LOTUS FLOWER ~ふたたびの運命~

勇黄

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実行

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(彩明あやあき…。)


 鬼からの行為のあと
アキはノートを読んだ。

(彩明あやあき。つらいところを
引き受けるために
ボクはうまれたんだ。

ボクの存在意義なんだ。



だからボクがやる。
それでボクの役目は
終わるだろう。
それでいい。
それでいいんだよ…)




アキはすでに
覚悟を決めていた。



(今は彩明あやあき
話を合わせおいて
その時がきたら
完全に乗っ取って
ボクが実行する。

これで彩明あやあきの傷は
少ないはずだ。
だから、ごめん。

彩明あやあき…。)





ノートに返事を書く。



彩明あやあき…。わかったよ。
ボクが連れ出して
彩明あやあきと交代する。

その記念日に実行しよう。

ボクはその日に
消えるはず。

それでいいんだ。
ボクは彩明あやあきを助けるために
生まれたんだから。

彩明あやあき。幸せになってね。







朝、目覚めた彩明あやあき
ノートを読む。

(アキ…ありがとう。
いっそのこと…
これでアキがいなくなれば
僕は普通に戻れる、なんて
酷いこと思ってしまって
ごめん。)

彩明あやあきは涙が止まらない。





1ヶ月間、ふたりは
計画を練り、明穂あきほの口調や
いろんな情報を共有して
ノートの交換を繰り返し
いよいよ実行の日が来た。




いつになくあきを
優しく抱いたあと微睡む
彩人あやとに話しかけるアキ。




「アヤトさん…
夢見ヶ丘公園に
連れていってくださらない?
…とても久しぶりでしょう?
今日は結婚記念日だから…」




「あき…明穂。
そうだな…
久しぶりに行こう。」




嬉しそうに
目を細める彩人あやと





アキに明穂あきほ
お気に入りだった
ワンピースを着せ
横抱きにお姫様抱っこをし
地下の駐車場へ行く。


明穂あきほを助手席に乗せ
キスをする。



アキは思わず涙を流した。

(こんなにも…こんなにも
明穂あきほを愛している彩人あやと
なぜこんなことに
なってしまったのだろう…)





「なぜ泣いている?」


「…アヤトさん。
嬉しいのです。」


「…。行くぞ?」


「はい。」




彩人あやとは運転席に座り
車を発車させた。




1時間くらい車を走らせると
くねくねとした山道に
はいった。

開け放した窓からは
潮の香りがしてくる。

崖の下は海。









(いよいよ時が来た…。)









彩明あやあきが内側から
叫んでる。

{アキ!!僕が!
僕がやるから!}


(彩明あやあき…。…ごめん。
ボクが最後までやる。
ごめんね。)




{アキ!!アキ!
アキ、アキ!!ア…………}






彩明あやあきの声を
遮断してアキは
シートベルトをはずし
運転している彩人あやと
手をそっと包む。




明穂あきほ?」





「アヤトさん。
キスしていいですか?」






アキは彩人あやとにキスをする。

「んっ…ん、んぅ…。
運転中だ…明穂あきほ。」







アキは離れて彩人あやと
髪に触れ微笑む。

彩人あやともアキに微笑み返す。














その時だった。

彩人あやとは自ら海のほうへ
急ハンドルを切った。










車はガードレールを超え
海へと落ちていく。





「アヤトさんっ!!!!!」















「………あ…………やあ、き」

「!」







彩人あやとは間違いなく
そう呟いた。





車が海に落ちる瞬間
彩人あやとはアキ(彩明あやあき)を
腕の中にしっかりと
抱きしめ、できる限り
衝撃から守った。


それから開けていた
窓からアキ(彩明あやあき)を
押し出す。

車と共に海に
沈んでいく彩人あやと
微笑んでいるように見えた。










アキは気を失う寸前
このことを彩明あやあき
伝えるべきか、悩んだ。


答えは出ることなく
意識を手放した。









遠くで救急車や
警察車両のサイレンが響く。
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