キャプテン・ドラゴン

ヒルナギ

文字の大きさ
19 / 21

第十九話

しおりを挟む
 その男は、金髪の二枚目俳優のような優男である。大きなハンドガンを、構えていた。その銃の照準が、自分の背後に向けられていると気付いた瞬間、メイは腕を取られる。

 ガイ・ブラックソルであった。メイの腕をとったガイは、メイの頭に銃をつきつける。ブラックソルが叫ぶ。

「動くな、この女を殺すぞ」

 ビリーは、午睡から目ざめたばかりのように、気怠げな笑みを見せて言った。

「馬鹿か、おまえ。メイ・ローランがいないと、困るのはおまえだろ」

 ブラックソルは、凶暴な笑みを見せる。

「もう、ユグドラシルの操作は理解した。次は、一人でダイブできるよ」

 ビリーは甘える恋人に応えるような笑みを見せ、肩を竦める。

「とんでもない糞ったれだよ、てめぇは」

「おまえに言われたくないね、キャプテン・ドラゴン。こんな所でDDCを使用しやがって、メイを殺すところだったぞ」

 ビリーは、平然といった。

「やってみなきゃ、判らんだろ」

「言ってろ、馬鹿。何にしても、メイを死なせたくないのなら、言うとおりにしろ。まず、銃を足下に落とせ」

 ビリーは、言われた通りに、銃を落とす。ブラックソルは、次の指示を出した。

「よし、そいつをこっちに、蹴れ」

 ビリーは嘲るような笑みを浮かべ、銃を蹴る。足下にきた銃を見て、ブラックソルは、顔色を変えた。

「てめぇ、これは」

 その瞬間、銃、いや、銃のダミーが炸裂し、激しい光と轟音がメイとブラックソルを襲う。それと共に、魔法のようにビリーの手元に出現した銃が、火を吹いた。排出された空のメタルカートリッジがプラットホームに落ち、乾いた音を立てる。

 ブラックソルが跳ね飛ばされたように、後ろへ倒れた。

「メイ、こっちだ!」

 ビリーの叫びに促され、メイはビリーの元へ駆け寄る。

「何て器用なの」

 メイの感嘆した言葉に、ビリーは夢見るように微笑む。

「特技なんだ」

 その時、哄笑が響いた。ブラックソルが、笑いながら半身を起こす。

「へたくそ、何で頭をぶちぬかねぇ」

「無理するな、コンバットスーツは貫通しなかったが、15ミリ口径のリボルビングサブマシンガンの弾を受けたんだ。肋骨は折れてるよ」

 ブラックソルは蒼ざめた顔で、ふらりと立ち上がる。腰から宇宙刀を抜いた。

 暗黒の刃が無数の稲光を纏いつつ、出現する。

 それは呪詛の光を纏った、死の刃であった。

 冥界から引きずり出された黄泉の王がごとく、闇に雷を纏った剣をブラックソルは構えている。

「次は、頭を打ち抜け。でなきゃ、死ぬのはてめぇだ、キャプテン・ドラゴン」

 ビリーは答えるように、銃身をあげる。撃とうとしたその瞬間に、ブラックソルの体が、閃光につつまれた。

「ちっ」

 まともに光を見てしまったビリーは、視界を失う。油断である。ブラックソルは、自分の体に閃光弾を密着させて、炸裂させたようだ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

リボーン&リライフ

廣瀬純七
SF
性別を変えて過去に戻って人生をやり直す男の話

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

処理中です...