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聖愚者の旅立ち 04-19
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ヴェルザンディの切迫した声に、フランツが叫び声を被せる。
「王陛下、あなたは脱出を」
「馬鹿を、いいたまえ」
ロキ王は、落ち着いた声で応える。
「テラごと吹き飛ぶのに、どこへ逃げる?」
フランツは、狂ったような目でロキを見つめる。ヴェルザンディの、切迫した声が響く。
「メルトダウン開始まで、あと二十秒」
「まあ、落ち着け。フランツ君」
ロキの言葉に、無茶言うなよとフランツは苦笑した。
ロキはコンソールを立ち上げ、それを見つめる。
「メルトダウン開始まで、あと十秒」
フランツはコンソールを眺め、なにかできることが残っていないか絞り出すように考える。
天才を自任する彼の、極限までの思考ですら何もできることは残されていないと思う。
「メルトダウン開始まで、あと五秒、四、三、二」
ヴェルザンディのカウントダウンに、ロキの声が割ってはいる。
「大丈夫だ、問題ない」
フランツが、息を呑む。
ヴェルザンディが、驚いたような声を出した。
「エネルギーレベルが、低下しはじめました。警告域まで、落ちています」
まるで叩きのめされたように、フランツはリニアシートに深く沈む。
病人のような、弱々しい息をする。
ヴェルザンディの報告の声は、静かな調子に戻っていた。
アラーム音が消えてゆき、赤く染まったスクリーンが闇色の静寂を取り戻してゆく。
艦体の振動も、静かなものへと変わっていた。
「エネルギーレベルが、通常域まで戻りました。対消滅リアクターエンジンが、正常稼働を開始しています」
フランツは地獄の底から響くような、怨嗟の声をあげる。
「王陛下、一体あなたは何をなされたんですか?」
ロキは、穏やかな笑みを浮かべる。
「何もしていないよ、ただ、船に語りかけてみただけだ」
フランツが、はあ? というように目を見開いた。
ロキは、愉快そうに言葉を続ける。
「何も恐れるな、我らに全てを委ねるがいい、とね」
「なんですか、それ?」
フランツが、心底呆れたような声をだす。
ヴェルザンディがふたりの会話に割り込み、報告の声をあげる。
「第一から第四までのフライホイールの次元ケイデンスが、接続可能レベルまで上昇しました」
「ああ」
ちょっと腑抜けたような声で、フランツが指示をだす。
「全フライホイール、接続」
ヴェルザンディが、応える。
「全フライホイール、接続します」
ロキは、独り言のように言葉を続けた。
「そうしたら、船の声が聞こえたんだ。君たちに、委ねてみるとしよう、とな」
フランツは、深いため息をつく。
「あなたもこの船も、あまりにでたらめすぎる」
その瞬間、ごん、ごんと立て続けにパルシファルが振動し、生き物が目覚めるような振動がはじまった。
ヴェルザンディが、声をあげる。
「フライホイール、接続完了しました」
次々とウインドウが立ち上がってゆき、メインエンジンの起動プロセスが表示されていく。
船に鳴り響く音も、次第に静かに安定したものへと変わっていった。
パルシファルはついに、目覚めの時を迎えている。
フランツはぞくりとしたものを背筋に感じ、エンジンの稼働状況をチェックした。
全ては順調にみえ、何かの奇跡がパルシファルに訪れたのかと思う。
ブリッジに響く重低音は、オーケストラのオヴァーチュアさながらにゆったりしたものに思える。
フランツは、コンソールを操作しながら声をあげた。
「スクルド、艦隊戦の行われている宙域までの次元転移をシミュレートして、航行プログラムを組んでくれ。大至急だ」
スクルドは、ちょっと首をかしげる。
「うーん。急いでるんなら、提案があるんだけれど」
フランツは、驚いた目でスクルドをみる。
「何だっていうんだ」
「パルシファルを次元転移させるより、カイザー・ヒューゲルごと転移したほうがシミュレートが簡単になって、時間が三百秒くらいは節約できるよ」
フランツは、呆れ顔になる。
「丘ごと宇宙へ、跳ぶっていうのか?」
「よし、それでいこう」
ロキが笑みを浮かべて、スクルドに頷きかけた。スクルドも笑みでロキに応える。
「じゃあ、シミュレート開始するよ」
フランツはやれやれと、肩をすくめる。
「好きなように、やってくれ」
「んじゃあ、百秒でやるね」
スクルドが、ご機嫌に応えた。
ロキは、ヴェルザンディに顔を向ける。
「ヴェルザンディ。フライアに、電文を送信してくれ」
ヴェルザンディは笑みと共に、ロキへ顔を向けた。
「はい、なんと送りましょう」
ロキは、ヴェルザンディを真っ直ぐみる。
「待たせたな、と」
「王陛下、あなたは脱出を」
「馬鹿を、いいたまえ」
ロキ王は、落ち着いた声で応える。
「テラごと吹き飛ぶのに、どこへ逃げる?」
フランツは、狂ったような目でロキを見つめる。ヴェルザンディの、切迫した声が響く。
「メルトダウン開始まで、あと二十秒」
「まあ、落ち着け。フランツ君」
ロキの言葉に、無茶言うなよとフランツは苦笑した。
ロキはコンソールを立ち上げ、それを見つめる。
「メルトダウン開始まで、あと十秒」
フランツはコンソールを眺め、なにかできることが残っていないか絞り出すように考える。
天才を自任する彼の、極限までの思考ですら何もできることは残されていないと思う。
「メルトダウン開始まで、あと五秒、四、三、二」
ヴェルザンディのカウントダウンに、ロキの声が割ってはいる。
「大丈夫だ、問題ない」
フランツが、息を呑む。
ヴェルザンディが、驚いたような声を出した。
「エネルギーレベルが、低下しはじめました。警告域まで、落ちています」
まるで叩きのめされたように、フランツはリニアシートに深く沈む。
病人のような、弱々しい息をする。
ヴェルザンディの報告の声は、静かな調子に戻っていた。
アラーム音が消えてゆき、赤く染まったスクリーンが闇色の静寂を取り戻してゆく。
艦体の振動も、静かなものへと変わっていた。
「エネルギーレベルが、通常域まで戻りました。対消滅リアクターエンジンが、正常稼働を開始しています」
フランツは地獄の底から響くような、怨嗟の声をあげる。
「王陛下、一体あなたは何をなされたんですか?」
ロキは、穏やかな笑みを浮かべる。
「何もしていないよ、ただ、船に語りかけてみただけだ」
フランツが、はあ? というように目を見開いた。
ロキは、愉快そうに言葉を続ける。
「何も恐れるな、我らに全てを委ねるがいい、とね」
「なんですか、それ?」
フランツが、心底呆れたような声をだす。
ヴェルザンディがふたりの会話に割り込み、報告の声をあげる。
「第一から第四までのフライホイールの次元ケイデンスが、接続可能レベルまで上昇しました」
「ああ」
ちょっと腑抜けたような声で、フランツが指示をだす。
「全フライホイール、接続」
ヴェルザンディが、応える。
「全フライホイール、接続します」
ロキは、独り言のように言葉を続けた。
「そうしたら、船の声が聞こえたんだ。君たちに、委ねてみるとしよう、とな」
フランツは、深いため息をつく。
「あなたもこの船も、あまりにでたらめすぎる」
その瞬間、ごん、ごんと立て続けにパルシファルが振動し、生き物が目覚めるような振動がはじまった。
ヴェルザンディが、声をあげる。
「フライホイール、接続完了しました」
次々とウインドウが立ち上がってゆき、メインエンジンの起動プロセスが表示されていく。
船に鳴り響く音も、次第に静かに安定したものへと変わっていった。
パルシファルはついに、目覚めの時を迎えている。
フランツはぞくりとしたものを背筋に感じ、エンジンの稼働状況をチェックした。
全ては順調にみえ、何かの奇跡がパルシファルに訪れたのかと思う。
ブリッジに響く重低音は、オーケストラのオヴァーチュアさながらにゆったりしたものに思える。
フランツは、コンソールを操作しながら声をあげた。
「スクルド、艦隊戦の行われている宙域までの次元転移をシミュレートして、航行プログラムを組んでくれ。大至急だ」
スクルドは、ちょっと首をかしげる。
「うーん。急いでるんなら、提案があるんだけれど」
フランツは、驚いた目でスクルドをみる。
「何だっていうんだ」
「パルシファルを次元転移させるより、カイザー・ヒューゲルごと転移したほうがシミュレートが簡単になって、時間が三百秒くらいは節約できるよ」
フランツは、呆れ顔になる。
「丘ごと宇宙へ、跳ぶっていうのか?」
「よし、それでいこう」
ロキが笑みを浮かべて、スクルドに頷きかけた。スクルドも笑みでロキに応える。
「じゃあ、シミュレート開始するよ」
フランツはやれやれと、肩をすくめる。
「好きなように、やってくれ」
「んじゃあ、百秒でやるね」
スクルドが、ご機嫌に応えた。
ロキは、ヴェルザンディに顔を向ける。
「ヴェルザンディ。フライアに、電文を送信してくれ」
ヴェルザンディは笑みと共に、ロキへ顔を向けた。
「はい、なんと送りましょう」
ロキは、ヴェルザンディを真っ直ぐみる。
「待たせたな、と」
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