病魔が発生したのです。その、詳しくはギルドマスターから話があります」
「ロック?」
リルフィンも不思議? と思う表情。それくらいロックの顔付きが険しく、初めて見る近寄り難い雰囲気だったのだ。
「ロック!?」
寄り添い、手を絡めて握るリルフィン。ロックもリルフィンの温もりを感じて表情が戻る。
「あ、うん、大丈夫。その、ありがとう、リルフィン」
手を握り返すロック。
「ギルドマスターから詳しい話があるんだよね」
「こちらです。ギルマスの執務室へどうぞ」
執務室。
応接テーブルにはミルクと、今回はケーキがある。
「ルミナさん! 病魔が発生したって!!」
「ロック君、リルフィンさん。まずは座って。そうね。ネルエルという街で病魔が発生した事は聞いているのよね」
頷く2人。ロックの顔付きは相変わらず険しい。
「流行っているのは『赤斑病』。体力の少ない子供や老人がかかって拡がり、大人の女性へも拡がりつつある。高熱が出て赤い斑点が手足、そして身体に出来て、そこから臭く匂う体液?汁が出て痛みを伴う奇病。高熱が続いて体力・魔力を失い、やがて死に至る。その上感染力も強く患者を隔離しているけど、どんどん拡がっていってる不治の病。なので、王国の名で治療…って言うより薬を求めてるの。薬って言っても『ダイマイザ草』を湯煎したものだけど…」
ガタン。いきなり立ち上がるロック。
「『ダイマイザ草』って、それ只の痛み止め!しかも強い毒性がある!! 安楽死させてるんですか?」
「流石『黒き大賢者』の弟子ね。それを分かっちゃうんだ」
ロックの言う通り、『ダイマイザ草』は痛み止めとして強い効き目を持つ。毒性も強く、また睡眠薬としても強力な作用がある。眠る様に死ねる為『安楽死薬』という別名が有る位の薬…毒草なのだ。
また、ここでも病魔の為に理不尽な死が!
「ごめんなさい。病魔による理不尽な死を迎える事。貴方にとって辛い過去なのは分かる。分かってて頼みたいの!!」
悲しげに、でも何か望みをかけた目でロックを見るルミナ。ロックは、何故指名依頼なのかが分かった。
リルフィンも、ロックの厳しい顔付きの訳を知ったのである。
「ジッチャンが特効薬を知らないか、僕に確認してるんですね? 『赤斑病』…。確か…」
自分の中にある、入院中の日々で学んだ事。コルニクスから転写された知識。色々思い出して考える。確か…、確か何かがある! 何か…。何だ? 何かピースが一つ埋まらない。何か忘れてる事がある?
「図書室行きます。ジッチャンの資料、全部有りましたよね。僕に時間ください」
「分かったわ」
「よし。リルフィン、手を貸して」
「はい、ロック」
2人の子供は図書室に籠る。
「リルフィン、『赤斑病』『感染』『寄生』『ネズミ』ってのが表紙にあるの、ここに並べてくれる?」
そう言って、自分もそのワードがある本やノートを持って来て熱心に読み出すロック。
「分かった。えーと…」
田舎の山村出の獣人にしてはリルフィンは読み書きが出来た。母親が出来たのと、父親の、自分が全く書けないので子供には! という思いが強いのがあり、リルフィンに母親が出来るだけの事を教え込んだのだ。絵本好きも幸いし、リルフィンは直ぐ読み書き出来る様になった。
この辺りロックには想像を超える世界である。
前世で識字率の高い日本にいたが為に、リルフィンが読み書き出来る事に何の疑問も持たなかったのだ。
今こうして冒険者が出来る事、『賢者の弟子』たるロックの手伝いが出来る事。両親に感謝しつつ、言われたノートを探すリルフィンだった。
読み込み、探す事一晩。ピースの欠片が見付かりつつある。
「この薬草と呪文、魔力高めで湯煎して…、う~ん、後一歩? 何かもう一つピースが足らない…」
「ロック? これで終わりだと思う。このノートが最後」
「ありがとう、リルフィン」
受け取り、パラパラ捲るロック。
「あ? これ! よし!! 見付かった! ピースが揃った! パズルが完成した!!」
そこにあったのは、探していた薬草の自生場所。煎じ方と魔力を込める割合。ここを間違えると薬液が煎茶になってしまう。
「ボルケム魔草。コイツは火山地帯にしか自生しない。でも、ライカー王国で探すのに苦労する薬草じゃない」
旧ダイザイン王国との国境付近の山脈やザルダン帝国との国境にある火山地帯。北の温泉地帯の近くにも自生している。
「魔力高めの『ヒール』と毒液…、あはは、リントがいれば問題無し。そしてボルケム魔草。これで特効薬が出来る!」
「ロック?」
