25 / 32
4-6 再出撃
しおりを挟む
4-6 再出撃
出撃命令は驚いたことに数十光年先だった。近い、近過ぎる。敵の侵攻がこんなに近くまで来ているなんて……
「0910号! 前の乗員はどうしたんだい?」
「被弾して船殻に大穴が開き、宇宙空間に吸い出されてしまい、救助しようとしたのですが、パワードスーツにも直撃があり、叶いませんでした。」
「そうなのか……」
0910号と話しながら、操縦席で出撃の準備を整えていたら、エミリーの首から、けったいなペンダントがぶら下がっているのを見つけた。
「エミリー、それは何なんだい?」
「これは前のサラマンダー0909号から
退艦するときにもらったんです!もう最後だから形見にくれたのかなぁと思って、ぶら下げているんです!」
「メモリーセルのようだね。0909号がそんな感傷的なことをするわけがないから、何か論理的な意味があるのだと思う。かと言って、0909号のペルソナを収容できるほど大きくはないようだから、何が入っているんだろうね。0910号に読み取ってもらうといいよ!」
「キュート(0910号)! ワクワク(0909号)からもらったんだけど、中身の解析をしてよ!」
「了解しました。」
い、いつの間にかニックネームが付いている。エミリーはワークショップの方へと向かって行った。
しばらくして、エミリーが変な帽子を抱えて戻ってきた。メモリーセルの解析結果を教えてもらう。
「ボス、いろんなデータが入っていました。観測結果に分析結果、それに考察した結果と、えっと、新しい発明のアイデアとか、設計図とか、日記みたいなものもありました。要するに本人は入っていませんでしたが、それ以外の活動した結果が入っていたんです!」
「よく分かったような、分からないような…… それでその帽子みたいのは何なんだい?」
「感応帽とか言うようです。」
「何なんだい?」
「被ると脳の活性部位とか脳波とか、そういうものを読み取って反応する帽子のようです。」
「脳が頭に集中していればいいけど、分散してると使いにくそうだね。」
「分かりません、私ではダメでした。」
「そもそも使う必要はないだろうね。」
「後で試してみよう。それで、他には?」
「えっと~」
エミリーの目が一瞬、泳ぐ。
「新しい航法の検討資料があったそうです。なんでも出発地と到着地を繋ぐ時空トンネルを作って、一瞬で移動できるそうです。」
「そんなことが可能なのかい。どんな原理なんだい。」
また、エミリーの目が泳ぐ。
「キュートがマイクロブラックホールがどうのこうのと言っていましたけど、良く分かりませんでした。」
「ブラックホールを使って時空を捻じ曲げるんだね。でも小さかったら無理じゃなのかな。」
「そもそもがかなりの質量なので、それに比べてという話で、それなりの質量はあるのかもしれません。」
「そんなものを船腹に抱えて、呑み込まれたりしないのかな。」
「電磁的に封じ込めるようです。例えばプラスに帯電したブラックホールを、プラスに帯電した船腹で包むとか。」
「なるほどね、できるかどうかは分からないけど。」
「それで、他には?」
「他にもあるようですが、きりがなくなります。」
「そうだね、ではまた、今度にしよう。」
「0910号!出撃の準備はいいかな?」
「キュートと呼んでくださいね! 通常の物資積込みは終わっています。」
「えっと、キュート! じゃあ、何待ちなの?」
「待つ必要はありませんが、ブラックホールがまだ手に入っていません。」
「そんなもの、手に入れたって、持て余すだけだよ。」
「そうかもしれませんが、エミリーが早く実験したがっていました。」
「重水素と三重水素を爆縮させるんだっけ?」
「それは水爆です!」
「核物理学は苦手で、成績もやっとこさ可だったので…… 水銀の原子核を振り回すんだっけ?」
「振り回す? さすがに円形加速器までは搭載してません……」
「そうだよね、そんな艦艇、見たことないわ、あっはっは……」
「キュート! 微速前進、ようそろ!」
スクリーンの風景が少しずつ後ろに流れ始める。太陽風が吹く大海原に帆を張った気持ちになる。今、この宇宙空間は冷たく静かだが、やがて灼熱の嵐となるのだろう。
ふと我に帰ると、船体からするすると何やら膜が拡がっていく。
「キュート、何これ?」
「ライトセイル(光帆)が展開中です。感応帽が反応したようです。」
「あ、これのせいか。ワクワクには装備されていなかったけれど……」
慌てて感応帽を脱ぐ。
「オプション装備で、前のキャップ(船長)の趣味です。普段は折り畳んで格納されています。」
「そんなものがあるのか。まだ、この辺りはデブリが多いから、セイルに穴が開いちゃうよ! 畳んで置いて!」
「了解しました!」
しかし、何に使うのだろう、使い道が限られると思うけれど……
そのまま航路上を進み、これが見納めになるかもしれない母星をしばらく眺め、妹達のいく末に幸が多からんことを祈る。
出撃命令は驚いたことに数十光年先だった。近い、近過ぎる。敵の侵攻がこんなに近くまで来ているなんて……
「0910号! 前の乗員はどうしたんだい?」
「被弾して船殻に大穴が開き、宇宙空間に吸い出されてしまい、救助しようとしたのですが、パワードスーツにも直撃があり、叶いませんでした。」
「そうなのか……」
0910号と話しながら、操縦席で出撃の準備を整えていたら、エミリーの首から、けったいなペンダントがぶら下がっているのを見つけた。
「エミリー、それは何なんだい?」
「これは前のサラマンダー0909号から
退艦するときにもらったんです!もう最後だから形見にくれたのかなぁと思って、ぶら下げているんです!」
「メモリーセルのようだね。0909号がそんな感傷的なことをするわけがないから、何か論理的な意味があるのだと思う。かと言って、0909号のペルソナを収容できるほど大きくはないようだから、何が入っているんだろうね。0910号に読み取ってもらうといいよ!」
「キュート(0910号)! ワクワク(0909号)からもらったんだけど、中身の解析をしてよ!」
「了解しました。」
い、いつの間にかニックネームが付いている。エミリーはワークショップの方へと向かって行った。
しばらくして、エミリーが変な帽子を抱えて戻ってきた。メモリーセルの解析結果を教えてもらう。
「ボス、いろんなデータが入っていました。観測結果に分析結果、それに考察した結果と、えっと、新しい発明のアイデアとか、設計図とか、日記みたいなものもありました。要するに本人は入っていませんでしたが、それ以外の活動した結果が入っていたんです!」
「よく分かったような、分からないような…… それでその帽子みたいのは何なんだい?」
「感応帽とか言うようです。」
「何なんだい?」
「被ると脳の活性部位とか脳波とか、そういうものを読み取って反応する帽子のようです。」
「脳が頭に集中していればいいけど、分散してると使いにくそうだね。」
「分かりません、私ではダメでした。」
「そもそも使う必要はないだろうね。」
「後で試してみよう。それで、他には?」
「えっと~」
エミリーの目が一瞬、泳ぐ。
「新しい航法の検討資料があったそうです。なんでも出発地と到着地を繋ぐ時空トンネルを作って、一瞬で移動できるそうです。」
「そんなことが可能なのかい。どんな原理なんだい。」
また、エミリーの目が泳ぐ。
「キュートがマイクロブラックホールがどうのこうのと言っていましたけど、良く分かりませんでした。」
「ブラックホールを使って時空を捻じ曲げるんだね。でも小さかったら無理じゃなのかな。」
「そもそもがかなりの質量なので、それに比べてという話で、それなりの質量はあるのかもしれません。」
「そんなものを船腹に抱えて、呑み込まれたりしないのかな。」
「電磁的に封じ込めるようです。例えばプラスに帯電したブラックホールを、プラスに帯電した船腹で包むとか。」
「なるほどね、できるかどうかは分からないけど。」
「それで、他には?」
「他にもあるようですが、きりがなくなります。」
「そうだね、ではまた、今度にしよう。」
「0910号!出撃の準備はいいかな?」
「キュートと呼んでくださいね! 通常の物資積込みは終わっています。」
「えっと、キュート! じゃあ、何待ちなの?」
「待つ必要はありませんが、ブラックホールがまだ手に入っていません。」
「そんなもの、手に入れたって、持て余すだけだよ。」
「そうかもしれませんが、エミリーが早く実験したがっていました。」
「重水素と三重水素を爆縮させるんだっけ?」
「それは水爆です!」
「核物理学は苦手で、成績もやっとこさ可だったので…… 水銀の原子核を振り回すんだっけ?」
「振り回す? さすがに円形加速器までは搭載してません……」
「そうだよね、そんな艦艇、見たことないわ、あっはっは……」
「キュート! 微速前進、ようそろ!」
スクリーンの風景が少しずつ後ろに流れ始める。太陽風が吹く大海原に帆を張った気持ちになる。今、この宇宙空間は冷たく静かだが、やがて灼熱の嵐となるのだろう。
ふと我に帰ると、船体からするすると何やら膜が拡がっていく。
「キュート、何これ?」
「ライトセイル(光帆)が展開中です。感応帽が反応したようです。」
「あ、これのせいか。ワクワクには装備されていなかったけれど……」
慌てて感応帽を脱ぐ。
「オプション装備で、前のキャップ(船長)の趣味です。普段は折り畳んで格納されています。」
「そんなものがあるのか。まだ、この辺りはデブリが多いから、セイルに穴が開いちゃうよ! 畳んで置いて!」
「了解しました!」
しかし、何に使うのだろう、使い道が限られると思うけれど……
そのまま航路上を進み、これが見納めになるかもしれない母星をしばらく眺め、妹達のいく末に幸が多からんことを祈る。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる