果てしなき宇宙の片隅で 序章 サラマンダー

緋熊熊五郎

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4-6 再出撃

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4-6 再出撃

出撃命令は驚いたことに数十光年先だった。近い、近過ぎる。敵の侵攻がこんなに近くまで来ているなんて……

「0910号! 前の乗員はどうしたんだい?」
「被弾して船殻に大穴が開き、宇宙空間に吸い出されてしまい、救助しようとしたのですが、パワードスーツにも直撃があり、叶いませんでした。」
「そうなのか……」

0910号と話しながら、操縦席で出撃の準備を整えていたら、エミリーの首から、けったいなペンダントがぶら下がっているのを見つけた。

「エミリー、それは何なんだい?」
「これは前のサラマンダー0909号から
退艦するときにもらったんです!もう最後だから形見にくれたのかなぁと思って、ぶら下げているんです!」
「メモリーセルのようだね。0909号がそんな感傷的なことをするわけがないから、何か論理的な意味があるのだと思う。かと言って、0909号のペルソナを収容できるほど大きくはないようだから、何が入っているんだろうね。0910号に読み取ってもらうといいよ!」
「キュート(0910号)! ワクワク(0909号)からもらったんだけど、中身の解析をしてよ!」
「了解しました。」

い、いつの間にかニックネームが付いている。エミリーはワークショップの方へと向かって行った。

しばらくして、エミリーが変な帽子を抱えて戻ってきた。メモリーセルの解析結果を教えてもらう。

「ボス、いろんなデータが入っていました。観測結果に分析結果、それに考察した結果と、えっと、新しい発明のアイデアとか、設計図とか、日記みたいなものもありました。要するに本人は入っていませんでしたが、それ以外の活動した結果が入っていたんです!」
「よく分かったような、分からないような…… それでその帽子みたいのは何なんだい?」
「感応帽とか言うようです。」
「何なんだい?」
「被ると脳の活性部位とか脳波とか、そういうものを読み取って反応する帽子のようです。」
「脳が頭に集中していればいいけど、分散してると使いにくそうだね。」
「分かりません、私ではダメでした。」
「そもそも使う必要はないだろうね。」
「後で試してみよう。それで、他には?」

「えっと~」

エミリーの目が一瞬、泳ぐ。

「新しい航法の検討資料があったそうです。なんでも出発地と到着地を繋ぐ時空トンネルを作って、一瞬で移動できるそうです。」
「そんなことが可能なのかい。どんな原理なんだい。」

また、エミリーの目が泳ぐ。

「キュートがマイクロブラックホールがどうのこうのと言っていましたけど、良く分かりませんでした。」
「ブラックホールを使って時空を捻じ曲げるんだね。でも小さかったら無理じゃなのかな。」
「そもそもがかなりの質量なので、それに比べてという話で、それなりの質量はあるのかもしれません。」
「そんなものを船腹に抱えて、呑み込まれたりしないのかな。」
「電磁的に封じ込めるようです。例えばプラスに帯電したブラックホールを、プラスに帯電した船腹で包むとか。」
「なるほどね、できるかどうかは分からないけど。」
「それで、他には?」
「他にもあるようですが、きりがなくなります。」
「そうだね、ではまた、今度にしよう。」


「0910号!出撃の準備はいいかな?」
「キュートと呼んでくださいね! 通常の物資積込みは終わっています。」
「えっと、キュート! じゃあ、何待ちなの?」
「待つ必要はありませんが、ブラックホールがまだ手に入っていません。」
「そんなもの、手に入れたって、持て余すだけだよ。」
「そうかもしれませんが、エミリーが早く実験したがっていました。」
「重水素と三重水素を爆縮させるんだっけ?」
「それは水爆です!」
「核物理学は苦手で、成績もやっとこさ可だったので…… 水銀の原子核を振り回すんだっけ?」
「振り回す? さすがに円形加速器までは搭載してません……」
「そうだよね、そんな艦艇、見たことないわ、あっはっは……」

「キュート! 微速前進、ようそろ!」

スクリーンの風景が少しずつ後ろに流れ始める。太陽風が吹く大海原に帆を張った気持ちになる。今、この宇宙空間は冷たく静かだが、やがて灼熱の嵐となるのだろう。

ふと我に帰ると、船体からするすると何やら膜が拡がっていく。

「キュート、何これ?」
「ライトセイル(光帆)が展開中です。感応帽が反応したようです。」
「あ、これのせいか。ワクワクには装備されていなかったけれど……」

慌てて感応帽を脱ぐ。

「オプション装備で、前のキャップ(船長)の趣味です。普段は折り畳んで格納されています。」
「そんなものがあるのか。まだ、この辺りはデブリが多いから、セイルに穴が開いちゃうよ! 畳んで置いて!」
「了解しました!」

しかし、何に使うのだろう、使い道が限られると思うけれど……

そのまま航路上を進み、これが見納めになるかもしれない母星をしばらく眺め、妹達のいく末に幸が多からんことを祈る。
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