「うん、リルフィン。治せる! 『赤斑病』は治せる!でも臨床実験の時間が無いな。ぶっつけ本番、 ネルエルの領主が聞いてくれるかな」
リルフィンの不思議そうな顔。ロックはこの世界に臨床実験の概念が無い事を思い出す。
「ネズミによるウイルス感染もピンとこないだろうな。病魔という見えない魔物のせいになってるし」
「ロック?」
「あ、ごめん。リルフィン、探してくれてありがとう。早速ルミナさんの所に行かないと」
本やノートを片付けて、2人はギルドの受付カウンターへ行く。明け方だからか、いつもの受付嬢リリアではなく、初老の男性が座っていた。
「うん、おぉ、ロック。薬が見付かったかの?」
ロック達と同じ歳の孫がいる男性は、リリアから事情を引き継いでいた。
「はい、ギルドマスター・ルミナさんに取り次いで欲しいんです」
「うん。だが、時間がの。ここにおったかの?」
「トゥザ、いるわ。直ぐにこっちへ」
執務室が開いてルミナが顔を出し、手招きする。赴く2人。
「見付かったのね!」
「はい。ジッチャンの研究で。ボルケム魔草に『ヒール』の魔力を溶かし込んで、少しの『毒液』スキルの毒を混ぜる。それが『赤斑病』の特効薬です」
「ボルケム魔草? あんなに高熱が出る病魔の薬に『火』の魔力を持つ魔草を使うの?」
驚くルミナ。水魔法や氷魔法で熱を冷やす事が治療と思われてきたからだ。
「実は、この病魔は熱さに弱いんです。だから自然治癒の力で高熱が出ていた。でも、治る前に患者の体力が持たなかった。だから、短時間で体熱を上げてヒールの魔力でその分の体力を維持する。で、スキルの毒で病魔を殺す。ポイズンドートやスライムの毒液で病魔を殺せます。ジッチャンの研究の成果…。でも…、ジッチャン、試せていない」
「そうね。今までは隔離して安楽死、焼き払うのが『赤斑病』の処理。とても新しい薬や治療を試すなんてのは…。でも、変えなきゃ! 辺境伯から王都に連絡してもらいましょう。『黒き大賢者』の研究ノートに『赤斑病』の治療方法、特効薬があった。ネルエルで試させて欲しい、と」
「はい!」
ギルドマスター・ルミナから領主アルナーグ辺境伯へ、直ぐ様連絡が行き、辺境伯も、事の大きさを鑑み、即王都へ魔法の通信を入れた。
「何! 真か! 『赤斑病』の特効薬があったというのは?」
「不治の病なのだぞ? 何処のエセ僧侶? それとも錬金術師か?」
王城も大騒ぎとなる。
「アルナーグ辺境伯からの連絡です。何でも『黒き大賢者』の研究で『赤斑病』の特効薬を作っていたとか。その資料は全て冒険者ギルドが保管しており、今回その資料を精査して分かったとの事」
「アルナーグ辺境伯…。『黒き大賢者』の研究…。成る程、あそこには弟子が、件のテイマーがいたな」
ライカー公爵が唸る。それを聞いて、
「そうか、ロックが! 彼は確かに錬金術の才能は無いとは言っていたが、薬師の才、というより知識だな。かなり深く学んだと聞いた。父上! これは試す価値はあると考えます」
ウィリス王太子も国王マシウス3世に言上する。
「宰相は如何に?」
「試す価値あり、と考えます。ダメであれば何時もの如く『ダイマイザ草』にて処理すればよろしいですし」
流石に宰相ラーデウス公爵もウィリス王太子やライカー公爵に反対する事はなかった。
そして王は決断する。
「アルナーグ辺境伯に伝えよ。件のテイマー、『黒き大賢者』の弟子が特効薬を作れるのならば、やってみせよ! とな」
「御意」
「この特効薬は報奨物だよ、ロック君。爵位叙勲も出来るけど、彼は受け取ってくれるかな?」
ウィリス王太子の微笑み。だが、ライカー公爵は笑みを浮かべながらも、首を横に振る。
「叔父上…。フフ、分かっていらっしゃるようだ。まぁ、あのロック君が私達に牙を剥くとは思えないけどね」
王城から魔法通信が送られ、辺境伯の館から冒険者ギルドに、即王命が伝えられた。
王命を待つ間に『ボルケム魔草』の採集が行われており、命を受けたロックは、自らの莫大な魔力とポイズンスライム『リント』の協力を得て、相応の数の薬を確保していたのである。
「後は現場でも出来るし、ネルエルにだって薬師はいるよね? よし! 向かいます!!」
薬をザックに入れて、1人出て行こうとするロック。
ルミナやリルフィンが慌てて呼び止める。
「ロック? 待って!」
「待ちなさい! ロック君、貴方1人で行くつもり?」
コクリ。
頷くと、そのまま行こうとする。
「ロック?」
「ダメ。今回リルフィンはここに居て。ネルエルは病魔が蔓延してる。誰も連れて行けない」
「かかっても薬があれば!?」
「わざわざかかりに行く事は無いよ、リルフィン。だから、僕1人で行く」
再び険しい顔付きをするロック。有無を言わさない!頑なと言える意思を全面に出している。
「そんなのロックも同じ! 貴方はかかってもいいの?イヤ! 私、絶対イヤだから…」
「リルフィン、僕はかからない。大丈夫。だから、待っていて欲しい。うん。安心できる証拠」
ロックは羊皮紙を出す。
「ステイタス、スキルオープン。身体関係のみ」
映し出されるロックのスキル。
健康 Lv8
回復力Lv9 ボーナス15%
持久限界Lv8 ボーナス10%
苦痛耐性Lv9
病気 無効
「見ての通りです。僕、病気にはかかりません。回復力も高くしかも人より回復速いんです。苦痛にも耐えられるし、我慢の限界点も人より高い」
「病気…無効って? こんなスキル、初めて見た」
「病気耐性、子供の頃、結構病気がちでジッチャンが色々薬試した。それで耐性Lv上がっていった。そして、あの『イダケル木石病』。村を襲った、ジッチャンも薬、作れなかった病気…。あの病気、高い病気耐性で乗り切った時、Lv Maxになった。そしたら、スキルが進化した」
この世界ルーセリアに転生する時、女神ルーシアンのお詫び加護の最たるモノ。
「この世界で、貴方が病気になる事はありません。だから、思う存分生きる事を楽しんで下さい」
そう、最初から『病気無効』だったのだ。
だが、これは生物としてあり得ないスキル。『亜神』の領域。なのでコルニクスが女神ルーシアンに助言したのだ。
「儂が色々手を加えた事にすればよい。世間は納得するぞい? カッカッカ」
「やっぱり楽しんでますね、コルニクス」
女神にダメ出し出来るのも大賢者ならでは。
確かに、ルミナとリルフィンは納得した。
多分、それ以外の皆も納得するだろう。それくらい『黒き大賢者』の仕業という事には説得力があるのだ。
「それじゃ。ドランに乗れば2日位かな。行きます」
「待って! やっぱり、途中迄行く。私が送る」
「リルフィン?」
「私、イーノ村の生まれ。ネルエルの南の山奥の村。だから、イーノ迄送る。そこで貴方を待つ!ならいいでしょう?」
リルフィンもまた頑なである。一歩も引かない!そんな思いでロックの腕を掴む。
ムギュ。ボン!!
「ふわぁん! え、ロック?」
「分かった。ありがとう、リルフィン」
真っ赤な瞬間ボイラーをしっかり抱き締めるロック。
ちょっぴり生暖かい目で見た後、
「さぁ、時間無いわ。ネルエルへはギルドを通して連絡しておく。2人とも、しっかりね」
出発を促すルミナ。
「それじゃ、行きます。『テレポート』」
リルフィンの時空魔法。『ワープ』の上位版。
場所を明確に頭に思い浮かべられたら、後は魔力がモノを言う。生まれ故郷の場所だから、座標特定に多少のボーナスがある。なので、今のリルフィンの魔力で充分辿り着ける距離だった。
「オーブ起動。アゥゴーのギルドよりネルエルのギルドへ。こちらルミナ。シーマ? 聞こえて?」
ギルド間の緊急通信用にある連絡オーブ。
本来は魔力で動くのだが、莫大な魔力を必要とする為魔晶石という魔力の籠った水晶を台座に組み込んで起動させる。その消費はかなりのモノで、話中にガチャガチャと継ぎ足していかなくてはならない代物。
オーブに映し出される深紅の髪の女性。
ルミナの元冒険者仲間。同じパーティーにいた賢者上がりのネルエル・ギルドマスター・シーマ=リスニン。ルミナもだが、冒険中の依頼で国の報奨を受け騎士叙勲されている。下級騎士ではあるが、叙勲は叙勲。貴族は貴族である。
「ルミナ。薬は? 『ダイマイザ草』は集まったのね?アゥゴーなら収集は容易でしょう。3つ首竜の森に幾らでも自生しているし、そこの冒険者ランクは高い人が多いし」
「シーマ! ウチの若手テイマー、ロックは知っているわよね」
「勿論よ。その子を知らない冒険者はいないわ。また凄い子が入ったわね。彼が持って来てくれるの?」
「ええ。でも、『ダイマイザ草』じゃないわ。ロックが持って来るのは『特効薬』よ!」
「は? え? 何? 何を持って来るって?」
「特効薬!ロックの師匠、『黒き大賢者』は『赤斑病』の特効薬を作り上げていたの。ロックはその製法を学んでいた。まだ世に出ていない薬だけど、あの子を、ロックと『黒き大賢者』を信じて欲しいのよ」
「まさか、そんな。本当に? 本当に信じていいの? 希望を持っていいのね?」
