39 / 102
聖愚者の旅立ち 04-01
しおりを挟む
闇の中で砕かれ撒き散らされた宝石のように、無数に星が煌めく漆黒の海。その海に、小さな空中都市がごときコントロールデッキが浮かんでいる。
コントロールデッキの周囲に展開された全天周型スクリーンには星の海を背景として、万華鏡のように色とりどりに輝くサブウインドウが表示されていた。そこには次々と、艦隊の情報が表示されていく。
そして輝く光の要塞のようなコントロールデッキから放射状に突き出たリニアシートには、オペレータたちが十数人配置されている。それぞれのオペレータには、サポートAIのユーザインターフェースが付き添っているため結構な大人数がいるように見えた。
オペレータのひとりが、声をあげる。
「ブリュンヒルドからの返信を、入電しました」
コントロールデッキの中心に座った、若いおとこが応える。
「読み上げて、ください」
「本艦への祝福に深謝する。女神フライアとテラ艦隊の武運を祈る」
オペレータの読み上げた返信に、おとこは静かに頷く。
「浮かない顔だね、シュレーゲル参謀」
シュレーゲルのとなりに座る年嵩のおとこが、声をかけた。
はあ? という感じでシュレーゲルはそちらに目を向ける。
「あたりまえでしょう、ティーク執務官」
ティークは、少し驚いた顔でシュレーゲルを見たがシュレーゲルは冷徹な瞳を返す。
「全くなぜフライアのCIC(戦闘指揮所)にいるのがフリードリッヒ艦隊司令ではなく、一介の参謀官にすぎない僕なのか、全く納得いってないですよ」
ティークは、肩を竦める。
「わたしは総指揮官ではあるけれど、配置を決めたのはフリードリッヒ艦隊司令だからねえ。フリードリッヒ君は、ワルキューレクラスのロスヴァイゼに艦長として納まってるからなあ。連邦艦隊への切り込み隊長を、するつもりらしいね」
自らお飾りであることを認める発言に、流石にシュレーゲルは苦笑した。
「それにしてもあなた方年寄りは、なぜそろいもそろって皆死に急ぐんですか」
ティークは、微笑みを浮かべてシュレーゲルに応える。
「そりゃあ誰だって戦友を失うより、自分を失ったほうが気楽だからだよ。でも、わたしは生き延びるつもりだよ」
ほう、という顔をしてシュレーゲルはティークを見た。
「少なくとも、王陛下が帝都よりワクチンを持ち帰るのを見届けるまでは、生き延びるつもりだ」
シュレーゲルは、皮肉な笑みを浮かべる。
地下から掘りだした戦艦に乗って帝都からワクチンを持ち帰るなど、フェアリーテイルのようだと思う。
王族種はでたらめな存在と知ってはいるが、度を越している。
王陛下と肩を並べて戦った経験のある年寄りたちが王族種に持つ信頼は、絶対的なものであった。しかし、シュレーゲルにしてみれば信頼できるほどのデータは存在いないといわざるおえない。
とはいえ王を信じる年寄りの思いは信仰のようなものであるから、話し合っても無駄だと知っている。シュレーゲルは皮肉な笑みを浮かべつつも、沈黙は守った。そしてティークも、何も言わなかった。
「先行する索敵ドローンが、連邦艦隊の位置をとらえました。映像も、送られてきています」
シュレーゲルは、頷く。この先の宙域には、百以上の無人探索装置や無人戦闘モジュールがばらまかれていた。電磁的、光学的ジャミングに覆われた敵艦隊が、ようやくこちらの探索装置で把握できたようだ。
「スクリーンに情報を、出してください」
CICの全天周型スクリーン天頂付近に、天空から逆さ吊りにされた鋼の塔がごとき連邦艦隊が映し出される。既にスペースセイルは畳まれており、ガンメタルの塗装がされた巨大な鉄の神槍たちが天空に映されていた。
ジャミングの効果は完全に除去されておらず、時折映像が揺らいで消えそうになる。
「ほう、あれがインドラクラスか。ワルキューレクラスと違って三門の主砲を、備えているわけだな」
ティークが、暢気ともとれる呟きをした。シュレーゲルは苛立った眼差しを一瞬ティークに投げると、オペレータに問いを投げる。
「デコイの可能性は、ありますか?」
オペレータは、首を振った。
「センサーからの情報を解析した結果では、あれがダミーである可能性は低いです。かなりのエネルギー反応が、砲口から検出されています。あと、六百秒で敵艦の射程に入ります」
シュレーゲルは、頷いた。
「では、艦隊の全ての船にこの情報を展開し、戦闘態勢に入るよう指示を出してください。いいですよね、ティーク総指揮官」
シュレーゲルの向ける冷ややかな眼差しに、ティークは笑顔で応える。
「もちろん、全て君にまかせてるから。シュレーゲル参謀官」
シュレーゲルは、深くため息をつく。
コントロールデッキの周囲に展開された全天周型スクリーンには星の海を背景として、万華鏡のように色とりどりに輝くサブウインドウが表示されていた。そこには次々と、艦隊の情報が表示されていく。
