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戦場乙女の帰還 03-05
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ユーリの物思いは、過去の追憶をたどりはじめる。
ルーイの父親は、ゲオルク・ノヴァーリスという名の貴族であった。
貴族は、王家と血の繋がりがあるが既に未来決定能力を持たないひとびとにあたえらえる尊称である。
貴族は未来決定能力はないが、なんらかの特殊技能に秀でているものが多い。
ノヴァーリス家は、多くの優れた宇宙船パイロットを輩出していた。
ゲオルク・ノヴァーリスも若き日は優秀なパイロットであったが、彼は最終的に医者となる道を選ぶ。
ゲオルクは、デモンウィルスと戦いウィルスからひとを守る術を探すことに人生を捧げることにしたのだ。
しかし、彼の崇高な使命感をあざ笑うかのような出来事がおこる。
ゲオルクの妻、ゾフィーがデモンウィルスに感染したのだ。
ゲオルクは、あらゆる手を使い懸命に戦った。
しかし、結果は残酷なものとなる。
彼の妻ゾフィーは、幼い息子ルーイを残し冥界へと旅立つことになった。
ゲオルクは、その後十年間再婚することなく過ごす。
ルーイは、ほとんど家に帰ることのない父親ではなく、ノヴァーリス家に仕えるひとびとに育てられた。
ある日ゲオルクは、新たな妻を娶りルーイのもとへ戻る。
レニ・リーフェンシュタールという名の女性が、ゲオルクの新たな妻でありルーイの母親であった。
レニは、ひとりの息子をつれてくる。
それが、ユーリであった。
ルーイはそのとき十二歳であったが、弟をごく自然な形で受け入れる。
レニは、快活でよくしゃべり皆を陽気にするような女性であった。
レニはルーイもユーリも分け隔て無く愛し、ルーイもそれを受け入れる。
レニはしかし、普通のひとには見えないものがみえるひとでもあった。
彼女は時折彼女の元に訪れる死者たちと会話し、ひどく憂鬱になることがある。
レニは、かつて戦士であり、テラでデモノマニアたちと戦ってきたひとだ。
だが、その戦いでひどく傷つき四肢の大半を失う。
再生手術を受けることで四肢を取り戻したが、かつてのような身体能力は失っていた。
レニは戦士を続けることをあきらめ、詩人となる。
彼女はかつて躍動する肉体で戦いを行っていたが、それは言葉を使った内なる戦いとなった。
レニは次第に寡黙でひとりでいることを、好むようになる。
それは、彼女のもとに訪れる見えないものたちの数を増加させた。
五年たったとき、レニは閉鎖病棟に送られることになる。
ユーリは、十五歳になっていた。
ユーリはもし自分がノヴァーリスを名乗り続けることを望むのであれば、有能なパイロットになることが必要であることを知る。
全てにおいてどちらかといえば凡庸な少年であったユーリは、ノヴァーリスの名を捨てようと思った。
けれど、ルーイはそれを望まずユーリに手を差し伸べる。
ルーイは、スペースクルーザーにのりユーリと共に航海にでた。
少年二人は、テラの軌道を離れ惑星間の旅に乗り出す。
二人の船は蒼く輝くスペースセイルをはると、太陽の風を受け何ヶ月にも渡る航海を行った。
紅く輝く火星を越え、アステロイドベルトを抜け、巨大な木星の軌道を周回する。
ふたりは闇で闇を塗りつぶしたかのような、惑星間の空間をふたりきりで渡っていった。
それは少年が二人でおこなうには、無謀で危険な旅だった。
少年たちは、二人きりで幾つもの危機を乗り越える。
容赦なく襲いかかるアステロイドベルトの、小惑星。
木星近くで吹き荒れ機器を狂わせる、磁気嵐。
既にテラのアクセスポイントは封鎖されていたため、海賊とであうことはなかったが少年たちにとって宇宙は様々な脅威に満ちている。
ふたりの少年は、孤独と恐怖それに希望を共に分かち合った。
ユーリは、その航海で多くのものを学んだ。
そしてその航海でユーリは、とても深い精神の集中に入り込む術を得ることになる。
ユーリは深い集中に入り込むことで、ノヴァーリス家のものが持つパイロットの能力を超えることができるようになった。
ただ、ユーリは自分のその能力が自分の中の何かを確実に削り取るものであると、感じる。
おそらくそれは彼の母である、レニの辿った道に繋がるものではないかという予感があった。
それでもユーリは、ノヴァーリスであることを選択する。
他の何よりも、ユーリにとってルーイの存在は大きなものになっていた。
ルーイと共に、歩んでいきたい。
その思いが、彼をノヴァーリスに留まらせている。
考えたくはないが、もしルーイがいなくなったら自分はどうするのだろう。
それでも自分の中の何かを削りながら、パイロットを続けるのだろうか。
ユーリはその答えのでない思いを捨て、瞳を閉じる。
闇が、優しくユーリを抱きしめた。
ルーイの父親は、ゲオルク・ノヴァーリスという名の貴族であった。
貴族は、王家と血の繋がりがあるが既に未来決定能力を持たないひとびとにあたえらえる尊称である。
貴族は未来決定能力はないが、なんらかの特殊技能に秀でているものが多い。
ノヴァーリス家は、多くの優れた宇宙船パイロットを輩出していた。
ゲオルク・ノヴァーリスも若き日は優秀なパイロットであったが、彼は最終的に医者となる道を選ぶ。
ゲオルクは、デモンウィルスと戦いウィルスからひとを守る術を探すことに人生を捧げることにしたのだ。
しかし、彼の崇高な使命感をあざ笑うかのような出来事がおこる。
ゲオルクの妻、ゾフィーがデモンウィルスに感染したのだ。
ゲオルクは、あらゆる手を使い懸命に戦った。
しかし、結果は残酷なものとなる。
彼の妻ゾフィーは、幼い息子ルーイを残し冥界へと旅立つことになった。
ゲオルクは、その後十年間再婚することなく過ごす。
ルーイは、ほとんど家に帰ることのない父親ではなく、ノヴァーリス家に仕えるひとびとに育てられた。
ある日ゲオルクは、新たな妻を娶りルーイのもとへ戻る。
レニ・リーフェンシュタールという名の女性が、ゲオルクの新たな妻でありルーイの母親であった。
レニは、ひとりの息子をつれてくる。
それが、ユーリであった。
ルーイはそのとき十二歳であったが、弟をごく自然な形で受け入れる。
レニは、快活でよくしゃべり皆を陽気にするような女性であった。
レニはルーイもユーリも分け隔て無く愛し、ルーイもそれを受け入れる。
レニはしかし、普通のひとには見えないものがみえるひとでもあった。
彼女は時折彼女の元に訪れる死者たちと会話し、ひどく憂鬱になることがある。
レニは、かつて戦士であり、テラでデモノマニアたちと戦ってきたひとだ。
だが、その戦いでひどく傷つき四肢の大半を失う。
再生手術を受けることで四肢を取り戻したが、かつてのような身体能力は失っていた。
レニは戦士を続けることをあきらめ、詩人となる。
彼女はかつて躍動する肉体で戦いを行っていたが、それは言葉を使った内なる戦いとなった。
レニは次第に寡黙でひとりでいることを、好むようになる。
それは、彼女のもとに訪れる見えないものたちの数を増加させた。
五年たったとき、レニは閉鎖病棟に送られることになる。
ユーリは、十五歳になっていた。
ユーリはもし自分がノヴァーリスを名乗り続けることを望むのであれば、有能なパイロットになることが必要であることを知る。
全てにおいてどちらかといえば凡庸な少年であったユーリは、ノヴァーリスの名を捨てようと思った。
けれど、ルーイはそれを望まずユーリに手を差し伸べる。
ルーイは、スペースクルーザーにのりユーリと共に航海にでた。
少年二人は、テラの軌道を離れ惑星間の旅に乗り出す。
二人の船は蒼く輝くスペースセイルをはると、太陽の風を受け何ヶ月にも渡る航海を行った。
紅く輝く火星を越え、アステロイドベルトを抜け、巨大な木星の軌道を周回する。
ふたりは闇で闇を塗りつぶしたかのような、惑星間の空間をふたりきりで渡っていった。
それは少年が二人でおこなうには、無謀で危険な旅だった。
少年たちは、二人きりで幾つもの危機を乗り越える。
容赦なく襲いかかるアステロイドベルトの、小惑星。
木星近くで吹き荒れ機器を狂わせる、磁気嵐。
既にテラのアクセスポイントは封鎖されていたため、海賊とであうことはなかったが少年たちにとって宇宙は様々な脅威に満ちている。
ふたりの少年は、孤独と恐怖それに希望を共に分かち合った。
ユーリは、その航海で多くのものを学んだ。
そしてその航海でユーリは、とても深い精神の集中に入り込む術を得ることになる。
ユーリは深い集中に入り込むことで、ノヴァーリス家のものが持つパイロットの能力を超えることができるようになった。
ただ、ユーリは自分のその能力が自分の中の何かを確実に削り取るものであると、感じる。
おそらくそれは彼の母である、レニの辿った道に繋がるものではないかという予感があった。
それでもユーリは、ノヴァーリスであることを選択する。
他の何よりも、ユーリにとってルーイの存在は大きなものになっていた。
ルーイと共に、歩んでいきたい。
その思いが、彼をノヴァーリスに留まらせている。
考えたくはないが、もしルーイがいなくなったら自分はどうするのだろう。
それでも自分の中の何かを削りながら、パイロットを続けるのだろうか。
ユーリはその答えのでない思いを捨て、瞳を閉じる。
闇が、優しくユーリを抱きしめた。
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