降って湧いた希望。思ってもみなかった言葉に、シーマは涙が溢れてしまう。
「シーマ、私を信じて! ウチの冒険者を信じて! 今、ロックは大急ぎでそっちにむかってるわ」
「ありがとう、ルミナ。アゥゴーからなら10日ね。ちょっと厳しいけど希望が出来るのなら…」
「ううん、もうすぐ着くわ。ロックのパートナー、リルフィンはイーノ村の出身だった。そこまでリルフィンが『テレポート』で送ったの」
「イーノ村? そこからなら1日で来れる。本当にありがとう、ルミナ」
「まだよ、ロックの従魔はトライギドラス。乗って飛んでくるから。だからもうすぐ着くから。急いで街中に、門番にも知らせて!」
「飛んで? …あ、そ、そうね。分かったわ! 本当にありがとう。直ぐ手配するわ」
「頑張ってね、シーマ。通信終わり」
オーブに映るルミナの顔が消える。結構長く話した。おそらく、かなりの魔晶石を使い潰した筈。
「ありがとう、ルミナ。さぁ、こうしちゃいられない!」
ギルドマスター・シーマの指揮で街中に薬が、特効薬が来る事が広まった。
夢のような話。だが、人々は希望にすがり付く。
「ギルドマスター!」
門番が空を指す。その指の先に、3つ首竜の姿がどんどん大きくなっていく。
「トライギドラス…」
ネルエルの街を滅ぼせる力を持つAランクの魔物。
だが、その背には少年がいる!
「ドラン、あそこ」
「パルルルル【おう! あそこ、降りる】」
「ピルルルル【降りていいのか?】」
「プルルルル【降りるー!】」
「あぁ、頼むよ」
ゆっくり降りてくるトライギドラス。
「シーマさん?」
「あれは従魔。人を襲う事は無いわ。王都で曲芸飛行を見せたって、貴方達も聞いたでしょう」
戦勝パレードで見せたという話。国中の語り草になってはいた。だが、目の前にトライギドラスが迫って来ると、やはり恐怖心が大きくなる。
「ギルドマスター・シーマさん? アゥゴー・ギルド所属のテイマー、ロックです」
トライギドラスから降りるや否や、背にあるザックから薬瓶を取り出すロック。
「これが?」
「はい! ジッチャンの作った特効薬です。これを飲ませてみて下さい」
「数は?」
「とりあえず、王都からの指示待ちの間に100本は作りました。材料もたっぷりあるので今から作りますし、ここの僧侶や回復師にも手伝ってもらえれば」
「ありがとう、ロック君。先ずは子供、老人から!急いで、手分けして配布、飲ませてあげて!!」
配られた薬は、直ぐ様子供達から与えられた。
「飲んだ直後は高熱が出てグッタリします。でも、この病魔は熱さに弱いんです。また、病魔を殺す毒液も入っています。しばらくすれば、赤斑が消えていきます。1日経っても熱が上がらなければ完治です」
薬を服用後、皆一様に高熱が出てグッタリと昏睡状態になった。ロックから最初の説明がなければ大騒ぎだっただろう。だが数時間後、熱が下がるのと同時に赤斑が消えていく。勿論身体中の痛みも、臭い体液もなくなったのである。
「大丈夫? もう痛くない?」
回復が早かったのはやはり子供達だった。
母親達の歓喜の声が街中に響く。
勿論、病魔に倒れた親達も続いて良くなっていった。老人達も遅い回復であったものの、それでも翌日には楽になったのである。
「ネズミ?」
「はい。元々この病魔はネズミの中で生きる寄生虫が持つものなんです。ネズミの中に、やっと見えるくらいの白い虫。本来下水道、地下水道やトイレの奥にしかいないネズミが、何らかの条件で増えてしまった。で、街中に出て来たネズミの糞の中に、その虫の卵があったと思うんです。卵だと、もう見えないかもしれない小ささなので。その卵から生まれた虫が、街中の水や店の食べ物に入ってしまった」
「それを飲み食いして病魔が体内に入った。確かに、最近ネズミを見かける事は多かったけど…」
ロックが原因を「推測ですけど…」と語り始めた。師匠からの知識。現代医学の知恵。ギルドマスターや街の者から聞いた事象から導き出される推測。
「だから、地下か何処か、ネズミが街中に出て来た原因があります。それを突き止め取り除いた上で、ネズミの駆除をしないと、多分また『赤斑病』が流行ります。特効薬ありますけど、病魔を作らない、増やさない取り組みが大事です」
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地下水道に、厄介な異変が起きていたのだった。
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