超弩級宇宙戦艦パルシファル

ヒルナギ

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聖愚者の旅立ち 04-17

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「エイリーク、沈みます」


 オペレータの声に、シュレーゲルは全天周スクリーンを見上げる。

 連邦艦隊の手前に、星が生まれたかのような明るい輝きがあった。

 ある意味エイリークの最後は、ロスヴァイゼより壮絶であったといえる。

 艦隊の集中砲火を受けながら、最後まで逃げ回り反撃をしながらの撃沈であった。

 派手好きのホフマン艦長らしいとも、シュレーゲルは思う。

 その宇宙の海に生まれた輝きを、シュレーゲルは昏く眉を顰めながら見つめ、敬礼をおくった。

 ティークが、呻き声をあげる。


「ホフマン君も、逝ったか」


 うなだれ首をふるティークを無視して、シュレーゲルはオペレータに問いを投げる。


「連邦のミリタリーモジュールは、どうですか?」


 オペレータは、コンソールを操作しウィンドウを立ち上げる。

 そこには索敵ドローンによって把握された連邦のミリタリーモジュールが、映しだされていた。

 幾編隊ものミリタリーモジュールがフォーメーションを組んで、星の海を渡っていく。

 時折光学ジャミングが入り映像が揺らめき、消える。しかしこの宙域には無数のドローンとセンサーが配備されているため、すぐに映像は復活した。スクリーンに映し出されたミリタリーモジュールの装甲には、連邦軍の紋章であるアイリスの花が刻まれている。

 ヴァーハナクラスは航行不能に陥っていたが、搭載したミリタリーモジュールの発艦には成功したようだ。


「敵ミリタリーモジュールは、全部で六十四機。全て対艦用のアタックユニットを、装備しています」


 シュレーゲルは、頷く。

 こちらのミリタリーモジュールは八十機、しかも対艦仕様ではなくマルチロールのアタック仕様だ。

 連邦のミリタリーモジュールの方が性能は上かもしれないが、それなりに戦えるはず。


「こちらのミリタリーモジュールは、間に合いますか?」


 シュレーゲルの問いに、オペレータが応える。


「我が艦隊のミリタリーモジュールが連邦側に接触するのは、三百秒後。テラ艦隊から、十五万メートルの地点です」

「それは厳しいね」


 ティークが、苦しげな声を出す。

 シュレーゲルの、瞳が曇った。思ったより、連邦のミリタリーモジュールに接近をゆるしてしまったようだ。その距離では、全てのミリタリーモジュールを止めることはできない。

 おそらく、一編隊くらいはこちらの包囲をかいくぐれるだろう。


「ローゼンクロイツ司令には、覚悟してもらうしかないな」


 ティークの言葉に、覚悟ならとっくにできてるはずだろうとシュレーゲルは思う。しかし、何も言葉を発することはなくミリタリーモジュールの状況を表示するウインドウを、見つめる。

 連邦の編隊は、包囲されることを嫌い散開しはじめた。テラの編隊はそれを追尾するように、広がってゆく。

 まず、相互に対スペースミサイルを撃ち合う。泡が沸き立つように幾つもの光の球が、ウインドウへ表示されはじめた。

 時折光の花が咲くように、一際大きな閃光があがる。敵味方相互に、ミリタリーモジュールの損害がではじめていた。

 オペレータが矢継ぎ早に双方の損害状況を、報告していく。キルレシオでは、あきらかにこちらが上だった。しかし、それだけではこの戦いに勝てない。


「まずいな」


 ティークが、唸る。連邦軍の一編隊が、こちらの包囲をかいくぐってテラ艦隊へ向かっていた。

 シュレーゲルが口を開こうとしたその瞬間、オペレータが叫ぶ。


「パルシファルより、入電!」


 シュレーゲルは驚きで目を見開き、思わず呟く。


「なんだって?」

「パルシファルより、入電です」


 オペレータは、律儀に繰り返した。

 ティークは少し笑みを浮かべ、オペレータに指示を出す。


「読み上げてくれ」


 オペレータは頷く。


「一言だけです、待たせたな、と」


 苦笑をうかべたシュレーゲルが、オペレータに指示を出す。


「グリムゲルデへ、電文を送信。持ちこたえろ、もうすぐ聖なる愚者が降臨する」

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