LOTUS FLOWER ~ふたたびの運命~

勇黄

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LOTUS FLOWER~ふたたびの運命~外伝

はじめとたいすけ⑥

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太佑たいすけさんはどんな
生い立ちだった、の?」






太佑たいすけは捨て子だったんだ。

養護施設の前に置き去りに
されていたところを保護され
そこで育てられた。

その養護施設はあまり
よい環境ではなかったようでな。
暴力をふるわれることも
多々あったそうだ。」






「…ひどい。」







「そうだよな…ひどいよな…。

…そこで目立たないように
息をひそめて生きていた
太佑たいすけの心を
救ってくれた存在が
いたらしいんだ。」






「どん、な…?」






「ある時、男の子が来た。

精悍な顔立ちで性格がすごく
よくて魅力的な子だった、と
言ってたよ。

シュン、という名のその子が
その施設に来てすぐに
誰かを庇って独房のような
ところへ入れられてしまった。

そこから出た彼はその性格の
良さから先輩たちにも好かれて
施設内でもうまく
立ち回っていった。

そしてなぜか太佑たいすけの事を
すごく可愛がって
くれたんだそうだ。」






「そうなんだ…」







「その彼が庇った相手は
男の子だったんだが
別れ別れになった幼馴染みで…。

恋人だったらしい。」






「え?恋人?」







「まさに運命の人。
そんな感じだったと言ってたよ。

その子はアキという名で…。

その…なんというか…。
色気、があった。

そのせいか養護施設の職員たちの
性欲のはけ口になってしまって
性的暴行を受け続けていた。」








「そ、んな…」








「そのアキを救うために
養護施設の脱走を計画した
シュンは太佑たいすけを頼りにした。

太佑たいすけは会うことを禁じられた
2人の連絡係をしている中で
アキとも心を通わせて
一緒に施設を出る約束を
したんだが見張り役の自分が
見つかってしまった。」







「………。」







「でも身を呈して2人を逃がした
太佑たいすけは2人の幸せを
ただただ願った、と
言っていた。」










「…太佑たいすけさん、は
どうなったの?その後の2人は?」









太佑たいすけはなんとか自力で
その施設から逃げて
町をさ迷っているところを
警察官に保護されてその警察官の
養子に迎えてもらえた。

養父母にはとてもよくして
もらったといつも感謝していた。

逃げた2人を何年か後に
必死で探して…。

会うことができたそうだ。

その時は2人とも幸せそうで
本当に嬉しかった、と話す太佑たいすけ
本当に嬉しそうな顔をした。

その後は手紙のやりとりなど
交流をしていたらしい。けど…。」








「え?………け、ど?」









「…ある時、来た手紙は
遺書だった。」









「!!!」









「それはアキ、からでな…。」









「な!…んでっ………」









「その手紙にはシュンが
不治の病で長くないから
一緒にいく、と書いてあった。

太佑たいすけをまた
置いていく自分達を許して、と。

太佑たいすけは家族に囲まれて
幸せになってね。
見守っているから、と。

2人は山でわざと遭難したんだ。
遺体はみつかっていないが
冬山に入って降りていないこと
遺書のような手紙があることから
2人は自殺とされた。」








「うぅっ…グズッ………」








太佑たいすけは2人は
一緒にいけてよかった。
幸せだったんだろう、と
思った、と言った。

そして自分は言われたとおりに
幸せになろう、家族を作ろう、と
思ったそうだ。」







「っつ…。でもじゃあなんで
ひいおじいさんと…。」








太佑たいすけは…女性と
できなかったんだそうだ。」








「でき、なかった?」








「つまり…勃起、しなかった。」







「…………。」










「何度かそういう機会を
持ったそうだがどうしてもダメで。
女性は離れていった。」







「それは…その…同性愛者
だったってことだよね?」








「あぁ。でもだからといって
男性を探そう、とも
思ってなかったらしい。

せめて地域の人たちを
見守ろうと思って
養父と同じ警察官になった。

交番勤務になればいろんな家族の
安全を見守ることが
できる、とね。」








「そして…。
ひいおじいさんと出会った。」







「うん。最初は友達として
2人はとても仲良くなった。」








「恋人になるのに
時間かからなかった、って…」









「あるきっかけがあったんだ。」
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