果てしなき宇宙の片隅で 序章 サラマンダー

緋熊熊五郎

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3-3 発見

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3-3 発見

都市間道路といっても普通の部分は、地面をただ、均しただけだ。もちろん、太古の水が流れた跡である運河の部分には、橋梁を架けたりもする。

車幅7mもある巨大なモータースクレーパーが地面の出っ張りを削り取り、屑を路肩に寄せていく。自律、自走式だから指示された都市間を何度も往復し、その度に道路は不陸が校正されて、きれいになっていく。

そして、時折、屑を鉱物資源探査のサンプルとして採取していく。ある日のこと、屑の中に金属が混じっていた。当初、過去に行方不明になった探査機材と思われていたが、該当する記録がなく、慌ててその金属を分析した結果、予想外の結果が出た。

詳しく調べるために、急遽、調査隊が編成されて、派遣された。

そこは東カナル市の北東約35km、約1キロメートルにわたって、銀色の筋が露出していた。よくよく見ると、金属の表面に何かが付着して赤褐色に見えたところに、スクレーパーの刃が当たったところだけ、表面が剥がされ銀色になっていたのだ。


金属探知機を用いて探査したところ、半径約10キロの半球状であることが判明した。地表に露出しているのはごく一部なので、どうしても発掘せざるを得ない。このため、都市間道路は100キロ手前からクロソイド曲線を使って、緩やかに迂回することになった。

発掘には、自律式パワーショベルが投入されて掘削し、ダンプトラックが荷台に積み上げられた土砂を運び出した。数十台のそれらが、夕陽を浴びて輝きながら、一糸乱れずに稼働している様子は、壮観でさえあった。

地表から500メートル掘り進んだところで、出入り口が全く見当たらないことから、発掘は取り止めて、突入口を切り開くことが検討された。

まず、松ダイナマイトを惜しげもなく山積みにして点火したが、衝撃波は大きかったものの、かすり傷一つつけられなかった。イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)レーザーカッターも同じく、無駄骨に終わった。頭に血が上った発掘責任者、うちの所長だが、物資搬送用のマスドライバーで撃ち込むことを思いついた。

マスドライバーというと聞こえはいいが、カタパルトをより強く大きくしたようなものだ。しかし、東カナル市からわずか35キロ、狙いがそれて当たると大変なことになる。半年間も喧喧諤諤と果てしない議論が続いた結果、やっと許可が下りた。


火星特有の酸化鉄を豊富に含む砂を巻き上げた赤い嵐が吹き止んだその日、東カナル市ではけたたましく初めての空襲警報が鳴らされた。約50トン(地球重量、火星で計れば見掛け上は約20トン)の岩塊がマスドライバーから打ち出され、放物線を描きながら上昇し、また緩やかに落下していく。途中、端が少し欠けて、欠片が東カナル市から10キロ先の水耕栽培農園を押し潰し、市民の肝を大いに冷やした。残りはほぼ予定通りの軌道を飛び、半径10キロの巨大な的に難なく当たった。

大穴が開くものと皆、期待していたのだが、意に反して船体にヒビが入っただけで、逆に岩塊の方が粉々になり、周囲一面に散らばった。ヒビにパワーショベルのバケットの先を突っ込み、必死に少しずつこじ開けて、なんとか50センチ位の隙間を確保することができ、関係者の間に期せずして歓声が沸き起こった。

早速、内部へドローンが投入される。まず、開口部付近の状況を偵察するとともに、空気組成、細菌などが検査され、特段の問題は無いと判断された。

次に内部調査隊が送り込まれ、詳しい調査が始まった。内部には上下を貫くシャフト、そして放射状、円環状の通路があった。

半円球の中央部にはブリッジと思われる区画があった。その隣の比較的大きな区画には棚が並んでおり、金属製のケースがたくさん格納されていた。一番、目を惹きつけられたのは羽根を持ち、火を吐く赤い竜のような動物が描かれていたものだ。後日、サラマンダーと名付けられるそのケースを含めて、持ち帰って研究されることになった。

今のところ乗員はまだ見つかっていない。現場に大きなクレーターや着陸痕がないことから墜落ではなく、不時着と考えられているので、着陸後、脱出したのかもしれない。

ミイラはともかく、エイリアン、プレデターに遭遇して襲われるよりは良いかもしれないけれど、ちょっとがっかりした。
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