そして輝く光の要塞のようなコントロールデッキから放射状に突き出たリニアシートには、オペレータたちが十数人配置されている。それぞれのオペレータには、サポートAIのユーザインターフェースが付き添っているため結構な大人数がいるように見えた。
オペレータのひとりが、声をあげる。
「ブリュンヒルドからの返信を、入電しました」
コントロールデッキの中心に座った、若いおとこが応える。
「読み上げて、ください」
「本艦への祝福に深謝する。女神フライアとテラ艦隊の武運を祈る」
オペレータの読み上げた返信に、おとこは静かに頷く。
「浮かない顔だね、シュレーゲル参謀」
シュレーゲルのとなりに座る年嵩のおとこが、声をかけた。
はあ? という感じでシュレーゲルはそちらに目を向ける。
「あたりまえでしょう、ティーク執務官」
ティークは、少し驚いた顔でシュレーゲルを見たがシュレーゲルは冷徹な瞳を返す。
「全くなぜフライアのCIC(戦闘指揮所)にいるのがフリードリッヒ艦隊司令ではなく、一介の参謀官にすぎない僕なのか、全く納得いってないですよ」
ティークは、肩を竦める。
「わたしは総指揮官ではあるけれど、配置を決めたのはフリードリッヒ艦隊司令だからねえ。フリードリッヒ君は、ワルキューレクラスのロスヴァイゼに艦長として納まってるからなあ。連邦艦隊への切り込み隊長を、するつもりらしいね」
自らお飾りであることを認める発言に、流石にシュレーゲルは苦笑した。
「それにしてもあなた方年寄りは、なぜそろいもそろって皆死に急ぐんですか」
ティークは、微笑みを浮かべてシュレーゲルに応える。
「そりゃあ誰だって戦友を失うより、自分を失ったほうが気楽だからだよ。でも、わたしは生き延びるつもりだよ」
ほう、という顔をしてシュレーゲルはティークを見た。
「少なくとも、王陛下が帝都よりワクチンを持ち帰るのを見届けるまでは、生き延びるつもりだ」
シュレーゲルは、皮肉な笑みを浮かべる。
地下から掘りだした戦艦に乗って帝都からワクチンを持ち帰るなど、フェアリーテイルのようだと思う。
王族種はでたらめな存在と知ってはいるが、度を越している。
王陛下と肩を並べて戦った経験のある年寄りたちが王族種に持つ信頼は、絶対的なものであった。しかし、シュレーゲルにしてみれば信頼できるほどのデータは存在いないといわざるおえない。
とはいえ王を信じる年寄りの思いは信仰のようなものであるから、話し合っても無駄だと知っている。シュレーゲルは皮肉な笑みを浮かべつつも、沈黙は守った。そしてティークも、何も言わなかった。
「先行する索敵ドローンが、連邦艦隊の位置をとらえました。映像も、送られてきています」
シュレーゲルは、頷く。この先の宙域には、百以上の無人探索装置や無人戦闘モジュールがばらまかれていた。電磁的、光学的ジャミングに覆われた敵艦隊が、ようやくこちらの探索装置で把握できたようだ。
「スクリーンに情報を、出してください」
CICの全天周型スクリーン天頂付近に、天空から逆さ吊りにされた鋼の塔がごとき連邦艦隊が映し出される。既にスペースセイルは畳まれており、ガンメタルの塗装がされた巨大な鉄の神槍たちが天空に映されていた。
ジャミングの効果は完全に除去されておらず、時折映像が揺らいで消えそうになる。
「ほう、あれがインドラクラスか。ワルキューレクラスと違って三門の主砲を、備えているわけだな」
ティークが、暢気ともとれる呟きをした。シュレーゲルは苛立った眼差しを一瞬ティークに投げると、オペレータに問いを投げる。
「デコイの可能性は、ありますか?」
オペレータは、首を振った。
「センサーからの情報を解析した結果では、あれがダミーである可能性は低いです。かなりのエネルギー反応が、砲口から検出されています。あと、六百秒で敵艦の射程に入ります」
シュレーゲルは、頷いた。
「では、艦隊の全ての船にこの情報を展開し、戦闘態勢に入るよう指示を出してください。いいですよね、ティーク総指揮官」
シュレーゲルの向ける冷ややかな眼差しに、ティークは笑顔で応える。
「もちろん、全て君にまかせてるから。シュレーゲル参謀官」
シュレーゲルは、深くため息をつく。
0
あなたにおすすめの小説
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
異世界宇宙SFの建艦記 ――最強の宇宙戦艦を建造せよ――
黒鯛の刺身♪
SF
主人公の飯富晴信(16)はしがない高校生。
ある朝目覚めると、そこは見たことのない工場の中だった。
この工場は宇宙船を作るための設備であり、材料さえあれば巨大な宇宙船を造ることもできた。
未知の世界を開拓しながら、主人公は現地の生物達とも交流。
そして時には、戦乱にも巻き込まれ……。
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる